ソードアート・オンライン ──月夜の黒猫──   作:夕凪楓

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最近、適当に書いてる感じが否めない…。


Ep.12 英雄の影 アキトVSリーファ

 

 

 

 

 

 

 「おうアキト。おはようさん」

 

  「…アンタいつ寝てんだよ」

 

 

 ここに来てから、アキトは割と早起きになったと自覚していたが、エギルはその上を行くようだ。

 最初は早起きなのかと思っていたのだが、この前3時に1階に下りた時も起きていたエギル。

 現在5時半。営業するにも早すぎる時間帯だった。

 こんな時間まで起きて、エギルにどんな得があるのだろうか。

 

 

 カウンターに座ると、エギルはアキトにコーヒーを差し出した。

 アキトは思わずエギルを見ると、その色黒巨漢はドヤ顔をかましていた。

 

 

  「コーヒーだろ?」

 

  「マスターか」

 

 

 いつの間にか常連扱いになっているアキト。

 エギルのその対応の速さに驚くのを通り越して呆れていた。

 

 

  「なあに、リアルで似たような店を持っててな」

 

  「んだよ…本当にマスターじゃねぇか」

 

 

 関心して損したぜ、と言わんばかりにコーヒーを啜る。

 エギルは笑って、備品の整理をし始めた。

 その背中を、アキトは黙ったまま見つめていた。

 

 

  「…てか、リアルの話は御法度だろ」

 

  「別に店経営してるってだけなら言っても問題ないだろ。それに…お前さんになら、言ってもいいかと思ってな」

 

 「…随分と信用されてる様でビックリだよ。俺に」

 

 「自分にかよ」

 

 

 エギルは苦笑いを浮かべる。

 アキトはコーヒーを飲む。

 正直、エギルにこれといって信用に値する様な行為をした覚えは無い。

 ここへ来てからというもの、エギルとの関わりなんて、この店でコーヒーを啜るこの時間帯のみとなっている。

 自身のコーヒーを美味そうに飲んでくれるからって理由で信用されていたとしたら、それはそれで色々困る。

 

 

(バリスタかよ…)

 

 

 エギルの心がぴょんぴょんしている様子を想像し、そんな思考を一瞬で振り払う。

 今のは考えてはいけない光景だった。

 飲んだコーヒーを吐いてしまうところだった。

 言い過ぎだろうか。

 

 

 「リアルでも、アイツらに会いたいしな」

 

 「……そうか」

 

 

 エギルのその眼差しから、アキトは目を背ける。

 エギルの言うアイツらとは、きっとアスナ達の事。

 そして、生きていればキリトも含まれていた事だろう。

 

 

 随分とまあ、愛されている。

 

 

  「なら頑張って攻略しろよな」

 

  「他人事みたいに言いやがって…お前さんにもいるだろう?リアルでも会いたい人が」

 

  「ああ…」

 

 

 ──── いたよ。

 

 

 アキトはコーヒーカップを手元で遊ばせ、そう答える。

 その瞳には、そのコーヒーカップは映って無かった。

 エギルは、そんなアキトを不思議そうに見ていたが、やがてその顔を真面目なものへと変え、アキトに向き直る。

 それに気付いたアキトは、その顔を上げた。

 

 

 「そうだ…ちゃんと、礼を言おうと思ってな」

 

 「…?」

 

 「昨日、助けて貰った事だよ。借りが出来ちまったな」

 

 「ああ…」

 

 

 アキトはその一言で思い出す。

 昨日のボス戦において、エギルの死なせない様にボスの前で、攻防を繰り広げた事を。

 自分が何故そんな事をしたのか分からない。

 人って存在は、いつだって我が身大事に生きる者だと、そう思っていたから。

 ただ。

 ただアキトは────

 

 

  (キリトの友人に…死んで欲しくなかったから…)

 

 

 それを、エギルに伝えたりはしない。

 キリトの紡いだものを守りたいなどと。

 傲慢にして身勝手で。

 自分が口にするのも烏滸がましい。

 

 

