刀奈達と合流し、束の際どい水着を見て気を失ったアキトは直ぐに目を覚まし、刀奈達と遊び始めた。最初に全員が目に付けたのは大型ウォータースライダーだった。
「お、大きいねお姉ちゃん……」
「さ、流石アメリカンサイズ……」
「わぁ~! 面白そぉ~!」
「こ、これ下りてくるのにどれほど掛かるんでしょう?」
更識、布仏姉妹は目の前にあるウォータースライダーに圧巻されていた。4人は休日に親に連れて行ってもらったプールにあるウォータースライダーとは比べ物にもならないと思った。
「へぇ~、2人乗りのゴムボートに乗って滑ることが出来るのか」
アキトは近くにあったウォータースライダーの看板を読んでいると、2人乗りと言う部分に反応したのか、全員アキトに申し出た。
「アキくん、久しぶりにお姉ちゃん孝行って言う事で一緒に乗らない?」
「お兄ちゃん、私と乗ろ~」
「あっくん、束さんと乗ろうぜぇ~!」
「アキト君、その私と一緒に乗りませんか?」
「アキト君、私と乗らない?」
「あ、アキト一緒に乗らない?」
「アッキー、一緒に乗って欲しぃ~な~?」
「その、アキト君一緒に乗っていただけませんか?」
全員の誘いにアキトは困惑した表情を浮かべどうしようかと思っていると、隅っこの方で椅子に座りながらこちらを見ていたクロエを見つけた。アキトは全員じゃんけんをしてグループを決めておいてと伝え、クロエの元へと向かう。
「クロエは遊ばないのか?」
「その、私は皆さんが遊んでいるのを見ている方がいいので……」
クロエは顔を逸らしながらそう呟く。
「……だったら一緒に乗って遊ぶか?」
アキトの提案にクロエは驚いた表情を浮かべる。
「良いのですか? あそこで皆さんじゃんけんをして決められておられるんですよ?」
「別に大丈夫だろ。それに同じ家に住んでるなら家族みたいなもんだし、そんな遠慮しなくてもいいぞ」
そう言われクロエは家族と言われ、束が常日頃からあっくんは何時かクーちゃんのお父さんになるよと言われていたのだ。クロエはアキトの掛けられた『家族』と言う言葉に嬉しくなる。
「……はい、お父様!」
「お、お父様?」
突然のクロエのお父様発言にアキトは困惑するが、まぁいいかと納得する。と言うのも恐らく束さんが関係しているだろうなとすぐに考えが行きついたからだ。
「みんな~、悪いんだが俺クロエと乗るわ」
クロエを連れアキトはそう言うと、まだ誰がアキトと一緒に乗るのか決まっていなかった為か全員驚いた表情を浮かべるが、別にいいよと了承する。
そしてアキトとクロエはウォータースライダーの出発地点まで登りそれぞれボートへと乗り込む。
「それじゃあしっかり捕まってるんだぞ」
そう言いアキトはボートの持ち手をしっかりと掴みながらクロエにそう伝える。
「分かりました、お父様」
クロエもアキトと同様に持ち手をしっかりと掴み出発に備える。すると左右に束とナターシャが一人用のボートに乗って同じように出発準備をしていた。
「それじゃあっくん、下でね」
「これどれだけスピードが出るのかしら?」
そう言いながらそれぞれ準備する。
「それでは皆さん、楽しんで行ってください!」
そうアナウンスされそれぞれのボートが出された。アキトとクロエが乗ったボートは激しく左右に振れたり、カーブで遠心力で引っ張られたりと楽しんだ。クロエは初めてのウォータースライダーに悲鳴をあげながらも楽しんだ。そして2人が乗ったボートは下にあるプールへと下りた。
「楽しかったな、クロエ」
「はい! 初めて乗りましたけど楽しかったです!」
クロエの楽しそうな笑顔を見たアキトは本当に楽しかったんだなと思っていると、左の穴からナターシャが出てきた。
「ふぅ~、結構いいスピードだったわ」
