ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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4話

「織斑、お前には政府から専用機が送られることが決まった」

 

次の日の午後の授業の開始前、千冬は一夏に専用機が送られることを説明すると周りの生徒が騒ぎ出す。

 

「専用機!? いいな~」

 

「私も、いつか持ちたいな」

 

「え? ど、どいうことなんだ?」

 

一夏の困惑した反応に千冬は呆れたように息を吐く。

 

「教科書42ページを読め」

 

そう言われ一夏は机から教科書を取り出し音読をする。ISのコアは数に限りがあり、専用機が送られるのは軍人か国の代表候補生もしくは国家代表にしか渡されないのだ。

 

「今回はお前が男性ということでデータ採取を兼ねて専用機が送られるんだ」

 

千冬がそう言うと一夏は疑問に思ったことを質問する。

 

「え、えっとちふ……じゃなかった織斑先生、秋斗にも専用機が送られるんですか?」

 

そう言って一夏は目線をアキトへと向けると、アキトは小説に目を向けていた。

 

「もちろんファイルスにもISは送られる」

 

千冬がさも当たり前に言うとアキトが立ち上がり千冬を睨む様に目線を向ける。

 

「何勝手に決めてるんだ? そもそも俺は既にISを持っていると報告しているはずだ。だから日本政府が用意したISになんか乗るつもり何て無いぞ」

 

そう言ってアキトは自分の席に着くとクラスの女子は驚く。

 

「え! アキト君専用機持ってるの?」

 

「どんな奴なの?」

 

そう言って質問してくるクラスメイトにアキトは苦笑い気味で対応する。

 

「どんな奴かは当日見せるよ」

 

すると一夏はそんなアキトの態度が気に入らなかったのか怒り出す。

 

「お前、せっかく政府が用意してくれたISなんだぞ。それを断るって言うのか?」

 

アキトは呆れた表情で目線を一夏へと向ける。

 

「俺はアメリカ国籍の人間だ。だから俺はアメリカ政府から専用機を貰っている。どこかおかしいか? お前と同じ政府から専用機が送られているだろうが」

 

そう言ってアキトは目線を読みかけの小説へと戻す。一夏はアキトに違うと否定しようと詰めようとしたが真耶が教室へと入ってきて午後の授業の開始の合図をする。

 

「はい、皆さん。今から午後の授業を始めます。あ、それとアキト君、大事なお話があるので放課後に職員室に来てください」

 

アキトは首を縦に振り、それを確認した真耶は授業を開始した。

 

~放課後~

一夏からまた箒と一緒に訓練しようと誘ってきたのを無視してアキトはマドカと一緒に職員室へと向かう。そして職員室の中へと入り、真耶を探すと向こうが先に気づいたのか手を振りながら場所を教える。

 

「それで真耶先生、話ってもしかして」

 

アキトが例のアリーナの端を借りられる件かなと思いながら聞く。

 

「はい。クラス代表戦までのアリーナを借りられる生徒たち全員に聞いて回ったところ端の方だったら使用してもいいとのことです。因みに今日使用される生徒も端の方を使ってもいいとのことでしたよ」

 

「そうでしたか、ありがとうございます」

 

そう言ってアキトはお礼を言うと真耶は照れながら頭を掻く。

 

「い、いや~、アキト君が私を頼って来られたのでどうにかしてあげたいと思った結果ですよ」

 

「あ、そうだ。昼頃に織斑先生が言っていたISの件なんですけど、あれ織斑先生の独断だったらしいんですよ」

 

先程の照れていた顔から一変し、真剣な顔でアキト達に明かす真耶。

 

「やっぱりか。大方俺のデータが目的だったんでしょ?」

 

「えぇ。元々織斑君用に作られるISともう1機作れって脅したらしいですよ。それで、そのことがアメリカに知られてアメリカ政府は激怒。日本政府はすぐさま謝罪してアキト君のISの開発を中止した事で、事なきを終えたらしいですけど、今後の交渉材料に使われるでしょうね」

 

「そう言えばその原因を作った奴が見当たらないんですけど」

 

マドカが職員室を見渡しながらそう言うと真耶はクスクス笑い出す。

 

