ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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ポケモンだのじい(白目)

感想が欲しい(発狂)


Ep.61 世界を壊す探し物

 

 

 

 

 

 

 「んふふ~♪」

 

 「……キモいな」

 

 「ちょっと!女の子に向かってなんて事言うのよ!」

 

 

 アキトがポツリと呟く声に、リズベットは過剰に反応した。

 だが、ボス討伐後にドロップした《ヴェルンドハンマー》を、オブジェクト化した状態のまま、手に持ち眺めながらニヤニヤしているリズベットのその顔を見れば、誰だってそう思ってしまうだろう。

 

 

 「仕方無いだろ。およそ公共の電波じゃ放送出来ないような顔してたぞ」

 

 「そ、そこまで言う……?」

 

 

 リズベットは項垂れたが、それも一瞬。アキトの言葉よりも、今は目の前にあるレアアイテムにお熱のようで、リズベットはうっとりとその表情を崩していた。

 

 現在は、その洞窟の奥にある迷宮区に足を踏み入れている。このまま迷宮区を攻略しようと、リズベットから提案してきたのは少しばかり意外だったが。

 何せ、手に入れたハンマーの善し悪しを確かめたいが為に、すぐさま帰りたいだのと言い出すかと思っていたアキトは、肩透かしを食らった気分だった。

 

 現在85層迷宮区、その中にいるにしてはアキトとリズベット、特にリズベットに関して言えば、緊張感が無さ過ぎた。

 言い出したのは彼女なのだから、そろそろそのハンマーをしまって欲しい。

 渋々《ヴェルンドハンマー》を仕舞うリズベットを見て、アキトは先程から考えていた事を口に出す事にした。

 

 

 「……お前の事だからすぐにでも帰ってそのハンマーを試すかと思ったんだがな」

 

 「結局攻略するなら、先にした方が効率良いじゃない。アキトだってそう思ったから、さっき一人で残るって言い出したんでしょ」

 

 「……」

 

 

 この迷宮区に来る前、つまるところ、《ヴェルンドハンマー》を入手した洞窟内で、アキトの仕事は終わった。

 リズベットを早々に転移結晶の使える場所まで連れて行ったら、後は一人でこの迷宮区を攻略するつもりだった。

 最近《ホロウ・エリア》の攻略ばかりだったから、こうして迷宮区を、それも誰かと攻略するというのは久方ぶりであった。

 

 

(……アスナと、結構前に行ったな、そういえば……)

 

 

 最後に迷宮区を共に攻略したのは彼女が最後。まあ、彼女に関しては《ホロウ・エリア》でも一緒なのだが。

 

 

 「あたしも強い武器を作りたいから《ヴェルンドハンマー》が欲しかったんだけど、このアイテムだって、効率を考えたらとても優れてると思うし」

 

 「……鍛冶の善し悪しなら俺に言ったって分からねえぞ」

 

 「ほんとよねー、もっと鍛冶屋の存在に有り難みを感じて欲しいわ」

 

 「……」

 

 

 リズベットが不満そうな表情をすると、そのままアキトよりも前に歩き出した。

 その小さな背中を見て、アキトは優しく笑った。

 

 

(……感じてるよ)

 

 

 そう、口には出さなかったが、アキトは彼女に感謝していた。

 アスナと為に攻略組に志願し、今もこうして戦ってくれている事、自分には出来ない武器のメンテナンスを無償でやってくれてる事、こうして傍に居てくれるだけで、キリトの仲間達は、アキトに色々なものを与え、感じさせてくれていた。

 

 かつての仲間と同じように、自分に新しい事を教えてくれる。

 それが、アキトにとっては救いにも似ていて。

 

 

 

 

 そう考えていると、近くから声がした。

 

 

 

 

 「あ!アキト!」

 

 「え…?」

 

 

 アキトは咄嗟に動きを止め、声のする方へと顔を動かす。

 リズベットも警戒したのか、一瞬身体をビクつかせた後、アキトの傍に寄った。

 だが、警戒していたその声は、とても聞き覚えのあるものだった。

 視線を動かし、その主を捉えると、アキトの瞳は警戒の色を解いた。

 

 

 「……ストレア」

 

 「こんな場所で会えるなんて、嬉しいな!」

 

 

 そこに居たのは、銀髪で、紫を基調とした流麗な装備を身に纏った可憐な少女、ストレアだった。

 背中に細めのロングソードを背負い、こちらに向かって手を振りながら歩いて来た。

 リズベットは彼女の周りを見て、目を見開きながら問い掛けた。

 

