『外物語』   作:零崎記識

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筆者は小説投稿初心者です。
過度な期待はせずに気楽に見ていくことをお勧めします。
感想・批評は歓迎ですが暴言・悪口は炎上の原因となりますのでおやめください。


008

015

 

「何?儂と同等の力を持つ存在じゃと?」

 

「あぁ、確かに忍野はそう言った。何か心当たりはないか?」

 

四月六日 夜

 

俺はキスショットに両腕を渡し、キスショットが無事全ての部位を取り戻した後、忍野が言っていた『助っ人』についてキスショットに尋ねた。

 

「うーむ……そんな奴いたかのう…皆目見当もつかんわい」

 

「だよなぁ……」

 

やはり、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードという存在は特別なのだろう。

 

そんな存在がそうそういる筈もないのである。

 

特別とは……ありふれていては『特別』足りえないのだから。

 

「しかし知らぬ間に『心臓』を抜き取られていようとは……思いもしなかったのう」

 

「それだけ忍野の手腕が高いってことだな」

 

あんなナリでも優秀なのだろう。

 

「両腕を取り込んでも儂の力が全力の5割にも届かんのはそういう訳じゃったのか……」

 

「しかしキスショットも心当たりなしかぁ……お前と同格って言うくらいだから有名な奴だろうと思っていたんだけれどなぁ……」

 

「儂はあまり個の存在に関心を抱いたことは無いが、それでも儂と同格の存在が本当にいるのだとすれば、流石の儂も知らないはずがないと思うのじゃが……」

 

「忍野が言うには『夜になれば自分から会いに来る』らしいぞ。夜行性なのかもしれない。ドラマツルギーのような吸血鬼の可能性は?」

 

「じゃとしたらますますあり得んわい、儂も流石にこの世の全ての吸血鬼を知っておるわけでは無いが、それでも儂は吸血鬼としてはオンリーワンでナンバーワンじゃ」

 

「違う怪異の可能性は?」

 

「分からん……」

 

手詰まりか……。

 

やはり会ってみるしかなさそうだな……。

 

「もし仮に全力のお前と俺が戦ったらどちらが勝つと思う?」

 

「どうじゃろうなぁ……そればかりはやってみなければ分からん。『心臓』を取り返してもらう必要がある手前、うぬが勝つと言いたいのはやまやまじゃが……儂も自分の実力にはそれなりに自信を持っておるし、どちらが勝つのかは試してみるまで分からんじゃろう」

 

「同感だ」

 

幾ら俺とは言っても相手は同じ『例外』の素質を持った存在であることだけは確実だ。

 

そんな奴が相手ならば少なくとも俺の方も全力でぶつからなければならないだろう。

 

「―――時に我が同族よ」

 

「ん?なんだキスショット?」

 

「未だ『心臓』が残っているとは言え、儂はすべての手足を取り戻した」

 

「そうだな」

 

「ならば、そろそろうぬの望みとやらを開示する時ではないか?うぬは確か以前こう言いおったよな『全ての手足を取り戻した時に話す』と、今がその時ではないか?」

 

「よく覚えていたなぁ」

 

「ホレホレ早ぅ言うてみい」

 

「何でお前のほうが乗り気なんだよ……」

 

すげぇグイグイ来るなぁ……。

 

「よいではないか、儂何気にずっと気になっておったんじゃ。もう聞きたくて聞きたくてうずうずしておる」

 

「いや…俺の願いにそこまで期待されても困るんだが……」

 

「いやいや、期待も高まろうというものよ、何せ我が同族が欲するものじゃ、大抵のモノは自分で手に入れられる能力を持っておるうぬが態々儂に願う物じゃぞ、地味にずっと考えておったのじゃが全く見当もつかんわい。これは期待するなというほうが無理な話じゃろうよ」

 

私、気になります!的なオーラ全開のキスショットさん……。

 

うわぁ…スゲェワクワクしてる顔だ…。

 

キスショットさんのプレッシャーがぱないっス…。

 

そこまで期待されていたとは思わなかった……。

 

しゃーない、覚悟を決めるか。

 

「分かった、話すよキスショット。だがその前にちょっとしたお喋りに付き合ってくれないか?」

 

「いいじゃろう、うぬにも心の準備という物があろうからのう」

 

「じゃ、場所を変えようぜキスショット」

 

「ふむ、ではたまには外で月でも見ながら喋るとするかのう、正直ずっとこの部屋にいたものじゃから久しぶりに外の空気が吸いたいわい」

 

「いいなソレ、なかなかオツじゃないか」

 

「ついてこい、我が同族」

 

そう言うとキスショットはバサッっと大きな蝙蝠の翼を広げて板が打ち付けてあった窓から板を突き破って外へと飛び出した。

 

俺も彼女に倣って外へと飛び出す。

 

彼女が向かったのはこの廃ビルの屋上……というか、屋根の上だ。

 

月や星の明かりに照らされたキスショットは、とても美しく見えた。

 

どんな絵画でもこの美しさを表現することは不可能なほどの美だった。

 

俺はキスショットの隣に降り立ち、すぐそばに座った。

 

「やはり夜の星空という物は良いものじゃのう」

 

「そうだな……」

 

夜の住人たる吸血鬼だったキスショットにとって、夜空というのは特別なのだろう。

 

「して、我が同族よ。何の話をするつもりじゃ」

 

「特に決めちゃいないが……そうだな、まずはお前の話が聞きたいな。この500年の事を」

 

