東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜 作:糖分99%
なんかふざけた事しかしていない気がします(笑
紅魔館爆発とか、オルガネタとか、吸引力の変わらない桃色玉とか、TASネタとか、紅魔館爆発とか、下ネタとか(笑
まぁ、日常はかけたんじゃないでしょうか。
それでは……
いい夢は、見られましたか?
「おーおー偉大なハールトマンー、おーおー偉大なハールトマンー……」
無機質で、機能的で、近未来な部屋で、特徴的な歌詞を口ずさむ者がいた。
その部屋は完全な防音がなされており、しかも特に大きな声量で歌っているわけでもないので、部屋に響くことはなかった。
しかし、その歌声はしっかりと聞こえる。
その歌を歌う、ピンク色の髪の女性の名は、スージー。正しくは……
●○●○●
「『人間の里でスリ事件多発! 盗まれるのは柳葉道場の配布物』……か。文々。新聞もたまにはまともな記事を書くんだな」
焼きたてのビスケットを次々頬張るカービィの横で、魔理沙は新聞片手に一面記事の見出しを読み上げる。
新聞を読む魔理沙のテーブルを挟んだ向かいには、霧雨魔法店では珍しい客、メタナイトが出されたお茶を(どうやってか仮面の上から)啜っていた。
「まぁ、割と大ごとになっているようだ。柳葉氏は盗まれた者には慰めとしてお守りを渡しているそうだ」
「気前いいな。で、盗まれたのは確か……」
「小刀だ。見たところだと特に変哲はないな。遠目から見ただけだが」
「妖怪からの護身術を教える柳葉家か配布した小刀を盗る者……普通に考えれば人間が力を持つことを嫌う妖怪くらいだが……違うんだろ?」
「ああ」
メタナイトは喉を湿らすためか、茶を一気に飲み干すと、その名を口にする。
「犯人はシャドーカービィ。ディメンションミラーから生まれた影のカービィだ」
メタナイトが口にしたのは、鏡の国に残った英雄の影の名前。
そして、幻想郷にてマルクとの決戦に駆けつけた者の名前。
「うわ、いかにも悪そう……って言っても、マルクとの決戦で駆けつけてくれた灰色のカービィだろう? いいやつなんじゃないのか?」
「そうだな。ディメンションミラーは邪気の部分を増幅した影を産み落とすが、そもそも邪気の要素が皆無なカービィから生まれたシャドーカービィはせいぜいいたずらをする程度に留まっている。いたずらっ子なカービィと思ってくれればいい」
「だが今回、いたずらってレベルを超えているよな。ここまで大騒ぎしているし、そもそも犯罪だし」
「しかも、どうも永琳殿のところからあの人化薬を複数盗み出し、人としてスリを働いているらしい。だから、何か理由があるのでは、と私は考えたのだ。ポップスターの方でもシャドーカービィを探しているが、全く捕捉できていない」
「ああそうか、幻想郷に来ている間はお前たちは寝ているのか……それで、どうするんだ?」
「あいつはオリジナルであるカービィとなんらかの繋がりがある。もしかしたら接触してくるかもしれない為、留意しておいてくれ」
「わかったぜ」
「ぽよ!」
メタナイトはそれだけを伝えると、挨拶はほどほどに去って行った。
残された魔理沙は少しだけ顎に手を当て、考えるそぶりを見せる。
しかし考える時間もほんの少し。考えるよりも行動する。それがある意味魔理沙にとっての美徳であった。
「……よし、行くか! 人里!」
「うぃ!」
●○●○●
「……あら、いつのまにか茶葉切らしてる」
茶箪笥をごそごそといじり、目的のものがないことを悟った霊夢は深く息をつく。
別に茶が無くとも生きてはいける。
だが、白湯を飲むというのはあまりにも寂しい。
なにはなくともとりあえずお茶。これはある意味日本人としてのサガかもしれない。
買いに行くか。
小銭をジャラジャラと取り出し、がま口に補充して買い出しに行く。
ついでに軽く布教でもしておくか。
守矢神社の台頭はあまり快くはないものだし、ちょっとは信者を取り返さないと……
ある種の決意を抱いた霊夢はひょいと縁側から外に出て、鳥居をくぐって人里へ向かおうとする。
だが、その鳥居の影から現れた人影が、霊夢の行く先を阻んだ。
博麗霊夢の名は幻想郷に広く知れ渡っている。
当然、その強さ、妖怪に対する問答無用さもだ。
そんな彼女の前に立ちはだかるとすれば、愚か者、もしくは彼女のことを知らない、もしくはそれでも止めねばならない理由があるものだ。
そして、今霊夢の前に立ちはだかったのは、おそらく後者。
額から生えた角、薄緑の長い巻き毛、特徴的な耳、赤い服。
高麗野あうん。神社や寺を守る狛犬そのものである。
それが鳥居の下で霊夢を止めたのだ。
「どういうつもり?」
「人里に向かう気ですか?」
「そうよ。お茶を買いにね。邪魔するならまた退治するわよ」
「守護獣狛犬を退治する巫女なんて聞いたことないわね」
「だって、私は早くお茶を飲みたいの」
「いけません。今は人里に近づいてはなりません」
「……なんでよ」
「守護獣……狛犬としての嗅覚が、私に全力で警鐘を鳴らしているのです」
●○●○●
「……よし、取り敢えず今日はここまでにしておこう。この問題は書き写して明日提出するように」
『はーい』
人里にある寺子屋。
そこでは子供達が今日も勉学に励んでいた。
教鞭を振るうのは上白沢慧音。半獣半人だが、人として子供達に勉学を教えている。
稗田阿求に私が教えた方が面白い、と言われてしまうほど授業は難解で退屈と言われるものの、生徒への愛情は強く、生徒もまたそれは理解していた。
「……みんな、書き終わったな?」
『はーい』
「それじゃあ号令をかけてくれ」
「起立!」
日直の号令に合わせ、生徒たちが全員立ち上がる。
───この後は妹紅を呼んで鍋をつつくつもりだ。あの一件で軽く鍋にトラウマを持つようになったが……もう大丈夫だろう。
「姿勢、礼!」
子供達は一斉に終礼として頭を下げる。慧音も同じように頭を下げる。
───今回はいい牛肉を仕入れた。きっと妹紅は喜んでくれるだろう。
慧音は頭を上げ……
パンッ
膝の力を失い、崩れ落ちた。
何が起きたか、わからなかった。
ただ、妙に腹部が熱い。
熱した鉄棒を当てられたかのような感覚。
「───────あ」
見れば、腹部から止めどなく血が溢れていたのだ。
そして……
「ふふふ」
「クスクス」
「フフ……」
至る所から聞こえる、おかしいような、子供の笑い声。
笑っている。笑っているのだ。慧音の愛する生徒たちが。
慧音の目には、一番前の生徒の手に、金属光沢のある筒が握られているのをしかと見た。
「なん……で……」