ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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序章Ⅱ

アキトはミッチェルと共に司令官室で、アメリカ大統領のアメリアと共に緊急電話会議を行っていた。

 

『では大佐、アキト少尉の肩がISに触れた瞬間彼がISを身に纏っていたということなんですね』

 

「はい、その通りです」

 

ミッチェルはそう肯定し、アキトも頷く。

 

『そうですか。科学者たちがこの事を聞いたら大いに喜びますが……』

 

そう言って顔を歪める。

 

「えぇ、IS委員会、さらに世界中の女性権利団体の連中が大騒ぎになりますね」

 

『そうなったら色々面倒ごとが舞い込んできます。とりあえず今回のことを知っているのは大佐以外に居りますか?』

 

「私以外で知っているのはハンターチームの2名です。両名はアキト少尉とは親しい者同士なので外部に漏らすといったことは決して致しません」

 

『そうですか。大佐、この件については決して外部に漏れないようにお願いします。彼の正体を隠すこと、そして彼の身の安全を守るために』

 

「了解致しました」

 

そう言って敬礼をした瞬間、基地内全域に警報が鳴り響く。

 

『何事ですか!?』

 

「只今現状確認を!」

 

ミッチェルがそう返答すると、勢い良く扉が開かれコザックが入ってくる。

 

「報告します! 所属不明の飛行物体が当基地の上空に出現し、その後当基地の滑走路に着地し現在は沈黙しています!」

 

そう言ってきてミッチェルは驚きながらもすぐに命令を飛ばす。

 

「わかった。アキト、お前も行け。大統領申し訳ありませんがここで切らせて頂きます」

 

『分かりました。御気をつけて』

 

そう言って通信は切られアキトとコザックは共に外へと向かう。アキトはコザックからHK417を受け取りコッキングレバーを引き、初弾を込める。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「弾種は?」

 

アーマー(A)ピアシング(P)弾だ」

 

そしてアキトとコザックが外に出ると、多くの兵士が迎撃の準備をしていた。

 

「2人ともこっちの壁に付け!」

 

ハンターチームの隊長、セドリック大尉がそう指示してくる。

 

「空軍の連中、ちゃんと仕事しろよな」

 

「と言うか一体あれは何なんだ?」

 

「まさかUFOだったりしてな?」

 

「まさか」

 

兵士たちがそう言っていると、ミッチェルが拡声器で所属不明機に呼びかける。

 

「飛行物体に搭乗している者に告ぐ、両手を頭の後ろに組みながら降りてこい! 拒否するならば強硬手段をとる。繰り返す、速やかに降りろ! さもなくば強硬手段をとる!」

 

そう呼びかけて暫くすると扉らしきものが開き出し、全員が銃口を扉に向ける。扉が開き終わると中から人が飛び降りてくる。

 

「あれって、人間だよな?」

 

「あぁ、人間だよな? てか」

 

「「「なんでアリス服なんだ?」」」

 

そう兵士たちが疑問に思っている中で、アキトだけ驚いていた。

 

「な、なんでここに?」

 

そう疑問に思いながらも警戒していると、束が口を開く。

 

「ねぇ、この基地にさ、織斑秋斗って言う少年いるよね? 出して」

 

「「「!?」」」

 

織斑秋斗と言う名前を聞いた瞬間基地の殆どの兵士が驚愕する。アキト・ファイルスが織斑秋斗だということは基地の殆どの人物が知っている事だからだ。だが織斑秋斗は世間では既に死んだことになっている。だからアキトが織斑だということは政府がトップシークレットとし、誰にも悟らせないように配慮していた。だが今自分たちの目の前にいる女性はこの基地に織斑秋斗がいると確信して此処に来たと言ってるのだ。

 

「出さないって言うならこの子たちを暴れさせるよ」

 

そう言って束は指をパチンと鳴らすと、背後から3機の黒色のISが現れる。

 

「おいおい、不味いだろ。今俺たちが装弾してるのはAP弾だぞ」

 

「対IS弾は武器庫にある。今から取りに行くとなると間に合わないな」

 

どうするか迷っているとアキトが束に向かって歩き出していることに気付く。

 

「お、おいアキト!」

 

「おい、あいつを止め『大丈夫です大佐。俺の知り合いですから』……本当に大丈夫なんだな?」

 

『はい』

 

アキトにそう言われミッチェルは許可を出す。そして他の兵士に女性がおかしな行動をしたらいつでも撃てる様にしておくように指示を出す。

 

「束様、誰かが近付いてきます」

 

クロエにそう言われ束は近付いてくる兵士に目を向ける。

 

「うん? ……あいつサングラスしてるから分かんないや」

 

目を細めながらそう言ってとりあえず待つか。と考え近付いてくる兵士の到着を待った。そして兵士が束とクロエと対面できる距離に着くと、兵士はライフルを下ろし敵対する意思がないと見せる。

