ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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5話

クラス代表決定戦当日、アキトとマドカはピットでYF-22の最終チェックを行っていた。

 

「お兄ちゃん、システムとかは問題なかったよ」

 

「こっちも武器関連は問題ない。それより手伝わせてごめんなマドカ」

 

アキトは申し訳なさそうな顔で謝罪するがマドカは気にしていないと言わんばかりに首を横に振る。

 

「別にいいよ。それよりセシリアとの模擬戦楽しんできてね」

 

そう言われアキトは口元を緩ませる。

 

「おう、白兵戦はアイツと何度もやってきたがISは初めてだからな。全力でいくさ」

 

アキトの口調から一夏のことは眼中に無く同じ軍人のセシリアとの模擬戦しかやる気がなかったのだ。

するとピットの入り口から真耶が入ってきた。

 

「アキト君、準備の方はいいですか?」

 

「えぇ。対戦相手は決まったんですか?」

 

「はい。織斑君のISがまだ届いていないので先にセシリアさんとアキト君とで戦ってもらいます」

 

アキトとマドカは一夏のISが遅れていると聞き呆れ顔になる。

 

「遅れているって、どんだけ時間にルーズな研究所なんだ?」

 

「全くだね。良かったねお兄ちゃん、時間にルーズなところにIS開発されなくて」

 

マドカの話にアキトは確かにと言って笑い出す。真耶も笑ってはいけないのだが我慢できずクスクスと笑い出す。

 

「あ、アキト君笑っちゃダメですよ。クスクス」

 

「真耶先生も笑ってますよ。フフフフ」

 

3人は笑い合っていたが出撃時間が間近に迫っている事に気付いた真耶は、ピットを後にし管制室へと戻る。そしてアキトはISを身に纏い出撃体制で暫く待っているとピット内に真耶のアナウンスが響く。

 

『それでは両者、アリーナに出て下さい』

 

アキトは右手をマドカに見えるように上げサムズアップした。

 

「行ってくる」

 

「うん! 頑張ってねお兄ちゃん!」

 

「おう! YF-22、アキト・ファイルス出るぞ!」

 

マドカの声援を背にアキトは出撃する。アリーナへと出るとセシリアは地面で武器を出して待っていた。

 

「それがアキトさんのISですか」

 

「おう。セシリアのはブルー・ティアーズというBT兵器搭載のISだったか?」

 

「えぇ」

 

両者がアリーナ中央に到着したのを確認した真耶はアナウンスする。

 

『それではこれより、セシリア・オルコットさんのブルーティアーズ対アキト・ファイルス君のYF-22による、クラス代表決定戦1回戦を行います。カウント3...2...1...試合開始!』

 

合図とともにセシリアとアキトは空中へと上がりお互いの武器を構え撃つ。セシリアはスターライトMarkⅢで狙いを定め撃ち、アキトはグレネードランチャー付きアサルトライフルで攻撃をする。お互い上下左右あらゆる方向に避けながら攻撃をする戦法をとっており、そのスピードは戦闘機同士のドッグファイトを連想させるような戦い方だった。

 

2人の戦いに生徒達は軍人だからこそあそこまでスピードを出しても平気に戦えるのかと圧倒した表情で見ていた。

 

「さすがセシリアだな。これだけ出来るからこそ代表候補生に選ばれる訳だな」

 

アキトは必死に食らいついている事を隠すように余裕に振る舞う。そんなセシリアも若干息を荒げているようだが平気なように振る舞う。

 

「ふふふ、当り前ですわ。わたくしはオルコット家次期当主であり、イギリス女王陛下に忠誠を誓った騎士ですから!」

 

そう言ってビットを展開し、あらゆる方向へと飛ばし攻撃を仕掛けてくる。アキトはビットから放たれたビームを避けようと左にステップするとビームは弧を描くようにアキトに迫ってくる。

 

「なっ!? 偏向制御射撃(フレシキブル)かよ!」

 

そう叫びアキトはブースターを吹かし、横回転で回避するが若干ビームが掠る。

 

「フレシキブルを会得していたとは驚きだな」

 

「あの合同訓練以降、近接戦の訓練をしつつ、必死に獲得しようと努力した結果ですわ。さぁどんどん行きますわよ!」

 

そう言ってセシリアはビットを再度展開しアキトを包囲するように迫る。

アキトは浅く呼吸を数回し武器をグレネードランチャー付きのアサルトライフルからマスターキー付きのアサルトライフルへと持ち替える。するとアキトの目つきがさっきまでのとは違い、鋭さが増しておりセシリアはその訳がすぐに分かった。

 

(あれは何時ぞやの集中状態に入ったアキトさんの目つき。非常に厄介ですわね)

 

セシリアは米中英合同軍事訓練でアキトの集中状態を1度見掛た事があるのだ。アキトが集中状態に入ると周りの話し声などが一切耳に入らなくなり、銃の命中率が飛躍的上がるのだ。さらに判断力も飛躍的上昇し最も効率的で被害の少ない策を引き出すと言ったことが出来る。

