Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」 作:必殺遊び人
そしてお知らせですが!!!!!
今後は、後書きで、軽い設定や裏話など書いてみたいと思っていいます
お暇な方はぜひ読んでみたください!!
質問等があればそこでも答えていこうと思ったいます。ので、質問のある方は是非お願いします!
タイトル変わりましたので今後はこちらでよろしくお願いしますm(__)m
報告できずに申し訳ありません
『俺はさ、昔、
士郎は静かに口にした。
美遊のきょとんとした表情を見て、自身で口にした言葉に苦笑する。いきなり、そんなことを言われて、すぐに理解する方が難しいだろう。
だから、士郎は語り始める。
まだこの世界で誰も、切嗣達すら・・・・・・イリヤすら知らない事実を。
話すべきではないと思った。こんな話はするべきではない。
それでも。士郎は口にする。自身の言葉を届けるために。自分がどんな人間なのか、それをしってもらうために。
「少し、昔話をしようか。・・・・・・そうだな。ならまずは定型文として」
士郎は何が面白いのか、柔らかな笑みを浮かべて。
ゆっくりと。
「昔むかしあるところに、ごくごく普通の少年がいました――」
****************
美遊は士郎の話を到底信じられなかった。
「そんな、そんなことが・・・・・・本当に・・・・・・」
初めてかもしれないだろう、美遊が士郎を疑うのは。だが、それほどの話だった。
平行世界の住人、それだけならまだわかる。なぜなら自分もそうなのだから。ある人物に憑依した、それも魔術があるこの世界ならあるかもしれない。自分という聖杯という存在すらいるのだから。だが、この世界が作り物? 創作物? そんなことあるわけがない。
そんな美遊の困惑に答える士郎。
「大丈夫だよ美遊、この世界はあくまで俺が知っていた世界と似ている世界、それだけだ。俺という異物が紛れ込んでいる時点で、それは全く別物なんだよ」
士郎は「少し余計な事まで話したか?」と愉快そうに笑っている。
それに美遊はどうしてそんな簡単に自分に起きたことを割り切れるのかわからなかった。
「どうして? お兄さんは、どうして元の世界に帰ろうとしないの?」
わからない、なんでそんなに元の世界をあきらめられるのか、美遊はそれが一番わからなかった。美遊には元の世界に大切な人がいる。美遊をこの世界に送った張本人であり、美遊のために並行世界の移動すら願ってくれるほど、美遊を愛していた美遊の兄。
あくまで兄弟としてだが、美遊もそれにこたえるように自分の兄を愛していた。
「どうして、か・・・・・・。その答えはさっき言ったことが理由かな」
「主人公・・・・・・?」
美遊は思い出すようにその言葉を口にした。
「そう、この世界にきて憑依したのは本来ならこの世界を救う人間で、物語の中心にいる人物で、主人公だったんだ」
――最初は歓喜した、その代わり絶望も早かった。
「子供のころから人一倍、そんな主人公に憧れてた。・・・・・・でも、俺はとても弱い人間だったんだ。誰かのために戦うことなんてできない、そもそも戦いなんてしたくない。俺は一人で戦えるほど心が、強くなかったんだ」
――そう、選択肢がなかった、士郎は主人公にはなれるような人間ではなかった。
「でも、この世界にきて可能性ができた。憧れになれる可能性が・・・・・・」
――それでも、僅かな可能性を求めて行動していた。
「『幻想殺しを宿す少年』上条当麻のように泣いてる女の子を助けるために理由を求めず拳を握れて、『学園都市第一位』一方通行のように自分の過去に後悔しながらも光を目指し、『おっぱドラゴン』兵藤一誠のようにハーレムを目指す変態でも女の子を不幸から救い出す、『奉仕部員』比企ヶ谷八幡みたいに自分を犠牲にしながらも誰かを救い本物を願う、『黒の剣士』桐ケ谷和人、キリトのように好きな女の子のために剣を振れて英雄と呼ばれ、『都市伝説にまでなったゲーマー』
士郎の世界を知らない美遊には彼らがどんな主人公なのかはわからない。だけど、彼らを語る士郎の顔がとても誇らしそうに語るのを見て、士郎が何になりたかったのか、少しだけわかるような気がした。
