私はこの世界にヤドリギを植える   作:まざまざ

2 / 6
こうしないとおかしいなと訂正してたらまさかの5000字超え
今回ネオンの強さを書くつもりだったのですが次回に繰り越しになります。


嵐の前の静けさ

 オークション開始日1週間前のノストラード館、ここに依頼品の取得に成功したクラピカ、センリツ、バショウ、ヴェーゼの4人がダルツォルネに連れられ、依頼主であるネオンがいる部屋に案内されていた。

 

「ボス、新入りを連れて参りました」

「どうぞ」

 

 ダルツォルネはノブに手をかけ扉を開く前に4人に注意を促す。

 

「おっと、言い忘れていたがくれぐれもボスに対して悪感情を抱かないように気をつけろ、死にたくなければな」

 

 そう不敵に笑いながら言った後扉を開け中に入る。注意を受けた4人は少し緊張と警戒をし、そして同時に推測する。もしかしたら敵意を持って近づいた者だけに発動するカウンター型の念能力を使っている、もしくは使わせているのかもしれないと。4人は何が起きても対応出来るように心構えをして部屋に入る。クラピカだけがわざと出遅れ、周りに気づかれないよう、未だ見ぬ雇用主への嫌悪感を抑えるために目を静かにつむり深呼吸をしてから――

 

 4人はダルツォルネを先頭に一列に並んで、部屋に等間隔に設置されている支柱に案内されるように真っ直ぐ進んでいき、突き当たりのベッドに座っているネオンに近づいていく。そして、距離にして4m程で立ち止まり、横一列に並んだ後、ネオンを見て驚く。黒社会の要人と聞いていたので、修羅場をくぐり抜けた猛者か経験を積んだ老齢の人物だと先入観があり、まさか未成年の少女だと思わなかったからである。

 

「紹介しよう。諸君等が護衛する依頼主であるボス、ネオン様だ」

「ふふっ、宜しくね新人さん達。名前はダルツォルネから聞いてたけれど、やっぱり直接本人の口から聞きたいな。紹介してくれる?」

 

 そう言われた4人は右からヴェーゼ、センリツ、バショウ、クラピカの順で自身の名前をネオンに告げる、満足したネオンは4人……否、部屋の中にいる全員を驚かせる行動に出る。

 

「ダルツォルネから紹介があったとおり私がネオン、ネオン=ノストラード。特質系の能力者でありーー100%当てる事が出来る占いの能力を持っているわ」

『っ!』

「なっ!? お嬢様!!」

 

 ダルツォルネがネオンを咎めるように声を荒げる。無理もない。普通念能力者にとって最も避けなければならないのは自身の能力を他人に知られる事だからである。もし敵に知られてしまえば、対策を練り罠を張られあっさりと格下相手でも負けてしまうからだ。そう、原作のゲンスルーのように……。しかしネオンはもうある程度、少なくともプロハンター全員に知られてもいいと思っている。

 

 何故なら占う相手の対象は次の段階へと進んでいるからである。その事はダルツォルネも承知しているが、無駄なリスクは負わない方がネオンのためであり護衛を務めている以上注意しなければならなかった。そんなダルツォルネを手で制し言葉を紡ぐ。

 

「ありがとうダルツォルネ、気持ちはわかるけれど私の能力は他人に対して使わなければ意味ないよ。3日もあれば私の能力の事は嫌でも耳に入るし、まぁ1番の理由が新人さん達へ私からの信用の証として言ったってのが大きいかな? それに皆の能力も見せてもらったし」

「ですが……、わかりました」

 

 ダルツォルネは食い下がろうとしたがやめる事にした。ネオンの歩み寄りの気持ちを無下には出来ないのと、これ以上の引き止めは恥になると判断したからだ。この一連の些事はネオンが原作知識があり、4人の事を知っているのに対して、ダルツォルネは知らないからこそ起きた出来事だ。

 

 そしてネオンの期待通りこの行動は4人に好印象を与え、ネオンに対する評価を大なり小なり改めた。

 

「うんうん、本当オークションのために護衛を募集して良かったよ。操作2人、具現化に放出かな? 優秀な人材に来てもらえてうれしいよ、出来ることならオークション終わった後も宜しく頼みたいなぁー、あっ勿論今回の依頼が終わってからでいいよ」

「それでは彼等も色々と準備もありますしそろそろ……」

「そうだね、今日はこれくらいでお開きにしようか。じゃあまたね皆」

 

 4人は簡単な別れの挨拶の後、一礼をしてこの場を離れ部屋から出て行く。ダルツォルネはそれを見送り、ネオンに向き直り真剣な表情になる。

 

「お嬢様、先ほどの事は軽率です。いくら信用が出来る千耳会の紹介とはいえ新人に念能力を話すのはご自重下さいませ。よからぬ事を企むやも知れませんから」

「心配してくれてありがとうダルツォルネ。でも大丈夫でしょ、反応が無かったし。ねぇジュメリ、ジュメレ」

 

