プールから戻ってきたアキト達は部屋でソファーに座り寛いでいた。
「いや~、楽しかったわね」
ナターシャは冷蔵庫から冷えたビールを飲みながら、呟くと周りにいた刀奈と本音は同意するように頷く。
「そうでしたね。また皆と行きたいです」
「私ももう一度行きたいです!」
2人はまた行きたいなぁ。と思っていると、キッチンにいたアキトが戻ってきて皆の前におにぎりを置いた。
「はい、今日の夕飯はこれね」
「わぁ~い! あっくん特製のおにぎりだぁ! いっただきま~す!」
「いただきます」
「私が大好きなツナマヨがあったぁ!」
束はアキトが作ったおにぎりを両手で持ちながらフガフガと食べ始め、クロエはお行儀よくおにぎりを両手で持ち、美味しそうに頬張っていた。マドカは好物のツナマヨ(但しアキト特製のみ)が入っていた事に喜び、鼻をヒクヒクさせてどれがツナマヨのおにぎりか探し、的確にツナマヨのおにぎりを頬張った。
簪と虚、真耶はテレビを見ていた。
「アメリカだと、あんまりアニメとかやってないんだ」
「ほぼニュースなどですね」
「アニメとかはこの時間はあまりやってませんからね」
簪はアメリカのアニメに少し興味があり、見られるかなと思ったがやっている時間ではなかった為、ほとんどニュース番組が占めていた。
「もういい。アキトのおにぎりをやけ食いする」
そう言い簪はおにぎりを頬張り始める。虚と真耶は苦笑いでそれを見ながら自分達もおにぎりを頬張る。それから時間は経ち20時頃となる。
「そうだ真耶、貴女今日はこっちの家で泊っていく?」
ナターシャの提案に真耶は首を傾げる。
「え、どうして? 私の家、すぐ隣よ?」
「久しぶりに酒を酌み交わそうって言ってるのよ」
「あ、そう言う事ね。良いわよ」
そう言い真耶は隣の自宅から着替えを取りに戻る。
「じゃあ俺は風呂沸かしてくるよ」
そう言いアキトは立ち上がり浴室のバスタブにお湯を張りに行く。
そして戻ってくると、アキトは真耶の手元に旅館から学園へと戻るバスで持っていた紙袋を持っていた。
「真耶さん、それって何が入ってるんですか?」
そう聞くと真耶は説明を始める。
「これですか? 実は母が買ってきてくれたパジャマが入ってるんです」
「そうなんですか。それじゃあ一番風呂は誰が行く?」
アキトがそう聞くと、真耶と束は後で良いと言う。刀奈達はそれじゃあ私達がと。と4人は先に風呂へと入りに行った。
それから数十分後、アキトは居間で作業用のシートを敷きその上で何時も使用しているハンドガンの整備を行っていた。
「アキト君、お風呂お先にいただきましたぁ~」
刀奈がそう声を掛けながら居間に入ってきた。刀奈が来ているパジャマは着物を基調とした物である。
「いい湯加減だった」
そう言いながら簪も居間へと入ってきた。簪は普通のよくあるパジャマで緑色のパジャマである。
「ふわぁ~、お姉ちゃんおんぶぅ~」
「はいはい」
虚におんぶされながら本音も居間へと入ってきた。本音は牛の着ぐるみのパジャマで、虚は簪と同じ普通の黒色のパジャマだった。
「布団は敷いておいたのでゆっくり休んでください」
アキトは組み立て終えた銃を下に置き、そう伝えると刀奈達はありがとうとお礼を伝えた。
「それじゃあ次私達が入りに行こう」
「はい、行きましょう」
次に行ったのはマドカとクロエである。因みにナターシャは真耶と一緒に談笑していた。
数十分後、クロエとマドカが上がってきて居間にいるアキト達にお休みと伝え自室へと入って行った。
「じゃあ次は束さん達が行こう!」
そう言い束はナターシャと真耶と共に風呂へと入って行った。そしてアキトは明日のお弁当の準備を先にしておくかとキッチンに入る。
そしてそれから数十分後、最初にナターシャが濡れた髪をタオルで拭きながらあがってきた。恰好は白のTシャツに半ズボンと言ったラフな格好だった。
「ふぅ~、アキくんいい湯加減だったよ」
「それは良かったよ。あ、姉さん。明日の弁当作っといたからまた忘れないでよ」
「はぁ~い」
そう言いながらナターシャは冷蔵庫からビールを取り出し、また飲み始める。
「いや~、普段はシャワーとかで済ましてたから久しぶりのお風呂は気持ちよかったよぉ」
そう言いながら束も上がってきた。束の格好はシルクのローブだった。
「あら、アンタいつの間にそんな物買ってきたのよ」
「これ? 水着と一緒に買ったんだよぉ」
ふぅ~ん。とナターシャは呟くと、居間と廊下を繋ぐ扉の影から真耶が顔をのぞかせている事に気付く。
「何してるのよ真耶。そんなところに居ないでこっちに来たらいいじゃない」
