Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」 作:必殺遊び人
結構空いてしまいました。すみません。
この時期毎年時間がないです・・・・・・。皆さんはどんな感じですかね(笑)
久しぶりに書いたので、結構ごちゃごちゃしてるかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。
ふと思ったんですが、皆さんどの話数が好きですか? この作品は実験的に書いてる感じなので教えていただけると嬉しいです
それではどうぞ!
「ここまでで結構です」
その言葉に、
「えっ? お客さん、目的地まではもう少しありますが・・・・・・」
「いえ、ここからは少し歩こうと思うので問題ありません」
「そ、そうですか。かしこまりました」
宮園はタクシーの運転手である
乗っているのは女性の客だ。
タクシーの運転手としてのキャリアも長い宮園からしてみれば、乗客が途中で道を変えることなど日常茶飯事、珍しくもない。だが。
(ちっ・・・・・・よりにもよってこんな田舎まで連れてきやがって、下りるならもっと早く言いやがれ。つぎの客捕まえるのに戻らなきゃいけないだろうが)
性格は最悪である。
それでも、長年の経験で鍛え上げられた表の仮面は、その程度のイラつきで崩れるほどやわなものではない。
「それでは、お会計をお願いしますね」
(それにしてもこいつ・・・・・・イヤな空気隠そうともしねーな・・・・・・犯罪者かなんかかよ・・・・・・?)
宮園は、早くこの女とははやめに別れよう、その一心で会計を手早く済ませた。
話は変わるが、タクシーの運転手と言う仕事はなかなかに面白い職種である。
例えば、芸能人。テレビの関係者ではないにもかかわらず、テレビに出てる有名人との遭遇率がここまで高い職業も珍しい。運転が楽しい、以外でこの職場に楽しみを見出すのならばここははずせないだろう。
さて、芸能人を含め、より多くの人種と接するという意味では他の髄を遊許さないタクシーの運転手だが、人種以外にも接することがあるのがこの仕事である。要は怪談話ではあるのだが、あながち馬鹿にできなかったりするのがこれの面白いところだ。
真に迫っているとでも言えばいいのか。タクシー関係の怪談話は妙にリアリティーがあるのだ。大袈裟ではなく、曖昧感もない。淡々とした事実であるのにも関わらず、微かににおう異物の感覚。まあ、こればっかりは体験してみなければ分からないだろう。
そして、かく言う宮園も、それを体験したことのある人物である。と言っても、ここで重要なのはそれが事実がどうかではなく、それを感じるだけの感覚を持っていたかどうかであるのだが・・・・・・。
平たく言えば、彼は人の空気と言うものを読むのにたけていた。
赤みがかった髪の毛。黒いスーツ。そして、望遠鏡ほどの白い筒が、その女性の特徴と言える特徴だった。
それにさえ目をつむれば、彼女はどこにでもいる普通の女性である。
「ちょうどお預かりします。ご利用ありがとうございました」
それでも宮園は、自身のその感覚を疑わなかった。
(何かあるんだろうな・・・・・・)
そう思いつつもそれを顔に出すことはない。触らぬ神に祟りなし。意味は微妙にずれているが彼は、こういったことに遭遇したときはどうするべきか心得ていた。
興味本位に突っ込まない。無駄な正義感を抱かない。
なぜなら怖いから。
仕方がない。宮園一朗太と言う男性は、ごくごく普通の感性を持つ一般人なのだから。
「ここが冬木市、ですか・・・・・・」
降り際に呟くその女性の声が、なぜかよく聞こえたのは気のせいに違いない。
宮園はその女性から逃げるように、アクセルを踏む右足に力を入れた。
後に彼はこう語る。
『あれは別の世界の人間だ。ほら、異世界とかそんな奴。――あ? アホか、ものの例えに決まってんだろ。まあ、なんだ・・・・・・普通の人間社会には絶対交わらない。そんな意味で言ったんだよ。――は? 精神科? 喧嘩打ってんのかてめぇ!? お、おい? なんでそんな優しい目で俺を見るんだ。うんうんって頷くな! いや、マジなんだって・・・・・・! 信じてくれよ!』