 ネオンがそう言うと、1番近い両隣の支柱の陰から2人の女が姿を現した。そしてネオンの横に座り優しく抱きしめダルツォルネに頷く。2人は双子の姉妹で、姉ジュメリは黒い布で両目を隠し黒いスーツを着ていて、妹のジュメレも同じく黒い布で首を隠すように巻き、黒いドレスを着ている。

 

 元はこの2人には少し年の離れた妹がおり、3姉妹で戦災孤児だった。そこに目を付けた人身売買を営む組織に連れ去られてしまう。そして彼女達は不幸にも、加虐体質でしかも操作系念能力者の男に買われた。

 男は2人の姉妹を意識がある状態で操り、妹を1ヵ月の間少しずつ切断させ殺させた。その後お互いの目と喉を潰し合わせ、さらには数ヶ月もの間2人に対して性的虐待を繰り返した後、使い物にならなくなったと判断した男は、最低限の治療をし空気穴を空けた黒い袋に彼女達を入れ、ゴミ捨て場に捨てた。

 

 治療をしたり袋にわざわざ穴を空けたのは、ゴミ収集車に潰されるその瞬間まで生きながらえさせようという男の悪意だった。しかし収集車に潰されるギリギリの所を奇跡的に2人はネオン達に助けられ、最高の治療を施される。そして2人の意識が戻り、心理療法とリハビリに励んでいた時、見舞いに来たネオンの姿と声を見聞きし驚愕する。髪や目の色は違うが死んだはずの妹に生き写しで、声は妹の声そのものであったからだ。

 

 2人はネオンに引き取られた後、男の念に操作された事により念能力に目覚めた事がわかった。そして、それを鍛え上げることで、天賦の才能も相まり凄まじく強力な念能力者となった。2人は誓う。ネオンのために力を、ネオンの傷は全て自分達が請け負うと。もし自分達が死んだ時はネオンを守る念獣になると。2人は護衛の対象であるネオンに害意や殺意に反応して自動で攻撃するカウンター型の能力を持っており、姉ジュメリは操作系、ジュメレは具現化系で、勿論単体でも強いが、真価は協力して念を発動した時に発揮する。

 

 

 その2人の能力を実際に見ているダルツォルネは確信している。ネオンを傷つける事はどんな相手だろうと不可能だと。

 

「だったらいいのですが……、わかりました。それでは私も日程の段取りと顧客情報の整理をしますので、これで失礼します。ジュメリ、ジュメレ、お嬢様を頼んだぞ」

 

 ダルツォルネは2人にネオンを頼み部屋から出て行く。ネオンは見送ると侍女達を側に呼びパンッと手を叩き、

 

「ねぇねぇ、これから皆で私の部屋でご飯食べようよ、後ヨークシンで洋服と化粧品買うから電脳ネットでめくっていいの調べようよ」

『はい! 是非』

 

 ネオン達は化粧品や服、オークションでどんな物を買うのか、髪が伸びてきたから切らねば等楽しく話しながら自室へ帰る。その後特にこれといった出来事もなく各々オークション開始日9月1日へ思いを馳せ過ごしていく。

 

 

 

 

 

 8月31日になり、ネオン達が乗った私用船が、ヨークシン郊外にある飛行場に着陸し、高級車とリムジンが飛行船の前に止まる。中から出てきたのは一足先にヨークシン入りしたスクワラ達だ。飛行船からタラップが下り、新人であるクラピカ達が先に降り周囲をスクワラ達と共に見張る。そしてジュメリとジュメレの間に挟まれるようにネオンが、最後に侍女達と分厚い封筒を持ったダルツォルネが飛行船から降りる。

 

 ネオンは35時間という長時間のフライトのおかげで怠くなった体をほぐすためストレッチをし始める。

 

「ん~、やっと着いたー。さすがに体が怠いね、何かちょっと陸酔いするし」

「お疲れ様ですお嬢様、どうぞこちらへ」

「うん、ありがと」

 

 ダルツォルネがリムジンの後部座席のドアを開けネオンをエスコートする、ネオンは乗る前にクラピカの方を向き「お寿司楽しみにしていてね」と満面の笑顔で言うと、クラピカは「楽しみにしています」と少し苦笑いした後一礼をする。それに満足したネオンはリムジンに乗り込み思案し笑う。

 

(概ね原作通り、この世界は旧寄りの世界ね。飛行船の中で会食した時クラピカから軍艦島の話が出たから……。それにしても良かった、1番気になる事が無さそうで)

 

 そう、ネオンは1番危惧していた問題があるかクラピカから確かめるため、移動時間の会食の席でこう話題を切り出した。

 

「ハンター試験がどういう内容で試験してるのか興味があるから皆話してよ」

 