そう言われ真耶は顔を赤くさせて一度顔を引っ込めた。そして小声だが『恥ずかしいけど頑張れ私。恥ずかしいけど頑張れ私!』と自分に何かを言い聞かせていた。そして扉が開かれ真耶が入ってきた。それと同時にキッチンにいたアキトが冷えたジュースが入ったコップをお盆に乗せて出てきた。アキトは真耶が入ってきたことに風呂が開いたと最初に思ったが、真耶の格好を見てその考えが一瞬に吹き飛んだ。
「ま、真耶さん! 何ですかその格好!?」
真耶の今の格好は下着以外が透けているネグリジェなのだ。その為アキトは顔を真っ赤にさせ、目線を合わせまいと、明後日の方向へ向ける。
「ちょっと真耶! 普通のパジャマを持って来たんじゃないの!?」
「そ、それがお母さんにしてやられたかもしれない」
そう言い真耶は順に説明を始めた。時は遡り、臨海学校が終わり学園へと戻ろうとしていた時の事だ。アキトが退散した後、真耶は部屋に忘れ物がないか確認していると、母幸恵がある物を持って部屋へと戻って来た。
「真耶これを持って行きなさい」
そう言い、真耶に手渡されたのは大きめの紙袋だ。真耶は何これ?と言いながら紙袋の中身を取り出す。するとそれは、スケスケのネグリジェだった。
真耶は顔を真っ赤にさせ、中身を戻す。
「お、お母さん! 何手渡すのよ!?」
「何って、貴女が中々彼に一歩前進で出来そうにないから、そのお手伝いをと思って買ってきた物よ」
幸恵は朗らかな笑みを浮かべながらそう説明する。真耶は顔を真っ赤にさせ、紙袋を返す。
「い、要らないから! それに彼はまだ高校生なのよ! 今誘ってどうするのさぁ!」
そう言われ、幸恵は仕方ないわねぇ。と言いながらもう一つの紙袋を真耶に渡そうとする。真耶はその中身が気になり、恐る恐る幸恵に聞く。
「お母さん、その中身は何?」
「そんなに怖がらなくても大丈夫よ。普通のパジャマだから」
そう言い幸恵は紙袋から取り出したものは普通のピンク色のパジャマだった。真耶は真面のやつだと思い、息を吐く。
「それだったら最初からそっちを渡してよぉ」
そう言い真耶は持っていた紙袋を母に渡す。受け取った幸恵はもう片方の紙袋を渡そうとした瞬間、うっかり紙袋を両方とも落としてしまう。
「あらあらもう年かしら」
そう言い落した紙袋の片方を拾い上げ真耶へと渡す。
「もう、気を付けてよね」
「分かってるわよ。貴方も体には気を付けなさいよ。それと」
幸恵はそこで言葉を区切り、真耶の耳元に口を近づける。
「早く元気な孫の顔を見せてよね」
そう言われ真耶は顔を真っ赤にさせ、足早にその部屋から退出していったのだ。
「つまり、アンタの母親が渡したのは普通のパジャマでは無く、そのネグリジェの方を渡したっていう事?」
「多分。お母さん昔から手先は器用だったから、こんなことが出来たんだと思う」
部屋で顔を真っ赤にさせながら真耶は説明を終えた。因みにアキトは話を聞く前に風呂に猛ダッシュで入りに行った。
「なるほどねぇ。と言うか束さんもそっちのパジャマ買えばよかったやぁ」
そう言いながら束は、真耶が来ているネグリジェをネットで探し始めた。
「まぁいいわ、兎に角もう寝ましょう。あんたがその格好で家の中をウロウロされたら、アキくんの教育に悪いわ」
「えぇ!? た、確かにそうですけど、せめてアキト君に感想を……」
「言わせる訳ないでしょ。ほらアンタの寝室は私と同じ部屋だから行くわよ!」
そう言いナターシャは真耶を引っ張り部屋へと向かう。残された束は2人が出て行ったのを確認後、ヌフフフと笑い出す。
「二人とも気付かなったやぁ」
そう言いながら束はシルクのコートを結んでいる紐を解く。その下から現れたのは真耶と同じ透け透けのネグリジェが下から現れた。
「フフフ。あっくんに感想を貰い、初めてを貰うのはこの「言わせないわよ」……」
束は背後にいる人物に滝のような冷や汗を流しながら後ろに顔を向ける。其処には仁王立ちをしたナターシャが立っていた。オデコに青筋を浮かべながら。
「なんか嫌な予感がしたから下りてくてみれば、お前もか」
「な、ナーちゃん? その拳は何? 束さん的に嫌~な予感しかしなんだけど」
「えぇ、その予感は的中するわよ」
そう言われナターシャは重い拳を束の脳天に喰らわした。
「アキくんの教育に悪影響を及ぼす奴に天誅!!」
「ふぎゃ!??!!」
ナターシャのゲンコツを貰った束はそのまま気絶し床に倒れる。ナターシャは束を担ぎ上げ、二階へと上がって行った。
次回予告
夏休み終盤頃、千冬はある人物達と連絡を取っていた。そして一夏にあることない事を吹き込む。
千冬が喧嘩を売ろうとしている相手がどれ程強大であるか、そしてその先に待っているのが破滅しかないとは知らずに。
次回
愚か者が計画する物は破滅へと道