 何も無かった俺が。何もかも持っていたキリトの仲間に縋ろうなどと。

 そうすれば俺もキリトの様になれるのではないかなどと。

 

 

 そうだ。

 キリトになりたいわけじゃないと。

 そう心を騙し続けても。

 結局俺は、キリトへの憧れを捨て切れないでいる。

 もしかしたら俺は、キリトの仲間を助ける事で、キリトの様になった気でいたのかもしれない。

 そう思うと実に滑稽で、あまりにも傲慢で。

 あまりにも幼稚な思考だった。

 

 

 「…感謝なんかしないでくれ…別に貸しだなんて思っちゃいない。コーヒーだってタダで飲ませてくれてるしな」

 

 「…そうだな。命の対価がコーヒー一杯分だなんて、随分な商売をしたもんだ」

 

 「…このケチ商人め。性格が知れるぞ」

 

 「褒め言葉だな」

 

 

 エギルのニヒルな笑みを見て、アキトは顔を俯かせる。

 今はこの巨漢の笑顔だって、眩しく見えた。

 

 

 

 

 「…アンタにとって、キリトってどんな奴だったんだ…?」

 

 

 口が、勝手に動いて。

 自分でも驚いた。

 エギルの感謝の言葉を遮ってまで、聞くような事じゃない。

 アキトは慌てて顔を逸らした。

 

 

 「いきなり何だよ?」

 

 「あ…いや、別に。ちょっとした気まぐれだ。答えなくてもいい」

 

 

 アキトのその反応に、エギルは不思議そうな表情をしていたが、やがてその顔を柔らかくしていった。

 

 

 「そう…だな…スゴイ奴だったよ」

 

 「……」

 

 「アイツは…ただ強いだけじゃない。人の事を思える奴で、優しい男だったよ。ソロプレイヤーなんて気取ってやがったが、アイツはアイツで周りをよく見てくれていた」

 

 「……そうか」

 

 「…お前さん、キリトにそっくりだ」

 

 「っ…何、言ってんだよ…」

 

 

 アキトは、エギルのその言葉に目を見開く。

 自分がキリトみたいだと、そう言われるとは思ってなかった。

 そんなアキトを見つつ、エギルはフッと笑みを見せる。

 

 

 アキトの攻略組に対する態度。

 それは、諦念に駆られた攻略組に発破をかける為のものに、エギルは見えていた。

 自身が周りから嫌悪の対象となる事で、彼らを躍起にさせようとしているのではないか。

 そんなアキトを見て、エギルは思い出していた。

 第一層フロアボス<Gill Fang The Cobalt Load>の討伐戦後、βテスターへの怒りを一心に背負い、ビーターの汚名を掲げたキリトを。

 理由は違えど、アキトはキリトと本質的には同じ事をしていたのではないかと。

 そう思うと、また年端のいかない少年に背負わせてしまっていた事を、エギルは申し訳なく感じてしまう。

 

 

 「お前さんのおかげで、みんな戦う事が出来た。昨日もボス戦に勝ったしな。今回の勝利は、お前さんがいたからこそのものだった」

 

 「っ…」

 

 

 そんなに真っ直ぐ言われるとは思わなかった───

 アキトは、その顔を下に向ける。

 アキトは、自身の目的の為に行動しただけ。

 だから、他人に礼を言われる筋合いは無いと思っていた。

 けれど、エギルにそう言われると、何故かこみ上げてくるものを感じた。

 

 

 「お前、強かったんだな」

 

 「…そりゃどうも」

 

 

 ── 違う。違うんだよエギル。

 

 ── 俺は、強くなんてない。単純に強がっているだけだ。

 

 

 なんて、その場では言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「── フッ!」

 

 

 未だ早朝、6時を過ぎた頃。

 アキトは外で武器を振っていた。

 しかし、振っている武器はいつものティルファングではない。

 いつの日かリズに見せた、刀身まで黒く染まった刀。

 厄ノ刀【宵闇】だった。

 

 