 

 「アンタ……一人なの?こんなところで何してるのよ?」

 

 「ちょっと探し物があったんだけど、疲れちゃったから、一休みしてたところ」

 

 「……迷宮区に一人でか。友達いないんだな」

 

 「……ストレアはアンタより明らかに社交的だと思うけど」

 

 

 アキトの軽口を良い具合に斬るリズベット。

 苦い顔をするアキトだが、すぐにストレアに向き直る。

 探し物はなんであれ、一人で迷宮区を攻略するのは、この上層では危険極まり無い。

 

 ……人の事を言えないのが辛いところではあるのだが。

 

 

 そんなアキトの隣りで、リズベットは心配するようにストレアに告げる。

 

 

 「一人で攻略は危険だと思うけど…」

 

 「うーん、それじゃあさ、一緒に迷宮攻略してくれないかな?足手まといになったりしないから!」

 

 「……アンタ今疲れてたから休憩してたんじゃないの?」

 

 「大丈夫だよ!それに、急いでるの!お願い……一緒に行かせて!」

 

 

 ストレアは両手を合わせて懇願してきた。

 リズベットは困ったようにアキトを見つめ、アキトは溜め息を吐いた。

 実際、彼女は今疲れたから休憩していたと言っていた。ならば、動きが鈍る可能性だってある。

 上層のモンスターはレベルが高くなっており、簡単に倒せるようにはなっていない。そんなエリアを、先程までストレアは一人で攻略してたのだ。疲労があるというのは嘘ではないだろう。

 ストレアをパーティに組み込めば、間違い無く攻略のペースは上がるし、効率も良くなるだろうが、肝心な時や、窮地に立たされた時に、ストレアの調子が悪くなった時、手助け出来るかは分からない。

 

 

 「……」

 

 

 アキトは、自身の拳を強く握った。

 こんな時、守ってやる、そう言い切れないのが悔しい。

 だけど、ストレアは探し物があって、それも急いでいるらしい。もし断れば、彼女はまた一人でこの層を攻略するのかもしれない。

 もし、そうなったら────

 

 

 こんな風にしか言えないけれど。

 アキトは小さく、その口を開いた。

 

 

 「……頼んで来たのはそっちだ、疲れを理由に怠けるようなら、悪いけど願い下げだ。そこまで面倒は見ない。街に帰るんだな」

 

 「大丈夫だって!言ったでしょ?足手まといにはならないって!」

 

 「なら良い、人数がいた方が楽出来るからな。ちゃんと仕事してもらうぞ」

 

 「うん、アキトの言う事なら聞くよ」

 

 

(無償の信頼やめて怖い)

 

 

 何故そこまでストレアが言い切るのか不思議でならない。まだ出会って間も無ければ、会う頻度だって多くない。

 だがまあ、一人にさせるよりは安全だと思った。

 

 

 

 

 

 

 「……素直じゃないわね」

 

 「うるせえポンコツ」

 

 

 途中、リズベットが達観したようにそう言うから、アキトは思わずそう言い放った。

 リズベットは憤慨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 「ふっ!!」

 

 

 ストレアは目の前のモンスターに一瞬で詰め寄り、その両手剣を上段から素早く振り下ろす。

 その一撃は速く、そして重い。モンスターは即座に霧散した。

 

 彼女のその表情は、いつもの気さくな笑みを浮かべる彼女とは打って変わって真剣で、強い意志と必死さを感じた。

 

 アキトとリズベットも、粗方この場のモンスターを片付け、辺りは静寂に包まれた。

 それを確認すると、ストレアはその重たそうな剣を地面へと下ろした。

 

 

 「ふぅ~……ね?足手まといにならないでしょ?」

 

 「…ああ。まあそれに関しては最初(ハナ)から思ってなかったけど」

 

 「ホント?嬉しいな~♪」

 

 

 ストレアはそう言うと、いつものように笑った。

 彼女には秘密が多い。アキト達攻略組をも凌ぐ隠蔽スキルに、女性であり、この強さなのに関わらず無名。不安要素は多いが、強さに関しては全く不安にならなかった。

 だけど、戦闘時の彼女はまるでいつもとは別人に思えた。先程から攻略を共にしているが、リズベットですらストレアのその表情の変化に気付いていた。

 

 

