アルティメット千早な僕が765プロのオーディションに落ちた件   作:やんや

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注:今回、本田が下なネタを言います。


アルティメットな初ライブその2

 お昼ご飯を食べ逃した僕は目的もなく346プロの敷地内を歩いていた。

 つい先日、色々と歩き回る機会はあったが、それは時間を潰すためだったので広い範囲は見れていない。千川さんに案内して貰った場所も、トレーニング施設のようなアイドルが普段使用する場所だったので、やはり範囲が狭かった。結局、僕が行ったことのある施設は346の敷地全体からすれば微々たるものに過ぎなかった。

 いったい何に使用しているのか不明な建物群には今後立ち入る機会があるのだろうか……。

 

「765プロなら──」

 

 立ち入り禁止どころか、行ったことがない箇所がないなんてならないのに。

 ──なんて、今でも346プロ所属の自分の立場を無視し、765プロの自分を夢想する。

 

「ばかばかしい」

 

 そして、愚かしい。

 ここで頑張ると決めたんじゃないのか?

 だと言うのに、何で僕は未だにこんな女々しいことを考えてしまうのだろう。

 弱く脆い精神が憎い。確固たる自分が持てない心が疎ましい。

 何よりも、自分の吐いた言葉に責任を持てない自分が嫌いだ。

 

「強くなりたい」

 

 誰よりも、とまでは言わない。でも、今の自分よりは強くなりたい。過去の自分よりも自分に自信が持てたなら、僕はもっと強く在れる。

 きっと、そう、信じている。

 そのためには、目の前のやらなければいけないことを一つずつ頑張るしかない。少しでもいいから、自分の糧にするんだ。たとえささやかなものだとしても、積み重ねればいつか届くと信じて──。

 

 

 合同練習の時間が近づいて来たので更衣室へと向かう。

 346プロでも、主にアイドル関連の部門が密集した施設を抜け、その先のトレーニング施設へと進む。初日に貰った、どこでも入れるカードのおかげで回り道せずに施設間を移動できるのは楽で良いね。

 当然、施設は通り過ぎるだけで部屋に入ろうなどとは思わない。暗かったり変な音がする部屋には僕でも入ることを躊躇わせる。

 廊下を進むと健全な雰囲気の建物に到達した。こちらは広報などの外向けの企画を作る部がある施設だ。アイドルが直接関わる部署ではないものの、企業CM等の案件を取って来てくれることもあるので無下にはできない。むしろ、メディア展開を狙う子には重要な部署と言える。僕は歌特化だから、ここにお世話になる機会は少ないだろうけれど、346の全社員は大切な仕事相手と思っているので下に置くようなことはしない。

 それに、346の人達って何かと親切だから、こちらも態度を軟化させやすいんだよね。

 

「おはようございます」

「あっ、おはようございます!」

 

 廊下ですれ違った男性社員に挨拶をすると、相手からきっちりした挨拶が返って来た。こういう対応をされる度に、僕みたいな新人相手にすら丁寧に接してくれるなんて、と感動するのだった。

 346がそういう環境なのか、シンデレラプロジェクトがそれだけ期待されているのか、社内のそういった踏み込んだ事情を知る権限の無い僕にはわからないけれど、こうして挨拶してくれることに変わりはないのだから嬉しく思うのは僕の勝手だろう。それが打算の結果でも、僕は良くしてくれた相手には良くしたいと思っている。

 

 やがて更衣室へとたどり着いた僕は、そこで、はたと気が付いた。いつもと違い、今日は本田と島村も更衣室を使うということに。

 まだ二人がお昼ご飯を食べている──なんなら食後のティータイムも──という可能性もあるけれど、すでに着替えに来ていた場合……この扉を挟んだ向こう側に今まさに着替え中の二人がいるなんてこともあるわけだ。

 ……それは、非常にマズイんじゃなかろうか? いや、ヤバイでしょ。女子高生の着替えに乱入とか、どこのラブコメ漫画だって話だよ。二人とも違った意味で無防備そうだからなぁ。僕が来るなんて微塵も警戒していなさそうだ。距離感も微妙に近いし……。

 まあ、そんな態度が身近な異性には魅力的に映るのかもしれないけど。程度ってものがあるよね。特に二人はアイドルなのだから、異性との付き合い方は気にした方がいいと思う。

 これは僕の想像でしかないけれど、本田は男友達的なノリで接してクラスの男子を無意識に悶々とさせていそう。島村の方は特に何も考えずに笑顔を振り撒いて自分に好意を持っているんじゃないかと勘違いさせていそう。

 極悪だよね。

 僕がその男子だったら、本田の方はともかく、島村の方は自分に気があるんじゃないかと勘違いした末に告白くらいしちゃうね。そして「そんなつもりはありませんでした」とか言われて玉砕するんだ。

