私はこの世界にヤドリギを植える   作:まざまざ

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「ねぇセンリツ」
「何でしょうかお嬢様?」
「センリツが少し周りがうるさい中で聞こえる相手の心音の距離ってどの位?」


交渉と決断、そして償い

 9月6日サザンピースオークション会場前、そこに続々と様々な高級車が停まり、中から名だたる富豪達がスーツやドレスを着飾って現れる。

彼等の目的は勿論オークションで目当てのレアアイテムを競り落とす事だが、もう2つ重要な事をするために出来るだけ代理等を立てずにわざわざ来たのだ。

 

 それはコネクションを作る事と、同じ価値観を持つ者達とコレクションを自慢し合う事。

 

 この世界最高峰のオークションというブランドの名の下に集う者達は、皆篩いに掛けられた人間でここにいるという時点で一定以上の金を持っている事を意味する。

 

 その額1200万ジェニー、この大金を持っていて尚且つ支払える能力があるのが最低ラインだ。

 

 前世知識では到底そんな大金を所有しておらず、数十倍あったとしても支払わなかったであろうそんなネオンは、能力のおかげでノストラードとしての括りではなく、ネオン個人として世界長者番付に入れるほどの財力を得たのでそのラインを超える事が出来、今ダルツォルネのエスコートを受け高級車から降りる。

ネオンの後に続くのはヴェーゼ、センリツ、クラピカだ。今回はサザンピースに入ったことが無く、新人に経験を積ませる目的と戦闘能力は全く必要ないので駆け引きが得意な者達を選抜した。

 

だがネオンには、内密にダルツォルネが万が一の事を考えて部隊に隠れて護衛するよう話を持ちかけ、それを了承して予め2組10名がノストラードの名を介さず会場に潜入していた。

彼等は占いによって会場は安全だと分かっていたが、念能力によるジャイアントキリングを見聞きしているのと、ビスケの教えもあったので油断も慢心も無く『それ』は全て終った後ですればいいと彼等は考えていた。

 

 

 

 

 211番の札を受け取ったネオン達が会場に入り、廊下を歩いているとクラピカを呼び止める幼く元気がある少年の声が響く。

 

「ゴン!? キルアにレオリオまで……、どうしてここに……いや、今私は仕事中なので後にしてもらえないだろうか?」

 

 クラピカは昨日ゴン達と会っていたが、オークションに参加する事は聞いていなかったのでこの場にいる事に驚き、理由を尋ねようとしたが今は任務中であり公私混同は出来ない性格なのと、ネオンからの信頼を獲得したいクラピカは声のトーンを少し落として返答した。

 

 ゴンはこのまま話し掛けるのはまずいと感じて「クラピカごめん、後でね」と謝罪をして立ち去ろうとするがネオンが呼び止める。

 

「ねぇねぇ、君達がクラピカとハンター試験で知り合った友達?」

「あんたは?」

「私はネオン、ネオン=ノストラード。クラピカや後ろの3人の雇い主だよ、宜しく」

 

 キルアがネオンに対してあんた呼ばわりしてダルツォルネは眉をひそめ、クラピカも「おい」と言ってキルアを咎めるが当のキルアはどこ吹く風で自己紹介をする。

 

「俺はキルア」

「初めまして、俺ゴンです」

「レオリオだ、宜しくな」

 

 ネオンは「……そっか、そうだったんだ。宜しく」と納得したように微笑んで言い、ゴン達の後ろで輪に入りにくそうにしているゼパイルを見て「そっちの男の人も仲間なの?」と声を掛ける。ゼパイルは少し緊張した面持ちでネオンに礼をして自己紹介を始める。

 

「わっ、私はゼパイルと申します。職業は鑑定士をやっています、以後お見知りおき下さい……」

「ゼパイルさん宜しくね。へぇー、鑑定士やってるんだー。それじゃあもしかして修繕とかも出来ちゃう? 出来るなら私の所に来て欲しいんだけれど」

 

 ネオンはここぞとばかりにゼパイルを勧誘しようとするが、ダルツォルネは「お嬢様、またそのような事を」と言いネオンを諫めようとするが、ネオンは「良いじゃん、良いじゃん」と悪びれる様子はない。

 

「私は人の縁を大事にしたい、クラピカの仲間が選んだ人選なんだから信用出来ると思ってる。だからここで知り合ったのも何かの縁だから親しくしたいんだよね。キルア君やゴン君、レオリオさんも含めてね」

 

 ネオンは右目を軽く押さえ「ちょっとトイレに行ってくる」と場を外しトイレへ向かう。ダルツォルネは軽く溜息をつき「その気があるのならここに連絡をするといい」と言いゼパイルに『表の世界用』の名刺を渡して女子トイレの側にあるイスに腰を下ろす。

そして右手が義手の金色の目をしたスーツの女がダルツォルネとアイコンタクトをしてネオンの後を追うように女子トイレに入っていく。

 