 「……そうまでして、何探してんだ?」

 

 

 純粋に、気になった。ストレアが探しているというものを。

 いつもなら『興味無い』『どうでもいい』と、そう言う筈なのだが。アキト自身に眠る、その好奇心に負けてしまった。

 

 ストレアは、アキトのその質問を聞くと、複雑そうな表情を浮かべ、静かにその答えを述べた。

 

 

 「この世界を壊してしまう、何か。それを探しているの……多分」

 

 「……?なんだそれ」

 

 

 その表情から読み取るに、アイテムの類じゃない。だけど、アキトはストレアが何を言っているのか理解出来ていなかった。

 だけど、彼女はそれを必死に探している。

 

 

 「……お前の言い方だと、それが何なのかは分からないんだな」

 

 「でもだからこそ、たくさん探索に出て、色んなものと出会わなきゃいけないんだ」

 

 

 アキトを見つめていたその瞳を、横に逸らした。

 

 

 「アタシは、この世界を守らなくちゃいけないから」

 

 「……守る……この、世界を……」

 

 

 何となく、既視感を覚えた。

 彼女が掲げる、その『意志』に。

 この世界を守る。その言葉はまるで、『正義の味方』みたいで。

 

 

 

 

 「……というか、アタシの事よりも!」

 

 

 ストレアは途端に笑顔を作り、アキトに詰め寄る。

 アキトはいきなりの事で、思わず後ずさった。

 

 

 「っ…な、んだよ…」

 

 「アキトはクリアの為に頑張ってるんだよね?だったらさ、パーティのメンバーもよく考えてさ……」

 

 

 ストレアは強引に話を変えたかと思えば、パーティの話になった。彼女はそこまで言うと、アキトの隣りにいつの間にか来ていたリズベットをチラリと見つめた。

 リズベットはそれに気付き、ほんの少し警戒をし始める。

 

 

 「な、何よ…」

 

 「アキトには、もっと強力で頼りになる、おねーさんの助っ人が必要だと思う」

 

 

 何を言い出してるんだこの子は(錯乱)

 アキトは思わず溜め息を吐く。リズベットも彼女の言葉に首を傾げていた。

 アキトは呆れたようにストレアに向かって口を開いた。

 

 

 「おねーさんって……アルゴじゃねえんだから。大体、『強力な』とか言ってるが、今の攻略組の個々人の強さなんて、そんな変わんねえよ。誰もがバグでスキルが色々飛ばされてるんだ、イーブンだろ。それに……」

 

 「それに?」

 

 「……不満を抱くような奴とはそもそも組まない。イラつくだけだ」

 

 「アキト……」

 

 

 その言葉を聞いて、何となく嬉しいリズベット。

 自分で言っておいて、既に後悔しているアキトを他所に、ストレアが怒ったような表情を作る。

 

 

 「ダメだよ、アキト。今で満足なんて間違ってると思う」

 

 「別に満足なんてしてねえよ。誰もが発展途上だろ」

 

 「でもでも、アタシが活躍出来ちゃうくらいなんだもん。もっとパーティとしてのバランスも必要だし、一人一人、ソロでの強さにももっと拘らなくちゃ」

 

 「……まあ、お前の言い分は間違ってはないけど」

 

 

 実力があるだけあって、彼女の言ってる事も的を射ていた。いつもほんわかしてるイメージしか無かったが、ストレアもかなりのやり手だと伺える。

 ストレアはリズベットに向き直ると、彼女の事を上から下まで眺めてから告げた。

 

 

 「えーと、具体的に言うと、リズベットは武器に頼らず身体能力を高めるべき」

 

 「あたし、筋力は結構上げてる方だと思うんだけど……」

 

 「ああ、ゴメンゴメン。もっと速度を上げた方が良いって事」

 

 「速度ねえ……鍛冶と関係が薄いのはあんまり上げたくないんだけど……」

 

 

 リズベットは困ったようにそう呟く。

 横で聞いていたアキトはストレアのアドバイスに感心していた。

 確かにリズベットは、重量のあるメイスを使っている分、攻撃速度は勿論、移動速度も他のプレイヤーよりも劣っている感じは否めない。

 今はまだ致命的なものにはなっていないが、いつか素早いモンスターが相手になった時、防御の速度が遅れて、命の危険が増える、なんて事になるかもしれない。

 いつかは指摘した方が良いかもしれないと、少しばかり気になっていた点だった。

 加えて彼女は、攻略組としての経験も浅く、メイスのスキルも、鍛冶屋という生産職で得た経験値を注ぎ込んだものだ。戦闘経験も少ないだろう。

 ストレアの言葉は、リズベットも思い当たる節があったのか、否定から入ったりはせず、考えるように唸っていた。

 