それとほぼ同時刻。
場所は龍道寺にある大空洞。
本意ではなく、作為によって通うことになった学生の恰好。学校帰りにちょっと寄り道! なんてことはなく、ある仕事のために彼女はいた。
「なによこれ」
定期的に行ってる地脈の経過観察。そこに、見たことのない異常が見て取れる。
遠坂凜は魔術師として優秀だ。
冬木の管理者能力だけでなく、今現在調査を行っているカード回収を任せれてることからもその優秀さは見て取れる。
故に、それに気づけたのは偶然ではなく、そこからさらなる可能性まで導き出したのは必然であった。
「カードはもう一枚あったっていうの・・・・・・!?」
彼女の手にある冬木の地脈を写し取る紙。そこには、地脈の流れを不自然に穿つ穴が確かにあった。
物語は新たな章へのプロローグをおえた。
****************
数時間前。
『んにゅー・・・・・・』
『どうしたの、イリヤ。怪我でもした?』
『ん? 美遊、違うよ。なんかこう走るのは得意なんだけど長距離走はなんか退屈って言うか』
『確かに、トラックの周りだけ走るのは確かに飽きるかもしれない』
『じゃあ、勝負でもっしてみる? 勝った方がお兄ちゃんを一日独占できるって契約で――』
『『やる!!』』
『そ、そう。じゃーそうねー・・・・・・よいドン!!』
『ああ!! クロせこい! って、美遊まで!? ま、まってよー!!』
『クロの思考は読んでいた。今度は負けない』
『受けて立つわ。美遊とは本気でやり合ってみたいと思ってたところなのよね!』
『ねぇ、なんか私はぶられてない? なんか二人の勝負みたいになってるけど、私がいるの忘れてない? ――無視しないで!? こっち見てよ!!』
「はぁー暢気なものね。ついこの間まで殺し合いをしてたっていうのに・・・・・・」
「今のところ、クロがおかしなことをする様子はなさそうですわね」
そこは屋上。
そして美女が二人。
それだけ聞けば、男子高校生ならその多くがその場に自分がいないことを後悔しただろう。屋上と言うある意味隔離された空間で、吊り橋効果とはいえないまでも、高さと言う恐怖があり、そもそも、屋上と言う響きが恋愛において甘美な響きを有する。
まさに、学生だけが手にすることができる恋愛スポット。と、もちろん思っているのは一部の夢見る男子だけであって、特に女子などはその限りではない。
美女二人は、片手に双眼鏡を持ちながら、小学生の体育を観察しており、盗聴器でも仕掛けているのか、音声がここまで届いてくる。
世間でいうストーカーに盗聴だった。
内情を知ってるものがいれば、彼女らの行ってることはストーカーではなく監視であり、盗聴器などではなく魔術であると分かるだろう。
「まっ、どう見繕っても犯罪すれすれだがな」
そして、学生服を着た少年が一人。
「えぇそうね。でも、私たちもクロの事をまだ把握しきれていない、の、よ・・・・・・。って!? なんで衛宮君もここにいるのよ!!」
「うわっちょっ、それは可愛すぎるだろクロ!? その笑顔は反則過ぎる!! おお! 美遊とイリヤの悔しい顔、否! ふくれっ面ももやばかわなんだが!?」
盗聴魔術による声から察するに、クロが勝負に勝って喜んでいるのだろう。
「やばいのはあなたの頭よ! てか話を聞きなさい!」
「くっ! 一眼レフでは距離が離れすぎてる・・・・・・だと・・・・・!! 俺としたことが・・・・・・! 何たる失態!」
「衛宮君そろそろ私キレるわよ?」
一眼レフを片手に、双眼鏡で自身の妹の体育姿を確認する兄。
変態である。
「あー、えーっと、いやいや待てって、知らないのか? 最近では人生を妹って読むこともあるんだ。このぐらい普通だ。それにさ俺だって心配なんだよ。ルヴィアなら分かるだろ」
士郎は双眼鏡を貸し出してくれたルヴィアにそれを返す。
「その通りですわ。私にとって美遊は妹のようなもの。いいえ、私は本当の妹だと思ってますわ。ああ! やはりわたくしとシェロは、似た者同士!! 妹のいないあなたには分からないでしょうけど? オホホホホホホ!」
(こ、この女!!)