「実は学園長室に呼ばれて今こってり絞られてるらしいですよ。クスクス」

 

真耶の顔は本当に可笑しいのか笑顔でアキトもマドカも自業自得だと思いながらクスクス笑い出す。

 

 

職員室を後にしたアキトとマドカはアリーナへと行くと、訓練をしている生徒達が何人かいるのが見え、その内の1人がアキト達に気付く。

 

「あ、もしかして山田先生が言ってた子達?」

 

「はい、アリーナの端の方を借りてもいいと聞いたのですが、いいでしょうか?」

 

アキトがそう聞くと女性は笑顔で了承し、アキトとマドカはアリーナの端の方へと行き、ISを展開する。

 

「それじゃあお兄ちゃん、まずISの状態を確認して」

 

マドカにそう言われアキトはYF-22のステータスを空間ディスプレイに投影しながら、機体の動作確認をする。

 

「背部左右スラスター問題なし、武器システム、各種問題なし。システムチェック、オールグリーン」

 

アキトが声を出しながらチェックをしていき空間ディスプレイにはチェックを終えたシステムにOKサインが映り、最後のチェックを終えるとシステムオールグリーンと表記された。

 

「問題ないみたいだね。それじゃあまずは基本的な動作からやっていくね。もちろんPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)は切って行うからね」

 

そしてマドカの主導でアキトのIS訓練が開始された。最初に歩行、次に飛行訓練が行われた。

 アキトはIS学園に来る前にスコール達、アメリカ空軍IS部隊の面々に訓練されていた為、ほぼISの使い方は体に身に付けている為、何の問題も無かった。そして最後の訓練として射撃による訓練をしようとしたところでアリーナを使用していた生徒でアキト達に話しかけてきた生徒がアキト達に話しかけてきた。

 

「ねぇねぇ、もしよかったらこっちのほう使わない?」

 

「え? そちらの訓練はどうするんですか?」

 

「私たちはもう十分やったから大丈夫。それより君たちの戦っている姿、ちょっと見てみたいのよ。ダメかしら?」

 

そう聞かれ、アキトはマドカに目を向けるとマドカは首を縦に振り、アキトは女子生徒の提案に乗りアリーナの中央へと移動する。最初にアリーナを使用していた生徒たちはアリーナの観戦席でアキトとマドカの戦いを眺めようと移動していた。

 

「それじゃあ2人とも準備の方はいいですか?」

 

「ええ大丈夫です。それと審判の方していただいてありがとうございます」

 

「別にいいわよ。可愛い後輩君達の為だしね。それじゃあカウント開始! 3...」

 

そう言って模擬戦開始のカウントダウンを始める。

 

「2...1...模擬戦開始!」

 

そしてマドカとアキトの模擬戦が始まり、2人は一気に接近しアリーナの中央でお互いの近接武器が激しくぶつかり合う。

 

「流石マドカだな。俺が最初に近接で攻撃を仕掛けてくるって見抜くとはな」

 

「ふふん。まだお兄ちゃんはISに慣れてないから最初に近接で肩慣らしをするだろうって思っただけだもん」

 

そう言ってマドカは続けざまにナイフで斬りかかり、アキトはそれを避けたりナイフで受け止めたりと防戦一方と思いきや、隙をついてはSEを削ると言ったスタイルをとっていた。

 

2人の戦いを見ていた生徒達はこれが軍に所属している人間の戦い方なのかと熱心にその戦い方をメモしたりしていた。

そんな中2人の戦いは続き、そろそろお互いの得意武器を使って戦おうとした時、試合終了のブザーが鳴る。

 

「2人共そこまで。SEの残量の結果、勝者はマドカさんよ」

 

「あちゃー、やっぱりか」

 

「ふふん、お兄ちゃんとはISに乗っていた時間は私の方が長いから当然だもん」

 

アキトは悔しがりながらも、次回の戦いに活かす為に次はどのように戦うか頭の中でシミュレートしながらISを解除し、マドカと共にピットへと戻ると観戦席にいた生徒たちが2人の帰りを待っていた。

 

「2人とも凄いね! しかも君ってISに乗るのって初めてじゃないの?」

 

「いや、俺はISを起動できると発表した後に、知り合いの人に教えて貰ったのである程度扱えるんですよ」

 