 

 「でも、それだとアキトと釣り合うパートナーにはなれないと思う」

 

 「パートナーって言われても、あたしは……」

 

 

 リズベットはストレアの言葉に戸惑った。先程の《ヴェルンドハンマー》の件もあって、アキトやアスナの隣りに立つには、自分の力は未だ不十分である事を痛感していたからだ。

 アキトは不満は無いと言ってくれたが、これはあまり割り切れる事では無い。

 キリトの隣りに。そう思うだけで努力しなかった事を後悔した。アスナを助けるという理由で志願した攻略組だが、今はアスナの親友として、アキトの友達の一人として、彼らを支えたいと思っていたから。

 だからこそ、ストレアのその言葉が的を射ている事を理解した反面、何となく悔しかった。

 

 自分はまだ、友達である二人に守ってもらう側なんだと。

 

 

 「それに、アキトのパートナーには、アタシみたいにメリハリの利いた身体が必要だし」

 

 「……ん?」

 

 「は?」

 

 

 だが、ストレアのその言葉を聞いて、リズベットは首を傾げる。黙って話を聞いていたアキトも、彼女の言葉には反応した。

 そんな彼らを知ってか知らずか、ストレアは楽しそうに話を続ける。

 

 

 「出るトコが出てて、引っ込むトコが引っ込んでる。そういった魅力的な身体が必要だと思うんだよね」

 

 「……え、パートナーって、そういう意味?」

 

 「なわけないだろポンコツ……」

 

 

 リズベットの問い掛けに、アキトは嫌そうに答える。

 先程まで戦力的な話をしてた筈なのに、ストレアの話はいつの間にか人生のパートナーの話に変わっていた。

 リズベットは先程まで考えていた自身の悩みとは関係無い話だったのかと素っ頓狂な声を上げるが、アキトはそうでは無いと否定した。

 

 それに、ストレアの言い分は、まるでアキトの性癖に見合うのは自分だというような言い方だった。

 このままじゃ自分の好みのタイプがストレアという事になる。

 実際、ストレアはとても魅力的な身体をしてはいるが、今この場にいるリズベットに誤解されると、後々エギルの店でそういった話題になった時に面倒極まりない。

 アキトは取り敢えず弁明を図る、というか、ストレアの言ってる事の否定に入る事にした。

 

 

 「アキトだって、スタイルの良い女の子がパートナーの方が嬉しいよね」

 

 「……攻略に身体付きは関係無いだろうが。むしろ胸なんて戦闘時は邪魔なだけだ」

 

 「えー!アキトは胸が無い女の子の方が良いって事?」

 

 「え……それってシリカとか……ま、まさか……ユイちゃんとか……」

 

 「おいやめろリズベット」

 

 

 誤解を解くつもりの発言で、さらに誤解を生むという連鎖。

 リズベットは、アキトのロリコン疑惑の浮上(主にストレアの発言が原因)に、その瞳を大きく揺らしていた。

 リズベットからシリカとユイの名前が出てくる辺り、アキトの発言はかなり問題だったようだ。

 アキトは珍しく、見て分かる程に焦る。

 

 

 「だ…大体、なんで女限定なんだよ。そもそも、攻略組ってのは元々男の方が多いんだよ。命張ってまでボスを討伐しようなんて脳筋女の方が珍しい。組む事事態が稀なんだよ」

 

 「じゃあアキトは男の人の方が良いって事?」

 

 「何でもかんでも恋愛方面に持ってくのやめてくんない?」

 

 「ま、まさかクラインとかエギル……」

 

 「やめろっつってんだろポンコツ鍛冶屋」

 

 

 更に誤解が生まれ、状況は悪くなる。

 誤解の無いように言っておくが、アキトはスタイルでパーティを選んではいない。元々ソロだし、何なら誰も傷付けるリスクが無いよう、一人を選ぶくらいだ。

 それにアキトには。

 

 

 自分には────

 

 

 

 

 「まあでも、アキトに一番お似合いで、役に立っているのはやっぱりアタシかな」

 

 「……い」

 

 「え?」

 

 