 経験値を稼いで強くなるシステムであるSAOではあるが、反復練習が無意味なんて事は無い。

 振っていればスキル熟練度は上がるし、発動のスピードはプレイヤーのテクニックに依存する。

 こういう早朝には、使ってない刀を振るのも悪くないと思い、アキトは一心不乱に刀を振っていた。

 

 

 「……」

 

 

 一年前から、刀は使っていなかった。

 けど、この【宵闇】は今も尚、しっかりとこの手に馴染む。

 それを実感する度に、あの時の光景が瞳に映る。

 

 

 まるで、忘れるなと言っているようで。

 

 

 

 

 「…あれ…?アキトくん…?」

 

 「…リーファ…」

 

 

 思考を振り払い、声のする方を見ると、妖精の少女リーファが眠たそうにコチラに近付いて来た。

 

 

 「…いつもこんなに朝早いんですか?」

 

 「最近はな。あと、敬語はいい」

 

 「え、あ…はい…じゃなくて、うん…」

 

 

 リーファはいきなりの事で少しアタフタしていたが、やがて落ち着いたのか雰囲気が安定してきた。

 リーファはアキトが、刀を持っている事に気付いた。

 

 

 「…こんな早くから朝練?SAOって経験値稼いでレベル上げて強くなるシステムなんだよね。反復練習なんて意味あるの?」

 

 「…この世に意味の無い事象の方が少ないと思うぞ」

 

 「へぇ…アキトくんってそういう事言っちゃう人なんだ」

 

 

 アキトはリーファから目を逸らして刀を降ろす。

 その刀身は、陽の光を反射する。

 

 

 リーファは、そんなアキトの事を見る。

 ここに来た当初、その雰囲気のせいで『お兄ちゃん』と呼んでしまったのは記憶に新しい。

 自分の兄とどことなく似ていて、それでいて何処か儚げな少年。

 よく見ればあまり兄とは似つかない部分もある。その容姿は綺麗だと言える。

 しかし彼を見ると、兄を思い出すのも事実だ。

 この世界に来て、兄の事を知っていきたいと思った。

 兄がこの世界で、どのように生きたのだろう。どんな世界だったんだろうと。

 けれど、兄がこの世界で過ごしたのと同じように、目の前の少年もこの世界で生きてきた。

 彼にとって、この世界はどう見えるのだろう。

 ふと、その口が開いた。

 

 

 「…ねぇアキトくん…あたしと試合してみない?」

 

 「…試合?デュエルか?」

 

 「うん。昔は、よくお兄ちゃんと剣道の試合をしたんだ」

 

 「…剣道」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── キリトはさ、現実で何かやってるの?──

 

 

 ── 今はやってないけど…剣道は昔に…──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…アキトくん?」

 

 「……ああ、剣道の試合ね。別にいいけど、瞬殺だぞ」

 

 

 その記憶を頭の隅に追いやり、リーファを見据える。

 その挑戦的な視線に、リーファは闘志を燃やした。

 

 

 「む…言うねアキトくん。あたしこれでも全中ベスト8なんだよ?」

 

 「関係無いな。この世界…いや、俺の前じゃ何の意味も無い」

 

 「む〜…!あたしだってSAOは初心者だけど、ALOでは一年近くやってたんだから一方的に負けるつもりなんてないからねっ」

 

 「はいはい…」

 

 

 リーファの言葉を適当に遇う。

 リーファはそのアキトの態度に顔をぷりぷりさせていた。

 すぐに目にものを見せてやる。

 そう、彼女の目が言っていた。

 

 

 リーファはウィンドウから剣を取り出し、その剣を両手で持ち、剣道の姿勢をとる。

 アキトは、【宵闇】をそのまま片手で持つ。斜め下に刀身を降ろし、斜に構える。

 

 

(デュエル…何時ぶりだろう…)

 

 

 命の重さを痛感するこのゲームにおいて、デュエルというのは思ったよりもプレッシャーがかかるもの。

 勿論、デュエルのレベルは決められるが、全損決着なんて恐ろしくて出来ない。

 ここは圏内。デュエルシステムを使用しなければダメージは与えられない。

 周りからすれば、ただ剣を振り回したチャンバラに思われても不思議ではない。

 けれど、別に構わない。

 負けを認めた方の負け。

 対人戦の経験が浅いアキトのとって、このリーファとのデュエルという事自体、何だか新鮮に感じた。

 