自身で油を塗って火をつけた士郎にはこの後の展開が容易に想像できる。
「調子に乗るな! 金髪ロールが!!」
「返り討ちにして差し上げますわ、野蛮おさるさん!!」
はい、喧嘩。
どちらかが力尽きるまで終わることのない二人の喧嘩は、さらに苛烈さを増していく。士郎も最近はある程度は放置気味、魔術を使ったら止めに入る程度だ。
本来の目的も忘れ、とうとうルヴィアが宝石に手を伸ばし、士郎も流石に止めに入ろうとした瞬間。
そこへ、
「あらあらー? そこで何をやってるの三人とも?」
もはや生きる背後霊のごとく、三人に知覚されることなく近づいた人物が一人。
「いや、あんたこそ何やってるんだよ・・・・・・母さん」
「はーいあなたのお母さまのアイリさんですよー」
衛宮家最強の登場であった。
結論から言えば士郎は逃げ出した。
――曰く、いやー今日は一成から頼みごとをされててな。
――曰く、いやいや、この年でこんなはちゃっけた母さんと一緒はちょっと恥ずかしいから・・・・・・。
――曰く、ごめん、母さんに殴られた鼻血が止まらないから保健室いってくる。
そして、残された凛とルヴィアはもちろん”これ”の相手である。
「私ね、イリヤちゃんたちの様子を見に来たんだけど迷ちゃってね? ほらなんていうんだっけ授業参観?」
「あのー、お母さま・・・・・・授業参観は母親が自主的に行うものでは・・・・・・・・・・・・」
「そもそも、小学校の校舎はあちらなのだけど・・・・・・」
「じゃあ、お二人さん案内よろしくね!」
あたかも自然に誘うアイリに、二人は絶句するほかない。そしてそれは暗に、授業サボタージュの御誘いだった。
悲しきかな、いまの二人にそれを断るすべはない。
女王の気まぐれは従うほかないのだ。
彼女らは放課後まで王女様の護衛をすることになった。
****************
時刻は放課後。
「遅いですわね美遊」
ルヴィア・エーデルフェルトは、美遊に出した任務、水ようかんの帰還をまだかまだかと待ち望んでいた。
「それにしても、まだまだ問題は山積み、一体どれから片付ければいいのだか」
そんなルヴィアの傍らには、先ほど食べた水ようかんの容器が山積みだ。マイブームなのだ。
「まぁ少しづつ解決していけば問題ないでしょう。幸い、時間だけはあることですし」
魔術の事に悩みながらも
これも
「このような時間も悪くないかもしれませんね・・・・・・」
だが忘れてはいけない。
まだ何も終わってはないということを。まだ何も始まってないということを。
そして。
ゴーン、ゴーンゴーン。
新章が幕を開ける。
エーデルフェルト家に流れた鐘の音は、市内に響く五時のお知らせなどではない。
それは招かねざる客に反応する、対侵入者用警報魔術。
「ここをエーデルフェルト家と知って侵入したのでしょうか? もしそうなら・・・・・・それ相応のおもてなしが必要になりますわね」
日常を知りながらも、魔術の世界に身を染める。
あくまで魔術こそが、ルヴィア・エーデルフェルトをエーデルフェルト家たらしめる、最高のドレスなのだから。
玄関を開けた先の大広間。
すでに戦闘は行われていた。
たった一度の攻防。それを目にすれば、どちらも常人をはるかに超えた存在だと理解できる。
方や老人。しかし、執事の用スーツの上からでも見て取れる浮き出た筋肉は、その老人がただものではないことがわかる。
対するは女。腕や足、体の線は細く。スーツ姿がその華奢な体に拍車をかけていた。
ただ、この場。
その証拠に。
ズガーン!! と、女の繰り出した拳が壁に大きな穴をあける。恐らくは魔術で補強され。ある程度の衝撃ならば容易に耐えるであろうその壁をだ。
「これは警告です。無駄なことはやめて主を出しなさい。あなたでは私に勝てません」