それを聞いた生徒達はさらに驚いた。

 

「嘘!? まだ1年も経ってないのにあれだけ動かせるって凄い」

 

生徒の一人がそう呟くと周りの生徒たちも首を何度も縦に振り、そんなに驚くことなんだとアキトは改めてスコールさん達との訓練に感謝した。そしてアキトとマドカは先輩達と共にアリーナを後にし、寮へと続く道を帰り、上級生用の寮の前の廊下で別れる。

 

「それじゃあ私達はこっちだから、今日はいいもの見せてくれてありがとうね」

 

そう言って先輩達は2人に手を振りながら階段を上がって行った。

 

「優しい先輩達でよかったな。それじゃあ俺たちも部屋に帰るか」

 

そう言ってアキトはマドカに提案するが

 

「あ、ごめんお兄ちゃん。私ちょっと買い物してから帰るね。それじゃあまた後でね!」

 

そう言ってマドカは足早に購買がある方へと駆け出す。

 

「買い物って、まぁいいか」

 

アキトは特に何を買うのか聞かずに自分の部屋へと戻って行った。

 

 

アキトから足早に離れたマドカは、人目が付かない屋上へと着き制服のポケットからスマホを取り出し、電話帳からスコールの電話番号を押す。数秒ほど呼び出し音が鳴った後、電話に出たスコールの声が聞こえた。

 

『もしもし、マドカどうかしたの?』

 

「うん、スコールさんちょっと相談があるんだけど」

 

スコールはマドカから相談なんて珍しいと思いつつ内容を聞く。

 

『それで相談って?』

 

マドカは最初はスコールに言うべきかどうか迷っていたが大好きな兄には笑顔でいて欲しい。そう思い、相談内容を伝えた。

 

「……スコールさんは鈴ちゃんって知ってる?」

 

『鈴ちゃん? あぁ確か中国軍に所属している鳳鈴音さんのことね。確かに彼女のことは知ってるけど、それがどうかしたの?』

 

「実はお兄ちゃんに鈴ちゃんと同じくらい大切な親友たちが学園にいることが分かったの」

 

『そうなの。それで、アキトはその親友たちに自分のことは伝えたの?』

 

「うんん。その親友たちはちょっと特殊な家系でお兄ちゃんはその親友たちを守るために自分の正体を明かしてないの」

 

スコールはマドカの喋り方から若干泣きそうになっていると分かり、兄想いのいい妹ね。そう思いながらマドカと共にどうするか考え始める。

 

『そう。ところで、その親友たちの名前ってわかる?』

 

「更識楯無、その妹の更識簪。そしてその姉妹に仕えている布仏虚、そしてその妹の布仏本音」

 

マドカが4人の名前をあげてスコールはすぐに更識と言う苗字にどう言った事情かすぐに分かった。

 

『確かにその4人はちょっと特殊ね。アキトが懸念している通り下手にアキトの正体を知らせて万が一日本政府の連中が知れば厄介なことになるのは間違いないわ。どうすれば…………。!! 良い手があったわ。マドカこの件は私に預からせてくれないかしら』

 

「え? ……う、うん。お願いします」

 

マドカがそう返事をするとスコールは電話を切った。マドカはスコールに任せてよかったのか不安に思い始めたが、気にしないことにするために購買でアイスでも買おうと思い屋上を後にする。

 

 

 

 

 

 

用語

PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)(IS wiki引用)

物体の慣性をなくしたかのような現象をおこす装置。これと肩部にある推進翼、任意で装備できる小型推進翼を使って姿勢制御、加速、停止などの3次元的な動勢を行う。

本来オート制御になっているPICをマニュアルにすることでより細やかな動作を行うことができるが、それには同時に機体制御を意識する必要がある。




次回予告
1週間が経ち、クラス代表戦が行われるアリーナでは1組の生徒たちはどの生徒が勝つのか楽しみにしている中、ピットでは一夏のISの到着が遅れていた為、アキトとセシリアとの試合が先に行われた。
次回クラス代表決定戦 セシリア戦~ジャッカルは全力で獲物を仕留めるようにわたくしもそのつもりで行きます。~

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