そう言いながらナターシャは顔に付いた水滴を拭う。すると今度は右の穴から束が出てきたが出たと同時にボートから落ちた。そして暫くしてぷはぁっ!と出てきた束。
「いや~、びっくりしたよぉ。これ結構楽しいね!」
そう言いながら立ち上がる束。アキトは立ち上がった束を見て顔を真っ赤にさせてまた気を失ってしまった。
「お、お父様~!?」
「クーちゃんがあっくんの事をお父様って呼んでる! もしかしてこのままの勢いで束さんの事もお母様って呼んでくれる「その前にアンタの格好如何にかしなさいよ!」へ? ナーちゃんどう言う意味?」
束はナターシャの言葉に疑問に持ちながら自身の体を見る。現在の束の状態は、胸の部分の水着部分が真ん中に来ていた。つまり胸が丸見えの状態である。
「………キャッ♡」
「キャッ♡、じゃないわよ! さっさと戻しなさい!」
ナターシャの言葉に仕方がないと言いながら水着を元に戻す。その頃アキトはきゅー。と言いながらボートに乗ってぷかぷか浮かんでいたとか。
そしてアキトが気絶している間に更識、布仏姉妹と真耶とマドカが上から下りてきた。
そして散々ウォータースライダーのエリアで遊んだアキト達は、次に流れるプールエリアと到着しそれぞれ浮き輪を借りたり、大きめのイルカの浮き輪を借りたりして流れるプールを楽しんだ。
「さっきの光景は本当にびっくりしたなぁ」
そう言いながらアキトは借りた浮き輪で上半身と下半身を上に出しながら浮きながら流れていると近くにイルカの浮き輪に乗った簪と本音がやって来た。
「あ、アッキーだぁ!」
「本当だ」
簪と本音に呼ばれ、アキトは掛けていたサングラスを上げ2人によぉ。と手を挙げる。
「そっちもそれに乗りながら楽しんでるんだな」
「うん、楽しいよ!」
「そんなに泳がなくて済むしね。あ!」
そう言っていると簪が何かを見つけたのか、指を指す。アキトと本音はその先を見ると、人工波プールのエリアでサーフィンに乗りながら波に乗るマドカが居た。
「……凄いね」
「マドマド凄~い!」
「前に海に行った時にも乗っていたが相変わらずいい乗りっぷりだな」
そう言いながら流れていく3人。その頃束とナターシャはと言うと、ガーデンチェアに座りながら飲み物を飲んでいた。
「いや~、中々楽しい場所だね」
「そうね。ここの所任務ばっかりであまり息抜きが出来なかったから、良い息抜きが出来て本当に良かったわ。……所で束」
「うん? なぁ~にナーちゃん?」
突然真剣じみた呼び声に束もふざけた雰囲気を出しているような感じながらも要件を聞く。
「あの姉弟がアキくんの前に立ちはだかる可能性ってある?」
「……あるだろうね。しかも武力行使で」
束の返答にナターシャは鋭い視線を空へと向ける。
「そう。あの2人にはそれほど力はないけど、何か計画を立ててアキくんを亡き者にする気ならあの二人、抹殺した方がいいわね」
「それはいいけど今は動かない方がいいよ。もう少し泳がした後に自分たちのとった行為がどれ程愚かな事だったかと分からせるのが一番良いからね」
束の悪い顔を見たナターシャは同じように、悪い笑みを浮かべる。
流れるプールから上がってきたアキトは飲み物でも飲むかと自販機で飲み物を買おうと自販機に行くと虚と鉢合った。
「あ、アキト君も飲み物ですか?」
「えぇ。虚さんもですか?」
アキトの問いに虚は頷きジュースを2本買う。アキトもジュースを買い、虚と共に一緒に歩くと、ガーデンチェアに寝そべりながら日光浴をしていた刀奈が居た。
「アキト君、はぁ~い」
と、寝そべりながら手を挙げる刀奈。
「お嬢様、寝そべりながら挨拶するのはどうかと思いますよ」
虚は呆れた息を吐きながらそう言うと、刀奈は頬を染めながら答えた。
「だってこのまま起き上がったら胸が見えちゃうもん」
