パチュリーさんは30分ほどしたら起きた。どうやらパチュリーさん、薬の副作用にも弱いらしい。本当に身体が弱いのだろう。
ただ、薬の効能はかなりの速さで身体中を巡るようだ。
身体がこちらの世界に馴染んでもいないだろう。1ヶ月ぐらいはゆっくりとしてもらおう。
「パチュリーさん、学校って分かりますか?」
「がっ、こう?幻想郷で言う寺子屋みたいなとこかしら?」
幻想郷では確か大図書館からほとんど動かなかっただろうが、なんとかそのぐらいの知識はあるようだった。
今更だが、この思考って完全にパチュリーさんにとっては侮辱しているようにしか聞こえないだろう。
侮辱しているなんてそんなこと、考えることが貴女の前で不敬であります、パチュリー殿。
「大まかに言ったら、そんな感じです。んー、菫子さんから何か聞いていれば説明はかなり楽なんですが……」
菫子さんとパチュリーさんは相容れない関係だと勝手に考えている。
なんか、活発に動いて、知識を得ている菫子さんと書で知識を得ているパチュリーさんは、知識の得方対極とも言えるだろう。
「菫子?ああ、外の世界から来た子なら、何回か大図書館に訪れているわ」
「マジっすか」
まさかの新事実。
そうだとするならば案外仲が良かったりするのだろうか。
そんな考えを見透かしたようにパチュリーさんはため息をついた。
「あの子はなんでもかんでも、科学的にとかなんとか言ってたけれど、幻想郷においては外の世界の常識なんて一切通じないというのに。それでフランは菫子と大図書館で遊びだすし……」
「図書館が荒れてる……」
「本に傷をつけなかっただけマシね。ほとんど返しに来ない馬鹿もいるし」
魔理沙のことだな。俺はすぐにそう察せた。
東方を知らない人ならば、泥棒か……。ってなるだけだろう。
それにしても、本当にパチュリーさんは苦労していそうだ。それよりも小悪魔さんの方が苦労していないか?
「小悪魔さん、いろいろと精神面的に大丈夫ですか?」
「胃薬はよく飲んでいたわね」
ストレスの量がハンパではないのだろう。
社畜小悪魔さんに敬礼を。
普段はパチュリーさんにパシられ、魔理沙に世話を焼く。ついには、荒れ果てた図書館を直す作業。
咲夜さんはどこまでの作業をしていたのだろう。
紅魔館に働く者達には寝る時間など一切なさそう。
「で、菫子と同じ学校に通っているというわけね」
「菫子さんは……」
なんか引っかかる。これまでは一切気にしていなかったことだ。もしかすると、菫子さんはこちら側の人間。別に、存在していても大丈夫なはず。
もしかしたら、俺が知らなかっただけで、学校にいるのかもしれない。
「菫子さんは、いるかどうかは分かりません」
「何?その不明瞭な答えは」
「菫子さんはこちら側の人間なんですよ。いたらいたで、かなりの驚きですけど、いる可能性があるのです。なので……」
「探すってことね。見つけたら持って帰ってきて。少しだけ説教したいから」
パチュリーさんの仰せのままに。
って、菫子さんにとっては、知らない男に声をかけられる。家に連れて行かれる。
つまり、俺の社会的死を賭けたハイリスク・ローリターンの大博打。いや、博打でもないな。一般的に考えれば、ほぼリターンなどないに等しい。
しかし、パチュリーさんが喜んでくれるというのであれば、それは俺にとっての最大のリターンだ。
パチュリーさんのために頑張りますか。