数日が経ち文化祭当日
「いらっしゃいませ!」
「はい、クッキーとミルクココアです!」
「ありがとうございました!」
喫茶店を行っている1組は文化祭開始と同時に多くの生徒達が来客し、1組は何とか店内の客を入れたり出したりをしていた。
「織斑君、クッキーの追加お願い」
「分かった」
一夏は1組の隅に作られた簡易キッチンでクッキーやら簡単にできるデザートを作っていた。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
アキトは逆に接客をしお客をテーブルに案内などをしていた。
するとアキトのよく知る3人がやって来た。
「やっほ~、アキト君!」
「休憩しにきました」
「アキト、席空いてる?」
「楯無さん、虚さんに簪も来たんだ。どうぞ、こっちの席が空いてますよ」
そう言いアキトは3人を席へと案内し座らせる。
「それで何頼みます?」
「うんと~、私アキト君特製コーヒーがいい!」
刀奈の注文にアキトは苦笑いで答えた。
「残念ながらやってないんですよ。代わりにデザートメニューの方を見てください」
そう言い刀奈はデザートメニューの方を見ると、其処には
『アキト特製ミルフィーユケーキ……数量限定1個300円』
そう書かれていた。
「「「これ下さい!」」」
3人は一斉に声をあげミルフィーユを注文するが。
「えっと、ごめん。後1個しかない」
アキトは申し訳なさそうな顔でそう告げると、3人は一斉に互いに牽制するかのような目線を向けあう。
「お姉ちゃんはちょっとダイエットが必要だと思うから、私に譲ってよ。後虚さんも」
「何言ってるのかしら、簪ちゃん。私は何時でもグラマスでアキト君に飽きられないように常に気を遣っているから大丈夫なのよ。それより虚ちゃん。貴女私の従者なら主の為に譲るのは当然じゃないのかしら?」
「いえ、今此処に居るのは生徒会長と書記です。それと今休憩中なので上下関係なんてありません。ですのでお2人には譲りません」
3人は互いに牽制し合う様にしていると、本音とマドカが何かを食べながら近付いてきた。
「モグモグ……お姉ちゃん達何してるのぉ?」
「モグモグ……多分、お兄ちゃんの特性ケーキを巡って喧嘩してるんじゃない?」
2人がいることに気が付いた3人は目を向けるとその手にはミルフィーユケーキを持って食べていた。
「あれ2人とも今休憩か? それとそのミルフィーユケーキ2人で分けたのか?」
「うん。この最後の一個が残っていて本当に良かったよぉ」
「そうですね。これはラッキーでした」
2人はそう言いながら最後のミルフィーユケーキの欠片を食べた。
「「「あああああぁぁぁーー!?!」」」
3人はガックシと肩を落とし、ココアだけを注文して寛ぐこととなった。
それから時間が経ち、午後になると3人は1組から出てそれぞれのクラスの出し物の手伝いに行き、アキトは休憩の為教室から出て学園を散歩していた。
「それにしても疲れたなぁ。何食べよ?」
そう呟きながら学園を歩いていると、突然学園の建物の一つが爆発した。
「ッ!? おいおい、まさかこんな時に!」
そう叫び爆発が有った方へと走る。すると其処には爆発の所為なのか負傷した生徒達や来賓の方々がおり、数人の教師たちが懸命に救命活動を行っていた。
アキトは手近にいた教師の一人を捕まえ何が有ったのか聞く。
「先生、一体何が?」
「私にもさっぱりわからないの! ファイルス君は軍属だったわよね? 悪いんだけど周辺警戒をお願い。私達は負傷者を運ぶから!」
そう言い教師は負傷者たちがいる方へと駆け出していく。アキトは教師に頼まれた周辺警戒の為にISを身に纏い上空へと上がる。すると即座にレーダーに反応が現れその方角を見ると、数百機はいるであろうISが見えた。
「おいおい、戦争でも始める気か?」
そう呟いていると、鈴から通信が入りそれに出ると慌てた様子でいた。
『アキト、何が起きたの? 今の爆発は何?』
「学園から北西の方角から数百機のISが接近している。恐らくテロだ。鈴、直ぐに上がって来れるか?」