だが、その顔は「だけど・・・・・・」とその言葉の続きを話そうとすると同時に崩れさった。
結局は作り物。
――主人公なんて言うものは、本物の物語にしか存在しない。
「だけど・・・・・・そんなことはなかった。元が弱い俺には選択肢がなかったんだ。それでも、そんな俺でも誰かを救うことができた、アルトリアはこんな自分に救われたと、そんな俺を好きになったと言ってくれた」
――主人公ではなかったが、それでも何かを見つけられた。
士郎の言葉に力がこもる。
けれど。
「この世界に来たとき、俺はまた間違えた。誰の人生を犠牲にして生きている自分は、何か大きい目的が必要だと思っていた。だけどそれは違ったんだ、俺は俺の生きたいように、自分の心を信じて生きるだけで良かったんだ――」
士郎はそこまで言うと美遊の方を向き直り、その瞳を真っすぐ見つめる。
「――そして、それに気づかせてくれたのは美遊だ」
「……えっ?」
美遊は驚い驚きながら士郎の目を見つめ返す。
「俺は美遊に泣いてほしくない、辛そうにしてほしくない、そう思った。そして気づいたんだ。この気持ちが俺にとって本物だった、てな」
本物なんてたいそうなものではない。
ただ純粋に。
どこまでも当たり前に。
士郎はそう言って美遊の頭を優しくくなでる。そして――。
「美遊、お前の今日した気持ちは本物か?」
美遊は唐突に言われたその言葉に答えられない。
「美遊は、イリヤを戦いから遠ざけるために、言ったのかもしれない。それでもお前はそのことを自分に誇れるのか?」
美遊は再度聞かれたその質問に、今度は答えることができた。
「イリヤは私に友達って言ってくれた。初めてだった、私に友達と言ってくれたのは。だから、戦わせたくない。イリヤも戦いたくないって思ってる」
素直に嬉しい。
美遊が祖俺ほどまでにイリヤの事を考えてくれていることに。
だが。
士郎は悲しそうに顔をゆがめる。
「だから、自分がイリヤの代わりに戦うのか? 自分が嫌われるかもしれないことを言ってでも」
「私にはあれしかできなかった・・・・・・」
美遊は辛そうにそう答え、それを士郎は肯定する。
「そうかもしれない、イリヤはもう戦いたいとは思っていないかもしれない。イリヤに罪悪感を抱かせないようにするにはあれしかなかったかもしれない・・・・・・」
士郎はそこまで言い終えると。
「・・・・・・でも、それは間違っている」
最後にそう付け加えた。
「なんで・・・・・・なんで! お兄さんだってそれしかないって、イリヤを助けるにはあれしかないって、そういったじゃないですか! それが正解じゃないって、どうしてっ・・・・・・」
美遊は士郎にはじめて声を上げる。
そんな美遊に士郎は優しく答えを出す。
「どうして、か・・・・・・そんなの簡単だ。その方法じゃ美遊が救われないし、そしてイリヤも救われない」
「・・・・・・ッ!」
士郎の言葉に、美遊は言葉が出なかった。
「美遊、誰かを救うために自分を犠牲にするのは間違ってる。誰かを救って、それで自分が不幸になったらダメなんだよ。美遊のしたことは『正義の味方』かもしれない、一人の少女を救おうとする正義だ。けどな、その行為に自分自身も救われなくちゃ、俺はそれを正義とは呼べない」
美優には士郎が何を言いたいのかわからない。
「つまりさ。美遊のそんな苦しそうな姿をみて、イリヤは助かったって喜べるのか?」
「あっ」と美遊は何かに気付いたように声を出した。
「美遊は知ってるんだろ。自分を犠牲にして助けられる苦しみが。自分のために誰かが傷ついて、でも自分には何もできなくて、どうしようもできないって痛みを知ってるんだろ。・・・・・・焦ったはずだ。辛かったはずだ。苦しかったはずだ。痛かったはずだ。震えたはずだ。怖かったはずだ。叫んだはずだ。涙が出たはずだ。――――だったら、それはダメだろ。そんな重たい衝撃は、誰かに背負わせたらいけない」
その通りだと思った。
思い出されるのは、自分を助けるために戦った兄の姿だ。
(自分のために戦ってくれた兄を見ているのは確かにつらかった・・・・・・けど・・・・・・!)