 逆に本田には告白しないで思い出として脳内アルバムにしまっておく感じ。十年くらいして卒業アルバムの中の本田を見て「あの時勇気があれば」とか無意味な後悔をするんだ。

 極悪だよね……。

 そんな、いたいけな男心を弄ぶ小悪魔二人がこの中に居るかもと思うだけで軽いはずの扉が何だか重く感じる。

 いや、と言うか実際これ重いぞ? 木製の扉は普段なら軽く押すだけで開くはずなのに……。

 試しに力を込めて押し込んでみてもやはり開かない。仕方なく、今度は対物最強とも呼べるチート能力を使用してドアノブを捻ると、バギャッという音を立てて扉が開いた。

 ……どうやら、内鍵が閉まっていたらしい。当然と言えば当然だよね。普通は鍵に思い当たるべきだよね。僕がここを使う時は鍵を閉めないから、事務所内とはいえ公共の場で鍵を閉めるという感覚が抜けていたのだ。そのせいで鍵の存在を忘れ扉ごと壊してしまった。むしろ扉の方が鍵の部分のみ欠けたと言った方が適切かもしれない。何にせよ器物破損である。後でプロデューサーに連絡しておこう。お、怒られないよね?

 ……そっと同じところに戻したら誤魔化せないかな?

 

「誰か……いるんですか?」

「346はいつからターミネーターが出るようになったんだ……」

 

 しかし、扉の向こう、部屋の中からこちらを伺う声が聞こえて隠蔽作戦は中止になった。

 よく考えたら鍵が閉まっているということは中に人が居るってことじゃん。つまり、今行われた僕の破壊行動も目撃されたということになる。

 ここは口封じだ!

 ──なんて、物騒な解決方法をとることはしない。実際ガチで僕が工作すれば証拠なんて残さずに隠蔽できるのだけど、もうそういうのからは足を洗ったから。

 代わりに扉の向こうへと声を掛ける。

 

「ごめんなさい、鍵が掛かっていると気付かなくて無理やり開けてしまったわ」

「如月さん……!?」

 

 扉がこれ以上壊れないように手で押さえながら、何とか開いて顔を出すと、中にいた本田と島村の怯えと驚愕の混ざった顔が見えた。

 突然扉が壊れて人が現れたら、それはびっくりしちゃうよね。二人は現れた相手が僕だったことで安心したかもしれないが、扉を壊した相手が僕だと知って驚いたようだ。知ってる? 扉って普通は壊れないんだぜ。これ豆知識ね。

 二人の格好を確認すると、すでにトレーニングウェアに着替えていた。ホッとしたような、残念なような……そんな不思議な気持ち。同期の仲間の着替えに期待していた自分を誤魔化すように、何でもないアピールとして扉については特に言及せずに更衣室内へと入った。

 しかし、幾分か顔から不安そうな色が抜けたとはいえ二人は未だ困惑した表情を続けている。これは扉について説明しなければならない流れか?

 

「建て付けが悪かったみたいね」

 

 とりあえず、最もポピュラーな言い訳を口にしてみる。試しに言ってみたものの、こんなのを信じる奴はいないだろうことは理解している。これに騙される奴がいたら指差して笑ってやる。

 

「わ、そうだったんですね! 私、突然扉が壊れるのが見えたからびっくりしました」

 

 居たよ、ここに。

 まさかの島村の納得に衝撃を受ける。これ、僕は島村にプギャーとやらなければいけない感じ?

 

「しまむー……」

 

 さすがに本田の方は騙されなかったようで、島村の方を「マジかよ」という顔で見ていた。

 僕も思ったよ。マジかよ。

 今の言い訳で通るのかよ。マジかよ。

 マジかよ。一勝しちゃうのかよ……。

 まさかの島村の純粋さに、本田への言い訳を考えることよりも島村が詐欺にでも引っかからないかと心配になってしまう。純粋だとしても少し、いやかなり度が過ぎてやしないか? この子は今までどうやって生きてきたのだろう。

 こんな騙され易いと、いつか壺を持って来て「開運の壺なんですけど、二百万円のところ百万円で買えました」とか笑顔で言いそうで怖い。もしくは、気が付いたら連帯保証人になっていて、借りた相手が失踪、借金のカタに島村が売られるパターンもあり得るぞ。

 僕は嫌だよ。知り合った相手が気付かないうちにお水に流れているなんて。この世界はもっと優しくて良いんだよ。

 島村の未来を守るためにも、ここは年長者である僕がきちんと伝える必要がある。僕は真面目な顔を意識して作り──いつもの顔である──ながら島村に近付いた。

 

「島村さん、大丈夫? 壺とか……買わされたりしてない?」

「直球で失礼なこと言い出したー!? そして元凶に心配されるしまむー」

 

 僕が島村を心配して訊ねると、本田がすかさずツッコミを入れて来る。いや、仲間が詐欺被害に遭っているかもしれないんだよ。心配になるじゃん。

 

「壺、ですか? うーん……特に買う予定ははないです」

「そう。でも、もしも美味しい話を持ちかけてくる人がいても、すぐに信用しては駄目よ? 印鑑を見るだけとか言われても危険だから頷いてはいけないわ」

「如月さんの中のしまむー像はどうなってんの」

「オレオレ詐欺からかかって来た電話で二時間くらい世間話するようなタイプ」

「わからなくもないけど、たぶん、そこはかとなく失礼なやつだよ、それ……」

 

 初対面、底辺メンタル時の僕相手にあそこまでコミュニケーションをとろうとする島村だよ?