 

 「すー…はー…うん、準備オッケー!」

 

 「先手は譲るぜ。ALO本家で、全中ベスト8の実力、見せて貰おうか」

 

 「それじゃあ、こっちから!めぇん!」

 

 

 その構えを変えず、一気に詰め寄るリーファ。

 その突きは、アキトにあっさり躱される。

 アキトは、そのまま刀を横に薙ぐ。

 

 

 「しっ!」

 

 「っ!」

 

 

 咄嗟にしゃがんだリーファの上を、【宵闇】が通り抜ける。

 リーファはその状態から、剣をアキトに斬り上げる。

 アキトはそれをギリギリで躱し、そのまま回転しながら刀を振り抜く。

 リーファは剣を自身に引き寄せ、防御姿勢をとる。

 そして、刀と剣がぶつかった。

 

 

 「っ…凄いパワー…!」

 

 「はぁっ!」

 

 

 アキトはその鍔迫り合いを認めず、そのまま剣を振り抜いた。

 力で押し負けたリーファは、そのまま後方に飛ばされる。

 リーファはそのまま着地して、アキトと距離を取るべくバックステップをとった。

 

 

 リーファは立ち上がり、剣を再び構える。

 アキトも体制を立て直し、刀を下ろす。

 

 

(反応が早い…!)

 

 

 リーファは、全中ベスト8と自分で言うだけあって、自身の剣技には自身があった。

 それを難無く躱すアキトに、思わず舌を巻く。

 結構な速度で詰め寄ったのに、あっさりカウンターを許し。

 隙を突いた斬り上げも、紙一重で躱されてしまった。

 そして、あの筋力値。

 人を吹き飛ばす程の力がある。

 

 

 「──っ」

 

(っ…来る!!)

 

 

 リーファに考える暇を与えない。

 アキトはリーファに一気に近付くべく、ソードスキルを発動し、突進する。

 

 刀スキル単発技<辻風>

 

 その赤く輝く刀身は、一瞬でリーファの元へと辿り着く。

 リーファはその刀の軌道を反らし、アキトの背に剣を向ける。

 

 片手剣三連撃技<シャープ・ネイル>

 

 しかし、アキトはその突進のスピードを緩めず走り抜く。

 リーファのソードスキルはアキトの体を掠めるのみ。

 アキトは体を反転させ、再びリーファに向かって走り出す。

 リーファも、剣を両手で構えて走る。

 アキトの刀は、紅く輝く。その瞳はリーファを見据える。

 リーファもそれを確認し、その剣を金色に光らせる。

 

 刀スキル奥義五連撃技<散華>

 

 片手剣六連撃技<カーネージ・アライアンス>

 

 ほぼ同じ連撃数のソードスキルが、お互いの剣にぶつかり合う。

 その度に、お互いのスキルの色のエフェクトが飛び散る。

 

 

 「はあぁああぁあぁ!」

 

 「…!」

 

 

 リーファの掛け声とともに、アキトの刀が弾け飛び、真上と飛んでいく。

 連撃数の僅かに多かったリーファのスキルが、アキトの剣を斬り飛ばしたのだ。

 アキトはおかげで、現在生身。

 

 

(今!)

 

 

 リーファは剣を振り上げる。

 目掛けるは、アキトの体。

 ソードスキル後の硬直と、剣を弾き飛ばした事によるノックバックで、彼は動けない。

 

 

(貰った……っ!?)