だからこそ、美遊はそれを間違ってるとは言えなかった。確かに士郎の言っていることは正しい誰もが求める理想だ。でもそれは理想でしかない。
そのことを美遊は士郎に言う。
「かもしれないな・・・・・・でも、それは一人なら、の話だ。誰かを犠牲にしなくちゃ誰も救えないなんて、なんでも一人でやろうとするやつのセリフだ。誰も犠牲にしない方法なんて簡単だ、周りに頼る、それだけでいいんだ」
士郎は美遊の目を真っすぐ見る。
「美遊、最初に俺が言っただろ、お前はもう一人じゃないって。周りを見ろ、手を伸ばせ、今のお前にはそれをとってくれる人たちがいるはずだ」
笑顔を浮かべて「もちろん俺もな」と、士郎は付け足す。
「主人公はさ、必ずしもその世界で一番強いわけじゃないんだ。だけど世界を救っちまう主人公もいる。それはな、周りに仲間がいたからなんだよ。主人公は強いさ、一人で戦ってそれで解決できる。でも、一人で勝てない何かがあったとしたら、それを助けてくれる奴らがいた。そしてなっいくんだ『
士郎が夢見た存在、一人でも戦える心があって、それでいて仲間がいて、そして最後にはすべての人間を笑顔にする。そんなヒーローに。
「別に主人公を目指すべきだとは思わない、あれはあくまでフィクションの話だからな。けどここは現実だ、都合よく助けてくれる奴なんていないかもしれない、理不尽なんて死ぬほど起きる。だからこそ、俺たちは手を伸ばすべきなんだ。・・・・・・人は一人じゃ戦えない」
美遊は、思い返せば士郎が一人で戦ったのを見ていない。時には美遊やイリヤに手伝ってもらい、時には赤い服の、白髪の男と共に戦っていた。
それだけじゃない、過去の聖杯戦争ではセイバー、アルトリアと共に戦った。
「それに・・・・・・お前の友達は・・・・・・イリヤは、自分のために友達が犠牲になっても幸せになれるような人間なのか? ”なめるなよ”、イリヤは必ず戻ってくる。今度はお前を救うために。だから美遊、お前はその時、イリヤに力を貸してやってくれ。イリヤも一人じゃダメだ。けど二人なら、お前たちは大丈夫だ」
士郎は言い切った。
それでも。
美遊は本当にイリヤが戻ってくるとは思えなかった。イリヤが臆病だと言ってるのではない。イリヤに対して酷いことを言ってしまった自分のために、戻ってくると思っていないだけだ。
その表情に、「まだわかんなくていいさ」と、笑いながら美遊の頭をなでる士郎。
美遊は恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、それに身をゆだねている。
そして思わず口にする「お兄さんは、私のヒーローです」と。
無意識に出たと思われるその言葉に、士郎は驚いて手を止める。
それに。
「そうか、ありがとう」と、静かに口にした。
今だからこそもわかる。なぜ切嗣が自分を助けたときに自分が救われたような、うれしそうな顔をしたのか。だって仕方ないじゃないか・・・・・・自分も同じように救われたのだから。
そして、その余韻に浸るように、士郎は美遊との時間を楽しむのだった。
翌日、イリヤは学校から帰ってくると「はぁぁー」と盛大な溜息を吐きながら布団に倒れこんだ。
枕に顔を押し付けながら、今日の学校での出来事を思い出す。結局、美遊と話すことはできなかった。
美遊と顔を合わせるたびにイリヤは思い出す。自分が何をしたのかを。周りの友達にも心配をかけ、このままではだめだろうとイリヤは思う。それでも自分がどうするべきかわからない。
そんなイリヤの心とは裏腹にリビングから、イリヤの部屋にも騒がしい声が響いてくる。
『どうして! どうして姉妹でこうも違うんですか!』
『セラ痛い。胸が小さいからって殴るのはNG-』
『セラ、今日の料理は胸に栄養がつくのにするから、そんなに怒るなよ』
『士郎、帰ってきたと思ったら、いきなりケンカを売るとはいい度胸ですね』
『喧嘩なんか売ってないさ、俺は今のセラがなんか不憫d・・・・・・くっ急に涙が』
『いいでしょう、ならば戦争です。私に喧嘩を売ったことを、骨の髄まで後悔させてあげます!!』
『はは、冗談だよセラ・・・・・・セラ? ご、ごめん俺が悪かった! 待って! それ料理に使う道具だから! せめて素手で、まっt・・・・・・ぎゃぁぁあああああーー!!』
『シロー、グッドラック』
『リズ、たすk・・・・・・ごふっ』
(・・・・・・・・・・・・なんかとんでもないことが起きてる気がする!)