『えぇ、大丈夫よ。……ティナ! 一般生徒達を避難所に連れて行って! 他の皆も慌てずに避難して!』
鈴は周りにそう叫んだ後通信を切られた。アキトはどうするかと思案していると、その傍にマドカがやって来た。
「セシリアは?」
「お待たせいたしましたわ」
そう言い背後からセシリアがやって来た。
「お兄ちゃん、あれって……」
「あぁ、お呼びではないお客様達だ。丁重にお引き取り願うぞ」
そう言い武器を構えるアキト。マドカとセシリアも同じようにビットを展開したり、ライフルを取り出し臨戦態勢をとる。
「行くぞ!!」
そう叫び、アキトは迫ってくるIS群に向かう。
地上では代表生や代表候補生たちが一般生徒や来賓の方々を避難させていた。
「慌てず避難して! そこ! 他の人を押し退けて行こうとしない!」
「第2避難所はこちらです! 皆さん慌てず中に入ってください!」
避難所内では避難した一般生徒や来賓の方々の中に負傷者が居ないか、医療免許を持っている教師をリーダーに治療などが行われていた。
「誰か消毒液を!」
「包帯が足りないわよ! 何でもいいから止血できる物を持って来て!」
「誰か抑えるのを手伝って!」
怒号や悲鳴などが飛び交う中、教師達も懸命に治療をしていた。そんな中、ある教師がある事に気付く。
「そう言えば、織斑先生は?」
「え? 外で避難誘導をしているんじゃないの?」
「いえ、さっき現場の様子を見に行くって出て行ったきり戻って来てないわよ」
教師達は織斑が戻ってくるのが遅い事に心配にするが、今はそれどころではないと思い作業に戻る。
避難所の外では攻撃をしてきたIS群対してアキト達は何とか抵抗していた。
「クソッ! こいつら全部違法改造した機体か!」
「こうも数が多いと辛いよ!」
「これではじり貧ですわ!」
3人は愚痴りながらも敵を墜としていると、敵のISが数機ほどが墜ちた。
「! 援軍か?」
アキトはそう言い攻撃が来た方向を見ると其処には鈴、シャルロット、ラウラ達がいた。
「ごめんお待たせ!」
「援護するよ!」
「助太刀する!」
3人が来ただけでもアキト達は助かるが、それでも数では不利だった。
すると突然無線が入る。
『全員降下!』
その言葉を聞いたアキト達は一斉に下へと降下する。するとアキト達が居た辺りに、強大な何かが通りその周りにいたISは次々に撃墜していった。
アキト達は一体何がと思い、何かが来た方へと目を向ける。するとその方向には空母が見え甲板には多くのISが一斉に飛び立ち学園へと向かっていた。
『こちらアメリカ海軍所属の空母アメストリア。これより日米安全保障条約に則りテロの鎮圧に助太刀する』
そのアナウンスが聞こえ、アキト達は驚く。
「な、何で我が国の空母が……」
アキトは開いた口が塞がらないでいると、突然無線が入りそれに出ると画面にはスコールが映っていた。
『大丈夫かしら、アキト君?』
「スコールさん!? あの空母ってファントム・タスクの本部じゃないですか。どうして此処に?」
『えぇ、貴方達には報告していなかったんだけどアメリカ軍上層部は今回の襲撃を予想していた。その為私達がそれを阻止、もしくは鎮圧を任務で日本に来たって訳。ギリギリ間に合って良かったわ』
そう言っていると次々にアメリカ空軍のIS部隊が学園上空へと到着し、テロリスト達を撃退していく。
するとアキトは先ほどのビーム砲が何かスコールに尋ねる。
「そうだ、スコールさん。さっきのビームは一体?」
『あぁ、あれね。あれは篠ノ之博士が開発した
そう言われアキトは甲板の方を見ると、其処にはアラクネを身に纏ったオータムが見え、非常に疲れた表情を浮かべながら持っていたEML-99Xを地面へと置いていた。
「そうですか。オータムさんに後でお礼を言っておいてください」
『分かったわ。それより織斑千冬を探して』
突然千冬を探せと言う指示にアキトは疑問を持ちながら訳を聞く。
「どうしてですか?」
『もしかしたら今回のテロは彼女が引き起こした可能性があるからよ』
そう言われアキトは、驚きすぐに任務を了承し千冬を探しに行く。