 彼女の場合、たとえ詐欺師相手でも会話を試みるくらいしそうに見える。

 

「島村さん相手に詐欺をしようしても途中で世間話に方向転換されて詐欺れないかもしれない」

「あ、それはなんとなくわかる」

「私って、そんな感じに見えるんですか!?」

 

 僕の中のイメージを聞いた島村が眉をハの字に下げて落ち込んでしまった。

 

「あっ、いやいや、しまむーはそこまで騙されやすくはないと思うよ! ちょっと今のは如月さんも大袈裟に言っただけだろうし。ね?」

 

 必死でフォローをしてくれる本田には悪いが、僕は島村への言及を止めるつもりはなかった。もし、ここで言っておかなかったせいで、後で島村が酷い目に遭ったりしたら僕は後悔する。だったら、今ここで伝えておきたい。

 たとえ、この件で島村から決定的に嫌われたとしても。

 

「……連帯保証人にだけは絶対にならないように」

「火に油を注いでいくスタイル!」

「そんなぁ……私だって最近はしっかりして来たって言われてるのに……」

「……しまむー、それは」

「待って、本田さん。それ以上はいけないわ」

 

 島村の反論に、さらに反論しようとする本田を止める。それ以上、傷つけ合うのはよくない。仲間同士、せめて二人には仲良しのままでいて欲しい。嫌われる役目は僕だけでいいんだ。

 

「アイドルは人に夢を見させるもの……そうでしょう?」

「はっ! そ、そうだった。……大丈夫だよ、しまむー! 志は高くって言うしね!」

「もー! 二人とも失礼すぎます!」

 

 怒った島村が頬を膨らませながら、本田と僕の肩をポカポカと叩いてくる。

 

「あははっ。ごめんごめん。ちょっと悪ノリしちゃったね。しまむーは意外としっかりしてるってわかってるから、安心して」

「そうですか? なら、いいですけど……ん、あれ? 意外と?」

「あっ、と。……と、ところで、如月さんも冗談とか言うんだね! ちょっと意外だったかも」

 

 冗談?

 ……はて、僕は何か冗談を言っていただろうか。

 

「……そう、かしら?」

 

 訊ね返しながら少し考える……。うん、さっぱり思い付かない。

 本田が言う冗談が何を指すのかわからなかった僕は首を傾げるほかなかった。

 

「未央ちゃん、今、誤魔化しました? うん、でも、私もちょっと驚きました。如月さんはあんまりこういうこと言わないと思っていましたから。あ、悪い意味とかじゃないですよ?」

 

 島村も本田の言葉に乗っかって来たということは、冗談というのは本田の勘違いではないのだろう。

 そうなると、今のやり取りの中に冗談に聞こえた部分があったってことになるのだが……。

 この部屋に入った時から僕が言った言葉は全部本心なのだけれど。言ったとすれば、扉の建て付けが悪かったと嘘を吐いたくらいだ。じゃあ、それが冗談だと島村に理解されていたということになるのか。

 つまり、島村は詐欺に遭わないってことか!

 

「そう、理解してくれていたのなら安心だわ。結構……少し不安に思っていたから」

 

 島村が詐欺に遭わないか不安だったけれど、扉の建て付けが悪いと言ったことを冗談だと理解してくれているのならば不安に思う必要はないよね?

 良かった、誰の言葉でも信じる素直な子はいなかったんだ。……良いのか?

 とりあえず、誤解が解けたのは喜ばしいことだ。いや、僕が勝手に島村を誤解していただけなのだが。

 今のやり取りで島村にも普通の女の子な部分があると知った。真っ当で良心的な性格に育てた彼女のご両親には敬意を払いたい。まあ、僕相手に普通に接せられるというのは、それ自体が特殊な精神を持っていることの証拠なので、それはそれで不安になるのだが……。

 

「大丈夫だって。ちゃんと冗談だってわかるから」

「そうですよ。ああいうのは、よく友達からも言われますから。大丈夫です」

「よく言われちゃうんかーい!」

 

 本田と島村のやり取りを見て、自分の心配は杞憂だったとわかる。思ったよりも島村はしっかりしているらしい。という、それ自体が失礼な評価を下しながら、しばらくの間、僕は少女二人のジャレ合いを眺めていた。

 

 時間も押しているので僕も着替えることにする。

 適当なロッカーを選び中に荷物を放り込む。荷物と言っても小銭の入った財布とケータイしか所持品がない上に、季節的に厚着でもないので服がロッカーのスペースをとることもない。他の人はここを目一杯活用しているらしい。いつか僕もこのロッカーをぱんぱんにする日が来るのだろうか。今のところまったく想像ができない。

 

「如月さんって、あんまり物持ち歩かないタイプ?」

 

 本田が更衣室内に備わったベンチにラフに腰掛けながら聞いてくる。

 視線を少し移すと、島村も城ヶ崎姉が写っているポスターの前で立っている。

 ……なんで、この子達は更衣室に残っているのだろうか。

 着替えたのなら、さっさとレッスンルームに向かえばいいのに。いつまでも残る理由は無いだろう。

 もしかして僕が更衣室をさらに破壊しないか見張っているのかと思ったが、それにしては二人とも僕から視線を外している。見張る態度ではない。

 