自身の力を示したうえでの警告。
ただし、それを素直に聞き入れるのなどこの屋敷には存在しない。
直後。黒い魔術が女へと迫る。ガンド。その威力はすさまじく、使い手によって差異のでるその魔術、それをルヴィアが使用することにより「フィンの一撃」・・・・・・平たく言えば軽くマシンガン程度の威力が存在する。
とりあえず、で放つには凶悪すぎる一撃を、ルヴィアは躊躇することなく放った。
だが、”この程度”では女に傷一つつけられない。
「随分と礼儀知らずの来客の用ですね。――? ・・・・・・ッ! あなたは、なぜ今ここに!?」
予想外の相手。
「あなたと私の接点は一つ。そしてこれは命令です。カードを渡しなさい。素直に渡せばあなた方を傷つけることは致しません」
女は話の分かる人間である。条件を提示して、相手を見逃す程度には。しかし――
「なんのことだかわかりませんね。ですので・・・・・・お帰りいただいて結構ですよ。バゼット・フラガ・マクレミッツ嬢」
「ならば仕方ありません。・・・・・・力ずくで行かせてもらいます」
――上から目線の一方通行だが。
バゼットはゆっくりと足を進める。先ほどとは比にならないほどの殺気を出しながら。
「オーギュスト、行きますわよ」
バゼット・フラガ・マクレミッツの殺意を向けられる。それは自身の体に銃口が向けられているのと同義。にもかかわらずルヴィアは表情を崩さない。
「かしこまりましたお嬢様。おもてなしレベルは最高まで上げてさせていただいてもよろしいでしょうか?」
なぜなら笑うしかない。これが目の前にいるだなんて。
「それでかまいませんわ。なんて言っても。彼女は封印指定の執行者、正真正銘の――」
――化け物ですから。
扉の影に隠れながら、凜はその光景を見て思わず舌打ちをしてしまう。
(相手が悪すぎる、加勢しても勝ち目がまるでない)
バゼット・フラガ・マクレミッツ。話は聞いている。カード回収の前任者。
「
ルヴィアの宝石魔術がバゼットを襲う。
ランクこそ低いものの、その威力は強大。人間一人吹き飛ばすには十分すぎる威力を持つそれを。
「無駄です」
腕を振るう。ただそれだけ。
小さい虫を追い払う程度の動作。
バゼットには意味をなさない。
「ならば・・・・・・!」
オーギュストが、ショットガンを放つ。
「無粋な!」
そう言いながら、バゼットは初めて回避行動をとった。
三次元的に動き回るバゼットを、無数の銃弾が追いかける。
傍目から見れば、ルヴィア達がバゼットを追い詰めているように見えるだろう。
それは間違いである。
バゼットからしてみれば、今までの攻撃の中で回避、または防御が必要な攻撃など存在しない。それをおこなっているのは単に手加減のためである。
バゼットの手加減の理由は、相手を殺さないため、などと言う優しい類のものではない。では何か? ただ、考えればすぐに分かる。要は、
――ありを踏み潰すのにわざわざ戦車を持ってくる馬鹿がいますか?
そういうことだ。
超高速で、尚且つ相手を追うように追撃する宝石魔術。
四方、そして上下から、先ほどよりも威力の高い宝石がバゼットを襲う。
それでも、爆炎の中、バゼットが傷を負ってる様子は見られない。
バゼットが銃弾を回避するために砕けた廊下を盾に取る。壁と盾。僅かに密封された状態のそこへ、今までとはレベルの違う。一つの宝石が爆発する。
周囲の壁事吹き飛ばす。”今のルヴィア”が持てる最大火力”。
煙幕の中からゆっくりとそれは姿を現す。
分かっていた。あれで尚、かすり傷一つ負わせることもかなわない。
怪物。
凜はバゼットをそう認識した。それでも凜は確信する。
(隙ぐらいは作りなさいよね・・・・・・!)
