入学日2日前、アキトは恐らく寮へ入ることになると考え、着替えと銃のメンテナンスキットなどをカバンに入れているとマドカが部屋へと入ってくる。
「お兄ちゃん、準備終わった?」
「おう、今終わったところだ」
そう言ってメンテナンスキットなどを入れたアサルトリュックを背負い部屋から出る。玄関から外に出るとナターシャが待っていた。
「気を付けて行ってくるのよ2人とも」
「了解、姉さんも体には気を付けてね」
「束お姉ちゃんも気を付けてね」
「うん、気を付けるよ~」
「お二人ともお気をつけていってらっしゃいませ」
そして2人はタクシーに乗り込み空港へと行く。そして日本行きの便に乗り出発する。そして数時間後、飛行機は日本の空港に到着する。アキトとマドカは荷物を持って空港から出ると
「アキトく~ん、マドカちゃ~ん!」
そう叫びながら手を振る童顔の女性。アキトとマドカがそれに気付き手を振り返しながら近付く。
「お久しぶりです真耶さん」
「はい、お久しぶりです! お二人とも元気でしたか?」
「はい。ところでどうして私たちが今日此処に来るってわかったんですか?」
マドカがそう聞いてくると真耶はそれを説明する。
「実は昨日、アキト君から電話がありまして空港まで迎えに来てほしいって頼まれたんです」
「すいませんね真耶さん、忙しいのに来てもらって」
アキトにそう言われ真耶は照れながら答える。
「いえ、私がやらないといけない仕事は既に終わらせていたので大丈夫ですよ。…………それにアキト君に会いたかったし」
「うん? 何か言いました?」
「い、いえ! 何も。そ、それではホテルまでお連れしますので荷物を持って付いて来てください」
そう言われアキトとマドカは荷物を持って真耶の後に付いて行き、真耶が用意した車に乗り込みホテルへと向かう。そしてその日はホテルで過ごす。次の日、アキトとマドカは荷物を持ってホテルを出る。そして学園へと向かう。
~1年1組~
アキトは欠伸をしながら本を読んで先生が来るのを待っている。本の題名は『姉の暴走を止める百の事』と書かれている。
(なるほど、余り褒めすぎると暴走しまくるのか。暫くは学園の寮生活だから暴走はしないだなろうな。多分)
そう思っていると扉が開く音がし、アキトは本をカバンへと戻す。
「はい、皆さん今日からこのクラスの副担任を務めます、山田真耶と言います。どうかよろしくお願いします」
そう挨拶をするが誰も挨拶を返さなかったため真耶が落ち込んでいるとアキトとマドカが挨拶をする。
「よろしくお願いします」
「よろしくです」
「は、はい! よろしくお願いしますね、アキト君、マドカさん!」
真耶はパァーっと表情が明るくなる。
「それでは端の方から自己紹介をお願いします」
「はい! 相川清香です。中学ではソフトボール部に所属してました!」
そう言って次々に自己紹介していき織斑一夏の番となる。
(あれがお兄ちゃんの双子の兄。なんかお兄ちゃんと違って軟弱そう)
マドカがそう思っていると自己紹介が始まる。
「えっと、織斑一夏と言います。…………以上です!」
そう言い終えた瞬間クラスのほとんどが肩をガクッと落とす。そして一夏の頭に出席簿が落とされる。
「いっ!? ち、千冬姉!? アダッ!?」
「織斑先生だ馬鹿者!」
そう言ってまた出席簿を落とす千冬。そして自己紹介を始める。
「私がこの1組の担任の織斑千冬だ。分からないことはそのまま放置せずすぐに聞け。それと私が言うことには"はい"か"YES"で答えろ。いいな?」
その挨拶の仕方にアキトとマドカ、そして真耶が呆れる。
(その挨拶の仕方、どうなんだよ?)