「……そうね、必要最低限の物以外持ち歩かないわね」

「そうなんだ。私もそんなに多く持ち歩かない方だと思ってたけど、如月さんに比べたら多い方なのかも。でも、そんなに少ないと色々足りないんじゃない?」

「そうかしら。特に不便に思ったことはないけれど」

「いや、色々とあるじゃん。女の子なんだし」

「……」

 

 最初、僕は本田の言った「女の子」という意味がわからなかった。

 誰のことだろう、と。心の中で首を傾げた。

 だけど、すぐに思い当たる。いや、思い出したと言う方が正しいか。

 僕は女の子だったんだなって。

 ……でも、本田に言われずとも自覚はしていたのだ。自分が女の子(千早)だって。

 だから、自分と千早が別物だと考えるようになった今でも、こうして女の子(千早)の口調で話している。それが千早らしいからではなく、世間一般でいう女の子の言葉遣いだから。

 本音を言えば、今こうして心の中で話しているような、砕けた男言葉で話したいと思っている。でも、これまで積み重ねてきた千早としての演技を今でも続けてしまっている。

 未練、という感情は無いはずだ。

 では、何故今もこの言葉遣いなのか。

 それは、単純に期待を裏切りたくなかったからである。僕を千早だと思う人達の期待を……。

 

「必要になったのなら、その時にきちんと持ち歩くつもりだから」

 

 今のところ化粧品等を持ち歩く習慣はない。すっぴんだし。

 歯磨き用のブラシも裏技を使えば不要だから、本当に物を持ち歩く必要がないんだよね。でも、ポーズとして歯ブラシくらいは持った方が良いのかな?

 ちなみに家では歯磨きはちゃんとしてる。

 

「そう? でも突然来たら焦ったりしない?」

 

 来たらって、何が?

 

「未央ちゃん……」

 

 それまで口を挟まず、ずっとポスターを眺めていた島村が嗜めるような声で本田の名を呼ぶ。

 

「あ、今のはちょっとあけすけ過ぎたかな。……ごめんごめん」

「いいえ、気にしていないわ」

 

 これは嘘ではない。本田の言葉を僕は本当に気にしていないからだ。

 そもそも何が問題かわからないし。

 

「なんとなく、如月さんの感じがわかった気がする。思ったよりも気安い感じなんだね」

 

 生まれて初めて気安いなんて評価を貰った。これまで気難しいという評価を受けて来た。親、クラスメイト、教師、それらに言わせると、僕は生来の頑固者らしい。本当は他にも色々言われたけれど、覚えている限りはそんな感じの評価だった。だから間違っても気安いなんて評価を受けるわけがなかった。それなのに本田は僕を気安いと言う……。

 まさか、コミュニケーション能力が高いと相手の評価すら覆せるのか……!

 

「気安いなんて初めて言われたわ……」

「如月さんって見た目が引くくらい綺麗だし、パッと見てクールって印象を受けるから気難しく見えているだけで、実際は話してみると冗談も言えるし、色々と流せてるからちゃんと話しさえすれば見方が変わるって感じかなー?」

 

 意外にも、僕は本田から高評価を受けていたらしい。これまで周りから低評価しか受けて来なかったので新鮮だ。

 ただ惜しむらくは、具体的にどこを評価されたのかわからないってこと。

 

「そんな事を私に言うのは本田さんが初めてよ」

「そうなの? ……ねっ、しまむー。しまむーも如月さんは話しやすいって思うよね?」

「えっ。わ、私ですかっ?」

 

 突然話を振られた島村が慌てている。それは話を振られたから驚いたというよりも、振られた話そのものに慌てたように見えた。きっと本田の言う、僕が気安いという言葉を彼女は肯定し辛いのだろう。まあ、初対面がアレだからね。今でこそ話をする仲になったとはいえ、最初のあの塩対応を覚えている島村には、間違っても僕を気安いとは言えないはずだ。それは仕方がないことだから、島村からの評価は甘んじて受け入れる所存である。それが彼女を一時でも拒絶した僕の責任だ。

 

「私は……如月さんが気安く話しかけられる相手かどうかわかりません」

「しまむー……」

 

 島村は申し訳なさそうな顔でそう言うけれど、彼女がそんな顔をする必要はどこにもない。誰にでも合う合わないはある。人付き合いというものなら、なおさら合わないものは合わない。それを無理して合わせたところで辛いだけだ。誰かに好かれない、それを当たり前のこととして生きてきた僕にはどうってことない。だから、そんな顔はしないで欲しかった。僕は島村には笑顔でいて欲しい。

 

「でも、私は……如月さんは、すごく優しい人だと思います」

 

 無理して自分に関わる必要はないと言いかけた言葉を、島村の言葉がすんでのところで呑み込ませた。

 島村に優しいと言われた。他でもない、島村から。あれだけ邪見に扱った僕のどこを見て、彼女は僕を優しいと思ったのか。

 優しい、だろうか?

 僕は優しいのだろうか?

