Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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とうとうツヴァイに入ることができました。
今まで読んでくださった方、今回が初めての方も本当にありがとうございます。
読んでくださる人がいるだけで、こちらもやる気が出てきます。


ツヴァイ編は思ったより難しく、学校の関係上、少しペースが遅るかもしれませんが、なるべく早くかきあげるように頑張りますのでよろしくお願いします。

それではどうぞ!!


14話とかとか~♪ 2wei クロ編 出会い

 

 

 

 

 数週間の時が過ぎた。

 バーサーカーを倒し、クラスカードをすべて回収してから早一か月経とうというその日に、『Fate(運命)』は再び動き出す。

 

 キッチンに立つ士郎は、すでに朝食を作り終え、それを食卓に並べていた。

 準備を終え、そろそろイリヤを起こしに行こうかな、そう考えていると、玄関のチャイムが鳴った。

 迎えに出たセラが連れてきたのは美遊、どうやらイリヤを起こしに来たようだ。

「おはよう、お兄さん」 

 士郎を見た瞬間、花のような笑顔を咲かせ挨拶してくる美遊に、士郎は思わずドキリとなる。

「おはよう美遊、イリヤを起こしに来たんだろ? ありがとう」

「いえ、お兄さんにも会いたかったので・・・・・・」

 顔を俯きながら答える美遊に、士郎もついつい頭を撫でる。

 士郎は何とか顔に出さないようにしているが、その顔は、美遊が可愛すぎて仕方がない、と書いている。

 美遊がイリヤの部屋へ向かうのを目で追っていると、背後から感じるセラの殺気に士郎は思わず肩を震わせる。

「良かったですねロリコン士郎? 可愛い妹がきてくれて」

 全く笑っていないセラの笑顔に、士郎は背中に冷や汗をかく。

「いや、セラこれには理由が・・・・・・」

 何とか弁明しようとする士郎だが、セラの威圧に言葉が続かない。

「ほぉ、理由ですか。イリヤさんのお友達に『お兄さん』と呼ばせる理由があるならぜひ聞きたいですねー。変態ロリコン士郎」

「いや、その・・・・・・」

 士郎にはすでに過去のセラから受けた出来事がフラッシュバックし、手がどことなく震えている。

(何か、何か逃げ道は・・・・・・?!)

 士郎が思考を必死に動かしていると、二階からイリヤと美遊が下りてきた。

 何が上で起きたのかは知らないがどことなく顔を赤くしている二人を見て、士郎には『いろんな意味で』二人が天使に見えたことだろう。

 イリヤ達の登校を理由に何とかセラの追求から逃げた士郎は、セラが話を振る前に、そそくさと家を後にした。

 

 

 学校を終え、士郎は久しぶりに一人での下校を行っていた。普段ならば、イリヤや美遊と一緒に帰っているのだが、一成に頼まれたエアコンやら扇風機やらの修理で遅くなってしまったのだ。

 まだ6月とは言え、日本の気温の変化は早い、今から準備するくらいがちょうど良いだろう。

 帰り道の折り返し地点付近に差し掛かろうというその時、士郎は出会った。

「初めまして、お兄ちゃん」

 イリヤと瓜二つのもう一人の『イリヤ』。イリヤとは違い肌は日焼けしたように黒く、コスプレのような赤い服を身にまとっている。

 知っていた。それが今日だったそれだけの話だ。

 士郎はずっと考えていた。まずは何を言おう、謝罪が適当だろうか? 相手は何を思っているのか。

「イリヤ・・・・・・」

 士郎から出た言葉はとても小さく消えるような声だった。それでも、その声はイリヤへと届いた。

 

 

 ****************

 

 

 黒イリヤと士郎が出会う少し前、イリヤと美遊は友人たちとの下校中『拉致』にあった。それはもう、すさまじく手際の良い誘拐だ。

 その犯人は凜とルヴィア。

 戸惑うイリヤ達へ「「仕事よ(ですわ)」」と言う二人に、イリヤ達はこの状況を理解した。

 カード回収を行ったとはいえ、イリヤと美遊は魔術の世界にかかわっていない。それにも拘わらず二人を呼んだということは、カレイドステッキが必要ということだろう。

 凜たちの話によると、今回の問題は、カード回収が終わった後にも、地脈が未だに安定していないということだそうだ。その問題を解決するために凜たちはステッキによる膨大な魔力供給が必要になるらしい・・・・・・となんとなくしかわからないイリヤには、半分以上理解できなかったが・・・・・・。

