パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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25話 パチュリーさんとの久しぶりの他愛のない会話です。

菫子さんがテレポートで帰って、束の間の休息。

 

「そういえば、結果的にどんな結論に至ったんですか?」

「菫子が幻想郷にまず行って、私がいなくなっているか確認するそうよ」

 

もしこの世界がパチュリーさんにとっての夢であるのならば、夢の存在が幻想郷に現れる。そして、それはパチュリーさんの収まっていた席に、無理やりにでも座ろうとする。

菫子さんは、それがあるかどうかを確認するのだろう。

 

「そうですね、ちょっと遅くなりましたけれども晩ご飯にしましょうか。何か食べたいものありますか?」

「うどんとやらをお願い。具材とかは煉の好きな風にしてちょうだい」

「御意」

 

さて、油っこいものはパチュリーさんの身体の調子が悪くなるし……。

 

 

 

____

 

 

 

 

 

「出来ましたよ。シンプルですけど、かけうどんです」

「ありがとう、煉」

 

出汁に薄口醤油とうどん玉を入れて、ネギを多少入れただけ。超簡単。

本来なら2玉使う予定だったけれども、パチュリーさんの食べる量を考えると、恐らく1.5玉、もしかするともう少し少ないかもしれない。

 

「「いただきます」」

 

麺をすする音が重なる。

きつねうどんやらカレーうどんやら考えたのだが、パチュリーさんの身体のことを考えるとこれ以外の最適解がない。

出汁は残っているし、明日の朝ご飯用に雑炊をしておくのも悪くない。

 

「あっさりしていていいわね、これ」

「お褒めに預かり光栄です」

 

なるべく音を立てないように、出汁を飲む。シンプルであるがゆえに美味しいのだ。

そういえば、といった感じにパチュリーさんが私めに御言葉をおかけになった。

 

「今日、菫子に言われたことを覚えてるかしら?」

「はい、ある程度のことは」

「話が早くて助かるわ」

 

そう言って、空となった容器を流しの方に運んだ。

次は俺に何を命じられるのか、それを待つ。どんなご命令であろうとも、この世で不可能なこと以外ならばやってみせる意気込みである。なんなら不可能でもこの世の原理さえ捻じ曲げることが出来れば……。いや、さすがにそれは無理だ。厨二病は抑えよう。

 

「これまでの変な言葉遣い禁止よ」

「そんな殺生な?!」

 

なんと……いう、ことだ。

これではパチュリーさんに最大の敬意を表する事が出来ない! 更にはパチュリーさんに話をする事が出来なくなる!

 

「辛いことでもないでしょう?」

「そんな、小生には貴女様と対等ではございません! 小生が高貴なる貴女様と話すことが出来るのはこの状態でなければ無理なのです!」

 

オタク特有の早口。

捲したてるように喋ったせいか、パチュリーさんは若干引き気味である。

 

「だから、だから……! 後生の頼みで……!」

「却下」

 

ガーンという効果音が付きそうなほどに俺は落ち込む。

笑った奴がいたら俺はそいつをぶん殴る。

 

「別に敬語を外すってことじゃないのよ」

「それでも……!」

 

俺が土下座してまで懇願している、この風景を側から見ればただの哀しい奴だという感想を持たれるだろう。その程度のことを考えることが出来るほどには、頭は冷静になっていた。

この命令は別にそこまで悲嘆することじゃない。先ほどまで、俺は何を考えていたのか。全くもって思い出せない。

今はあれだ、ひとしきりハシャいだ後に来る賢者モードって奴だ。

 

「分かりました」

「え? 手のひらの返すスピードが早くないかしら?」

「その通りですけども、普通に考えて何もそこまで嘆くことでもないかなと思いまして」

 

パチュリーさんは困惑したような目をこちらへ向ける。

それもそうだろう。つい40秒前まで土下座してまで撤回わ懇願していた男が急にその命令を受け入れたのだ。よほどのカリスマ性とか計算高い人じゃなければこんなこと予想が出来ない。

 

「ならいいけど。煉は明日の準備をしなさい」

「分かりました」

 

明日、明日……。あ、Aが古文のテスト勉強を手伝ってくれって言っていたのを断って菫子さんに会いに行ったのだった。明日のAの絡みが鬱陶しいだろう。

 

「パチュリーさん、明日学校行きたくないです」

「行きなさい」

「はい……」


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