 

「ねぇ、私は織斑秋斗を出せって言ったの。なのに君が来るってどういうことなの?」

 

そう言われ兵士はハァとため息を吐き、それを見た束はカチンとくる。

 

「何……? そのため息」

 

そう言って睨んでくる束に対して兵士は話し掛ける。

 

「ここまで来たのに分からないの? 束お姉ちゃん」

 

そう言われた瞬間、束の目が見開く。

 

「え? まさか……」

 

「そのまさかだよ」

 

そう言ってサングラスを外す兵士。兵士の顔を見て束は昔の面影は残っているという訳ではないが雰囲気とかで分かる。

 

「あ、あっくん?」

 

「えぇ俺です。束お姉ちゃん久しぶり」

 

そう言った瞬間束は涙を流しながらアキトに抱き着いた。

 

「会いたかったよあっくん!」

 

束は涙を流しがらそう言い、アキトは優しく背中をさする。ミッチェルは部下たちに銃を下ろすように伝え警戒態勢を解除させる。

 

数十分後、泣き終えた束とクロエを連れ司令官室に案内するアキト。中に入るとミッチェルとモニターに大統領が映っていた。

 

「ではアキト、その女性が誰なのか説明してほしい」

 

ミッチェルにそう言われアキトは説明する。

 

「はい。彼女は篠ノ之束、ISを生み出した博士です」

 

そう言われミッチェルは驚く。

 

「まさか貴女が篠ノ之博士なのか?」

 

「うん、そうだよ~」

 

そう返されミッチェルは焦る。すると大統領が話しかける。

 

『お久しぶりですね、篠ノ之博士』

 

「うん? どっかで会ったことあったっけ?」

 

そう言われ苦笑いになる大統領。

 

『憶えてないですか? 貴女がISを発表した際、貴女の夢に共感して挨拶をしたと思うんですが』

 

そう言われ束は必死に思い出そうとし、暫くして思い出したのか指をさす。

 

「あぁ~! 思い出した。あの時私の夢に唯一共感してくれた女性?」

 

『はい、その通りです。あの時私はまだ新米議員だったため貴女の夢を支えることが出来ませんでした。ですが今はこの国の大統領となり貴女の夢だったISの宇宙進出を今行っているんです』

 

そう言われ束は驚く。

 

「え! 本当に!?」

 

そう言って束は空間ディスプレイを出しISの現在位置を確認する。するといくつかのISコアが宇宙に出ていると表示された。

 

「本当だったんだ」

 

『貴女が姿を消した後、私はISを兵器にしようとするこの国が嫌だったため必死に努力をしてこの国を変えたことでこの国はISを宇宙にあげることが出来たんです』

 

そう言われ束はお礼を言う。

 

「ありがとうね、私の夢を叶えてくれて」

 

そう言われアメリア大統領は首を横に振る。

 

『いえ、まだあなたの夢は叶え切れていません。まだ多くのISがこの地上に残っています。私としてはこの世界にあるISをすべて宇宙にあげたいなと思っているんです。ですので』

 

そう言って頭を下げるアメリア大統領。

 

『どうか博士のお力を御貸し頂けないでしょうか?』

 

「いいよ」

 

「返答早!」

 

アキトはそう驚くと束が答える。

 

「だってこの国だったら私の夢を叶えられるし、あっくんと一緒に居られるでしょ?」

 

そう言うとアメリア大統領が答える。

 

『勿論です。貴女にはアメリカの国籍と永住権を差し上げます。それと自由に研究できる場所を提供します。住まいに関して何ですが「あ、それだったらあっくんのお家がいい」……それは流石に本人の了承がないと何とも言えません』

 

「あっくんいい?」

 

そう聞かれアキトは困り顔で言う。

 

「家主は俺じゃないからな。姉さんに聞かないと」

 

そう言っていると扉が急に開かれる。そして入ってきたのは

 

「アキくん大丈夫? 怪我はない? なんか変な飛行物体が基地に来たって報告があって慌てて来たの」

 

アキトの姉、ナターシャだった。

 

 

 

用語

AP弾

アーマーピアシング弾と言う弾丸。弾芯に鉄よりも重くそして硬いタングステンを用いた徹甲弾。先端を尖らせて弾芯を弾丸から露出し、貫通力を高めた弾もある。

 

HK417

口径7.62㎜

装弾数20発

製造国ドイツ

 




次回予告
アキトを心配して飛んできたナターシャ。そして部屋にいた束に何者か聞いて驚く。そしてアキトが好きだと見抜く。そして束はナターシャに家に居候させてと言うがナターシャは拒否したかったが大統領からお願いされ拒否できず仕方なく了承する。そんな時とんでもない情報が舞い込む。
次回動き出す歯車~あっくんは私のお婿さんだ!/アキくんは渡さない!~

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