 島村が言った、優しいという評価と自分が上手く結びつかない。それは、本田が言った気安いという評価よりも違和感があった。

 

「そっか……それが、しまむーの如月さん像なんだね」

「はい。私が思う如月さんです」

 

 何か意味ありげに視線を交わらせる二人に、当事者であるはずの僕だけが蚊帳の外状態だった。中学時代はこれがデフォルトだったのに、なんだか今はこっちの方が違和感がある。この短期間にぼっち力が下がったのかもしれない。

 

「……」

 

 ところで、そろそろ着替えたいのだけれど、二人はいつまでここに居るんだ……。

 

 

 

 

 結局、着替え終わるまで居続けた本田と島村だった。

 本田はベンチに座りながら時折僕の方をチラチラと見ていた。僕が背中を向けていて気付かないと思っているのだろう。しかし、甘い。たとえ視界の外にいたとしても気配で動きくらい察知できる。本田から邪な感情を感じないので特に何か言うことはしない。何か言って春香みたいに触って来られても困るしね。

 

「私達がステージに立てるなんて……」

 

 ポスター前で呟く島村は未だライブに出るという実感が湧かないのか、喜びと不安が混ざったような顔をしている。ポスターに写る城ヶ崎姉をはじめとした346プロの上位アイドルの姿を見ることで無理やり実感を得ようとしているのかもしれない。

 

「入って早々の大抜擢! 何が起きるかわからない……。いやぁ、アイドルってすっごい楽しいよね!」

「はい!」

 

 本田の方は大して気負いを感じさせない明るい声で今回のライブへの起用を喜んでいる。島村に話を振る余裕すら見せる姿はさすがとしか言えない。

 

「如月さんはどうですか?」

 

 本田が視線をそらした隙に着替え終わった僕が笑い合う二人を眺めていると、島村から話を振って来た。何となく僕に話を振る役は本田がするものと思っていた。

 

「実感が湧かないわ」

 

 あれだけ焦がれたステージライブの出演が、こうも簡単に叶ってしまった。しかも先輩アイドルのバックダンサーとしての起用でだ。城ヶ崎姉にはああ言ったが、実際のところ、自分の力でステージの上に立ちたいという願望があった。

 仕事なので否やは無いのだけれど。ちょっとした願望を心に思い浮かべるくらいは大目に見てほしい。

 

「確かに、アイドルになってすぐにライブに出るなんて想像してなかったかなー。実感湧かないっていうのもわかる気がする。私だって実感湧かなくてふわふわしてるもん」

「私もです。ライブに出られて嬉しいって思う気持ちはあるんですけど、どうしても実感が……」

 

 二人とも唐突に決まったライブの出演に戸惑いを隠せていない様子だ。

 期せずして僕が言った言葉が二人の心情を吐露させることとなった。

 

「まあ、やってみなければわからないし。だったら精いっぱい楽しんじゃおうよ!」

 

 本田のポジティブに見せる姿は素直に尊敬する。僕は一度悩みはじめたらしばらく気分が乗らない方だから羨ましい。

 

「如月さんも着替えたことだし、そろそろ行こっか」

 

 本田に促され更衣室を後にする。

 ちなみに、更衣室の扉を壊してしまったことは更衣室から出る前にプロデューサーに連絡しておいた。反応が怖いので、返信はしばらく見ないでおこう。

 

 

 

 三人連れ立ってトレーニングルームへと向かう。場所は先日ダンスレッスンを受けた場所と同じだった。

 

「トレーナーさんって、どんな方なんでしょう」

「うーん、初日に教えてくれた人なら気が楽なんだけど。それはそれで緊張しそう」

 

 聞いた話では、二人は初日の宣材写真の撮影前にダンスレッスンを受けていたらしい。二人で。

 学校のある二人と違い、時間に余裕がある僕と入り時間をずらすのは理解できるけれど、なんだかハブられた気がして寂しいなぁ。

 

「そう言えば、如月さんってダンスやったことあるの? 私はレッスン受けるまでは授業と友達とやるくらいだったけど」

「私は養成所で練習してました。……346のレッスンで醜態を晒しましたけど」

「確か、しまむー転んでたよね」

「わー! それは言わないでください!」

 

 ナチュラルにじゃれ合う二人を見ていると、「僕必要ある?」と思ってしまう。なんならこのまま一時間くらい二人のやりとりを見ていたいまである。アニマルセラピーかな?

 

「私は独学だったわ。この間、初めてレッスンを受けさせてもらったけれど、途中で止めになってしまったから現状素人と言っていいわね」

「そうなんだ。そうなると、しまむーが一番経験者だね。今回も頼りにしてるよ!」

「はい! がんばります! ……転ばないように」

「志が低いよ。しまむー……」

 

 経験者の島村が転ぶほどのレッスンか。少し興味があるなぁ。いったいどれ程過酷なレッスンなのだろうか?