 小さく何かを呟くアキトに、ストレアとリズベットは視線を動かす。

 アキトは顔を俯きがちにしていたが、やがてストレアに向かって言い放った。

 

 

 「別に……役に立つとか、お似合いだとか……そんな事は、考えなくて良いんだ」

 

 「……?」

 

 「ただ、死ぬ事無く……傍に、居てくれたら……それで……」

 

 

 儚く、寂しそうに笑った。

 何かを誤魔化すように、それでいて、何も誤魔化せていないような作り笑い。

 それでも、それが精一杯だった。

 

 

 そう、自分には。

 

 

 好きだった人がいた。

 

 

 まだ断ち切れない想いがあるから、まだストレアの言うような事は考えられない。

 そんな事は思えないし、想えない。

 失ったものが大き過ぎたから、感覚が麻痺してる。

 ただ、アキトの中では、もう彼らは掛け替えのないものへと変わりつつあった。失いたくないと、素直に言えなくとも、心の中で切実に思う。

 だから、無理はしなくて良い。自分を救おうだなんて、思わなくていい。

 

 

 ただ目の前から居なくならないで。

 

 

 傍にいて。

 

 

 それだけで、救われる気がするから。

 

 

 「アキト……」

 

 

 リズベットが、彼の名を呼ぶ。

 特に何か意味があった訳じゃなく、ただ、彼が心配で。

 やはり、アキト自身にも抱え込んでいるものがあって。それを抑えていて。

 ずっと、誰かを助け、救って。そんな事をしてしまう彼。

 なら、彼の事は誰が助けてくれるのだろう。

 

 

 アキトはこの話は終わりだと言わんばかりに、その身体を反転させ、迷宮区の奥へと足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●○●○

 

 

 上層になるに連れて狭くなるフィールドは、割と簡単にボス部屋を見つけられるようになっていた。

 構造的に考えても、そろそろボス部屋を発見出来るかもしれない。

 迷宮区の奥に足を踏み入れたアキト達は、各々がそう思った。

 この独特の雰囲気、静寂に包まれ、モンスターの気配も無い。辺りは暗闇に包まれ、空間自体が冷たく感じた。

 ボス部屋は近い、そう思えた。

 

 

 途端、ストレアがいきなりアキトに向き直った。

 

 

 「ゴメン、アキト。ちょっと用事思い出しちゃった。今日はここでお別れ」

 

 

 いきなりの一言で、緊張感が緩む。

 

 

 「……唐突ね」

 

 「探し物はいいのかよ」

 

 

 リズベットとアキトはそれぞれ思った事を口にした。

 だがストレアは軽く笑うと小さく頷いた。

 

 

 「うん。少しは前に進めたかなって思うから、今日はそれでいい」

 

 「……そうか」

 

 

 アキトはそう言ってストレアに向き直ると、ストレア自身も、アキトに詰め寄っていた。近い。

 

 

 「……さっきはゴメンね?」

 

 

 ストレアは珍しく悲しげな表情でこちらを見上げていた。

 何の謝罪か、何となく分かっていた。

 先程のパートナーの話だろう。アキトの表情や言葉から、地雷を踏んだのかもしれないと察したのだろう。

 アキトも顔に出てしまっていたかと自戒し、それでいてストレアにこんな顔をさせて申し訳なく思った。

 アキトはフッと軽く笑うと、ストレアの頭に手を置いた。

 

 

 「……別に、気にしてねえよ。一人で帰れるか?」

 

 「……うん!大丈夫だよ!」

 

 

 ストレアは頭に置かれた手を見て嬉しそうに笑う。アキトは笑顔になったストレアを見て、その手を離した。

 

 

 「……気を付けろよ」

 

 「ありがと。じゃあ、またね!」

 

 

 ストレアはそう言うと、アキトとリズベットの元を離れ、こちらに背を向けた。途端に、転移結晶の光と共に、この場から姿を消した。

 暫くアキトとリズベットの間に沈黙が生まれたが、リズベットはニヤニヤしながらアキトに近付いた。

 

 

 「ちょっと~、随分優しいじゃない」

 

 「……」

 

 

 冷やかすつもりでそう言ったリズベットだが、アキトは何も言わずにストレアがいなくなった場所を見ていた。

 何となく寂しそうで。何か、懐かしんでいるようで。

 リズベットはその顔を真面目なものへと変えた。冷やかすタイミングでは無かったと、自分を責めた。

 今回、ストレアの介入によって、色々思い出したのかもしれない。先程のパートナーの話の時のアキトの表情を、リズベットは思い出していた。

 

