パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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23話 パチュリーさんの元へ菫子さんを連れて行きます。

為されるがまま引き摺られて、入ったのは東深見高校から離れていない場所にある喫茶店だった。学生達のピークはとっくに過ぎたのか、人気はなかった。

 

「アイスコーヒーで」

「それじゃあ、俺も同じもので」

 

注文を済ませ、菫子さんと向き合う。

改めて見ると、やはり可愛いという感想が出てくる。東方に出てくる女性は全員美形なのだろう。しかし、パチュリーさんの可愛さには程遠い。ベクトルが違うとでも言えばいいのだろうか。

主観が入るが、パチュリーさんはもちろん可愛いし、美人であると、百人に聞いても百人ともそう言うに決まっている。菫子さんはどうだろうか。パチュリーさんはどこか儚げというか病的というか、そんな雰囲気を抱かせるに対し、菫子さんは健康的な白さである。確かに夜更かしをしているだろう。けれども、現代の日本人における可愛いというのでは、菫子さんは最上級ではなかろうか。

 

「どうしたのかって心配になるレベルで私の顔を見るわね」

「すみません、やっぱり他人といるのが慣れないので」

 

菫子さんに可愛いなどと言ってみようものなら、俺は今ここで腹を斬ろう。可愛くないわけがない。しかし、俺の推しはパチュリーさんなのだ。俺は推しへの忠誠心は一途であり、不屈である。絶対に折れるものか。

 

「お待たせしました」

 

そう言って、店員さんはアイスコーヒーをテーブルの上に2つ並べた。

ミルクと砂糖も同時に出された。どこの国が産出している豆だとかは分からないため、とりあえずブラックのまま飲む。しかし苦い。苦めのものを好む節はあるが、ブラックはやめておきたいと先月決心したはずなのに。おそらく、菫子さんの前でカッコつけたかったのだろう。

可愛い女子の前でカッコつけたいというのは、全男子共通のことなのだ。許してくれとは言わない。覚えておいてほしいだけなのだ。

 

「で、幻想郷のどういったことを調べてるわけ?」

「先ほども言った通り、パチュリーさんが幻想郷に戻る方法を調べているんです」

 

ふーん、と菫子さんは少し考え込む。考えるということは何かしら心当たりがあるのだろうか。

それであると、パチュリーさんの帰る手段が早く見つかったということで、とても喜ばしいことだ。

 

「確かに、私は夢の中で幻想郷に行けるわ」

「それなら、同時にパチュリーさんも夢の中へ連れて行ったら」

「それが出来るか分からないし、何より問題なのは私が幻想郷にいられるのは一時的。もし、パチュリーさんとともに幻想郷に行くことが出来たとしても、私が目覚めてしまったらどうなるのかも全く分からない」

 

けれども、と言葉が出そうになるがすんでのところでグッと堪える。試してみるべきだとも言えないのが、今の俺の立場なのだ。当人であるパチュリーさんの手伝いでしかない俺が否定も肯定も出来ない。

そうなると、必要になってくることは1つだけである。

 

「菫子さん、1つだけお願いしていいですか?」

「ええ、私に出来ることならね」

 

一歩間違えたら誤解される一言ではあるが、今のこの状況なら必ず意図を汲み取ってくれるだろう。

 

「俺の家に来ませんか?」

「えっとー、その意味はパチュリーさんと会ってほしいって意味であってるよね?」

「ええ、その通りです」

 

とりあえず、パチュリーさんからの第1ミッションクリアー、ということで菫子さんを連れて帰ろう。

 

「そうそう、今からテレポートするから座標教えて」

「あの、さすがにそこまで考えては来てないです」

「え、嘘。私を探しに来たって言うんだったらそこまで考えなさいよ!」

「それに、今からテレポートするってことは無銭飲食ですよ!」

「知らない!あんたが払って、男でしょ!」

「理不尽すぎません?」

 

なんだろう、すごく高校生らしいやりとりをやっている気がしている。


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