 龍穴から高圧縮魔力を注入することで地脈を拡張させて、正常化を図るのよ、と言う凜の言葉をイリヤは首をかしげながら聞いているのが、理解できていない良い証拠だろう。

 魔術協会から今回の任務を言い渡された際、本来であれば、凜達が持っているはずのステッキが、”ちょっとした手違い”でイリヤ達へステッキが渡ってしまったことを誤魔化すために、『えっえー! できますともっ、すぐにでも始めたいと思っています!』と必死に取り繕う凜は、”優雅さ”とは程遠い場所にいただろう。

 柳洞寺にあるその場所へ向かい、凜とルヴィアが『底なし沼』にはまるなどという愉快な事件を起こしながらも、イリヤ達は目的の場所へ到着した。

 士郎がその場にいれば、都合よく結界にすぐ入ったすぐそばにある『底なし沼』など、真っ先にドS保険教師こと「カレン・オルテンシア」を思い浮かべただろう。聖堂教会に属するカレンならば、結界を張っても何ら不思議ではない――その位置を、『底なし沼』のすぐ付近にすることも・・・・・・。

 イリヤ達は大空洞へと入っていき凜達による指示のもと着々と準備を行っている。と言ってもイリヤ達が行うことと言えば魔力を注ぐことぐらいなのだが・・・・・。

 木の枝のような礼装が中心に立ち、そして・・・・・・・・・・・・新たな物語の『カウントダウン』が始まった。

 凜たちが行った魔術の結論を言えば、それは何の問題もなくことを終えた。しかし起こったのはそのあと『ノックバック』現象。

 それにより思わぬ危機に落ちるイリヤ達、頭上から迫る巨大な岩――――その時、イリヤが動いた。今までよりも迷いがなく、洗練されたような動き、凛の持っていたアーチャーのカードを手に取ると、無言の『夢幻召喚(インストール)』イリヤの体は赤い服を纏った英霊へと変わり、咲き誇る巨大な花の盾によって、凜達を落石から守った。

 空洞の崩壊が止まり、それぞれ周りの状況を確認する。

 目につくような怪我はなく、誰もが安堵を覚えたその時、物語までの『カウントダウン』はゼロになる。

 最初にそれを認識してのはイリヤだった。

 鏡合わせのように座る二人のイリヤ。目の前にいるもう一人の自分の顔。

「えっ・・・・・・?」

 思わずフリーズするイリヤを尻目に、赤い恰好をしたイリヤは、その場から逃走を図ったのだった。

 

 

 ****************

 

 

 屋根を伝い、空を飛ぶ赤い少女。

 イリヤと同じ顔をしたもう一人の『イリヤ』は自分が何者で、なぜ生まれてきたかを理解していた。それは奇跡のようなもの。魔力が底をついてしまえば、すぐにでも自分は消えてしまうだろう・・・・・・と。

 そんな中、初めに向かったのは自分の兄の元だった。

 大好きな兄。それ故にまず初めに会いたかった。

 兄が魔術を使うことは知っている。なら私を封印したことも知っていたのではないだろうか? 自分は必要とされていないのだろうか? 様々な不安を胸に、生まれたばかりの『イリヤ』は士郎と出会う。