 

 「……行かせちゃって、良かったの?」

 

 

 一人で迷宮区を攻略するような彼女だ。

 先程言っていた用事とやらも、もしかしたら一人でやるつもりなのかもしれない。

 アキトは何も無い空間を見つめ、ポロリと、溢すように告げた。

 

 

 「……束縛なんて、出来ないだろ。まあするつもりも無いし、無駄だと思うけど」

 

 「……」

 

 「何を探してるのかも分かんねえし、やれる事なんてそう多くない」

 

 「……ふうん」

 

 「……何だよ」

 

 「何か、してあげる気はあるって言い方ね」

 

 「……ポンコツ」

 

 「また言ったわね!」

 

 

 リズベットは激怒した。

 アキトはそんな彼女のメイスを飄々と躱す。そうしてボス部屋までの鬼ごっこが開始した。

 だけど、アキトがストレアの為に何かしてあげられたらと、そう考えている事が分かって嬉しかった。

 

 

 

 

 そんなリズベットの思いなど知らずに、アキトは一人、考えていた。

 ストレアが探しているという、『世界を壊す何か』を。

 

 

(世界を……壊す何か…か……まさかな……)

 

 

 アキトは溜め息を軽く吐く。

 途端に、ストレアの言葉を思い出していた。

 

 

『アタシは、この世界を守らなくちゃいけないから』

 

 

 アキトはふと、考えていた。その『何か』を。

 ストレアが探してるものではないかもしれない。

 だけど、世界を壊すものに、アキトは心当たりがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 ゲームをクリアすれば、この世界は消えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 つまるところ、世界を壊すのは、我々プレイヤーなのではないかと思ったから。

 

 

 

 

 

 

 なら、ストレアが世界を守る為に、探しているものとは。

 

 

 

 

 一体────

 

 

 





小ネタ (本編とは無関係です)


Q : アキトの好きなタイプ。実際のところどうなの?


ユイ 「……」ソワソワ

ストレア「やっぱり、スタイルが良い女の子の方が良いよね?」

リズ 「…それ、タイプ関係ある?」

アキト 「いや、別にスタイルとかは本当に気にしないから。えと、その……好きになった人がタイプっていうか……」

シノン 「……」 (……ふうん)

シリカ 「……」(ロマンチックだなぁ…)

リーファ 「……アキト君って、やっぱりそういう事言っちゃう人なんだね……」

アキト 「……え、何この温度差」


A : 好きになった人がタイプ←(一番面白くない答え)







Q : 女性は『胸』ですか?


シリカ 「……」ムスー

アキト 「この質問絶対クラインだろ」

リズ 「アイツは本当にどうしようも無いわね…」

アキト 「……さっきも言ったけど、別に俺はスタイルで決めたりはしないよ。あんまり気にする事じゃないと思うけどな」

シリカ 「アキトさん……!」(感動)

アキト 「……まあ、女子も気にするって言うから、人並みにはあった方が良いとは思うけど……シリカ、ゴメン」

シリカ 「…今ので台無しです」

ユイ 「……アキトさんは、女性の胸部が大きい方が好きなんですか?」(不安&探究心)

アスナ 「ゆ、ユイちゃん!?」

アキト 「あ、ああいや、その……えと……好きになれば、あまり関係無いと思うけどな……。ユイちゃんも充分可愛いし」

ユイ 「そ、そうですか……えと……じゃあ、その……良かったです……」(///_///)

アキト 「……これで良い?」

アスナ「良い訳無いでしょ!? ユイちゃん顔真っ赤じゃない!」



A : 好きになれば関係無い←(これもつまらない)






Q : 好きな髪の長さと色は?



アキト 「黒髪、かな……長さはあんまり気にしないけど……女の子らしくて長いのは素敵かなーとか思うな」

シノン 「……即答ね」

アキト 「えっと……あんまり髪染めてる人好きじゃなくて……いや、この言い方は失礼かな……髪染めるのって髪を傷めるでしょ?だから、何かちょっとね……SAOなら問題無いんだろうけど」

リズ 「……何かまともね」

アスナ 「確かに……っ!? あ、アキト君……!」

アキト 「へ……?……あ!」

ユイ 「……」(///_///)←黒髪ロング



A : ユイちゃん


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