 まともなレッスンを受けたことがない素人の僕には想像できない。

 今回のトレーナーが二人を担当した人と同じだったら、是非ともご教授いただきたいものである。

 今からレッスンが楽しみだ。ここでテンション高く「レッスン? 凄いレッスンできるの? わーい!」とかはしゃぎたくなる。やらないけど。

 レッスンルームにたどり着いくまでの間、内心のワクワク感を抑え、表面だけでもいつも通りを心がける。

 レッスンルームに着いてもいの一番に部屋に飛び込むなんて真似はしない。こういうのは本田の役目だって知ってるから。中に誰か居たとしても、まず顔を見せるのが僕であるよりも本田の方が相手方も受ける印象が変わるだろう。彼女を矢面に立たせることになるが、僕が代わっても全員にマイナス印象を与えるだけだ。だから本田に任せるのがベスト。

 

「おはようございま──」

「遅いにゃ!」

「──す」

 

 元気よく挨拶をする本田の声を遮るようにして、室内に居た人物が声を張り上げる。

 何事かと、島村とともに本田の後ろから顔をだして中を覗くと、ラフなトレーニングウェアを着た少女が部屋の中心に仁王立ちで待ち構えているのが見えた。その後ろに少しぽっちゃりめの茶髪の少女と、気弱そうに目を伏せながらこちらを窺うツインテールの少女が付き従っている。

 真ん中に立つ少女の頭に猫耳が乗っているので、今のセリフはこの子から発せられたものとみていいだろう。

 猫キャラかぁ……。うん、嫌いではないかな。

 イロモノ枠に思えるけれど、一度固定ファンが付けば根強い人気が出そうだ。なんとなく根が真面目に見えるから、ギャップからの別系統ファン狙いもいけるかもしれない。

 

「遅れてきた新入りが先にステージに立つのは納得いかないにゃ」

 

 とかなんとか、相手の分析をしていると何を思ったのか猫耳少女がそんなことを言って来た。

 話の流れも切り口も唐突過ぎて意味がわからない。どういう理屈でそれを言って来たのかちゃんと説明して欲しい。納得ができない理由を納得させてくれ。

 今回のライブへの抜擢はプロデューサーが決めたことだ。それを同じ346プロのアイドルがケチ付けるとはどういう了見なのか。どこのチームに所属かは知らないが、それはそれは大層な理由があるからふっかけて来たってことだよね?

 是非とも聞かせてくれ。

 

「えっと、突然だね。みくにゃん」

 

 僕の代わりに本田が猫耳少女、改め、みくにゃんの対応に当たる。みくにゃんが納得できないと言った時、一瞬だが本田の肩が跳ねたのが気になったので、このまま出ないようなら僕が対処するつもりだったけれど、名乗り出たのなら僕が口を出すべきではないのだろう。しばらく本田に任せることにした。

 

「未央チャン」

 

 みくにゃんが本田を未央チャンと呼んだことから、二人が顔見知りなのだとわかる。みくにゃんに未央チャン。まさか、今回が初対面ですぐにそんな気安く呼び合える仲になるなんてファンタジーがあるわけないから昔からの知り合いなのだろう。いや、でも、それでも本田ならワンチャンあるかも?

 

「未央チャンならわかるでしょ。みく達がずっとデビューの機会を待っている中で、後から来た未央チャン達がいきなりライブに出るなんて、みくは納得できないって」

「それは、城ヶ崎さんとプロデューサーが……」

 

 その時、おやと思った。本田にしては切れが悪い返しだったからだ。勝手なイメージではあるが、本田ならもっと上手い返しができるはずだ。付き合いは短いけれど、彼女のコミュニケーション能力がこの程度の責めで早々衰えるのはおかしい。よほど相性が悪い相手か、後ろめたい感情がなければこうはならないだろう。

 実際、この件で本田が後ろめたさを感じる必要性はないのだ。後ろ向きな僕ですら何も思わないくらいだ。

 だから、本田は堂々と経緯を説明するだけでいい。きちんと説明すれば、それだけでみくにゃんは確実に引き下がる。初見の僕でもわかる程度に、みくにゃんはまともで平凡な常識人タイプだ。

 まあ、それでも突っかかるくらい我が強い場合は真っ向から潰せばいい。

 

「そんなこと、みくだってわかってる。でも、納得できない」

 

 案の定、みくにゃんは本田の言い方では納得してくれなかった。

 

「みくにゃん……」

「それに、ライブの話を受けたのは未央チャン達だよ。自分で決めたことを他の人のせいにするのは違うと思う」

「それは、そうだけど……」

「後から来て、チャンスを持っていかれたみく達の気持ちもわかってほしいにゃ!」

「あ……」

「でも、一度決まったことを後からあれこれ言うのも正しいとは思わないにゃ。だから、ここはあと腐れなく……あれ、未央チャン?」

 

 自分の指摘に対して本田が言葉を返さないことを疑問に思ったみくにゃんが、それまでの強い当たりから一変、心配そうに顔を覗き込んでいる。

 僕は背後からしか本田を見ていなかったので顔色を窺うことはできない。

 しかし、途中から彼女の肩が震えていたのはここからでもよく見えた。

 ……この辺りが介入時かな。

 

「ここからは、本田さんに代わって私が相手になるわ」

 

 言いつつ一歩踏み出して本田とみくにゃんの間に立つ。

 

