「え、来週から体育祭のダンス練習?」
「おう、お前もしかして話聞いてなかったのか?」
「勿論」
今現在、俺が考えていることはパチュリーさんと何をするかや、どうやって菫子さんに会うか。忘れられているかもしれないが、現在のパチュリーさんから仰せつかっている最大のミッションは菫子さんとパチュリーさんを会わせること。
ならば、このダンス練習とやらは休むしかない。うんシカタナイネ。
「すまんな。来週は用事があるからまた別日に練習するわ」
「お願いだから残ってくれ。友人Aの願いだぞ?」
「誰がお前の願いなんか聞くんだ」
そう言って、俺は教室を後にした。
放課後に残ってダンス練習だ? なんのために俺は帰宅部なんだ。無事に生還してこそだ。
泣き縋られても絶対に帰ってやる。
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「なんてことがありまして……、納得して頂けたでしょうか?」
「ふーん、それで今週から帰るのが遅くなるってことね。どうしても一つ気になる点があるのだけれど」
「なんのことでしょう?」
「帰ることを優先してるのに、何故練習するのかしら?」
まさにおっしゃる通りでございます。
簡単な経緯を説明すると、先ほどの翌日に行くと、見知らぬ女子から泣き縋られました。そして、多くの人に見られているわけです。そして、口だけの約束をしようとしたら、Aに録音されてました。つまり、言質を取られたということ。どうやらそれはAの作戦だったそうで。Aの野郎マジで許さねえ。
「そういうこと」
納得してくださったパチュリーさん。
少々落ち込んでいるというのはどうしてなのか、皆目見当もつかない。目の錯覚であろう。きっとそうだ。
「パチュリーさん、すみません」
「いいのよ。普通の人なら、こういう時には黙って嘘を吐いて逃げるのに、煉は全て洗いざらい答えてくれた。責める要素はどこにあって?」
「いやそんな滅相もない」
私はただただパチュリーさんの目の前で嘘をつくと発狂して死ぬという体質の持ち主なだけです。
いや結構、パチュリーさんに褒められるのは照れる。
贅沢を言うのであれば、その後に罵詈雑言を並べて欲しかった。我々の業界ではご褒美です。
「まあいいわ。明日は土日なのだけれど、予定はどうなの?」
「特にないのですが、パチュリー様もずっと男物の服を着るのも嫌でしょうし、人混みに慣れるのも兼ねて一緒にショッピングと行きましょう」
なるべく無難なものを選んで、パチュリーさんに着せているのだが、パチュリーさんも流石に嫌だろう。
それに、パチュリーさんが現代の服でどんなものを選ぶなのかも気になる。それはそれは素晴らしいセンスなのだろう。
いや、パチュリーさんのセンスは全て正しいのだ。つまり、パチュリーさんが白と言えば黒も白となり、黒と言えば白も黒となる。
パチュリーさんは正義である。
「煉、声に出てるわよ」
「あ、すいません」