突破口はあると。
ルヴィアとオーギュストの二人は廊下を走る。
向かう場所は宝物庫。目的は自身の武器の調達だった。あの化け物を何とかするにはより強力な武器が必要だ。
主を守るようにオーギュストが銃弾をばらまく。
「無駄です」
足止めにすらならない。
銃弾の雨の中を、横断歩道を渡る気軽さで突破する。バゼットにとって近代武器など、赤信号によって安全を確保されている道路と何ら変わらない。
オーギュストは敵の力量が分からないほど馬鹿ではない。むしろより鋭敏に感じることができる。
だからこそわかっていた。あれには天地がひっくり返っても敵わない。
「関係ありませんが」
その通りだ。オーギュストにとって相手との力量さなど関係ない。
主を守るためにその身を使う。オーギュストにとってそれこそが絶対。故に、挑む。
時間稼ぎにもならないと理解してなお、オーギュストはバゼットと肉薄する。
暗器によって体中に隠し持っているすべてを持ってバゼットを襲う。
それでも。
「ぐぶっ!?? がっばぁがぁ・・・・・!」
バゼットの拳がオーギュストの体をクの字におり、壁まで突き飛ばす。
空気をすべて吐き出し。肋骨が数本折れていることが確認できる。痛みの度合いから内臓が破壊されている可能性すらあった。
大砲以上の一撃。
「オーギュストッ!!!」
ルヴィアが叫ぶ。
「お嬢・・・・・・様。お行きくださいま、せ」
「っく・・・・・・!」
足を速めるルヴィアを、バゼットが追う。
それを眺めながら、オーギュストは一つの武器を手に取った。
対戦車ライフル・ボーイズMkI。
それは最後の悪あがき。
「これ・・・・・・でも、あなたを倒すには足り――ない、のでしょう・・・・・・」
当たれば人間などひき肉にできるこれをつかってなお。
「しかし、あなたの動き・・・・・・は少々固すぎ、ます。ここぞという時あなたは拳・・・・・・を使って防御を図る」
それは拳を攻撃と防御どちらも兼任しているからこそ、より強固なルーンを手袋に刻んでいるため。
「背中・・・・・・を、見せたのはしっ・・・・・・敗でしたな」
オーギュストはその引き金を引いた
ルヴィアが宝物庫で見たバゼットは、片腕から血を流した状態で姿を現した。
(オーギュスト、やはりあなたは最高ですわ)
「宝物庫・・・・・・ですか。カードをとりに来たというわけではないようですが」
宝石の輝きが天井まで覆うほどに大量の宝石部屋の奥、ルヴィアは真っすぐバゼットを見る。
「いささか拍子抜けです。あなたにはゼルレッチ卿から特殊魔術礼装が渡されているはずなのですが。使わないのですか。・・・・・・それとも”使えないのですか”?」
ルヴィアはその顔に笑みを浮かべながら。
「その前に一つ訂正させていただきますわ。ここは宝物庫ではなく私にとっての武器庫、そして魔術礼装は使わないのではなく、使う必要がない、が正解です」
瞬間。
万にも及ぶ宝石が宙へと浮く。
一つ一つが高威力をもった爆弾。
「耐えられますか?」
そして、それは一斉にバゼットへと襲い掛かる。
部屋の一部を塵へと変え、もはや部屋と呼べべなくなった瓦礫の中。
「エーデルフェルト家は誇り高い。ですが、それは私に言わせればただのおごりです」
「がっ・・・・・・っは・・・・・・」
ルヴィアは壁へと叩きつけられ、首を締めあげられていた。
すべての宝石が飛来する前。必要最低限の宝石だけを打ち落とし。発動前にルヴィアを潰す。強引すぎる作戦ともいえない作戦。だが、それを容易にこなしてしまうだけの力がバゼットにはあった。
「カードの場所をいなさい」
強すぎる。
「・・・・・・い、言えませんはね。それに」
(
ルヴィアの視線が自身の手へと移る。
そこには無数の宝石が光を放っていた。
「――!? させませっ!?」
バゼットの首筋に軽い痛みが走る。
背後を見ると、女の影が微かに見えた。
威力から察するにガンド。
言わずもがな凜の仕業である。
そして、その一瞬が隙になると判断したバゼットは、反射的にルヴィアを壁へと叩きつけた。
「くっはっ・・・・・・!! 仕方、ありませんわね・・・・・・」
飛びそうになる意識を無理やり保ちながら。ルヴィアはそれを行った。
先ほど発動し損ねたすべての宝石がその場で大きな光を放つ。
「まさか・・・・・・!」
「美しくはありませんが」
次の瞬間。屋敷を崩壊させるほどの大爆発がその場で起こった。
****************
クロとイリヤはルヴィアの家の異常を感知しそれを目撃した。
確かに聞こえてきたのは爆発音だ。
でも、これは・・・・・。
崩壊した屋敷。
ところどころ火種でもできてるのか夜の空を赤く染める。
「なに・・・・・・これ・・・・・・」
目の前の異常に、イリヤは言葉に力が入らない。
クロですら何が起きたの混乱している状態だった。
二人の目に映るのは二つ。
崩壊した屋敷、それと――
そこから歩いてくる一人の・・・・・・赤い髪の女性だった。
呼んでくださりありがとうございます!
楽しんでいただけたでしょうか?
次回もよろしくお願いします。
士郎「俺なんかキャラ違くね? シスコンすぎね?」
作者「お前オリ主だから」
クロ・美遊・イリヤ「どっちのお兄ちゃんも大好き!」
士郎「シスコンでいいや」