イリヤは下で起きているただならぬ事態に冷や汗を流していると、ルビーが愉快そうに話しかける。
「いやーこれが日常って感じですかねー」
「うん、これは違うと思う」
言葉に出してはいるが、イリヤのツッコミも気持ちが入っていない。
「さぁて、それではイリヤさん、そろそろ凜さんに連絡を取りましょうか!」
何やら気を取り直したように言うルビーに、イリヤは体を軽く震わせる。
「どうして・・・・・・?」
「これからのことを話すためですよー。大丈夫ですよイリヤさん、今イリヤさんがどんな気持ちか私にはわかります。イリヤさんはその気持ちを素直に凜さんに言ってやればいいんですよ!」
「それでいいのかな・・・・・・」
イリヤの不安にルビーは迷わず肯定する。
「いいに決まってますよ。それじゃー早速、イリヤさんの気持ちをぶっちゃけに行きましょう!」
その後、イリヤは凜に、辞表と書いた紙を出しに行き、自分がこれ以上戦いたくないことを伝えた。
凜はそれをすんなり受け入れ、イリヤの気持ちを優先してくれた。
『私はもう戦うのはいやです。これ以上カード回収のお手伝いはできません』
『怖かった? 別に恥ずかしい事じゃないわ、あんなの、誰にでも怖い事なんだから』
『うんっ』
『じゃっカード回収の件はこれでおしまいね―――』
『――――というわけで今までお疲れ様、イリヤ。この関係は今日でおしまいよ。もうあなたは私に従わなくてもいい、戦わなくていい。今までのことは忘れなさい。今までどうもありがとう。あなたは、あなたの日常に戻りなさい』
――――――胸が痛かった。
凜は優しくイリヤの重荷を解いてくれた。それでも、これでもうイリヤとは他人だと、そう言っているような気がして、なぜかとても苦しいく辛い。
「ふぅー、やっぱりお風呂は落ち着く・・・・・・ね」
窓から空を見ると、黒い空に星が微かに光っている。
「・・・・・・もう・・・・・・夜だね」
「・・・・・・夜ですねー」
イリヤの言葉にルビーも返す。
「久しぶりの何もない夜・・・・・・」
士郎は何も言わずに家を出て行くのを、イリヤは自分の部屋の窓から見ているだけしかできなかった。
ぼーっと天井を見ていると、ルビーが不思議そうな声を上げる。
「イリヤさーん、どうかしたんですかー」
「えっ、いやーゆっくり入れるお風呂っていいなーって」
苦笑いを浮かべながら答えるイリヤ、もう怖い思いなんてしなくてもいい。だけどそれが複雑なのだ。本当にこれでいいのだろうかと。
これは俗にいう、フラグというものだったのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのフラグは、風呂場に入ってきた一人の声によりそれは見事に回収された。
「イリヤちゃーん、おっひさー」
突然開いた扉から現れたのは、イリヤの母親、アイリスフィール・フォン・アインツベルンだ。
「奥様せめて服を脱いでください!」
そう、慌てふためくセラを連れてきながら。
セラに言われて服を脱ぎ、湯船へと入ったアイリは、イリヤを抱くようにして浸かっている。
「どうして、一緒に!?」
息をするように自然に入ってきたアイリに、イリヤはどうしてこうなったと、軽く頭を抱えている。
「うーん、だってー、長旅で疲れたし、イリヤちゃんの成長も確認しないとでしょ? どことは言わないけどー」
「まってママ! もう答え言ってる! 手が動いてるから! そしておそらくわざとだろうけど、比較させるように押し付けられてるから!」
一人で入るときは余裕があるとはいえ、二人で入ると湯船は予想以上に狭い。そんな場所に逃げ場などなく、イリヤはされるがままだ。
その後も、アイリがルビーに気付き、ルビーを隠すために長時間水中に押し付けたりと、騒がしくも楽しい”日常”をおくるイリヤ。
唐突にアイリがイリヤに質問しする。
「ねぇーイリヤちゃん、何か最近変わったことなかった?」
「変わったこと?」
急に聞いてきたそれにイリヤは素直に疑問の声を上げる。
「そう、なにかとーっても”大きな”こ・と・が」
なにか含みがあるような言い方に、イリヤは思わず黙ってしまう。
「実はね、さっき外で士郎と会ったのよ。そしたらね、イリヤちゃん何か悩んでるから頼むって言われたの。士郎も不器用よねー、多分踏み込みすぎて嫌われたくないのよ。イリヤちゃん愛されてるわね」
その言葉にイリヤは顔を赤くし、同時に安心していた。