 クラピカだけに聞くのは不自然となり妙な警戒心を抱かれてしまうので全員に聞く。やはり共通の話題を持ち苦労をわかっていると人は心が開きやすいのか話題が弾み和やかになった。

 

 特にクラピカの時が顕著であり2次試験の寿司の話で1番食いついたのがやはりバショウだ、そして意外にもヴェーゼが積極的に質問し話に参加していた。本人曰く元は美食ハンターを目指していた時期もあり私もおいしい物に目がないと。辞めたのは先人達が狩り尽くしたせいで新たな発見も出来ず実入りも少なくさらにはスポンサーも付かないのでこの道を諦めたと過去を話し新たな一面を見せた。

 

 ネオンもこの時を待っていましたと言わんばかりにクラピカに質問をし、懸念材料が無いと分かると気が抜け原作知識があるがためか悪戯心が芽生え尋ねてしまう。クラピカにとっては黒歴史で出来れば忘れたい事だったネオンが言った言葉……それは

 

「まさかあり得ないと思うけど生魚をそのまま何の調理もせずに出したとかないよね?」

 

 この質問をするとクラピカは目に見えるほど動揺し始め、言葉が多くなり皆にそのまま出したのだと確信され笑いを誘う。中でもバショウはクラピカの事を寡黙で知的、笑いとは無縁の堅物と思っていたのでその認識のズレに笑い「何だお前天然だったのか!」と突っ込みそれに対しクラピカは「私は天然じゃない!」とムキになって言い合いになりそれがまた笑いを誘い一気に皆の距離が近くなる事になった。

 

 その会食後、ダルツォルネ達玄人組とクラピカ達新人組と飛行船内部で世間話や冗談を言い合う位お互い気を許し始め、ネオンがオークションが終われば皆で寿司屋を貸し切り打ち上げをしようと言い皆快諾する。

 そしてネオンはクラピカから1番問題な話題が出ず、その後の皆の関係がいい方向に発展した事に大いに満足した。ネオンが危険視した問題、それは……自分と同じく原作知識有りの転生者がいるかどうかである。

 

 味方になるか無関心ならば有り難い、だが敵であるならばほぼ100%幻影旅団側の人間でありクロロのために情報やネオン本人を積極的に狙うのは確実だからであり早期に処理しなければならなかった。

 

 その問題が限りなく低くなった事でネオンの機嫌は良くなり、車内で靴を脱ぎ足を伸ばしてリラックスしていた。ダルツォルネが持っている分厚い封筒があるのを忘れるようにわざとらしく視線を外して。

 

「こっちを見て現実を受け入れて下さいお嬢様、これが9月分です」

「あーあー、まぁしょうがないっか……。あれ? もしかしてまた増えた?」

「はい増えました、ヨークシン市長にロットフェリ様とトリンク様、後は数カ国の大臣と大企業の社長達ですね」

 

 ネオンはため息を吐いてから300近い紙の束を受け取り、この時のために備え付けていた折りたたみ式の机に置き占いの準備をする。

 

「自動書記って言っても念を使ってる自覚あるし、腕も疲れるから怠いわー。一気にやらずに合間に休憩を入れるよ?」

「はい、よろしくお願いします」

 

 占い始めて1時間弱ネオンは念を解除し用意されていたお茶を飲み一息をついた後残りの束を見て「うへぇあ」と情けない声出す。

 

「半分を切りました、頑張って下さいお嬢様」

 

 ダルツォルネは励ましの言葉をジュメレとジュメリの2人はガッツポーズで応援する。ネオンのやる気が少し回復して占いを再開しようとペンを持った瞬間右目に痛みが走り右を向く。

 

 窓から見える景色の端に前世の知識にあった男女4人の姿がネオンの瞳に映りネオンはその姿が見えなくなるまで追いかけ、そして顔を両手に隠して笑い始める。

 その様子を不思議そうに眺め、ネオンが笑い終わるのを待ちどうしたのか尋ねるが、ネオンは答えずノストラード家の者ならば驚愕する指示を出し車内にいる全員の表情が凍る。

 

「……本気ですかお嬢様?」

「うん、本気。万が一って事もあるし、後サザンピースのオークションも参加したいから手配お願いね」

 

 そう言うとネオンはダルツォルネの返事を待たずに占いを再開する。

 

(後もう少し、後もう少し。ふふふふ、私の勝ちが決まった一方的な殺し合いをしましょう旅団の皆さん)

 

 そんな残酷な思いに答えるかのように右手の天使は血の涙の量が増えた。




もっと船内の会話を増やしたかったのですがボツ
そして芸大生の設定も死に設定になります、本当は旧に出てきた博物館にちゃんと管理しなきゃならない物が何で普通にあんの? あっシズクや梟の能力あるから大物でも盗むの楽勝なんだなと主人公の念に対する反応を書きたかったんです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。