パチュリーさんは現代の家で居候しています。   作:閏 冬月

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12話 パチュリーさんとの生活が2日目に突入しました。

ジリリリリリリ……と、けたたましい目覚まし時計の音が繰り返し、耳に届いた。

 

「うるせえ……」

 

頭の中では起きないといけないことは分かっている。しかし、身体がそれに対しての拒否反応を起こしているのは、学校に通う者には日常のようなものだろう。

目覚まし時計の音を止めようと、そこかしこに手を伸ばしてみるも、目覚まし時計のようなものはない。

俺自身が止めたわけではないのだが、唐突に音は止んだ。

 

「ん…?」

「朝からうるさいわね……」

 

俺は寝ていたソファーから身を起こし、声のする方へと目をやった。

そこには、一昨日の夜に突如として我が家に舞い降りた女神こと、パチュリー・ノーレッジが不機嫌そうな顔で俺の方を見ていた。

左手には目覚まし時計を持っている。

どうやら、パチュリー神が止めてくれていたようだ。

 

「なにその解説」

「おっと失礼、心の声が漏れてしまっていましたか」

 

昨日はまあ……、パチュリーさんと一緒にスーパーに行って嫉妬の視線を向けられたり、パチュリーさんが食べてみたそうだったインスタント麺にパチュリーさんが打ちのめされたり、パチュリーさんの要望による夕食の紅茶漬けご飯が意外と美味しかったり、いろんなことがあった。

一部省略しているのは見逃す。

 

そんなこんなで、パチュリーさんとの共同生活は2日目を迎えることとなった。

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、冷蔵庫の中にあったもので簡単に作ったのだけれど」

 

朝食はパチュリーさん手作りのサンドウィッチ。

朝から幸せなことがありました。

幻想郷以外のこの世にパチュリーさんの手料理を食べることが出来る人間はいるのだろうか。

パチュリーさんが魔理沙に食べさせているシーンとか見たいな。ちなみに、俺はマリパチェ推しだ。

 

「味はどうかしら。初めて作るものだからよく分からなくて」

 

不安そうな表情を浮かべるパチュリーさんは新鮮で、可愛かった。

 

「美味しいですよ。言うとすれば、サンドウィッチに塩は必要ないです」

 

中の具材はレタスとハム。

それを食パン二枚で挟んだ至って普通のサンドウィッチだ。ただ、どことなく塩気がするだけで。

 

「あれ、料理に塩胡椒は必須じゃ……」

 

色々な魔法の知識を蓄えていても、料理に関してはまだまだ知識が足りていないようだ。

後でク○クパッドへのアクセス方法を教えておこう。

 

「煉、今日から5日間……よね?」

「ええ。そうです」

 

パチュリーさんは哀しそうな表情を見せた。

この表情を一刻も早く消すために、全速力で帰ってこよう。

 

「そろそろ時間じゃないの?」

「いや、あと10分ぐらいは家にいれます」

 

……。

何故だろう。

この時間、普段ならば何も感じないはずなのに、パチュリーさんと一緒にいるせいか、かなり気まずい空気になっている。

いや、パチュリーさんと一緒にいるからではない。

俺の方から話すことの出来る話題が特にないのだ。

そのまま、何も話せないまま5分ほど経った。

 

「そろそろ行きますね」

「あ、うん。行ってらっしゃい」

 

俺は気まずい空気に耐えきれず、逃げ出してしまった。

このような者を意気地なしと言うのだろう。

その言葉は今の俺に当てはまる。

結果、予定より5分早く出ることになった。

 

その時の俺は、パチュリーさんの寂しそうな目を見ることは出来なかった。




言っておきます。
この物語は好きな風に書いているだけです。

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