パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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4話 パチュリーさんは外に出るそうです。

「ねえ、貴方の名前ってなんと言うの?」

「あ、言ってませんでしたね。俺は榊原 煉です」

「そう、じゃあ私は煉って呼ばせてもらうわね」

 

パチュリーさんから下の名前、他の国の人っぽくいうならば、ファーストネームを呼び捨てで呼ばれる。このことで俺は少し舞い上がった。

これだから童貞は。とかいう声が聞こえてきそうな気がするが、考えてみたら分かる。

好きな人(二次元)が自分の家の中に現れているんだぜ?そして、自分の名前を呼んでもらえる。

嬉しいだろうが。

 

「スキマも開く様子は今のところ無いし、このまま住まわせてもらおうかしら」

 

……。

俺、今日死ぬかもしれない。

そんなことを考えながら、昼ご飯の時間となっていることを確認。

今の状態では1人で一カ月を過ごせるほどの備蓄しか無く、今日は月末のため食料は備蓄もほとんど残っていない。そのため、パチュリーさんの分は無いに等しい。

 

「少し、外に食べ物を買いに行くんですけど、パチュリーさんはどうします?」

「外……私も行くわ。暫くはここの厄介になるんだし、周りのことぐらい分かっておかないといけないから」

 

というわけで、パチュリーさんも同行することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

うん、予想が見事的中。

パチュリーさんが外に出ると言ったことからこのことは、ずっと予想していた。

家から出て、2分でこの状態。大図書館って暗いイメージだったから、6月末で、梅雨明けの夏のこの直射日光はしんどかったのだろう。

 

「良かったら、おぶりましょうか?」

「そろ、そろ限界ね。お願いするわ」

 

何この至福のひととき。

俺にとっては、幸せの何物でも無い。

 

その時、少しだけ引っかかることがあった。

パチュリーさんは魔法が使えるはず。それで風を起こして、身体を浮かせて前に進むことが出来るのでは?

 

「パチュリーさん、魔法って使わないんですか?」

「使いたいのだけれども、こっちの世界に来てから一切使うことが出来ないのよ。何度か使おうとはしているのよ?」

 

例えばけーたいとか言う物を分解しようとしたときとかね。と少し微笑んだが、俺にとっては今の生活においてかなり重要なものが全て壊されていた可能性があるという恐怖でしかない。

 

「よっこいせっと。あと、2〜300mも歩けばスーパーにつくので暑いのは少し我慢してくださいね」

「善処するわ」

 

少し進むと、周りからの視線が妙に刺々しくなっていることに気付いた。

何故だ?そんなことはすぐに分かった。

だって、一昨日ぐらい前まで、俺もそうだったのだから。

そう。その視線の発信源は非リア達の妬み、嫉み、恨みなどの物だ。

視線を向けていると思われる人に向けて、勝ち誇ったような視線を送ると、目を逸らされた。

というか、あの人ご近所さんだ。

なぜ、ご近所さんが非リアの視線を浴びせるとか意味が分からない。

 

「煉、どうしたの?」

「いや、何もないです」

 

パチュリーさんにとっては何もないことなので、早足でスーパーへと向かった。


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