「残念じゃが、語るべきことはあまりないのう。基本的には退屈な五百年じゃったからのう……唯一語れることがあるとすれば……やはり『あの男』の事かの」

 

「あの男?」

 

「儂の……最初にして唯一の眷属じゃよ」

 

「眷属なんていたのかお前」

 

「そやつは―――戦士じゃった……うぬほどではないが、そやつも儂が背中を預けるに足る、凄腕の戦士じゃ」

 

そして、キスショットは語りだす。

 

「四百年前の事じゃな、若さにかまけて世界中をふらふらとして初めてこの国を訪れた頃に出会った男じゃ」

 

「四百年前の日本の戦士……というと、ソイツは武士か」

 

「この国に来るのは久しぶりじゃが、随分と平和になったものじゃな」

 

「殺伐としていたほうがよかったのか?」

 

「別に…そういう訳では無いわい」

 

「そいつはどんな奴だったんだ?」

 

「『専門家』じゃよ」

 

「忍野と同じ仕事をしていたってことか?」

 

「どちらかといえばヴァンパイアハンター共と同じといったほうが正しいかのう」

 

「怪異狩りか、よく眷属にしたな」

 

「まぁ、そのころはいろいろあっての、儂は奴に敵だとは思われていなかったのじゃ」

 

「ほう……」

 

そう言ったキスショットは、何処か遠い眼をした。

 

「…なぁ、ソイツってやっぱり今はもう……」

 

「うむ、既に死んでおる」

 

「やっぱり……」

 

もしソイツが今も生きているのだとしたら、キスショットは今、こんな状況にはなっていないだろう。

 

「その形見が―――これじゃ」

 

そう言ってキスショットは自分の腹に手を差し込み、腹の中から刀を抜刀した。

 

全長2mはあろうかという大太刀だった。

 

「その刀は?」

 

「銘を『心渡』という。『()()()()』の異名をとる()()じゃ。無名の刀工の一品とのことじゃが、なかなかの業物らしいぞ……ま、儂にはよう分からんがのう」

 

「『怪異殺し』って確か……」

 

「もともとはこの刀の異名じゃ」

 

「ちょっと触らせてもらってもいいか?」

 

「よかろう、ホレ」

 

俺がキスショットから『心渡』を受け取ると、じっくりと見分する。

 

「……スゲェなこれ、刃の鋭さが半端じゃない」

 

そう言いながら俺は『心渡』を返す。

 

「ふむ、我が同族よ、人型の的になるものを用意できるかの?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

そう言って俺は能力で人型の肉塊を創造する。

 

なんか髪の毛が尖ってて神父風のローブを着ているが、只の肉塊だ。

 

別に他意なんてないぞ?

 

「誰かに似ておらんか?」

 

「気の所為だろ」

 

「いやコレ明らかにギr――」

 

「関係ない」

 

無いったらないのだ。

 

俺は『()()()()()()』を用意しただけなのだから。

 

目の前にあるのはただの的、それだけである。

 

「……まぁ良いか」

 

そう言ってキスショットは『心渡』を水平に一閃。

 

一直線の見事な水平斬りだった。

 

「今儂が斬ったところを確認してみるのじゃ」

 

言われて俺は、先ほど水平に斬られたところを確認する。

 

「無傷だと……」

 

確かに横薙ぎにされたはずの的には、しかし傷一つなかった。

 

チッ……無傷か。

 

「見ての通り『心渡』の切れ味は折り紙付きじゃ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にな。まぁ儂の腕があっての話じゃがの」

 

「つまり、逆に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことか」

 

「その通り、この刀は()()()()()ことのみに特化しておる」

 

「故に『怪異殺し』……という訳か」

 

「怪異に限らん、怪異でも神でも、()()()()()()()()()()すべてに有効じゃ。かすり傷でも致命傷になり得る」

 

何というチートアイテムだ……。

 

流石にそれは反則過ぎませんかねぇ…。

 

しかも持ち主がキスショットって……。

 

絶望しかねぇ……。

 

『鬼に金棒』どころじゃないよコレ。

 

「斬られたのが全力のお前でもか?」

 

「まぁ、そうじゃな。儂はそもそも斬られる前に対処してしまえる故、儂自身が斬られたことは無いのじゃが……『心渡』は()()()()儂の身体を切断するじゃろう。そうなれば不死身であったところで意味などないわい」

 

「何という反則アイテム……」

 

某デスゲームのとげ頭さんも大激怒不可避ですわ。

 

チートやチーターやろそんなん!

 

だってコレ、あのヴァンパイアハンターの連中が三人集まって準備しないとできないことを斬るだけでできるんだろ?

 

キスショットですら殺せるアイテムなんてチート以外の何物でもないですやん……。

 

「見たところ変わった素材でできているみたいだが……何でできているんだ?コレ。お前の怪力にも耐えられるなんてよほどだろう」

 

「この刀はのう、儂の眷属が自らの血肉で作り上げた刀じゃ」

 

そう言ってキスショットは自らの腹に『心渡』を収納した。

 

恐らく、変身能力で自らの体内を刀の『鞘』に作り変えているのだろう。

 

「そいつが死んだ理由ってのはやっぱり―――」

 

「うむ、『自殺』じゃ」

 

「そうか……」

 

「吸血鬼の死因の九割を占める、よくある理由じゃよ」

 

「退屈は人を殺す……か」

 