 まずは確かめてみよう、私が誰だかわかるかどうか、『イリヤ』は湧き上がる不安を押し込め口を開く。

「初めまして、お兄ちゃん」

 イリヤは思わず出そうになる緊張を押しとどめながら、士郎の言葉を待つ。

「”イリヤ”・・・・・・」

 微かに聞こえるその声を、『イリヤ』は確かに聞いた。

 嬉しかった。自分の事をちゃんと『イリヤ』と呼んでくれたことに、自分を分かってくれたことに。

「あっ・・・・・・」

 『イリヤ』はどうにか声を出そうとするが、何を言えばいいかわからない。

「とりあえず、帰らないか――俺たちの家にさ」

 『イリヤ』のそれに気づいたのか、士郎は優しそうな笑みを浮かべてそう言った。

 突然だった・・・・・・。『イリヤ』からしてみれば、士郎に会いに来たのは、衝動的ともいえる行動だ。故に、これからどうするかだなんて全く考えていなかった。

 それでも、『俺たちの家』と言った士郎の言葉に、『イリヤ』の不安と言う名の鎖はほどけていく。

 そんな『イリヤ』に士郎は踏み込む。

「ちゃんと話し合わなくちゃならないだろ――――」

 その通りだと『イリヤ』は思った、これからどうするか私はちゃんと考えなくちゃいけないだろうと。

 そこまではよかった。

 だが・・・・・・その後に紡がれた言葉は『イリヤ』の精神を大きく揺さぶった。

「――――イリヤとも分かり合わないとだろ?」

 恐らく士郎からしたらイリヤと『イリヤ』、二人の妹たちを思っての発言だったのだろう。それでも今の言葉は、『イリヤ』には許容できるものではなかった。

「ふざけないで!」

 反射的に出てきてしまった。

 悔しかった。

 今の士郎が言った”イリヤ”は私の事じゃないと、お兄ちゃんにとって”イリヤ”とは私の事じゃないんだと、そう言われたように感じたのだ。

 

 分かってたはずだ。お兄ちゃんにとっては二人とも大事な妹で、大切なのは自分一人じゃないってことぐらい。

 認めたくなかったんだ。お兄ちゃは私の事をイリヤと認めたからそう呼んだわけじゃないことぐらい。わかりたくなかった。

 だめだ。

 もう止まらない。 

 イリヤのため込んできた思いは、それが涙であるようにあふれてきた。

 

 

「ふざけないで!」

 『イリヤ』の心の叫びに、イリヤの方へ歩いていた士郎は思わず立ち止まる。

「イリヤと和解? そんなことできるわけないじゃない! イリヤは私のすべてを奪ったのに・・・・・・!」

 『イリヤ』の体は怒りなのか、それとも悲しみなのか、体が微かに震えている。それがどちらなのか、士郎には判断できなかった。 

「わかってるんでしょ?! 私がいつものイリヤじゃないだなんて! そんな簡単に言わないでよ・・・・・・! お兄ちゃんが優しいのは知ってる・・・・・・それでも、誤魔化しだなんて求めてない! いらない子ならちゃんとそう言ってよ! 私は、お兄ちゃんだったら私を・・・・・・”イリヤ”として必要としてくれると思ってたのに・・・・・・!」

「・・・・・・ッ」

「・・・・・・私はこれからイリヤを殺すわ。私は許せない・・・・・・! 私の代わりに生きてきたイリヤが。私の代わりに幸せになったイリヤが。私の代わりにお兄ちゃんといたイリヤが。なんで私のままじゃダメだったの? 聖杯として作られて、幼いころから魔術の知識を植え付けられて、お兄ちゃんは魔術の事知ってたんでしょ? ならなんで! なんで私じゃダメなのよ!!!」

 士郎は、『イリヤ』の叫びに声を出せない。

「せめて、魔術師としての生だけでも良かった。作られた通り、魔術師として生きられるならそれでよかったの。でも・・・・・・私はイリヤの中で生きてきたの。ずっと見てた。本来なら私がいいる道をイリヤが生きるのを、魔術師としてじゃなかったけど、それでも楽しそうに笑うイリヤの笑顔を・・・・・・! 私が好きになる人を好きになるイリヤの心を!」

 士郎は下を向き、拳を強く握っている。

 笑うことしかできなかった――――『イリヤ』の言葉を笑ったわけではない。自分の考えの甘さに怒りを通り越して呆れてしまったのだ。

 士郎は自分に問いかける。

 自分が出会った時には封印されていたから仕方ない? 普通の魔術が行使できないから何もできなかった? 自分の正体を隠すために真実を切嗣たちには黙るしかなかった? 自分の知識じゃより悪い方向に行くかもしれなかったから?

 

 ――――ふざけんな!! 士郎はかつてない怒りを自分に向ける。

 

 そんなのが何の理由になる。

 目の前の少女は、そんな事のためにどれだけ傷ついた? どれだけ悲しんだ? 今流している涙はなんだ? 考えるだけでも士郎の自分に対する怒りは溜まっていく。

(いや、自分を責めてる暇なんてないな・・・・・・そんなことなんの解決にもならない、だから・・・・・・)

 士郎は告白する――

「イリヤ、俺はお前の存在を知っていた」

 ――自分の罪を。

「やっぱり・・・・・・やっぱり知ってたのね、じゃあやっぱり私はいらない子だったの・・・・・・?」

 『イリヤ』は俯かない、いや、それすらできないほどに呆然としている。目からは涙がこぼれ、それは止まることはない。

「ちがu・・・・・・っ?!」

 士郎が『イリヤ』の言葉を否定する前に、士郎の下に一つの剣が飛来する。

 それは士郎の戦闘時に最も投影してであろう、白と対局をなす黒の剣。反対の白の剣はイリヤの手に握られている。

 『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』それがその剣の名前だ。『イリヤ』は存在そのものがクラスカードによって維持できている。それはクラスカードを中心に体を構成しているようなもので、そのカードに宿る英霊そのものと言ってもいい。と言っても、あくまでイリヤの魔力の一部から生まれたため、常に魔力を消費してしまう上、クラスカードに宿る英霊を認識できていないためか、あくまで魔術と戦闘技術のみ継承されている形になる。