名刺を受け取ったゼパイルは小さくガッツポーズをして「これで俺は一生安泰だぜ」と呟く。

そんなゼパイルにレオリオは近づき小声で「そんなに凄ぇのか?」と尋ねるとゼパイルの目が驚きで開かれる。

 

「あのなぁ、ノストラード商会って言やぁ名前は世に出していないが世界有数の企業の親会社だぜ。そんな所から勧誘されているんだ、安泰も安泰だぜ。修繕士は普通なら月収20万、文化財に指定されてるもんを修復する腕があっても年を重ねても全然給料が上がらないんだが、ココはお国やそこらの企業達と違って職人を大事にしてくれている。

ダチが商会で働いているんだが月50は行っていて、しかも有名所を修復すればその度に報奨金が数百、物によっては1千万は貰ってるって言ってたぜ。

さらに言えばノストラード氏の娘さんって言えば個人で1兆は持ってるって噂だぜ」

「何!? 1兆だとー!!?」

「声がでかいぞ、レオリオ……」

レオリオの驚いた大声をクラピカが注意し、その上周囲の目が集中したので、レオリオは気まずそうに頭を掻きながら周囲に「ど、どうもすみません」と会釈をする。

周囲はすぐに興味を無くしたように視線を外すが、内心では少し感謝をしていた。中々表に出てこなくて顔もわからなかったノストラードの娘が誰か教えてくれたのだから。

 

オークションが終れば彼等はネオンと接触し、彼女を通じて何としてもライトとコネを持ちたがる。そうなればまたノストラード商会は知名度を上げ、マフィアとしても権力を有していくだろう。

 

 そんな彼等を見たダルツォルネは右ポケットに入れている紙を触り、占い通りに事が進んでいるのがおかしくてたまらなく、口角を上げずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 トイレの扉を後ろ手で閉めたネオンは、涙のように少しずつ流れる血を零さないように洗面台に近づき、顔を下に向けてから蛇口を捻りゆっくりと右目を押さえていた手をどける。水に流れていく自分の血を見ながら「余裕無かったんだな、すぐに気づかないなんて」と呟く。

 

そうネオンはゴン達が自己紹介をしてすぐには主人公達だとは気づかなかった……、クラピカが面接に受けに来た時は余裕がまだあって瞬時に気づく事が出来た。

だがヨークシン入りしてからはゴン達の事は完全に頭から離れ、クラピカの事も『主人公達』ではなく新人の自分の部下であり大切な仲間の1人だと思って行動していた。

 

 ネオンは旅団襲撃日時のセメタリービルに居る間こう思っていた、『ここまでやってクロロが扉を開けて入ってくれば潔く能力を盗られよう』と、そしてもし盗られたならばグリードアイランドを落札し、クリアを見届けた後は自身の総資産を部隊や組員全員に平等に分配して、これ以上自分の能力は使わせないよう、利用されないよう速やかに自殺をすると。

 

 だから笑ったのだ。この世界中に、元の世界に他人の物を殺してでも盗むような奴は報われる事は絶対無いのだと、己が声が届けと言わんばかりに嗤ったのだ。今まで余裕のように見せていたのは双子や部隊達に知られないためのただの強がりだったのだ。

 

 ネオンが濡れたハンカチで右目を拭っていると、扉から攻勢部隊の1人が入って来る。ネオンは誰が入ってきたかを確認し「あ」と声を上げてハンカチを落としてしまうが金目の義手の女、ヒルデが5m程離れていたのにも関わらずネオンの手から離れる前にハンカチを取り優しく「大丈夫なのか?」と声を掛けネオンは「うん」と返事をする。

 

ヒルデからハンカチを受け取ったネオンは両手でヒルデの義手の手を取り泣きそうな顔で言う。

 

「もうすぐだよ、もうすぐで皆を本当の意味で助ける事が出来る……、それまで待っていて」

 

 そんなネオンをヒルデはキョトンとした表情で見て、これから自分達をどうしたいのかを思い至り、「ハッ」と呆れたように声を上げる。

 

「おいおいネオン。オレ達はお前に十分に助けてもらったし、力と知恵も貰った。仲間も得たし家族も出来た。これ以上貰ったら何返せばいいんだ?」

「でも私はそれで満足出来てないんだよね。皆を引き取ったなら最後まで助けないとね」

「呆れた、それはただの我儘だな」

「自覚してる」

 

 ネオンとヒルデは同時にクスッと意味がお互い違うが笑い合い、「じゃあ行こっか」とヒルデの左手を繋いで扉から出る。

彼女の目的はただ1つ、このためだけに父親にも協力をお願いしてすぐに動かせられるお金を6000億までにしていたのだ。

全てをつぎ込んでも最低でも3つは落札してやるという決意の元、会場入りする。

 

そして今、オークションが開催される──

 

 

 

 

 

 

 

 ヒルデは見回りに行くと言って別れた後、ネオンは折角だからとゴン達の隣へと座ろうとするが、ダルツォルネは「クラピカは信用しているがまだこの者達を信用したわけではありません」と言って間に座る。そして反対側にはすぐに相手の心情を知れるようセンリツが座った。