「純正であれ元人間であれ、大抵の吸血鬼は200年も生きれば死をえらぶものじゃ。しかしあの男は……吸血鬼になって僅か数年で死を選んだのじゃ」

 

―――そんな数年では……大して何も変わらんというのに……。

 

「自らが人類の敵になることに…吸血鬼に『()()()()()』ことに耐え切れなかったのか……」

 

「当時の儂には…想像もつかんかったことじゃ。寧ろ感謝されているとまで思っておった。何せ『()()()()()()』は…儂にとっては人間が牛や豚を食らう事と同じ程度の認識でしかなかったのじゃから……何が悪いのか皆目見当もつかんかった」

 

だろうな…。

 

吸血鬼にとって、『人間を食べる』ことは極々当たり前の、当然のことでしかないのだ。

 

彼女に対して『人を食べるな』というのは、人間に対して『飯を食べるな』と言う事と同じこと。

 

『飢えて死ね』と言っていることと等しいのである。

 

そんな理不尽なことを言われても、キスショットはちっとも理解できなかったのだろう。

 

所詮それは、人間の都合だ。

 

吸血鬼に同じ価値観を求めようなどナンセンスにもほどがある。

 

「そうしているうちに―あの男は死んでいきおった。日の光の中に身を投げ、全身が火達磨になって焼け死んでいく様を態々見せつけるように……最期まで儂に怨嗟の言葉を投げつけて……あの男は……灰になりおった」

 

「じゃあ『心渡』は……」

 

「儂を殺すためにあの男が創ったのじゃろうな」

 

「皮肉な話だな」

 

「以来儂は二度と眷属を作らないと誓ったのじゃ。それから儂は……ずっと一人で生きてきた」

 

―――ずっとずっと暇じゃった。

 

「誰にも理解されないまま、気が付けば儂の名は伝説になっておって、どこへ行っても無用なトラブルばかりに付きまとわれておったわい。500年の月日を生きたが……儂はもう、死にたくて死にたくて仕方がなかった――儂はこの地へ、死に場所を探しに来たのじゃ」

 

「分かるよ」

 

俺も―――かつてはそうだったから。

 

()()()()()()()()―――の話じゃがな」

 

「……」

 

「まさか死に場所を探すつもりでこの地を訪れたはずが、こんなところで『同族』に出会うとは―――さすがの儂も内心驚いたものじゃわい」

 

「俺もだよ」

 

「それからは退屈せんかったな……うぬはやることなすこと無茶苦茶じゃった。特に、うぬと出逢って吸血鬼でなくなってしまったことは……儂の人生最大の驚愕と言ってよかろう」

 

「だろうな…」

 

そうそうあることでもあるまい。

 

500年吸血鬼として生きてきたのに、いきなり別の存在に変わっちまったのだからな。

 

驚かないはずがない。

 

「――さて、儂の話はこのくらいじゃ。今度はうぬの話をしてみよ」

 

「俺の話か?」

 

「儂にばかり過去を話させといてうぬも話さないのは不公平じゃろう」

 

「つってもなぁ…俺の人生にも語るべきことなんてないし……大方キスショットと同じような詰まらない話だぞ」

 

「よいよい、聞かせろ」

 

「そうだな……俺の人生は、それはそれは退屈なものだったよ」

 

そう言って、俺は自分の過去を語った。

 

この身に宿る例外性の事を――

 

求められるままに搾取され、最後には孤独になったこと――

 

全てのものが取るに足らなくなって、世界の全てに絶望したことを――

 

すべて――話した。

 

「――っと、俺の過去はこんなものだ。正直人に聞かせるような話じゃないがな」

 

「そうか……じゃからあの時、うぬは儂を『同族』と呼んだのじゃな」

 

「あぁ、あの時のお前の眼は、過去の俺とそっくりだったからな。お前が俺と同じ存在であることは、一目で分かった」

 

「しかし……じゃとすれば妙じゃな、うぬの過去が本当であるとすれば、うぬは今、ここにいるはずがないではいか、そうだとすればうぬはまるで――」

 

「まるで、異世界から来たよう人間のよう――だろ?」

 

「うむ」

 

「そう、お前の言う通りだ、俺は元々、()()()()()()()()()()()

 

「ほう……」

 

「なぁキスショット」

 

「何じゃ我が同族よ」

 

「お前は、この世界がもし『作り物』だとしたらどう思う?」

 

「何?」

 

「これはある人物の受け売りなんだが―――」

 

俺は立ち上がり、『アイツ』のように語りだす。

 

「世界には、様々な『物語』がある。それは映画やドラマ、アニメやゲーム、小説や音楽といった、人間の創作物に限らない、この世に生きとし生ける者たちの一生すらも、物語になりうるんだ。人間一人の一生だって、ソイツを主人公とした物語であると言える。俺には俺の、お前にはお前の歴史があるように、それぞれが違った物語を歩み、違った物語を生きている。故にこの世界とは、様々な存在が生きる物語の集合により生じた、物語の重なりであると言えるんだ。つまり物語とはそれ一つで独立した『世界』であって、俺もお前も、それぞれが違う物語、違う世界を生きる別々の存在だ。即ち物語とはこの世にいる存在の分だけ存在し、今この時も、物語、つまり世界は無限に増え続けている。しかし物語とは、誰かによって観測されなければ物語として存在できない。俺はな、キスショット、そういう無数にある世界の全てから隔絶された場所、どんな物語にも干渉しない例外的な場所で物語を観測する存在、『観測者(オブザーバー)』によって様々な物語を、様々な世界を旅するべく『この世界』に送り込まれたんだ」