 そのクラスカードはアーチャー。

 士郎の英霊となった姿。士郎と同じ武器、同じ魔術を使うのは当然と言えるだろう。

 イリヤの不意打ちともいえる攻撃に、士郎は驚きの目を向ける。

 そんな『イリヤ』は、先ほどとは打って変わって可愛らしい声で、それでいてとびきりの笑顔で剣を向けた。

「大丈夫よお兄ちゃん。殺したりなんかしないから、ただ・・・・・・イリヤを殺すのに手出しできないくらいはするけどね?」

 剣を向けてくる『イリヤ』に士郎は構えない。構えることすらできない。なぜなら、『イリヤ』のその雰囲気は、その笑顔は、士郎には演技以外の何物にも見えなかったからだ。

 そんなイリヤに、士郎が剣を向けられるわけもない。

「まて、イリヤ俺はお前のことを「うるさい!」――!」

 またしても、『イリヤ』の声に士郎の言葉は遮られる。

「言い訳なんて聞きたくない。私は、今私がしたいことをするだけ。それは誰にも邪魔させない、それが例えお兄ちゃんであったとしても!」

 言いたいことは言い終えた、というように士郎へ投げつけられる剣の嵐。

 流石にこのままでは不味いと思ったのか、士郎の手にも『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』が握られる。

「わー、お兄ちゃんとおそろいだ、うれしいな。やっぱりお兄ちゃんはこの英霊の力を持ってるのね。でもそれはあくまで劣化品、私の攻撃はとめられないんじゃない」

 踊るように、それでいて手を止めることなく、迷いなく言い当てる『イリヤ』。

 『イリヤ』の考えは恐らく間違っている。英霊と同じ魔術を使えるだけ、それが『イリヤ』の出した結論だろう。それは魔術師としての知識が高いゆえの勘違い。それでも、”劣化品”と言うところだけは間違っていない。

 同じ投影魔術を使うもの。しかし、アーチャーは世界を廻り多くの戦闘とより多くの剣を見てきた。それはそのまま選択肢の数へ直結する。さらには、世界と守護者として契約したアーチャーとでは、存在そのものの次元が違う。

 それでも『間違った剣の使い方』をしている『イリヤ』と、その力を完全に理解している士郎なら、互角以上に渡り合えるだろう。

 しかし、士郎の体には、少しずつ捌ききれなかった剣による傷が増えてきている。

 互角に戦えるのは、あくまでもお互いに全力での場合でだ。

 今回で言えば、『イリヤ』には士郎を殺す気はなく、士郎は『イリヤ』に剣を向けることができない。士郎の敗北は決まっているようなものだ。

 それでも士郎は、『イリヤ』と話したいと、自分の気持ちを伝えることを諦めていない。

「さすがお兄ちゃん、ここまで防ぐなんてさすがね。惚れ直しちゃいそう・・・・・・でも――」

 『イリヤ』は剣の投影をやめ、黒い弓をその手に握る。

「――もう終わりにしましょう」

 『イリヤ』が地面を蹴り、飛び上がった瞬間、すでに弓は引かれていた。

 10を超える剣が士郎へ向かってくる。

 アーチャーとは本来弓を引く者、これこそが本来の戦い方だ。飛来する剣はすべてが士郎を襲うわけではない。回避、防御、それらを計算、逆算し逃げ道を塞ぐように向かって来ている。

 剣の雨は士郎へ迫り――

 

「・・・・・・そうじゃない『イリヤ』、それじゃ俺に”剣”は届かない」

 

 ――士郎を中心にその剣は周りに突き刺さっていた。

 

「・・・・・・・・・・・・!?」

 流石にこれは予想外だったのか、『イリヤ』の顔にはなんで!? と驚愕の色がうかんでいる。

 士郎は『イリヤ』へ攻撃することはない。それでも、過去にアーチャーそのものと戦った士郎が、その攻撃を”トレースしただけのもの”を捌ききれないわけがない。

 さらに、イリヤの投影品は士郎のそれとは遥かに劣る。それを解決しない限り『イリヤ』の剣は士郎に届くことはないだろう。

 それを証明するかのように、士郎は最初の一度しか投影してないのに対し、『イリヤ』の投影した剣はヒビが入り、ものによっては壊れている。

 これ以上この戦いに意味はない、そう言うように士郎は自分の持つ『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』を消す。