 

その場所は中央よりやや右奥、バッテラから5m程離れた場所だった。

 

オークションが始まってから何の動きも見せないネオンにゴンは「ネオンさんは何を狙っているの?」と興味津々で聞くが、ネオンは意地悪く笑って「内緒」と言いゴンを拗ねさせる。

その時オークショニアからネオンの狙いであるグリードアイランドの紹介が入り、ゴン達とネオンは緊張した面持ちで正面を向く。

 

「──では、グリードアイランド9億ジェニーからお願いします!」

 

 瞬間会場全体に歓声が響き渡り10億、15億、30億とオークショニアから値段を告げられる度にネオンの心臓は震えて隣に居るセンリツを心配をさせる。

そして60億から120億の値が出るとゴンが「これは何を表すサインなの?」と迂闊にもオークショニアから見える位置で、前の人と同じ額を上乗せするサイン、つまり倍額をしてしまう「201番、240億!」とコールされてしまう。

 

「どうすんだよ! コールされちまって間違いでしたじゃ済まされねぇぞ!」

「わかってんのか!? これで決定したら俺達支払い能力ゼロなんだぞ!」

「おい……おい、おいおいゴン! 下手すりゃ俺達刑務所行きだぞ! 俺に医者じゃなく囚人にさせる気かぁ!?」

 

 ゴンはゼパイル、キルア、レオリオから猛批判を受け、とんでもない事をやらかしてしまったと今更ながら自覚して顔を青ざめていく。

ネオンはクラピカの様子が気になり見てみると、クラピカは両手で顔を覆い「何ということだ……」と呆れかえっていた。目の前でコントをしているかのような出来事に緊張の糸が大分解れたネオンは少し悪戯心が沸いて「へぇー、その年でお金凄い持ってるんだ。さすがハンターって事かな?」とからかうように声を掛ける。

 

『ハハッ、ハハハ……、ハァ』

 

 ゴンとキルア、レオリオは空笑いをした後溜息をし、ゼパイルは「俺の目前に迫っていたバラ色の人生が……」と頭を抱えながらうずくまる。さすがにこれ以上は可哀想に思ったネオンはサインを送ろうとしたが「16番250億!」と遮られてしまった。

少し残念がるネオンとは対照的にゴン達の表情は晴れやかだ。

 

 バッテラが305億の値を出して周囲に幾らでも出すという決意を示し、オークショニアが辺りを見回して「ございませんか?」と確認をして場がこれで落札が決定したと思う空気を狙ってネオンは動き出す。

 

「あっ、出ました! 211番610億!!」

 

 会場が一瞬シンと静まり、皆が理解するとワッと大歓声が上がって一気に場の空気がヒートアップする。その瞬間バッテラは立ち上がって211番がどんな人物かを確認して驚愕する。

あれは会場の入り口で騒いでいた男のおかげで知った人物、ネオン=ノストラード。いつもならば他人の資産など気にも留めないがあんな大声で1兆と言われれば嫌でも記憶に残ってしまっていた。

 

 バッテラは座り直して大きく舌打ちをし、サインを出す「16番! 615億!!」また歓声が上がり今度は皆の目がネオンに集中する。ネオンは息が荒くなり、胸が早鐘を打っているのを自覚しながら皆の期待に応えるように手を上げる。

 

「来ましたぁ-!! 211番1220億ー!」

 

 瞬間ゴン達を含め大多数の人間が席を立ち雄叫びにも近い歓声を上げた。オークショニアも進行役である事を忘れ、場の空気と見たことが無い金額に熱くなる。ネオンもまた完全に呑まれていた。

 

この場で呑まれていないのはネオンの護衛達と部隊達、そしてバッテラとツェズゲラだけだった。

 

「211番1220億! ございませんか!? ……ございませんね、ハンマープライス!! 有り難うございます!!」

 

 見事グリードアイランドを競り落とし、会場全体に響き渡るスタンディングオーベージョンを受けたネオンは、歓声に応えるため席を立ってゆっくりと周りに礼をする。

未だに心拍数が上がっているネオンに、センリツから落ち着くために手を添えられながら声を掛けられる。

 

「落ち着いて下さいお嬢様。この後彼等は交渉をしに接触してきます」

 

 ネオンは数度深呼吸をして「了解」と返事をし、バッテラとの交渉をするために席を離れて護衛達と共に出入口を目指す。

バッテラも護衛達を連れて、ネオンの後に続くように席を立ち、ネオンに着いていく。

 

 ホールから出て行った二組は互いに軽く自己紹介し、近くの一室に入って代表であるネオンとバッテラだけイスに座り交渉を始める。

 

「さて……」口を先に開いたのはバッテラだった。

 

「今回私はグリードアイランドを全て競り落とすつもりでしたが……、いやはや参りました。まさかノストラード氏もグリードアイランドを狙っているとは思いもよりませんでした」