 

「それは中々に興味深い話じゃのう」

 

「この世界は誰かの手によって作り出された『創作物』で、過去も現在も未来も、さながら『物語』のようにすべてが決まっているとしたら……お前はどう思う?」

 

「んー別段そこまでおかしな話ではないかのう」

 

「へぇ…どうして?」

 

「儂は……今でこそ怪異では無くなりはしたがもともとは怪異じゃったからの。怪異とは人間が語り継ぐ都市伝説、街談巷説、道聴塗説という、言わば人間が作り出した『物語』の登場人物じゃからのう。つまり怪異とは、人間が作り出した『創作物』じゃ。儂らは人間の語り継ぐ『物語』に基づいて存在し、行動する。吸血鬼が血を吸うのも、全ては人間が『吸血鬼は人の血を吸う存在』として語り継いでいるからじゃ。即ち『怪異』とは、『物語』であると言え、うぬの言に従うならば『怪異』とはまた『世界』であると言えよう。であるのならば儂らという存在はそれぞれ独立した『物語』を生きる『別世界』の存在であるし、つまり儂らという存在の一つ一つが別の『世界』であることの証左じゃ。故にうぬが別世界の人間であり、この世界も無数にある世界のうちの一つであるということは、別段儂にとって奇妙でもなんでもないわけじゃな」

 

「成程なぁ……そう言われれば確かにそうだ。『物語』によって成立し、観測されることによって存在し、そして一つ一つが別の『物語』として独立している……そう考えれば怪異とはその存在そのものが一つの『物語』でまた一つの『世界』である……ってことか……成程、これは一本取られた」

 

「じゃからまぁ、この世界が儂らには及びもつかないような存在によって作られた『物語』であり『世界』であり『怪異』であるとしても、そこまで違和感は無いのう。まぁ、流石に『世界そのものが怪異である』とは、なんともスケールの大きい話じゃなぁ…とは思うがの。して、うぬは何故世界を巡る旅に出たのじゃ?」

 

「最初はただの『現実逃避』だ。俺の力を世界に拒絶され、世界に絶望した俺は『観測者(アイツ)』によって世界は無限にあることを知って、だったらそのうちどれか一つは俺ですらも受け入れてくれる世界があるかもしれないと期待して『観測者(アイツ)』の誘いに乗った。ただそれだけの理由だった。だが、今は違う」

 

「何が――違うのじゃ?」

 

「旅の目的そのものは変わっちゃいない。だがそれとは別にもう一つやりたいことができたんだ」

 

「やりたいこととな?」

 

「この世界は、どうやら俺の求める世界ではなかったようだが、しかし、そんな世界でもお前や羽川のように俺と同じように強すぎる力を持つが故に、俺と同じように孤独である奴がいることが分かった、俺はそういう奴らと共に理解しあえるような関係を作りたいんだ。だからさ―――キスショット」

 

俺は、キスショットの金色の眼をじっと見つめながら言った。

 

「俺と――共に異世界を旅する最初のパートナーになってくれないか?この世界が退屈で仕方がないというのなら、俺と一緒に様々な世界を旅しないか?俺のそばで―――共に生きてくれないか?」

 

静寂が訪れる。

 

しばらくの静寂の後、キスショットが口火を切った。

 

「――――は」

 

「キスショット?」

 

「は「はは「ははは「はははは「あっははは「ははははははは「はは「はははは「は「ははははは「はは「あははは「あはははははははははははははははは―――!」

 

キスショットは――笑った。

 

心底愉快だと言わんばかりに――笑った。

 

とても凄惨に――笑った。

 

「まさか!こんな――こんな辺境の!極東の地で!死に場所を探しに立ち寄ったつもりの場所で!ここまで熱いプロポーズを受けることになろうはの!儂が生れ落ちてから五百年余り経つが!こんなことは初めてじゃ!いやはや『人生万事塞翁が馬』とはよく言ったものじゃわい!のう!『()()()()()()()()』!そこまで熱心に頼み込まれたとあってはとても断れぬではないか!よかろう!その誘い乗った!五百年も生きてきて、最早十分と思っておったが!うぬと共にこの命尽きるまで世界を巡るのも悪くないのう!ここではない新たな世界、新たな物語をうぬと旅するなど!儂としても心が躍ってしまうではないか!」

 

「そうか、これからもよろしくな、相棒」

 

「かかっ!儂の命尽きるまで、どこまでもうぬについていこうではないか!」

 

「―――盛り上がっている中、悪いのじゃがのう」

 

「「―――ッ!?」」

 

突如として背後から割り込んできた見知らぬ声に俺たちは驚愕した。

 

驚いて俺が背後を見ると、そこには―――

 

()()()()()じゃな、我が仇よ」

 

「キスショットが――()()だとっ!?」

 

そこにいたのは、()()()()()()()()()()()だった。

 

「キスショット?否、我が名は『()()()』じゃ」

 

『忍野忍』と名乗ったもう一人のキスショットは、しかしどう見ても頭からつま先までの全てがキスショットとうり二つであった。

 

まるで、鏡から出てきたようにそっくりだった。

 

いや……違う。

 

姿形はキスショットと同じだが、忍野忍はその体から神々しいオーラを放っていた。

 

――まるで、()()()()()()()()()()()()

 

「何故キスショットと同じ姿なんだ!」

 

「同じ姿であるのは当然であろう、儂は――」

 