 

「決める!」

 

 そう言ってアキトはマスターキーをビットに向けて撃ちだす。発射された散弾(バックショット弾)は小さな鉄球が広範囲に放たれビットに命中し、破壊される。

 

「!! さすがアキトさんですわ。ですが負けません!」

 

そう言ってセシリアは近接戦に持ち込ませまいとフレシキブルを混ぜた攻撃をしてくるが、アキトは細かくブースターを吹かしつつ攻撃を躱し接近する。セシリアは内心焦っていたが同時に楽しくもあった。

 

(1年も経たずここまでISを制御できるとは、流石マドカさんのお兄様に当たる人物ですわね。そしてここまで楽しいと思ったのは久しぶりですわ!)

 

そしてセシリアのビット攻撃を躱したり破壊して接近してきたアキトにセシリアはスターライトでけん制しつつ、何時でも接近戦を挑めるようにインターセプターを取り出しておく。そしてマスターキーの弾が切れたのかアキトはライフルをセシリアに向けるがスターライトからの狙撃によりライフルを破壊されアキトはもう一つのライフルを取り出そうとも考えるが時間が押していることに気付き、一か八か接近戦を持ち込むことにする。

 

「それを待っていましたわ!」

 

そう叫びセシリアは弾道型ミサイルをアキトに向け放つ。アキトは飛んでくるミサイルに向けナイフを一つ投げる。投げられたナイフはミサイルに当たり爆発する、爆発で飛散したミサイルの破片でもう一つ放たれたミサイルも誘爆により破壊されセシリアはこの爆発に乗じて接近戦を繰り出すと思い構えていると、急に背後から襲われる。

 

「!? い、何時の間に後ろに!」

 

「これで止め『ビィーー!タイムアップ!』……マジ?」

 

試合時間が終了し、後一撃で勝てると思っていたアキトはガックシと肩を落とす。

 

「ふぅ~、まさか背後に回られているなんて気付きませんでしたわ」

 

そう言って本気で焦っていたのか汗を拭うセシリア。

 

「あぁこいつの特性でな。センサーからある程度身を隠すことが出来るんだ。まぁセンサーだけで目視で確認されたら無駄なんだけどな」

 

そう言ってアキトは乾いた笑いを出し、ため息を吐くとアナウンスが響く。

 

『ただいまの試合はSEの残量の結果、アキト・ファイルス君の勝ちです』

 

それを聞いたアキトはマジかと言わんばかりに口をあんぐり開けて驚く。セシリアは当然かと納得する。

 

「そんな驚くことですの? 最後のあの一撃で、かなりわたくしのSE持って行かれましたのよ?」

 

「マジで? 俺的にそこまで減ってないと思ってたんだけどな。まぁいいか。」

 

そう言いながらアキトはセシリアに手を差し出す。セシリアは急に差し出された手に一瞬キョトンとするが、すぐに意図を理解したのか、自分の手も差し出しお互いの手を握り合う。

 

「では、これからも切磋琢磨、技術を磨き合いましょうか、アキト少尉」

 

「あぁ、こちらこそよろしく頼むなセシリア上級曹長」

 

試合を見ていた生徒たちは惜しみない拍手を二人に送り、アキトとセシリアはピットへと戻っていく。

 

 

用語

・マスターキー

マスターキーは散弾銃の銃身を短くし銃床を失くすか短くしたものをアサルトライフルの下部に取りつけた物である。最初はベトナム戦争時にアメリカ兵がジャングルでベトナム兵との突発的な遭遇に対処するためにM16に取りつけられていたが、近年ではマスターキーで扉の錠前を破壊し突入し、突入後アサルトライフルに持ち替えるというタイムラグをなくすために使われている。因みにマスターキーと名付けられたのは上記に書いた通り錠前を破壊することから付けられたそうだ。最初はレミントンM870が多かったが、重量が重く、さらにグリップが届きにくいうえに次弾が装弾しづらいことから最近はM26 MASSが広く使われている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

レミントンM870

製造国:アメリカ

作動方式:ポンプアクション(1発撃つごとに撃ったシェルを排出し新しいシェルを薬室に送り込むこと。)

装弾数:4~8発

 

M26 MASS

製造国:アメリカ

作動方式:手動操作式ストレートプルボルトアクション(横についているレバーを1発撃つごとに引き、新しいシェルを薬室に送り込む。)

装弾数5発

 

バックショット弾

散弾銃用の弾で紙やプラスチック製の容器に鉛の球が6~9個入っている。他にも多くの種類の弾が存在するがそれはまたの機会に。




次回予告
セシリアに僅差で勝利したアキトは次の試合の一夏戦棄権しようかなと思っていたが、2度と関わらない程度に痛み付けから棄権するかと考え試合に臨む。案の定また自分の弟だと喚いてくる一夏にアキトは呆れながら試合に臨む
次回クラス代表決定戦・一夏編~あ、俺ここで棄権します。~

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