部屋に入ってきたナターシャにアキトは驚く。
「な、なんで此処に居るのさ姉さん」
「なんでって、アキくんのいる基地に所属不明の飛行物体が現れたって聞いてもしかして北の連中が攻めてきたのかと思って、居ても立っても居られなかったんだもの!」
そう言ってアキトが無事かどうか確認するナターシャ。アキトは苦笑いをしながら何にもなかったから大丈夫だよ。と言う。
「大丈夫なら良かった。ところでそちらの女性は?」
そう言ってナターシャは束に目線を向ける。
『彼女はISの生みの親である篠ノ之博士ですよ、ナターシャ中尉』
そう言われナターシャはモニターに映っている人物が大統領だと気付き慌てて敬礼する。
「こ、これは大統領閣下、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません!」
慌ててそう言うと大統領は笑顔で答える。
『別に構いませんよ。貴女がアキト少尉のことを溺愛していることはここまで届いていますから』
そう言われナターシャは照れる。それに対してムッとなる束。
「あっくん、この人があっくんのお姉さん?」
「えぇ、そうです」
アキトがそう言うと束はふぅ~ん。と答えナターシャを直視する。ナターシャは束の視線に気付き目線を合わせた。そして
(ふぅ~ん、まさかアキくんが篠ノ之博士と知り合いだったなんて。しかもこの人アキくんのこと好きに違いない。けど)
(こいつがあっくんを今まで育ててくれた人なんだ。そしてアーちゃんが言ってたけどあっくんのこと溺愛してるってことは弟だからじゃなくて一人の男として好きなのかもしれない。けど)
(アキくんは渡さない!)/(あっくんのお嫁さんは私だ!)
そう思いながら交差する視線が火花を散らしているとミッチェルがわざと咳払いをして2人を止める。
「んん、篠ノ之博士あの件を聞かなくていいのか?」
そう言われ束は思い出したようにナターシャに聞く。
「あ、そうだった。ねぇ君の家にあっくんが住んでるって聞いたんだけど本当?」
「えぇ住んでるわよ」
「それじゃあ一緒に住んでもいい?」
「はぁ?」
ナターシャは頭に疑問符を浮かべながらなぜ?と聞く。
「そりゃあっくんと一緒に居られるからね」
そう言われナターシャはそう言う理由ならお断りだと言おうとしたが
『ナターシャ中尉、申し訳ありませんが頼めないでしょうか? 無論、生活費等はこちらから支給します。どうでしょう?』
そうアメリア大統領に頼まれ拒否できるはずもなくナターシャは仕方なく了承した。するとモニターの向こうの大統領の傍に秘書と思われる人物が入ってきてアメリアの耳元で何かを伝えるとアメリアは驚愕の顔で秘書を見て、次の言葉を投げ掛けた。
『それは事実なのですか?』
そうアメリアが秘書に尋ねると秘書は黙って首を縦に振る。そしてアメリアは神妙な顔でアキト達の方へ向き直る。
『ミッチェル大佐、アキト少尉がISに乗れる事を隠す件なんですが隠しても意味が無くなったようです』
そう言われアキト達は驚く。特にナターシャはアキトがISに乗れるという事実に驚く。
「え!? アキくんがISに乗れる? 本当に?」
そう聞いてきてアキトは首を縦に振って肯定する。その間にもアメリアは理由を説明する。
『実は先程、日本でも男性操縦者が見つかったそうです』
そう言われ司令官室が驚きで一杯になる。
『その男性なんですが、…………アキト少尉、あなたの元兄です』
そう言われアキトは眉間にしわを寄せる。
「……そうですか。まぁ自分が乗れるんですからアイツも乗れるかもしれませんね」
そう言っているとナターシャはアキトを心配し声を掛けた。
「……アキくん」
「大丈夫だよ姉さん」
アキトは組んでいた腕に力を入れる。アメリアは今後の事でどうするか話し始める。
『アキト少尉、恐らくIS委員会の連中は他の男性操縦者を探すため検査をするかもしれません。我々はその前にアキト少尉がISに乗れるということを発表しようと思います』
「そうですね。それと恐らくはIS学園に入れられるかもしれませんので、ISも用意しないといけませんね」
アキトがそう言うと束が手を挙げる。
「だったら束さんが用意するよ。あっくんのIS」
そう言われアメリア達は驚く。
『宜しいのですか?』
「うん。開発する場所とか提供してくれるなら」
『分かりました。では研究所と一緒に開発所も提供します。アキト少尉』
アメリアに呼ばれたアキトは姿勢を正す。
『貴方にとって辛い事になるかもしれませんが、我々アメリカ合衆国は決して貴方を見捨てるような事はしません。ですので頑張って下さい』
「はっ!」