忍野忍はキスショットを指で示して言った。

 

「儂は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()故な、姿が同一であるのも当然じゃろう」

 

「その身にまとったオーラ、お前……何者だ?」

 

「儂は……神じゃ。あの小僧の手により、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの心臓を核に、神として作り出された存在じゃ」

 

「忍野に……?お前が忍野の言っていた『助っ人』か!」

 

「いかにも、儂は明日の晩、うぬと殺し合いをする仇として作りだされた者よ」

 

「何をしにここへ来た!」

 

「今日は只の顔合わせじゃ。今うぬとやりあうつもりはない。それに――儂が用があるのは寧ろ()()()じゃ」

 

「―――ぐあぁっ!―――な―何をする!――放せ!放さぬか!」

 

「キスショット!?」

 

慌ててキスショットの方を見ると、キスショットは忍野忍が作り出した影の手によって、忍野忍の影に取り込まれているところだった。

 

「キスショットォ!」

 

俺はすぐさまキスショットに駆け寄ろうとするも、その行く手を見えない壁のような力によって阻まれてしまった。

 

「明日の決戦に備えて、万全になるよう準備をしておきたいからのう、儂の残った身体を返してもらいに来たのじゃ」

 

「クソッ!何だこの壁!」

 

俺が全力で殴りつけても見えない壁は依然として俺を阻み続けた。

 

「無駄じゃ、神の力で作った障壁じゃぞ?核ミサイルを撃ち込まれてもビクともせぬわ」

 

忍野忍はそう言って影の中にキスショットを取り込んでいく。今やキスショットは胸のところまで影に飲み込まれてしまっていた。

 

「ぐぅっ!この――無礼者がぁ!今すぐ儂を放さんかぁ!」

 

このままじゃ埒があかねぇな……。

 

だったら忍野忍自身を叩くだけだ!

 

そう決心すると、俺は間髪入れずに吸血鬼の身体能力をフルに使って忍野忍に殴りかかった。

 

しかし―――

 

「それもまた、無駄じゃ、神である儂に触れることは例えうぬでも叶わん」

 

キスショットへの道を阻んでいる見えない壁と同じものが、忍野忍の前にも展開されていた。

 

「ぐあぁぁっ!―――」

 

そうしているうちに、キスショットは既に首元まで飲み込まれてしまっていた。

 

「キスショット!」

 

手足を飲み込まれ抵抗ができなくなったキスショットは見る見るうちに影の中へと沈んでいく。

 

もう自分ではどうにもできないことを悟ったキスショットは、俺と目を合わせると、優しく笑った。

 

「お前様―――後は……任せたぞ」

 

「キスショットォォォォ!」

 

そう言い残して、キスショットは完全に影に沈んだ。

 

「では儂はこれで去るとしよう、我が仇よ、明日の夜、楽しみにしておるぞ」

 

――精々儂を退屈させないように足掻くがよい

 

そう言い残して、忍野忍は飛び去った。

 

その直後――

 

「――やぁ、阿良々木君」

 

俺の背後から聞きなれた声がした。

 

「何しに来やがった、忍野」

 

俺は振り向いて忍野を睨みつけた。

 

「はっはー、そう睨むなよ、相変わらず元気がいいなぁ、何か良いことでもあったのかい?」

 

「何しに来やがったと聞いているんだ忍野メメ!」

 

「怒鳴るなって、悪かったと思ってるよ」

 

「どの口が言ってんだ!」

 

「いやホントに悪かったって、忍ちゃんのことは僕が謝るから、とりあえず僕の話を聞いてくれ、それともこういえば少しは聞く気になるかな?キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを助けたければ僕の話を聞くことだって」

 

「……」

 

「僕が何を言っても言い訳になるかもしれないけれど、ハートアンダーブレードが攫われたことは、僕の意図したことじゃないんだ。忍ちゃんの完全な独断専行さ」

 

「戯言を……」

 

「本当なんだって、言っただろう?今回の『助っ人』はかなりのじゃじゃ馬だって。僕でも制御はできないって」

 

「忍野忍は、お前が作り出した神だと聞いたぞ」

 

「そう、忍野忍はまごう事無き『神』だ。つまり人間の僕に制御できる存在じゃない。僕ができることは、彼女に対して『交渉』して神様らしくお願いを聞いてもらう事だけさ」

 

「忍野忍は何者なんだ?」

 

「彼女はね、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの心臓を核として、この街に存在するある神社に昔祭られていた『御神体』を依り代に、僕が作り上げた神なんだ」

 

「体は?心臓とご神体だけでは体を形成することはできないだろ、忍野忍の身体は『何』でできているんだ?」

 

「剣でできている……分かった分かった真面目に話すから睨まないでくれ。忍ちゃんの身体を形作る元となったのはね、『よくないもの』だよ」

 

「『よくないもの』?随分曖昧だな」

 

「簡潔に言ってしまえば怪異になる以前の『存在』にもなり切れない『素材』さ。これが寄り集まると、怪異ってのは生じやすくなる。僕はそういう物の『吹き溜まり』となっている場所から『よくないもの』を集めてハートアンダーブレードの心臓を核、ご神体を骨子にして『忍野忍』という神を作り上げたのさ」

 

「『吹き溜まり』とは何だ?」

 

「そう言う霊的なものを集めやすい環境にある場所というのが存在するのさ。ホラ、偶にテレビとかで見るだろう?所謂『パワースポット』とか『心霊スポット』とか言われている場所のことだよ」

