パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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8話 パチュリーさんよりも小悪魔さんの方が苦労人だったそうで。

パチュリーさんは30分ほどしたら起きた。どうやらパチュリーさん、薬の副作用にも弱いらしい。本当に身体が弱いのだろう。

ただ、薬の効能はかなりの速さで身体中を巡るようだ。

身体がこちらの世界に馴染んでもいないだろう。1ヶ月ぐらいはゆっくりとしてもらおう。

 

「パチュリーさん、学校って分かりますか?」

「がっ、こう?幻想郷で言う寺子屋みたいなとこかしら?」

 

幻想郷では確か大図書館からほとんど動かなかっただろうが、なんとかそのぐらいの知識はあるようだった。

今更だが、この思考って完全にパチュリーさんにとっては侮辱しているようにしか聞こえないだろう。

侮辱しているなんてそんなこと、考えることが貴女の前で不敬であります、パチュリー殿。

 

「大まかに言ったら、そんな感じです。んー、菫子さんから何か聞いていれば説明はかなり楽なんですが……」

 

菫子さんとパチュリーさんは相容れない関係だと勝手に考えている。

なんか、活発に動いて、知識を得ている菫子さんと書で知識を得ているパチュリーさんは、知識の得方対極とも言えるだろう。

 

「菫子?ああ、外の世界から来た子なら、何回か大図書館に訪れているわ」

「マジっすか」

 

まさかの新事実。

そうだとするならば案外仲が良かったりするのだろうか。

そんな考えを見透かしたようにパチュリーさんはため息をついた。

 

「あの子はなんでもかんでも、科学的にとかなんとか言ってたけれど、幻想郷においては外の世界の常識なんて一切通じないというのに。それでフランは菫子と大図書館で遊びだすし……」

「図書館が荒れてる……」

「本に傷をつけなかっただけマシね。ほとんど返しに来ない馬鹿もいるし」

 

魔理沙のことだな。俺はすぐにそう察せた。

東方を知らない人ならば、泥棒か……。ってなるだけだろう。

それにしても、本当にパチュリーさんは苦労していそうだ。それよりも小悪魔さんの方が苦労していないか?

 

「小悪魔さん、いろいろと精神面的に大丈夫ですか?」

「胃薬はよく飲んでいたわね」

 

ストレスの量がハンパではないのだろう。

社畜小悪魔さんに敬礼を。

普段はパチュリーさんにパシられ、魔理沙に世話を焼く。ついには、荒れ果てた図書館を直す作業。

咲夜さんはどこまでの作業をしていたのだろう。

紅魔館に働く者達には寝る時間など一切なさそう。

 

「で、菫子と同じ学校に通っているというわけね」

「菫子さんは……」

 

なんか引っかかる。これまでは一切気にしていなかったことだ。もしかすると、菫子さんはこちら側の人間。別に、存在していても大丈夫なはず。

もしかしたら、俺が知らなかっただけで、学校にいるのかもしれない。

 

「菫子さんは、いるかどうかは分かりません」

「何?その不明瞭な答えは」

「菫子さんはこちら側の人間なんですよ。いたらいたで、かなりの驚きですけど、いる可能性があるのです。なので……」

「探すってことね。見つけたら持って帰ってきて。少しだけ説教したいから」

 

パチュリーさんの仰せのままに。

って、菫子さんにとっては、知らない男に声をかけられる。家に連れて行かれる。

つまり、俺の社会的死を賭けたハイリスク・ローリターンの大博打。いや、博打でもないな。一般的に考えれば、ほぼリターンなどないに等しい。

しかし、パチュリーさんが喜んでくれるというのであれば、それは俺にとっての最大のリターンだ。

パチュリーさんのために頑張りますか。


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