「如月さん……」

 

 突然割り込んで来た僕に面食らったみくにゃんが僕の名を呼ぶ。

 何で僕の名前を知っているのかはひとまず置いておこう。

 僕は視線をそれまで不安そうな顔で成り行きを見守っていた島村へと向ける。それだけで僕の意図を察した島村が本田の腕を引いて後ろへと下がってくれた。奇跡と言ってもいいコミュニケーションの成立に状況も忘れて感動してしまう。本田の陰に隠れがちだが、島村もコミュニケーション能力が高い。

 

「どうも。はじめまして、如月千早です」

 

 感動を含めた諸々の感情を脇に置き、みくにゃんに向き直ると挨拶をした。

 喧嘩売って来た相手であっても、初対面なら挨拶は欠かせない。ドーモ。

 

「……」

 

 しかし、僕の挨拶にみくにゃんは反応を返さない。本田相手に絡んでいたら第三者がしゃしゃり出て来たのだから驚いて当然か。もしくは怒りで言葉を失っているか。

 だが僕が無関係だとしても、ここで本田に役割を返すつもりはなかった。

 本田の様子がおかしくなったのは確実に目の前の少女が原因である。しかし、その原因がみくにゃん本人にあるのか、彼女とのやり取りの中に混ざっていたのかはわからない。僕の中では、本田は苦手な相手にも普通に接するイメージがある。他でもない、僕自身が初対面の時に本田に普通にしてもらえたのだから、これ以上の根拠はない。

 そんな本田をコミュニケーション不全にまで追い込んだ何かがわからない以上、あのまま相手をさせることはできなかった。

 コミュニケーションは僕の不得意な分野だけれど、仲間が困っている時に動けないような人間になりたくなかった。だから、僕は介入を決めた。

 

「今回の件、私達がバックダンサーとして起用されたのは、城ヶ崎さんの発案があってのことです。そして、プロデューサーが私達に参加の意思を確認し、私達は受けると回答しています」

 

 みくにゃんがどれだけこちらの事情を知っているか確認の意味で、まずは状況を説明する。実際に僕は了承していないのだけれど、ここで言い出しても仕方ないし言い訳にしかならないので全員了承済みとする。

 みくにゃんの反応から、特にこの部分に疑問や意見はないようだ。

 話を続ける。

 

「その際、城ヶ崎さん側のプロデューサーおよび部長の許可……もとい、後押しを受けた結果、プロデューサーが私達全員の参加を決定しました」

 

 アイドル本人、相手側のプロデューサー、部長、そして私達シンデレラプロジェクトのプロデューサー。この案件において発言権と決定権を持つ人間が私達の起用を表面上とはいえ肯定している。その決定を覆す権利を有するとすればもっと上の人間だ。部長が絡んでいるので正当な理由がなければ同じ部長職ですら口を挟めないだろう。常務以上になってはじめて横槍を入れられる。

 それが会社というものであり、縦社会のルール。決して社員でもなんでもない僕達アイドルはどうこう言える立場ではないのだ。

 

「そういった方々が決めた仕事です。そして企画もスケジューリング済みで、今もその通りに各部門が動き始めています。それを貴女は納得できないと言う。……どの立場でその言葉を吐いたのでしょうか?」

「うぐっ!? ド正論過ぎて反論できないにゃ……。いや、でも! みくは自分を曲げないよ!」

 

 キャラはブレてるよ。

 

「如月さんの言ってることは正しいよ。……でも、ここで引いたら、みくは……だから、ここは無理をしてでも押し通すにゃ!」

「……」

 

 少しだけ、この少女のことを誤解していたらしい。

 僕はてっきり、納得できないからと駄々をこねるだけのモブだと思っていた。だから、少し正論をぶつければあっけなく引き下がると考え、こうして正論だけ垂れ流したわけなのだが……。なかなか侮れない気質を見せて来た。

 しかし、今は彼女に構っている時間はない。僕が先程自分で述べた通り、今からやるのはプロデューサー達が決めたスケジュールの一つだ。まだ時間に余裕があるとはいえ、それを蔑ろにしかねないみくにゃんの相手は早々に切り上げたかった。

 さて、次はどんな言葉で斬り付けようか?

 

「だから! みくとどっちが相応しいか、勝負にゃ!」

 

 ……。

 ……。

 ……なん、だとッ?

 勝負……?

 ……今、勝負と、言ったか!