「バッテラ氏、ネオンで構いません。私は今回の競売でどうしてもグリードアイランドが欲しかったので、失礼ですがバッテラ氏がある目的のために狙っているのを知っているにも関わらず参戦させていただきました」

 

 『ある目的』と聞いた瞬間にバッテラの表情が一瞬強ばり、知られていて尚欲しがっているのかと内心怒りと悲しみを感じながらネオンに問いただす。

 

「……それを知っていてネオンお嬢様は何故グリードアイランドを欲しがっているのですか?」

「私もまた、バッテラ氏と同じような理由とお答えすればご理解いただけると思います」

 

 バッテラの問いに真っ直ぐ目を見て答えたネオンに、バッテラは少し一拍を置いて「そうですか、それならば……仕方ありませんね」と言って天井を見る。

 

 バッテラはネオンの予算とその親であるライトが協力すれば全て落札されてしまい、恋人を助けられないかもしれないと考えて絶望を感じ始めたが、「しかし!」と少し感情的になった声が視線をネオンに戻す。

 

 

「私はグリードアイランドを全て欲しいと思っていません。少なくとも3本、出来れば4本で十分です。その際こちらが提示する条件を呑んで下さるのであれば、私達が先にゲームをクリアした場合は、クリア報酬の3枠の内1枠をバッテラ氏にお譲りする事を約束致します。ご心配であれば契約書を書かせて貰いますがいかがでしょうか?」

 

それを聞いたバッテラは目に光が戻り、「ふむ」と頷き1分程思案した後、

 

「分かりました……。条件次第ですが契約致しましょう。ですが私もどうしても欲しいので3本目まではネオンお嬢様とは競り合わない事を誓います」

 

 バッテラは紙とペンを出すよう部下に命じようとしたが、その前にダルツォルネが前に出て二枚の契約書を差し出す。

 

「これがその契約書となっています。既にこちら側のサインは済ませてあります」

 

用意周到なネオンに疑念を抱きながらも受け取ったバッテラは、書面に書かれている条件をしっかりと目を通していく……、ツェズゲラもまた『ハンター目線』で仕掛けや穴が無いかよく読む。

 

「……この企業だけの株を譲渡する条件で本当によろしいのですか? 貴女なら、ノストラード商会ならば同種の企業を所有しているのを記憶していますが?」

「えぇ、どうしてもこれからのためにその種類の企業が欲しいのです」

 

 バッテラは契約書に書かれた条件を、顎に手を当てながら思案する。

 

 これは自分にとってハッキリ言って有利な条件であり、恋人さえ治れば資産などに執着は無い。全て処分しようとしていたから丁度良いだろう……。しかし慎重を期すためには信頼できる弁護士にも通しておいた方がいい。

 

こう考えたバッテラはネオンの条件を呑む決断をした──

 

「時間を取らせて申し訳ありませんが、弁護士にも同席させてもよろしいだろうか?」

「えぇ、構いません。今日の予定はグリードアイランドだけですので……。バッテラ氏も私どもがこの場にいると落ち着かないと思いますので、弁護士の方が来るまで他の場所で待っています」

 

 ネオン達は返された契約書を仕舞い、連絡先を交換してバッテラに丁寧に礼をしてから部屋を出て行く。部屋から出たネオン達は、迎えるように待っていたゴン達に声を掛けられる。

 

彼らもまたグリードアイランドを二人とは違った意味で狙ってここまで来た。少し予定は狂って話しかける人物が違うがやることは変わらなかった。

 

「ネオンさん。もしよければ俺達がグリードアイランドのゲームクリアに協力しますよ」

 

 父親に会うためにゲームをプレイして手懸かりを探す。

 

この確固たる目的のためゴンはネオンと交渉をしようとするが、ネオンは「あ~、そっか。別室で話そうか。それとダルツォルネはヒルデ達を呼んできて」と指示を出して、ゴン達と先程の部屋の隣にある一室に入る。

 

 バッテラと話し合った時とは違って、今度はネオンが楽にしていいと言ったので、護衛達は空いているベッドやイスに座り、ヴェーゼは気を利かせて水を用意する。ネオンとゴン達はヴェーゼに謝意を述べた後一口飲んでから話し合う。

 

 ゴンは理由を聞きたいというネオンの問いに、最初に父親に会いたいという最終目的を言い、ハンター試験を受けた所からこれまでの事を大まかにネオンに丁寧な口調で話す。

 

そして話が終わりネオンが口を開く。

 

「わかった。ゴン君にも父親に会いたいという強い目的があってプレイしたいんだね。でもね、先にどうしてもプレイしなきゃならない人達がいるからゴン君に譲る事は出来ないんだ。ごめんね」

「……そうですか」

 

 ネオンは今の時点ではプレイさせないという決断を下した。その答えを聞いたゴン達は落胆をするが、ネオンはこのまま帰すのはさすがに可哀想になったので、「その人達の後でならプレイしてもいいよ」とゴン達にプラスになる事を言う。