そう言って敬礼するアキト。そして数日後アメリカ政府はアメリカ陸軍所属のアキト・ファイルス少尉もISに乗れると発表する。それから更に数日後アキトは束に呼ばれ、アメリカ政府が束に与えた研究・開発をする建物『Rabbit House』に赴く。そして中に入ると多くの研究者達がおり、アキトは束を探そうと奥に行こうとすると
「あっくーーーーん!」
と呼ばれ声がした方に体を向けると束が目の前に迫っておりそのまま抱き着かれる。
「ちょ、束さんいきなり抱き着くのは」
「えぇ~、いいじゃんいいじゃん。家だとナーちゃんが目を光らせてなかなか抱き着けないんだもん」
ブーブーと文句を言う束の傍にクロエがやってきてアキトに謝罪をする。
「申し訳ありません、アキト様」
「いや、いいよクロエちゃん。ところで今日呼んだのって」
そう聞くと束は思い出したような顔で言う。
「うん、そうだよ。どんなのかはついて来れば分かるよ」
そう言ってアキトの腕に抱き着いて連れて行こうとする。
「な、何で腕に抱き着くの?」
「気にしない♪ 気にしない♪」
そう言いながら奥へと連れて行き、ある部屋の前に着くと束はカードキーを取り出しカードリーダーに通す。すると扉が開きアキト達が中に入ると1機のISが鎮座していた。
「これが俺のIS」
「うん。これがあっくん専用のIS。その名も」
――――YF-22
用語
Rabbit House
アメリカ政府が束に与えたISの研究・開発を目的とした建物。多くの研究者がこの研究所で自由に研究をしている。自由すぎてそれぞれの研究者の部屋は防爆仕様になっている。(今までに3部屋で爆発が起きたとのこと)
YF-22
束がアキト専用に開発したIS。第3世代型でステルス性能を有している。近距離、中距離の攻撃に特化している。男性であるアキトがなぜISに乗れるかの疑問点などが残っている為、データ収集の目的も考慮された結果、名前の頭に試作機を表す『Y』が付いている。
武装
グレネードランチャー付きアサルトライフル2丁
ショットガン(マスターキー)付きアサルトライフル2丁
近接用ナイフ2本
ハンドガン2丁
おまけ
色々あった1日が終わりアキトは束、クロエを連れて家路へと着く。アキトはバイクの為2人をどうしようかと考えていたが束は移動式研究所『
「あ、お兄ちゃんお帰り。ってその2人は誰なの?」
マドカはアキトが連れて帰って来た束とクロエに驚いている中、束もマドカを見て驚いていた。
「な、なんでアイツとそっくりな奴がいるの?」
アキトはマドカの事を説明しておくのを忘れていたと気付き、束達を家に上がらせて説明した。
「なるほどなるほど。つまりその子はアイツのクローンでテロに利用されそうだったところを救い出し、今はあっくんの妹って言う事なんだね?」
「まぁそう言うことです」
「ねぇお兄ちゃん、この人って結局誰なの?」
「この人は篠ノ之束って言えばわかるだろ」
「え? あの篠ノ之束!? なんでお兄ちゃんと一緒に帰ってきたの?」
「この人とは俺がまだ小さかったころからの知り合いなんだよ。で、今日からここに住む」
「そ、そうなんだ」
マドカは驚きつつもアキトを尊敬する。
「けど凄いな~、まさかお兄ちゃんがあの篠ノ之博士と知り合いだったんだもん」
「ふふん、あっくんと私はそりゃ仲が良かったからね」
そう言っているとナターシャが帰宅して来て部屋へと入ってくる。
「ただいま~って、もう家にいるし!」
「あ、おかえり~」
「お帰りなさいませ、ナターシャ様」
「お帰り姉さん」
「お姉ちゃんお帰り」
ナターシャは顔を暫く引きつらせた後、諦めるようにため息を吐く。
「うん、ただいま。アキくん今日のご飯は?」
「う~ん、束お姉ちゃんとクロエが今日からこの家で一緒に暮らすし、ちょっと豪勢にしようかな」
そう言ってアキトは冷蔵庫からステーキを取り出し調理を始めた。マドカはクロエと共に束とどんな事をしてきたのかなどお喋りを始めた。ナターシャは冷蔵庫から冷えたビールを2本取り出し1本を束に差し出した。
「まぁ、一緒に住むからには仲良くしてあげる」
「うん、束さんもそれでいいよ。けど……」
「えぇ……」
「アキくんは渡さない」/「あっくんは私が貰う」
そう言って2人は火花を散らしながらビールを飲む。そしてアキトが料理を持って部屋に入ってきて5人は仲良くご飯を食べた。夕飯を終えた頃には束とナターシャは酔っぱらっておりソファーでそれぞれ寝ており、アキトは毛布を掛けて自分の部屋へと向かった。
次回予告
アキト、そしてアキトと一緒に学園に行くことになったマドカの2人は入学前日に日本へと入る。そして空港から出ると真耶が迎えに来ており、真耶が用意してくれた車に乗ってホテルへと向かう。そして入学日当日アキトは思わぬ再会を果たす。
次回学園入学~織斑秋斗は既に死んでいるだろ。死人と勘違いするな。~