 勝負ができるのかッ。

 勝負という単語に状況も忘れて一気にテンションが上がる。

 

 この僕を相手に勝負を挑んでくる存在が現れるなんて……。今まで僕に勝負を挑んで来た人間がどれだけいただろうか。その少なさを考えると、テンションくらい上がるに決まっている。

 勝負ができる。

 つまり、相手と優劣を競い合い、その結果で自分の力量がわかるということ。勉強に対するテストと同じ、相対評価による実力検査。それが勝負というものだ。

 嬉しいなぁ。まさか、こんなに早くアイドルと勝負できるなんて。ずっとこれまで、アイドルとしての自分の力を計る機会を探していたから、アイドルであるみくにゃんからの勝負の申し出は渡りに船だった。僕に勝負を挑んでくる輩って、毎回アイドル関係ないんだもん。暗殺拳の使い手とか、キリングマシーンとか、不死身の喧嘩屋とか、そんな奴らばかり相手にしたせいで戦闘力を競った記憶しかない。

 弱った本田には申し訳ないが、こんな美味しい機会を貰えたことに感謝してしまう。逃す手は無い。絶対逃がさない。もしも本田が勝負自体には乗り気だったら悪いけれど、この一戦は何としても僕が受ける。

 

「わかりました。その勝負、この私がお相手を務めさせていただきます。存分に雌雄を決しましょう」

「えぇぇ……意外に乗り気で驚きだにゃ……」

「如月さん、負けず嫌いそうだもんね」

 

 いや、そこ。みくにゃんはともかく、本田。君はこっち側だろ。何でみくにゃん側と意気投合しているのさ。仲良いのかよ。そんな相手に僕は言葉の暴力を振るったのかよ。ごめんよ。

 だが、そんな事実は今は蓋をして見ないことにする。現実逃避で目を逸らす。

 そんなことよりも、僕は目の前の勝負に夢中だった。

 さて、みくにゃん、勝負の種目は何かな?

 百メートル千本ダッシュ。片手腕立て伏せ耐久。重量空気椅子。いや、この流れならダンス対決か!

 なんでも来い。全て食い殺す。

 

「勝負方法はこれにゃ!」

 

 何やらヤケクソ気味にみくにゃんが叫び勢い良く取り出したのはどこかで見たことがある箱だった。

 

「え……」

 

 僕の口から気の抜けた声が漏れ出る。

 箱には大きく「ジェ◯ガ」と書かれていた。

 

 ……。

 

 いや、違う。そうじゃない。




本田「『仲良しだ』なら使ってもいいッ」

端から見ると三人でじゃれあいしているのに、実は一人だけガチで苦言を呈している千早。
嫌われる覚悟でダメ出ししても二人からは「如月さんは真顔で冗談言うタイプなんだな」と流されるので良好なコミュニケーションがとれてしまっている喜劇のような悲劇。
これが言葉を額面通り受け取る人間、深読みする人間ならば悪印象を受けたのでしょうが、二人が相手の感情を察せる人なので好感度だけが上がった感じです。または頭が良すぎて千早の足りない言葉を正しく補完できる人は千早の言葉を好意的に受け取れます。
765プロオーディション時の高木社長は察しすぎた上に深読みしすぎて悪意のみ読み取ってしまった感じです。逆に深読みしすぎて好意的に受け取る人もいるかもしれませんね。
モブ「今の如月さんの言葉って、悪口じゃない?」
本田「ふっふっふ、本当に如月さんがそんな意味で言ったと思っているのかい?」(無いグラサンを押し上げ)
モブ&千早「な、なんだって!?」
島村「その通りです。今の如月さんの言葉にはもっと別の意味があります」
千早「……さ、さすがCPメンバーでも随一のコミュニケーション能力を持つ本田さんね。私の言った言葉の意味を真に理解するとは」

今回本田は島村と千早の関係に気を遣っていました。攻めた発言で千早の反応を伺ってどこまで踏み込める相手なのか計っています。結果として千早は結構何を言っても大丈夫な相手だと判断されました。実際一度仲間と認定されたら地雷を踏まない限り好意的に接してくれます。本田の場合、キャラ的に千早の地雷を踏む機会がないので作中随一の安全圏に立つ女。ただ今後本田の周りが地雷原になるだけ。


今回の前川について。
アニメ本編では二話目で本田、島村、渋谷の三人と会話できていたので、3話目のレッスン前にああして絡んでいけました。しかし、この物語では千早が盛大にコミュニケーション拒否(前川視点)をしているので一歩引いています。それでも本田くらいならバチバチ絡めるかと思い、それを機会に千早ともコミュニケーションをとろうとした結果、想定外に本田がヘタれたのでいきなり魔王を引き出してしまいました。
千早「アイドルが会社に意見を言えるわけないじゃない」←言える立場の人

この魔王、これまで余波で相手をブチ殺すことはあっても真正面から敵対してくる人間とぶつかりあったことが稀なので加減を知りません。悟空が桃白白相手に「オラわくわくすっぞ! 超サイヤ人ゴッド超サイヤ人・10倍界王拳!」とかしちゃうレベルの加減知らず。前川の選んだ勝負方法がジェ〇ガだったから死ななかった。それだけです。    
あらゆる分野でプロを目指していた人間達が、千早が何か勝手にやってるのを見て心折れて撤退しています。残酷なのは千早本人はアイドルの練習の一貫としてやっていただけなのでプロを目指していないこと。
ちなみにシンプルに身体能力が高いと有利な分野の方が千早は得意です。100m走とか重量上げとか。または超絶技巧が必要な代わりに理論上これができれば勝ち確定みたいなものがある競技も得意です。ゴルフとかビリヤードとか。
だからこそ、力押しも最適解もないアイドルという競技に千早は本気を出せるわけですね。これがバトル物の世界にでも生まれていようものなら千早は挫折をせず初期の性格のままだったでしょう。

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