 

「何故奴はキスショットを攫ったんだ?」

 

「恐らく、吸血鬼のスキルを万全に使えるようにするためだろうね、幾ら神になったとは言っても忍ちゃんが持っているのは心臓一つだけ、吸血鬼にとって心臓は最も重要なパーツではあるけれど、でもそれが吸血鬼の全てってわけじゃない、心臓一つだけしか持っていない彼女は、使える吸血鬼のスキルにも限りがある。だからハートアンダーブレードを攫って影に取り込むことで自分の吸血鬼のスキルを補完しようって考えだったんだろう」

 

「あの見えない障壁はなんだ?吸血鬼のスキルにはあんなもの無かったぞ」

 

「あれは忍ちゃんが()()()()持っているスキルだね。所謂『()()()』ってやつさ」

 

「キスショットはどうなる?」

 

「未だ大丈夫のはずだよ、スキルを補うために影に取り込んだとは言っても、彼女ほどの存在と同化しきることは時間をかけなければ無理だ。恐らくは明後日の朝までに忍ちゃんを倒せれば、ハートアンダーブレードは助かる」

 

「だから明日の勝負で決着をつけろ…という事か」

 

「そういう事」

 

「場所と時間は?」

 

「いつも通りさ、これまでと同じ時間同じ場所でゲーム開始だ」

 

「……分かった」

 

「今回のことは本当に悪いと思っているよ。だから君には忍野忍の情報をすべて話したつもりだ。これで許されるとは僕も思っていないけれど……。僕は結界を張る作業が途中だからもう行くね…頑張れよ、阿良々木君」

 

そう言って忍野は立ち去った。

 

俺は、忍野忍を打倒するべく、頭をフル回転させて一人策を練り始めた。

 

016

 

四月七日 夕方

 

学習塾跡二階

 

「……阿良々木君」

 

「来たか……羽川」

 

いつもの場所、いつもの時間に、羽川は訪れた。

 

「そりゃ来るよ、突然メールに『話がしたい』なんて送られてきたら」

 

そう、いつもとは違い、羽川は自分でここに足を運んだわけでは無い、俺が呼んだのだ。

 

「一体どうしたの?いつになく消沈しているようだけれど……」

 

「あぁ…そんな風に見えるのか、今の俺」

 

「見える。だっていつもの阿良々木君は自信に満ち溢れている顔しているもの」

 

……そんな風に思われていたのか。

 

「―――初めてなんだ」

 

「何が?」

 

「こんなこと――初めてなんだ…こんなにも……自分が無力だと思わされたのは…」

 

「―――それは、いつもそのベッドで寝ている筈のハートアンダーブレードさんの姿が見えないことと…何か関係あるの?」

 

「相変わらず鋭いな、お前……」

 

本当に心でも読めるんじゃないだろうか。

 

「キスショットが攫われた」

 

「……誰が…攫ったの?」

 

「忍野忍とか名乗る神だ。どうやら忍野の奴が今回の決闘のために用意した相手らしい」

 

「何のために?人質?」

 

「その神は、キスショットの心臓を核にして作られていてな、忍野が言うには、奴は足りない『パーツ』を取り返しに来たんだそうだ……だというのに俺は…何もできなかった……目の前であいつが攫われかけているというのに……俺は…それを止めることができなかった」

 

「だから……落ち込んでいるのね」

 

「初めてだったよ……あそこまで無力だったのは…俺は『例外』で…不可能なんてなくて……何でもできるって……そう…思っていたんだ」

 

「だけど、初めて自分が何もできないような状況に直面して、自信を失ってしまったと」

 

「まぁ……我ながら女々しい話だが…そういう事だな」

 

「だから私を呼んだの?」

 

「……」

 

「自信を無くしてしまった阿良々木君は、このまま戦いに行くことが怖いから、誰かに励ましてもらいたかった…だから私を呼んだの?」

 

「違う…そう言う訳じゃない」

 

「じゃあどういう訳なのよ」

 

「俺にも分からねぇ…何せこんな経験…今までしたことがなかったからな……この感情にどう整理をつけたらいいのか分からなくなっちまって……あれこれ色々考えたけれど、俺一人じゃどうにもならなかった…だったら誰かに話を聞いてもらえれば、この感情に整理がつくかと思ってな」

 

「だから私を呼んだ…誰かに話を聞いてもらいたくて、友達である私に白羽の矢を立てた…」

 

「まぁ、そういうことだな」

 

「ありがとう」

 

「は?何でお前が礼を言うんだ?」

 

「だって、阿良々木君が私を頼ってくれたことって、今まで無いでしょ?だから、これで阿良々木君に迷惑かけた分が一つ返せるな…と思って」

 

「そんなことを気に悩んでいたのか?」

 

「そう『こんなこと』をいちいち私は気にしていたの。友達が大変な状況にあるのを知っているのに、私が友達にしてあげられることは何もない……正直かなり自分の無力さを思い知らされた気分だったわ。ちょうど今の阿良々木君と同じように……ね」

 

「……」

 

「阿良々木君はさ、失敗したことある?」

 

「無い」

 

即答である。

 

生まれてから一度も…俺は失敗したことがなかった。

 

いや……一度だけやったな。それもデカいやつ。

 

俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私はあるよ。それもたくさん」

 

「何?」

 

「意外だった?でもね阿良々木君、何でもできる人間なんていないの、誰だって何かしらの欠点があるものなの」

 

そんなことは知っている。

 