 

ゴン達はお互いの顔を見合わせ笑顔になりガッツポーズをする。そしてゴン達と連絡先の交換をした後ネオンは「この後予定とかあるの?」と尋ねる。

 

「いや、特には無いです。キルアはどう?」

「俺も無いな」

「俺は医者の勉強しないといけないから明日にはゴン達と一旦お別れだな。ゼパイルは?」

「俺はお嬢様についていくぜ。ノストラード商会で働くからな」

 

 返答を聞いたネオンは「じゃあ私の予定が終ったら皆でお寿司食べない?」と提案して4人は喜んで了承をする。

 

 しばらく雑談しているとコンコンとノックがして扉から1番近いクラピカが開ける。そこにはダルツォルネと攻勢部隊の一員であるヒルデを含めた5名がいて「失礼します」と部屋に入り一列に整列をする。

 

「お嬢様連れてきました」

「うん、ありがとうダルツォルネ。ゴン君とキルア君もし暫くの間何も予定が無いのならよかったら私の家に来て鍛えない? 君達も才能あるから将来私の部隊と同じ位強くなれるかもしれないよ?」

 

 ネオンは原作を狂わせたという罪悪感を少し抱き、せめてもの償いにゴン達に鍛えれる場を提供しようとするが、当のゴン達はこの時乗り気では無かった。

 

「どうするキルア?」

「確かに結構やると思うけれど」

 

 今の自分達とそんなにたいした差は無くすぐに追い越せそうだとキルアは思った。

 

 そんな侮りを見透かしている部隊達は鼻で笑いキルアを少し苛立たせる。ネオンは原作を思い返し「じゃあヒルデ以外皆でどの位実力があるのかちょっと『ただの練』を見せてあげたらいいんじゃないかな?」と痛む右目を押さえながら提案し、部隊達は了承して練をする。

 

 

 瞬間この場にいる全員が、部隊達の体格が自分の10倍以上大きくなったかのような錯覚、さらに冷たい水の底にいるかのような圧迫と温度を感じ、この場にいる全員が部隊達が桁違いの力を持っていると嫌でも認識させられた。

 

 そして実力を見せた部隊達はオーラを納めて下がり、ネオンは「どう?」とゴン達に勝ち誇ったような笑顔で尋ねる。

 

「……すっ、すっごいや! ねえキルア!」

「あ、あぁ。認めるよ、あんた達はスゲェ」

 

 ゴンは素直に賛辞したが、キルアは内心穏やかではなかった。

 

『強いやつ程実力を隠すのが上手い』『あまりこれに頼りすぎるのはよくない』そうゴンに忠告したのではなかったのか? 新たな力である念を覚えてから慢心しすぎていたと感じたキルアは、もう二度と相手を侮らないと自分を戒めた。

 

 ゴン達が行こうか行くまいか決断をしようとするとネオンの携帯が鳴り、出るとバッテラから弁護士が来たという連絡が入り、ネオンはゴン達に

 

「今すぐ答えを出さなくてもいいよ、オークション最終日の10日まで居るからそれまでに決めてくれたら大丈夫」

 

そう言ってダルツォルネ達を連れて部屋を退出し、バッテラがいる部屋へと再び入る。

 

 

 

 

 

部屋に入るとバッテラが細身の初老の男性弁護士を紹介し、ネオンもまた自己紹介をして再び契約書を出して読んで貰う。

 

「……航空関連の株だけを譲渡するという事はわかりました。後、貴女方を疑っているようで本当に申し訳ありませんが、落札する物は交互にしてもらうという条件を追加してもらえないでしょうか?」

「えぇ、それ位構いません」

 

 これを聞いたバッテラと弁護士、そしてツェズゲラは安堵し、2枚の契約書に追加条件を書き足してサインをした。

 

 この追加条件を提示した理由は、ネオンを呼ぶ前に3人で話し合っている時、ツェズゲラは交互に落札するという条件を呑ませた方がいいと提案した。

バッテラはそれは少し失礼ではないかと反論するが、ツェズゲラは表ではノストラード商会と名乗っているが、裏ではマフィアとして有名なのをハンターとして知っていたのでこのことをバッテラに話し、最悪武力で脅しをかけて奪うかもしれないと付け加えた。

 

そのため交互に落札する事、落札した場合は速やかに安全な場所に移送する。この2点は絶対条件であるとツェズゲラは主張し、2人も受け入れた。

 

 そして条件を提示し、即答して受け入れたネオンに無理矢理奪う気は無いと3人は判断した。

 

 

 

 

    

「契約を結んでいただきありがとうございました。後契約を順守するために私達は4本目のゲームがどのような形でも落札されれば速やかに会場から退出し、少なくとも最終日までビル内に入らない事を誓います」

 

 ネオンはバッテラ側が全て落札する気ではないかと疑っているのに気づき、そんな気は無いと少し遠回しに伝える。

 