(こいつが私のオリジナル? 全然似てないじゃない)
(まったく、どうしてそんな暴力的になるんですか? これだからおかしな風潮が広まるって言うのに)
「それよりお前、あの自己紹介の仕方はどういうことだ?」
「い、いやだって千冬姉アダッ!?」
「織斑先生だ、バカ者!」
千冬は真耶に自己紹介がどこまで行ったのか聞く。
「それで山田先生、自己紹介はどこまで行ったのですか?」
「今、織斑君まで行きました」
「そうですか。もう時間がないから、もう一人の男子の自己紹介で終わらせる。……ファイルス兄、自己紹介をしろ」
一瞬どう接したらいいのか分からないような顔でそう言ってきた為、アキトは無言で立ち上がる。一夏はアキトの顔を見て驚く。
「アキト・ファイルスだ。アメリカ陸軍所属で階級は少尉。好きなものは銃で特技は武器のカスタマイズだ。嫌いなものは女尊男卑と言う糞風潮に染まった奴だ」
そう言って席に着く。すると一夏が立ち上がるが
「ち、違「織斑君、先生が喋るので席に着いて下さい」は、はい」
真耶にそう言われて席に着く。
「ではこの後から授業が始まりますので準備をして待っておくようにしてくださいね」
そう言って真耶は教室から出て行く。アキトはまた本の続きを読もうとすると
「お、おい秋「お久しぶりです、アキトさん」お、おい!」
一夏はアキトに話しかけようとしたがその前に別の人物がアキトに話しかける。
「なんですか? 今友人とお話ししようとしているので邪魔しないでいただけますか?」
「お、俺の方が先だったろ? なぁ、秋斗?」
一夏がそう聞いてくるがアキトは
「悪いんだがいきなり馴れ馴れしくアキトって呼ばないでくれないか? それより久しぶりだなセシリア」
そう言って一夏を放置してセシリアと話し始める。
「はい、お久しぶりです。米中英合同訓練以来ですね」
「あ、セシリアじゃん、久しぶり」
「あら、マドカさん。お久しぶりです」
そう言ってお辞儀をするセシリア。
「あれから近接攻撃の訓練続けてる?」
「はい。マドカさんのアドバイス通り、ナイフの特性を知って訓練したところ着実に身についていると思っております」
「だったら今度どれだけ成長したか見てあげる」
「本当ですか? それはありがたいです」
そう言っていると放置されていた一夏が話しかける。
「あ、秋斗、お前どうして生きてたのに連絡してこなかったんだ? 俺や千冬姉、お前が死んだって聞いて泣きまくったんだからな」
アキトはため息を吐きながら一夏に話しかける。
「なぁ、俺さ、さっき言ったよな? 馴れ馴れしくアキトって呼ぶなって。それと俺はお前の家族じゃないぞ?」
「な、何言ってるんだよ? 第一ファイルスってなんだよ? お前の名前は織斑秋斗だろ?」
「織斑秋斗? あぁ~、6年前ドイツの廃墟で謎の爆発に巻き込まれて死んだ奴か。そいつはもう死んでるんだろ? そいつと俺を一緒にしないでくれないか? ハッキリ言って迷惑だ」
そう言って顔をセシリア達に向け話の輪に戻る。一夏は違うと言おうとしたがチャイムが鳴りセシリアはアキト達に挨拶をしてから席に戻る。
「ねぇさっきから其処にいられると邪魔なんだけど」
マドカにそう言われ一夏は渋々自分の席に着く。そして1時間目の授業が始まる。内容は簡単なISの知識の為、入学前に渡された参考書を勉強しておけば問題ない内容である。
「ではここまでで分からない人はいますか?」
真耶がそう言ってクラスを見渡す。
「アキト君は問題ないですか?」
「大丈夫です。山田先生の授業は分かりやすいのでそのまま続けてもらっても大丈夫です。」
「そ、そうですか?ありがとうございます」(はう~、アキト君に褒めてもらえました~)
真耶は照れながら笑顔で答え、内心では褒めて貰えた事に歓喜していると一夏が手をあげる。
「はい、織斑君なんですか?」
「先生、全然わかりません!」
「はい? 具体的にどこがですか?」
「全部です!」
「ぜ、全部ですか?」
そう言って目を丸くしながら呆れる。
(はぁ、この子やる気あるんでしょうか? と言うか参考書はどうしたのかしら。)
そう真耶が思っていると千冬が一夏に聞く。
「おい、織斑。お前参考書はどうした? 入学前に渡されている本だ」
「あ、あれは捨ててしまいました。アダッ!?」
「必読と書かれていただろうが! 後でもう1冊渡す。1週間で覚えろ」
「え!? そ、それは無「やれ。いいな?」……はい」
そう言ってへこたれる一夏。そして授業終了のチャイムが鳴り、アキトは教科書を片付けてのんびりしようかと思う。
(
そう思い、カバンの中からトッポを取り出し封の開いている袋から1本取り出し食べ始めようとすると机の端から顔がニョコッと出てくる。アキトは一瞬驚きながらも用を聞く。
「な、なんか用か?」
そう聞くが少女はジーッとアキトのある1点に目を向けている。それはアキトが持っているトッポだった。試しにアキトはトッポの箱を上にあげたり左右に振ったりするとその顔はジッとトッポを追いかける。アキトはまぁいいか。と思い封の開いている袋からトッポを1本取り出し少女にあげる。
「ほれ、1本やる」
そう言うと少女はパァーッと明るくなりおいしそうにトッポを頬張る。その食べ方はまるでリスのような感じでアキトは面白いなと思いながら見ているとチャイムが鳴る。
「お菓子くれてありがとうね、アッキー」
そう言って少女は席へと戻る。アキトは先ほどのアッキーと呼ばれた時、何かを思い出しそうになるがすぐに引っ込んでしまう。
(まぁ、また思い出すだろ)
次回予告
2、3と授業が終わり4限目が始まった時、千冬はクラス代表を決めると言うと一夏を推薦する声が多く上がって行くと一夏はアキトを指名する。アキトは拒否するが千冬がそれを却下させる。アキトがイラついているとセシリアがそれだったら自分も出ると立候補する。
次回クラス代表戦前編~お兄ちゃんに馴れ馴れしく近づくな。~