 そして、『イリヤ』の方へ向かうその足は、グサリ――と、士郎の背後からなるその音によって止めらた。

 思わず驚愕する士郎は何とか後ろを振り向くと、そこには、悲しそうに顔を歪める『イリヤ』がいた。

 その手には『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』が握られており、それは士郎の背中へと刺さっている。

「ごめんねお兄ちゃん、私はそれでも復讐をやめられないの」

 士郎は意識が薄れていく中、何が起こった? と今の事態を把握できたいなかった。

 『イリヤ』はアーチャーの力を使う、その力をより知っていた士郎だからこそ、ここまで考えが及ばなかったのだろう。

 転移。アーチャーではなく『イリヤ』としての力。小聖杯としての機能を持つ『イリヤ』はそれだけで膨大な魔力を持つ。

 膝から崩れ落ち、飛び去ってゆくイリヤを士郎は見ていることしかできない。

 地面に流れる血を感じながら、そのまま意識を失った・・・・・・。

 

 

 ****************

 

 

 士郎のまぶたが動く。

 あの後、イリヤ達によって倒れているところを発見された士郎は、またしても病院の一室で目が覚めた。

 体が重い。

 もしかしたらかなり長く眠っていたのではないだろうか?

 どれくらいの時間がたったのか確認しようと近くの机に視線を移すとあるものが目に入った。

 そこには、一枚の手紙が置いてある。

 それには一言『また来るから』と簡単に書かれている。

 かすかに沈む士郎の布団を見るに、先ほどまでイリヤ達がそこにいたのだろう。

 腹にはたいそうな包帯が巻かれており、先ほど? の事が現実だったと教えてくれる。

(・・・・・・また、心配させたな・・・・・・)

 一か月も立たずに病院にもどされては、周りが心配するのも当然だ。

 本来なら、ここでゆっくり治療を受け、安静にするのが自分を心配してくれた人たちへ士郎ができることだろう。

 

 ――それでも、痛む腹を抑えながら士郎は立ち上がりる。

 

 最後に見た『イリヤ』の目には涙が流れていた。それは、今の士郎が動くには十分な理由だ。

(悪いイリヤ、あとでいくらでも怒られてやる。だから・・・・・・今だけはやるべきことをやらせてくれ)

 『イリヤ』は分かっていなかった、士郎がどういった人間なのか。これくらいであきらめるのであれば、士郎はすでに死んでいる。

 もし、衛宮士郎がこの程度だと思ってるなら、もし、この世界で自分に幸せがないと思ってるなら――

 

 ――教えてやる。 

 

 これが”衛宮士郎”だと、この世界にはまだ救いがあるということを。

 士郎は一人の少女の元へ歩き出した。

 

 士郎は向かう、大切な妹の元へと。

 

 

 

 

 




第四回? 吾輩は猫であるでは、この小説のコンセプト? について話したいと思います。

この作品では、美優、イリヤ、クロがヒロインとして存在し、セイバー・アルトリアが士郎のメインヒロインとして君臨しています。
と言ってもセイバーほとんど出てくることはないので実質妹三人がヒロインとしての認識で問題ありません。
 さて本題ですが、この作品では、基本的の最初から士郎に行為を持っている三人が、士郎に救われる、あるいは明確な落としストーリがあって”より惚れる”と言うものになっています。『いつの間にか惚れていた』、とか『最初から好感度マックス』なのではなく、士郎と一対一の攻略ルートを作っていきたいと思っています。
 そのため少しシリアスが多めになってしまうと思いますがギャグ系はツヴァイの二期に合わせて作っていこうと思っています。むしろその時には、アニメ以上に妹たちが士郎にデレデレな感じで行きたいと思っています

もちろんあくまでこう書けたらいいなと言うのであって、少し変わってくるかもしれませんが、こんな感じのコンセプトで書いていきたいと思っています
『大好きな士郎により惚れるヒロイン達、これがこの作品の衛宮士郎だ』
とこんな感じでしょうか(笑)
よくわからない方向に行きそうなので今回はこのくらいで終わりにしましょう

今回もここで読んでくださりありがとうございました!!
またよろしくお願いします!

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