だからこそ『欠点がなさ過ぎた』俺は人間から…世界から拒絶されたのだから。

 

「だからこそ、失敗しない人間なんて言うのも、本当は存在しないはずなんだよ。でも阿良々木君は……どうやら他とは随分と違うようだから…今まで失敗したことがなかった。だからこそ今、阿良々木君は失敗そのものじゃなくて『()()()()()()』に戸惑っている」

 

「失敗した……自分…」

 

「阿良々木君は強い人だから、ただ失敗したぐらいじゃそこまで落ち込まないと思う、今の阿良々木君は落ち込んでいるというより()()()()()()のよ、自分がこれまで失敗したことがないから…いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()、阿良々木君はそれを知って驚いて、戸惑っている」

 

「そう……なのか…」

 

「だから阿良々木君はさ、きっと答えを出してもらいたかったんだと思う。()()()()()()()()()()()()()()()私に答えてもらいたかったのだと思う。自分の中にある戸惑いの正体を…私に解き明かしてもらいたかったのだと思う」

 

「俺は……」

 

何も言葉が出なかった。

 

図星だった。

 

羽川の言葉は俺の胸の中にストンと落ちていき、まるでジグソーパズルを完成させるために足りない最後のピースを見つけたような気分だった。

 

「阿良々木君は多分、ただ失敗しただけならすぐに『次失敗しないようにする』ために動くことができる人だと思うの、原因を究明して対策を立てて、今度は成功することができる…阿良々木君の能力なら、それは全部きっと、簡単にできてしまうこと」

 

返す言葉もなかった。

 

認めるしかない。

 

「でも…阿良々木君は戸惑っている、生まれて初めて失敗して、それまで積み上げてきた『前提』が覆されて、阿良々木君は自分の正しさに疑問を持ち始めている」

 

「……」

 

「本当はもう、阿良々木君は忍野忍っていう神様を倒して、ハートアンダーブレードさんを取り返す術を思いついている」

 

「……ははっ」

 

本当に……こいつは何でもお見通しだ。

 

どこまでも…見透かされている

 

「でも阿良々木君は不安なのよ、それまで信じてきていた『自分の正しさ』を覆されて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、分からなくなってしまって、不安になっているのよ」

 

どこまでも…見透かしてくれるよお前は…。

 

だが…不快な感情は全くわかない。

 

寧ろ、すごく清々しい。

 

頭の中に掛かっていた靄が一気に晴れていき、思考が冴えわたっていく。

 

カチリ

 

と、脳内で歯車がかみ合うような音がして、全身に力がみなぎってくる。

 

「でもそれは結局、個人の問題だから、私が答えを出したところでそれは結局『私の答え』でしかなくて、阿良々木君がそれで納得できるわけがない。だから阿良々木君は、自分自身で『自分の答え』を見つけなければならない」

 

忍野忍と戦わなければ…それは分からない。

 

「でもね、答えを見つけてあげることはできないけれど、自信を取り戻すアドバイスみたいなものなら、私にもできる」

 

――信じて…阿良々木君。

 

「阿良々木君は今、自分を信じられなくなっている。だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を信じて」

 

その瞬間、俺の脳裏にキスショットが残した言葉が蘇る。

 

そうだ―――

 

キスショットはあの時――俺に言ったんだ。

 

『後は任せた』って――

 

キスショットは、俺を信じて後を託してくれた。

 

だったら、俺がこんなところでいつまでも燻っているわけにはいかない―――

 

それに―――

 

「私も、阿良々木君を信じているから」

 

俺を信じてくれている友人の前で、いつまでも腑抜けているわけにはいかないよな。

 

「あは、阿良々木君いつもの顔になってる」

 

「ありがとう、羽川。もう大丈夫だ」

 

「いいよ、友達だもの」

 

「お前は何でも知ってるな」

 

「何でもは知らないわよ――知ってることだけ」

 

全く……お前ってやつは――

 

ここまで俺を理解してくれる存在は…かつてどこにもいなかったよ。

 

親も、親戚も、友人も

 

誰一人として、前の世界に俺を理解してくれる『理解者』は世界のどこにもいなかった。

 

だが今――こうして俺は『理解者』と出逢う事ができた。

 

感謝するぜ『観測者(オブザーバー)』――

 

お前のおかげで――俺は――

 

「頑張ってね、阿良々木君」

 

―――こんなにも良い友人と出逢えた。

 

「おう、絶対に勝って、今度こそ新学期にお前と会おうと約束するよ」

 

「そう、じゃあこれは餞別」

 

「え」

 

その瞬間、俺の身体に温かい感触が広がる。

 

羽川が俺に抱きついて来たのだ。

 

「は――羽川さん?」

 

「えへへ、女の子にここまでさせたんだから、絶対に約束守ってもらうんだからね」

 

oh......

 

マジかい。

 

これは何としてでも負けられなくなったぞ。

 

だが、もとより負ける気は無い。

 

「心得た」

 

俺はそう言って、羽川を抱きしめ返したのであった。

 

昨日キスショットによってぶち破られた窓から外を見ると、もう日が沈んでいた。

 

約束の時間が、間近に迫っていいた。

 

さて―――囚われになったもう一人の『理解者』を、取り返しに行きますか。

 

「じゃ、羽川、行ってくるぜ」

 

「行ってらっしゃい、阿良々木君」

 

さぁ――『最終決戦』だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日間ランキングにまたしてもこの作品が!

でも一瞬で消えてしまった……。

無念!