(お兄ちゃん・・・・・・よかった、嫌われたわけじゃなかったんだ)
何も言わなかった士郎に、イリヤはもしかしたら嫌われたのではないかと思っていたのだ。
「話せることだけでいいのよ、何かあるなら話してみなさい」
優しく声をかけるアイリに、イリヤは少しずつ話し始めた。最近できた新しい友達のことを。
イリヤは美遊のことを話し終えると、思いのほか自分が興奮してるのに気付く。
「――――すごいわねその子、美遊ちゃん? 何でもできる子なのね」
イリヤはうれしそうに肯定する。
「うん、美遊は一人でなんでもできるんだよ。私が美遊と二人でやることから逃げても、一人でできちゃうんだ・・・・・・。最初からそうだった。私なんかいなくても、一人でできた。本当にすごい、すごいんだ・・・・・・」
だんだん興奮が覚めたようにイリヤの声は落ちていく。
「そろそろ出ましょうか、のぼせちゃうもんね」
そんなイリヤにアイリは、そう告げた。
場所は変わり、寝室。イリヤの髪をとかしながら、アイリは先ほどの話を持ち出した。
「本当は心配なんじゃないの? それなら手伝ってあげればいいのよ」
アイリの言葉にイリヤは肯定することができなかった。
「そんなの無理だよ」
「どうして? 言いたくないなら無理には聞かないけど、教えてくれるとママはうれしいかな」
イリヤは顔を下に落とし、振り絞るように自分の罪を告白する。
「私、失敗しちゃったんだ。私も頑張ってた、作戦を考えたり、特訓したり、でもうまくいかなかった。周りに迷惑かけて、そこから逃げ出しちゃって・・・・・・怖いの、周りに迷惑をかけちゃうのが、いやなんだよ、私のせいで取り返しのつかないことになるかもしれないことが」
戦うのももちろん怖い。でも、それ以上に、自分のせいで周りが傷ついてしまうのが、イリヤには怖かった。
「そうね、確かにそれは怖いわね。でもね、怖いのはきっと美遊ちゃんも同じだと思うな、ママは」
「えっでも美遊はそんなこと一言も・・・・・・」
そんなこと考えたこともなかった。それならなんで美遊はなんで戦えるのか、イリヤにはわからない。
「美遊ちゃんってあまり自分のことは話さない子なんじゃないかしら、そして優しい子。イリヤの怖い事を、全部背負ってくれてるんだから」
アイリの考えに、イリヤは動揺を隠せない。それでも、イリヤはそこから動けなかった。
「で、でも、あたし・・・・・・! 怖いよ。今度こそ誰かを傷つけたりなんかしたら!」
「士郎がね、イリヤちゃんにこれだけ伝えてって言ってたわ、『俺はお前を信じてる』ってね。最初は何のことかわからなかったけど、そういうことよね。・・・・・・イリヤちゃん、あなたは誰かを傷つけたりしない、私”も”保証してあげる。だから、自分を助けてくれた美遊ちゃんを、今度はあなたが助けに行ってあげなさい。あなたならできるわ、きっとね」
アイリの言葉にイリヤは顔を上げる。見つけたのだ、自分がやるべきことを、気づけたのだ、今すべきことを。
「ママ、私、ちょっと行ってくる!」
「うん、いってらっしゃい」
イリヤは飛び出すように部屋を出たいき、アイリはそれを微笑みながら見送っていた。
「イリヤさんこんな時間にどこへ・・・・・・?」
「いってきます!」
振り返えらずにイリヤは進む。
美遊のため、イリヤは勇気を振り絞る。イリヤの背中を見つめるアイリには、その背中が自分が愛する、
「いってらっしゃい」
イリヤには聞こえないその声で、アイリは自分の娘を送るのだった。
今回もありがとうございました。
今回は第一回ということで、なぜ『セイバールートなのにFate/stay night UBWで書いたのか』を話していきたいと思います。
最初からセイバーをヒロインにしたくて書いたのですが、自分がセイバールートを見たことがない! と気づき無理やり知っている話を組み込もうと思ったのが始まりでした。「てへっ」・・・・・・ですが少しして、セイバールートアニメの方見てみると士郎があまり強化されないことに気付き、この世界で活躍するのと矛盾する! と思ったため、士郎の活躍があるUBWで正解だった( ̄▽ ̄)
という感じで、このような設定に落ち着きました。
セイバーをヒロインにした理由は、・・・・・・まぁ察してくれると嬉しいです。妄想は小説内で書き込んじゃったしね!
さて、今回はこの程度ですが、次回は少し踏み込んだ事も書こうと思います
次回もよろしくです! ありがとうございました!