そう言われ、2人はえ?と疑問を持っていると、刀奈の胸の水着を止める紐が解けていた事に気が付いた。
「そ、そうでしたか。それは気が付かず申し訳ありません」
「別に良いわよ。それに別にアキト君にだったら見られても平気だし」
そう言いながら刀奈は片手で手ブラをしながら起き上がる。
「ちょっ、刀奈さん!?」
「お、お嬢様!」
二人の声に刀奈は頬を真っ赤に染めながら舌を出してテヘッと言ってまた寝そべった。
刀奈達と談笑した後、アキトは他のエリアに向かっていると、真耶が何かを持って誰かを探している姿を見つけた。
「真耶さん、どうかしたんですか?」
「あ、アキト君。実は少しお願いがあるんですがいいですか?」
お願いと言われアキトは首を傾げる。
「はい、実は背中に日焼け止めを塗るのを忘れていたので、塗って貰ってもいいですか?」
「えっと、まぁいいですけど」
そう言い、アキトは真耶から日焼け止めクリームを受け取る。真耶は近くにあったガーデンチェアに寝そべる。アキトはクリームを人肌に温めた後、真耶の背中に塗り始めた。
「んっ……つ、冷たいです~」
「あ、まだ冷たかったですか」
アキトは慌てて手を引っ込めようとしたが大丈夫ですと言って真耶は続けさせた。そして背中を塗り終えたアキトはふぅ~。と息を吐く。真耶は頬を赤く染めながらアキトにお礼を言う。
「ありがとうございますアキト君」
「い、いえ。お役に立てたならそれでよかったです」
アキトはハハハ。と乾いた笑みを浮かべながらその場を後にした。因みに真耶はアキトに背中を触られたことに寝そべっている最中、終始妄想が止まらなかったとのこと。
そして時間は経ち夕方ごろ、全員正門前で着替え終え集まっていると、アキト達のグループはロバートの頭にでっかいタンコブが幾つも出来ているのが気になった。アキトとマドカ、そしてナターシャは何故タンコブが出来たのか、直ぐに理解できた。
「……シャル、もしかして」
「うん。また暴走したから思いっきり叩いたよ」
そう言いながら何処からともなくハリセンを取り出すシャル。シャルが持っているハリセンは厚紙を更に厚くした紙で出来ており、叩かれたらタンコブが出来るほど痛いとのこと。
「えぇ~と、それで今度はロバートさんは何をしていたんだ?」
「私がプールで皆と遊んでいる姿を写真に撮ってた。因みにその隣でお母さんも一緒に撮ってた」
そう言われたがアキト達はシャルの母、カティアの姿が無かった。
「……そのカティアさんが居ないぞ」
「お父さんを囮に逃げた」
悔しそうにシャルはハリセンを持つ手を震わせる。
「……まぁお前の両親がお前の事溺愛しているのは今に始まったことじゃないからな」
「けど限度があるでしょ!?」
アキトの哀れんだ言葉にシャルは怒りながらロバートにハリセンを喰わらせる。
「ガハッ!! な、ナイスアタックだったぞシャル……ガックシ」
「ちょっ!? 死んだんじゃないの!?」
鈴は慌てた様子で言うが、アキトが苦笑いで答えた。
「いや、数分で気が付くからそのままで大丈夫だぞ」
そう言われ、鈴は何処か納得がいかない様子でそ、そう。と了承する。そしてアキト達はリムジンに乗り家路へと着く。因みにロバートはアキトの言う通り数分で気が付き、家へと戻り、カティアと一緒に撮ったシャルの姿を昔撮った写真と一緒に見ながらお酒を楽しんだそうだ。勿論その後、シャルの鉄槌(ハリセン)が2人に襲い掛かったのは言うまでもない。
次回予告
プールから帰ってきたアキト達。真耶も引っ越してきた家で過ごそうと思ったが、食材が無い為夕飯をアキトの家ですることとなり、そのままお泊りが決まったそうだ。
その夜、またアキトに悲劇が襲い掛かるとはだれも予想できなかった。
次回夏休み編Ⅲ~その、似合いますかアキト君?~