「……気を遣わせて申し訳ありせんな。何分こちらも必死なので」

「心中お察し致します」

「それと私の恋人があなた方の協力のもとに治った場合、契約書に書かれていた相場の値段ではなく無料でゲームを全て差し上げます」

「ありがとうございます。出来るだけ数が必要だったので心強いです」

 

 契約書を受け取ったネオン達はまた丁寧にバッテラに礼をして退出する。部屋に戻ったネオンはその光景に少し唖然とする事になる。

 

 

「だーからちっげぇよガキ共、こうだよこう! バッとしてスッとするとワーっと来るんだよ!」

「たからわっかんねぇよ! そんな説明!」

「うーん、俺もわかんないや」

 

ヒルデが身振り手振りと擬音語で何かしらゴン達に説明をしていて

 

「レオリオおじさんはわかりますよね?」

「俺はおじさんじゃねぇ! まだ19だし俺もわからねぇよ!」

「え? 嘘ですよね。失礼ですけれど免許見せてもらってもいいですか?」

「おうよ、本当に失礼だがよく見やがれ!」

「……はぁー!? てめぇタメかよ、紛らわしいんだよボケ!」

「お前タメだと分かった途端にその態度かよ!?」

 

レオリオの年齢に疑問を持って免許を見て同じ年だとわかると態度を豹変させているヒルデがいた。

 

 ネオンは壁にもたれている部隊の1人にどういう事か聞くと、何故ヒルデだけが練をしなかったのかとゴン達が聞いてから始まって、2、3言話してゴン達が念の知識を基礎しか知らないとわかり、「じゃあオレが教えてやる」とヒルデが名乗りを上げて教えていたが、結果はこの様であること。

 

ちなみに教えていたのは応用技の流だ。

 

「あの子は念と戦闘の天才だけど指導の方は向いてないよね」

「えぇ、それで善意100%の教えたがりですから手に負えません」

 

 ヒルデはネオンの部隊の中で他を寄せつけない程の圧倒的な才能と戦闘能力を持っていて、それこそ人類史でトップを飾れるが天才であるが故に指導には向いていなかった。

彼女がこれほどの力を持っている理由は、狂気に染まった1人の女が、生まれ変わるという目的のため70年を費やして念能力で造られた存在であり、誓約のために捧げた命は妊婦であってその人数は5000、胎児を入れれば10000になるからだ。

 

 だが生まれ変わる瞬間は誰にも見られないという制約を、占いによって山奥に派遣された構成員と案内をしたハンターに破られ、発狂した女はせめて一部でもいいから生まれ変わるという想いの元、右腕を掴んで憑りつこうとするが、その前に当時7歳であるヒルデが何の躊躇もなく自らの腕を切り落としたおかげで失敗をし、女は絶望に顔を歪ませながら死んでいった。

 

その後は体と心のケアをし、ネオンに引き取られ今に至る。これが彼女の過去と力の秘密であった。

 

 

「皆注ー目っ」

 

全員騒ぐのを止め、目がネオンに集中する。ネオンはバッテラと契約を無事結んだ事と契約内容を全員に話した後、全員で貸し切っているノストラード系列の高級寿司屋に行き、夜が更けるまで宴を楽しんだ。

 

──そして帰り際の時間になるとゴンとキルアは決断をネオンに伝える。

 

「俺たちも一緒に行っていいですか?」

 

 ゴン達は現時点での己の未熟さを知り強くなる事を選んだ。その答えにネオンは微笑み

 

「いいよ、じゃあクラピカが乗ってる車に行って。最高の環境と師匠を準備してあげる」

 

そう告げお互い車に乗りホテルベーチタクルへと向かう。その間にネオンは携帯を取り出し流れる夜景を見ながらどこかへと電話をした。

 

「もしもしビスケ? 明日ヨークシンに来るんだよね? だったらさホテルベーチタクルに泊まりに来てよ。また面白い子達と出会えたんだー。……え? 違う違う、今度は占いを使ってないよ。それでさ絶対にその子達もビスケ気に入ると思うんだ。どんな子達かって言うとね──

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

その後幾ばくかの時間が流れて2月10日正午、ノストラード館大広間。ここにネオンが落札した物と、恋人を治して薬で若返ったバッテラから、感謝の言葉と共に譲り受けた合計31台のグリードアイランドがあり、ネオンや侍女にライト、護衛と部隊達、それにゴンとキルア、ビスケにゼパイルと勢揃いしていた。

 

彼等がここにいるのにはある重大な2つの理由があった。その理由の1つはこれからゲームから帰って来る者達を迎える事だ。

  

 しかし、ただゲームをクリアしただけならば代表者であるネオンかライトで十分であった。こんなにも大勢で迎えるのにはもう1つの理由が関係しており、それはネオンにとって自分の財産全て投げうってでもしなければならないと感じているものだ。

 

 

 

「お嬢様、来ました」

「うん」

 