どうも

シリアスを ぶち壊すなら 得意です

その『幻想』(シリアス)をぶち殺す!

シリアス殺し系作者の零崎記識です。

日間ランキングの壁は厚かったよ……。

でもまぁ、こんな筆者の作品が一瞬とはいえランキング入りすること自体、奇跡のようなもんなのですけれどね。

これも読者の皆様のおかげでございます。

ありがたや~(>人<)

さて毎回恒例となりつつある筆者の叫びを一つ

や っ て し ま っ た ー !!!

あー恥ずかしい恥ずかしい!(ゴロゴロ…

完全に筆者の中の無闇君のキャラが崩れ落ちました。

あーセリフがいちいちクサいよー!

いやね、キスショットとのあのプロポーズもどきのセリフは当初から決めていた通りなのでそこまでではないのですが……。

やっぱり羽川さんですよ……。

ま た お 前 か !

もうマジでこれ以上無闇君に黒歴史量産させるのやめてくれませんかねぇ……。

どうか勘弁してください(切実)

羽川さんが出てくると、なんでこんな甘ったるい雰囲気になってしまうのか……。

ブラックコーヒーを飲みたくなってしまった方は申し訳ありません。

全部ヒロイン妖怪ハネカワ=サンってやつの仕業なんです!

筆者自身、書いてて砂糖吐きそうでした。

あぁ^~羽川さんがグイグイくるんじゃぁ^~

羽川さんが可愛い過ぎて辛い。

何故うちの羽川さんはこんなにもヒロインなのか……。

キスショットの立場はぁ!?

やはり羽川さんがメインヒロインを奪い取るのは間違っている!

略してハネガイル!

伝説のぼっちも彼女の前にはきっと陥落するでしょう。

それはさておき、今回のラスボスの登場ですね。

皆さん色々と考えていたと思いますが……。

えぇ、キスショットに匹敵する力の持ち主とは、キスショット自身でしたというオチです。

ひえぇ……石を投げないで!

な ん じ ゃ そ り ゃ あ ‼

という皆さんの声が聞こえてきそうですねハイ。

いやー筆者自身、このラスボスが一番の関門でした。

無闇君の願いは今回書いた通りなので彼が原作のようにキスショットと闘いになる理由がなかったんですよね。

それで彼女以外でラスボスにふさわしいキャラを色々と考えてはみたのですが……。

候補としては4つでした。

1、原作通りキスショットとやり合わせる

2、影縫・斧乃木ペアと無闇・キスショットペアでタッグマッチ

3、心臓で強化した死屍累生死郎と戦う

4、吸血鬼にしたギロチンカッターを心臓で強化して戦う

以上の4つが筆者が考えていた展開で、一番有力なのは2でした。

1は最初から却下で

3は2の次に有力でしたが展開の都合上却下

4は途中まではそれもありかなと思っていたのですが無闇君が激おこしてしまったので没に

006を投稿した時点までは筆者自身2でいこうと思っていたのですが……。

突然ひらめきがありましてね、キスショット自身と戦わせられないなら『もう一人』キスショットを作ってしまえばいいんじゃね?

となりまして…。

そちらのほうがラスボスって感じですし急遽そちらを採用しました。

それでできたのが神キスショット『忍野忍』です。

彼女には吸血鬼+神の力が備わっているので、キスショットよりその分上です。

無闇君よりも下手したら強いかもしれません。

冒頭で説明した通り、無闇君が今使える力は元の力の1%だけで、彼は本当の意味での全力を縛られています。

もし無闇君が全力だったら圧倒的なんですがね……。

ではここからは補足。

忍野忍を神として作り出すための依り代にした『ご神体』とは

そうですアレです。

『囮物語』やら『恋物語』やら『終物語』やらで散々やらかしてくれたアレです。

『北白蛇神社』にかつて祭られていた通称『クチナワさん』のご神体です。

原作の阿良々木君がエロ本に栞みたいに隠していたあのお札ですね。

アレを今使ってしまうということは……

つまりいくつかの物語の重要な伏線を潰したことになりますな。

そして後々そのつじつま合わせに苦労すると。

これが二次創作の宿命でしょうか……。

それと忍野忍を構成する『よくないもの』ですが……。

アレは北白蛇神社で集めてきたモノではありません。

別の『吹き溜まり』で忍野が集めてきたものですな。

これが何を意味するかは原作を読んでいる皆様なら分かるはずです……。

何で3を除外したのか、という理由にはこういう意味がありますね。

では次回の話

いやーついに後1話となりました!

次回にて『外物語』《傷物語編》は完結となります!

長かったなぁ……。

でもまぁ『外物語』はまだ終わらないのですがね。

次は『猫物語(黒)』編に突入します!

羽川さんメインの話ですよ!

嫌な予感しかしねぇ……。

では次回予告

最終決戦――開始!

キスショットを攫った彼女に瓜二つの神、『忍野忍』

キスショットの強力な吸血鬼のスキルに加え、神通力まで得た存在に、零崎無闇はどう立ち向かうのか!

打倒忍野忍に彼が用意した秘策とは――

果たして彼は、彼のパートナーを救い出すことはできるのか――

次回『外物語』《傷物語編》最終回 近日更新予定!

感想をくださったCadenzaさん、神皇帝さん、cojoitaさん、夕凪さん

そしてお気に入り登録していただいている読者の皆様

ありがとうございました。

質問・ご指摘は感想欄へどうぞ。

ではまた次回

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