 

 

 だと言うのに。

 彼のその顔は、不敵な笑みを浮かべている。

 その顔を、その表情を、リーファは知っている───

 

 

 昔、兄と一緒に剣道をした時。

 互いに譲らない、鍔迫り合いの最中。

 その面の間から除く兄の顔。

 その時の顔にそっくりで。

 リーファの剣速が鈍る。

 

 

 ── 瞬間。

 アキトのその拳が光り、黄色いエフェクトを纏う。

 その拳を、リーファの振り下ろす剣に向かって叩きつける。

 

 体術スキル<エンブレイザー>

 

 リーファが気付いた時には、もう遅い。

 その拳は、リーファの剣を右に吹き飛ばした。

 そして、先程リーファが吹き飛ばした厄ノ刀【宵闇】が、アキトの手元に落ちてきた。

 そして、その刀をリーファの喉元に突きつけた。

 

 

 「…降参」

 

 「…だろうな」

 

 

 アキトは刀を下ろし、ウィンドウに仕舞った。

 リーファはそんなアキトを見つめる。

 

 

 最後の、あの攻撃。

 ソードスキル後の硬直無しで、体術スキルを発動したアキト。

 SAO初心者のリーファだが、戦闘の事は一通りリズ達に教えて貰っていた。

 スキル発動後には、一定時間、動けなくなる硬直というものがある。

 それは、スキルの種類によって異なるが、直前にアキトが放ったソードスキルは刀の上位スキル。硬直はその分長い筈。

 だと言うのに。

 

 

 「…どうして、スキル硬直無しで別のスキルが…?」

 

 「ああ…左右で別々のスキルを発動させる事で、その間の硬直をカット出来るんだよ。名付けるならそうだな…スキルチェイン…スキルユニゾン…スキルコネクト…うん、<スキルコネクト>で」

 

 「て、適当…」

 

 

 リーファはそんな何でもないといった風なアキトに苦笑いを浮かべるが、やがてその視線はアキトから離れないものになっていた。

 

 

 「……」

 

 「…スゲェ悔しがると思ったんだが」

 

 「…え…あ、うん、勿論悔しいよ?悔しかったんだけど…」

 

 

 そのまま口を閉ざすリーファに首を傾げつつ、アキトは仕舞った刀と入れ替えるように、ティルファングを取り出し背中に仕舞う。

 リーファは、そんなアキトをまだ見つめていた。

 

 

 あの時、勝ちを確信したあの瞬間。

 アキトのあの表情。

 昔の、一緒に剣道をしていた頃の兄と重なって。

 今でもそれが頭から離れない。

 

 

 「…その…お兄ちゃんと試合した時の事を思い出して…」

 

 「……」

 

 

 そのリーファの表情は笑みを浮かべていたが、きっとそれは、哀しみに満ちていた。

 子どもの頃、リーファが兄と共に剣の道を進んでいた時の事。

 よく兄と試合した事を思い出す。

 あの頃は、まだ一回も兄に勝てなくて、その度に悔しくて泣いていたのを思い出す。

 さっきも、アキトが兄に重なって見えたから、負けた事を無意識に納得していたのかもしれない。

 

 

 「あの頃は、私はずっと…お兄ちゃんには勝てないんだろうなぁって思ってた。今じゃ、もやしっ子のお兄ちゃんに負けるなんて有り得ないけど…けど…」

 

 

 その表情からは、やがて笑みが消え、その腕は力無く落ちる。

 

 

 「…もう試合する事も出来ないと思うと…少し、寂しいかな」

 

 「……」

 

 

 こんな時、どう声をかけたら良いのだろう。

 そんな事、アキトが知るわけも無い。

 自分なら?自分ならどんな言葉をかけて欲しい?

 そんな事、どんな言葉も聞き入れられるわけが無い。

 

 

 リーファがここに来た理由。

 それは、自身の兄が生きたこの世界を知る事。そして、兄がこの世界でどのように思い、生きてきたのかを知る為。

 兄を見つける事すら困難だが、例え自身の兄の話が聞けたとしても、その度に兄の死を感じなければならない。

 

 

 その度に、リーファはこのような表情を浮かべるのか。

 

 

 「……」

 

 

 

 

 

 

 それでも、かける言葉は見つからなかった。

 

 

 






スキルコネクトに関して、適当感が半端ないな…

後でちゃんと説明する描写に変えるかもです。

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