ゲーム機の前に複数の光に包まれた人影が現れ、徐々に光が止んで誰だかわかると、ネオンは居ても立っても居られずに傍に駆け寄って抱きしめる。

 

「ジュメレ! ジュメリ!」

 

ネオンは涙混じりの声で双子の名を呼び、両名は微笑んでネオンの頭を優しく撫でる。

 

「……本当にしょうがない子。そして優しくてかわいい子。ありがとうネオン」

 

ジュメレは艶のあるハスキーボイスでそう言って首に巻いてある布を外した。ジュメリもまた両目を覆っている布を外し、灰色の瞳でネオンの目を真っすぐ見て口を開く。

 

「やっぱり妹に似ているねネオン。ネオンがゲームの中にある呪文で傷を癒せると言った時、実は私達は傷を治さないつもりだったんだよ。操られていたとはいえ妹をこの手で殺してしまったからね……。

恨まれていたと思った。

     怒っていたと私達は思ってた。

              だけどさ──」

 

ジュメリはそこで耐えきれなくなって視線を下に落とし、しゃくり上げて涙を流し始める

 

「死者への往復葉書の返事にあの子は怒っていないし恨んでいないって書いてあったんだよ。そっ、それどころか自分の事を忘れないで想ってくれていて嬉しかったってさ……。参ったよ、本当に参った」

 

そして黒い布を撫でながら

 

「黒色は妹の目と髪の色なんだ。あの時の事を片時も忘れないよう傷の所に同じ色の布と服を着けていたんだけれど、ちゃんとオシャレをしろって怒られちゃったよ。そして私達に最後のわがままを聞いて下さいって急に敬語になったから何かな? って思ったら必ず幸せになって下さいだってさ。これからこの布はリボンにして髪につけるよ」

 

そうジュメリは泣き顔を無理矢理はにかむような笑顔にして言い、ネオンは涙を流しながら数回頷き、周りからは祝福の拍手が巻き起こった。ビスケは彼女達とは5年以上の付き合いがあり親心があったので大泣きをし、ゴン達も双子を含めた部隊達と数ヵ月いたので彼等の事情や心に触れていたので涙ぐんでいた。

 

 

 

 その後続々とネオンの部隊達がゲームから帰還していく。両手に義足を持っておどけるように肩をすくめる者、自分が乗っていた車イスを笑顔で押しながら登場する者、マスクと上着を脱いで重度の火傷が治ったと涙を流してアピールして喜んでいる者……etc。

 

 ネオンは集めた部隊達の体が治っているのを見ていくにつれ、遂に耐えきれなくなって泣き崩れ「ごめん、ごめんなさい。やっぱりもっと早く……」と謝罪の言葉を出す。

 

 ネオンは数年前から集めてくる者達のハードルを下げたが、初期の頃は自分に忠誠を誓い、命を懸けれる者を最適なタイミングで連れて来るようにと命令して占った。

その者達は危機的状況に陥って命に係わる場面から助けられたので、その特性上双子のように事後であるのが殆どであり、身体にどこかしらの欠損や後遺症があるのが当たり前だった。

 

 ネオンは最初は戸惑い、仕方がない、助けたのだから恨まれる筋合いは無いと自分に言い聞かせていた。しかし双子やヒルデ、見世物小屋でひどい虐待を受けていたせいで、人が近づいただけで恐怖で悲鳴を上げていた名前すら無い歩けない結合症の少年達が来た事でネオンはもっと早く助けた方が良かったのでは? と罪悪感を抱いていたが気づかないフリをしていた。

 

それでも罪悪感で耐えきれなくなり、爆発しそうな時になると双子の手を握って気を紛らわせていた。

 

 だがもう耐えきれなかった。何時からか旅団ではなく最優先となった彼等を治し、そして第二目標となった旅団を倒して、ネオンを支えていたものが無くなって一気に崩れ去ったのだ。

勘のいい部隊達や古株の護衛、ビスケは事情を察して笑顔で優しい言葉でネオンを介抱するが、その優しさにさらに胸が打たれてまた謝罪の言葉を繰り返してまるで赤子のように大泣きする。

 

 ネオンは奈緒美の記憶を見たあの時のようだと既視感を覚えた。ただあの時は悲しみと怒りだったが、今回は嬉しさと達成感、そして彼等が本当に自分を想っている事への感謝から来たものだった。

 

 

 この光景を皆から一歩離れ、無表情で涙を流している者がいた。

 

 それはクラピカ。彼も感動して涙を流していたが、その心の内は部隊達への羨望と少しの嫉妬。そしてネオンへの何故部族を助けてくれなかったのかという理不尽な怒りと、そんな事を思ってしまう自分がどうしようもなく恥だという事から来ていた。

 

 

「美しい音色……。彼等はお嬢様に引き取られて本当に良かったと思ってるわ」

 

 センリツはハンカチで目元を拭いながらクラピカに話しかける。クラピカは茫然とした表情でセンリツの方へ向き

 