その頃刀奈達は地上で避難活動を終え、アキト達の援護へと向かおうとしていた。すると影から突然何者かが攻撃をしてきた。
「ッ!? 織斑君あなた何をしているのか分かっているの!?」
刀奈は攻撃してきた相手、一夏に睨むようにそう怒鳴る。
「五月蠅い! 秋斗を惑わす奴らを倒せば秋斗は帰ってくるんだ!」
そう叫びもう一度攻撃を加えようと突撃してくる。刀奈や簪は持っていた武器で応戦するが、明らかに相手の方が出力が大きかった。
「貴方、何処でその違法改造をしたの!」
「そんなの知ったことかよ! 秋斗を取り返すためならなんだってやってやるんだ!」
そう叫び斬りかかろうとすると、突然一夏の機体に向けグレネード弾が命中し吹き飛ばされる。
「グッ!??! 秋斗なんで邪魔をするんだ!」
そう上に向け一夏は声を荒げる。其処にはAWMSを構えたアキトがいた。
「邪魔だと? お前が行っているのがテロ行為だと判断したから攻撃しただけだ。兎に角大人しく降伏しろ!」
そう叫ぶが、一夏は解除せずお前をぶん殴って洗脳を解くと喚きながら、アキトに向かって攻撃をしてきた。
「降伏する気が無いと判断し、撃退する!」
そう言いアキトは、向かってくる一夏に攻撃を加えながら接近する。
「はぁぁぁっ!!」
そう言い一夏は剣を振り下ろすが、アキトはそれを難なく躱し銃床部分で殴り飛ばす。
「クソ! 何で家族である俺達が戦わなきゃならないんだよ!」
そう叫び剣を握り直す一夏。それを聞いたアキトは呆れた様に息を吐く。
「家族だと? 悪いが俺は前にも言った通りお前と家族でも何でもない。だから俺は」
アキトはAWMSに装填している36㎜マガジンを抜き、赤い線が付いているマガジンを銃に差し込む。
「何のためらいもの無くお前を撃てる!」
そう叫びアキトはAWMSを一夏へと向け発砲する。一夏は攻撃を躱しつつ接近してくるが、アキトは120㎜滑腔砲に装填している弾を発射する。一夏はもろに喰らうがそれでも突撃するが、煙を抜けた先にアキトはいなかった。
「何処に!? ッ!!!???!?」
突然背中に激痛が走り、背中を触ると血が出ていた。
「チッ。やけに頑丈に作られているな。だがこれで止めだ!」
単一機能で一夏の後ろにいたアキトはそう呟き再度攻撃しようとしたが、背後からくる攻撃を察知し避ける。
「一夏! 秋斗、憶えておけよ!」
そう言い一夏を抱きかかえて打鉄を纏った千冬は何処かに去って行った。アキトはそれを追うとはせずただ去って行くのを見つめていた。
するとその傍に刀奈と簪がやって来た。
「アキト君、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
「もう一人いたのって織斑先生だよね? 何で……」
「あの女が今回のテロ首謀者だからですよ」
アキトの発言に刀奈達は驚いた表情を浮かべ、鋭い視線を2人が逃げた方へと向け追いかけようとしたがアキトが待ったを掛けた。
「何で止めるの! テロを実行した犯人を見す見す取り逃がすわけ!」
「刀奈さんの怒りは御尤もです。ですが、あの2人を少し泳がす必要があるんです」
「泳がす? どう言う事なのアキト?」
簪にそう問われたアキトは戻ったら説明するよ。と言い地面へと下りていった。
それから数時間後、学園を襲撃した女性権利団体のテロリスト達は“偶々”近くで航行していたアメリカ軍の空母、そしてIS学園の専用機持ちと教師達の奮闘によって撃退に成功した。死者数十名、負傷者数百人と出たが学園側には死者は出なかったという。
そしてアメリカ政府は女性権利団体の動きを察知できなかった日本政府にIS学園を任せておくのは可笑しいと声を上げると他の国々からも日本政府の対応に疑問視する声を上げ、遂に日本政府はIS学園を手放し国連が学園の運営を担う事が決まった。学園長は変わらず轡木だという事は此処に記しておく。
そして今回のテロの首謀者が織斑一家で世界中の女性権利団体と引き起こしたとアメリカは発表し、
次回予告
ゴーストは死者の再来である。人間に復讐する為、または助けるため。あるいは罰を与えるために現世に留まっている物のことを言う。
次回
最終話、ゴースト