「あ、あぁ。見ているこっちもそう感じている。センリツ、私は少し席を外す」

「クラピカ?」

 

 戸惑うセンリツをよそにクラピカはそう言うと退室をし、近くの部屋に入って鍵を閉めた。クラピカはドアにもたれ掛かりズルズルと腰を落とす。

 

 

 

 

「──ごめんなさい」

 

彼は謝罪するネオンに昔の自分を重ねていた。

 

外に出たいとわがままを言い、大勢の人がいる前で軽率にも緋の目になってしまったせいで幻影旅団を呼び寄せてしまった。

 

「ごめんなさい。ごめんパイロ」

 

自分を庇って崖から落ち、目と足が不自由になってしまった親友。もし不自由になっていなければ彼だけでも逃げれていたかもしれない。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい父さん、母さん、皆」

 

 皆の墓の前で謝罪を繰り返しながら一日中泣き喚いた。クラピカはその時を思い出して耐えきれなくなり左手で声が漏れないよう口元を抑え、また謝罪を繰り返しながら涙を流した。

 

 

 暫くしてクラピカが落ち着いた頃、ノックされてセンリツが扉越しから声を掛ける。

 

「クラピカ? お嬢様がパーティーをするから皆を食堂に集めているわ。もし……もし今行けそうになかったら言うけれどどうする?」

 

クラピカは立ち上がってドアを開けてセンリツに優しく微笑み

 

「……大丈夫だ今行く。ありがとうセンリツ」

 

センリツもまた微笑み「そう、良かった」と言い右手を差し出して「食堂まで手をつながない?」と提案する。

クラピカは一瞬キョトンとするが、すぐに苦笑いをして「結構だ」と答える。だがたまにはいいかもしれないと思い直す。

 

「いや、やはりお願いしようセンリツ」

「えぇ、お願いされるわ」

 

 クラピカは手をつないでる間まるで小さい頃に戻ったようだと懐かしく感じ、パーティーも心から楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 これより2日後の朝、クラピカは個室の洗面台でいつものように身だしなみを整えていた。だが今日はルーチンワークのように瞳の色を隠すために着けていたコンタクトをしていなかった。

そう、クラピカは決断した。今日の朝一番に自身がクルタ族の生き残りだと報告し、今まで偽っていた事を謝罪する事を。

 

 クラピカは少し早歩きで皆がいるであろう広間の前まで行き、緊張している自分を落ち着かせるために右手を胸に当てて深呼吸をする。

そしてノブに手をかけようとして、念で具現化された復讐のための鎖が目に入り数瞬手を止め、これは今は必要ないとして消してから扉を開く。

 

 クラピカは思い思いにくつろいでいる者達を横目にネオンの元に行くと、「お嬢様、報告したい事があります」と真剣な表情で言う。

その様子にダルツォルネは気を利かせ「俺達は席を外した方がよさそうだな」と護衛達を連れて退室しようとするが「いや、リーダー達も聞いて欲しい」と引き留める。

 

「……お嬢様、私はクルタ族の生き残りです。今まで黙っていて申し訳ありませんでした」

 

 クラピカはそれから何故ノストラードの護衛となったのか理由を言い、再度謝罪をした。

 

「言う決断をしてくれてありがとう。クラピカも大切な仲間だから目を取り戻す協力をするよ」

「……ありがとう──ございます」

 

クラピカは頭をしばらく下げて感謝をし、ネオンや仲間に言って本当に良かったと思い誇りを感じた。

 

この日からネオンの保管庫から緋の目が無くなり、代わりにクラピカの皆に対する態度が軟化して自然な笑顔が増えた。





「チッ、うるせーなぁ。こっちは寝不足だっつーのに」

ここはとある高級ホテルの一室、男は朝早くから10台近くある携帯の呼び出し音に起こされた。

「ハイハーイ、何だよマークこんな朝早くに……。は? テレビを見ろだって?」

男は焦燥している部下に急いでテレビを見るよう促され、面倒くさそうにテレビを点け
た。

「あ? なんだよ……こりゃあ」

そこには多くのマスメディアが集まり、自分が泊まっているホテルに押し寄せている様子が映っていた。
そしてタイトルには『カキン第4王子少女を殺害!!』と出ていて暫くするとモザイクで処理されているが、少女と自分が映っていて殺すところまでご丁寧に声まであり放送されていた。

 ツェリードニヒは理解すると携帯とリモコンを投げ捨てて急いで浴室に入る。映像の位置から推理して壁を調べていき浴室テレビの中にあると確信に至り、側にあったシャワーヘッドで叩き割った。
中を乱暴に調べていくと人の親指ほどの小型カメラが出てくる。

彼は歯をギリギリと鳴らし吠えた

「クッソがぁぁぁぁああああああ!!!!」 

 ツェリードニヒは逮捕されたが2日も経たない内に釈放されてカキン王国へと強制送還された。

この事が原因で王位継承戦と暗黒大陸渡航計画は5年遅れることとなった。

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