ISの訓練等を終えた、3日目の臨海学校。生徒達は荷物をまとめ、学園に戻る準備をしていた。
真耶と同じ部屋で宿泊していたアキトも、荷物をまとめていると、背後の襖が開かれ女将の幸恵が現れた。
「失礼しますね」
「あ、どうも女将さん。今日までお世話になりました」
そう言いながらアキトは頭を下げる。
「いえいえ、それほどでもありませんよ」
幸恵はニコニコと朗らかな笑みを浮かべていた。
「そうだ、ちょっと相談があるんだけどいいかしら?」
「相談ですか? 別に構いませんが」
そう言うと、幸恵は少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら伝えた。
「少し早いけど、私の事お義母さんって呼ばない?」
「……は、はい?」
「だから、貴方はいずれ家の娘と結婚してお婿さんになるんでしょ? だったら今から私の事お義母さんって呼んでも問題ないでしょ?」
そう言われ、アキトは顔を真っ赤にさせて慌てふためく。
「ま、待って下さい! 自分と真耶さんがけ、け、結婚!? 何の冗談なんですかそれ!?」
アキトが慌てている中、幸恵はあらあら。と笑みを浮かべていると、真耶が大慌てで入ってきた。
「お、お母さん! アキト君に何言ってるのよ!」
「何って将来の事よ」
さも当然と言った表情で言う幸恵に、真耶は顔を真っ赤にさせる。
「だ、だからって今からお義母さんって呼ばさせなくてもいいじゃない!」
「何事も早い内が事が運びやすいのよ?」
ニコニコと悪戯っぽい笑みを浮かべている幸恵に対し、顔を真っ赤にしたまま幸恵に反論する真耶。アキトはこれ以上この部屋にいると、何を言われるか分かったもんじゃないと思い、コッソリと部屋から抜け出しバスへと乗り込みに行った。
それから数十分後、顔を真っ赤にさせて大きめの紙袋を持った真耶がバスへと乗り込んだ。生徒達は何があったんだと思い、真耶に質問するが返ってくる言葉は
「だ、大丈夫ですよ。 ……うぅう~」
そう返答しつつ、顔を真っ赤にして、顔を下へと向けていた。
そして1年生達を乗せたバス群は、IS学園へと走り出した。道中は生徒達の多くは疲れからか、寝ている生徒が多かったが、一部は談笑したり、スマホの協力ゲームをしたりと楽しんでいた。
織斑姉弟の所は静かで、一夏は何を信じたらいいのか分からないと言った表情で俯き、千冬は目を閉じ寝ている様な雰囲気を醸し出すが、実際には束が仕掛けてくる報復にどう対策をとろうかと考えていたのだ。
そして数時間生徒達はバスに揺られた後、バス群はIS学園へと到着し、生徒達はぞろぞろと降り整列する。そして生徒達の前に千冬が立ち解散を言い渡す。
「では、これにて臨海学校を終了する。各自自室へと戻り十分休息をとる様に」
そう言い千冬はその場から退くと、今度は真耶が生徒達の前へと立つ。
「忘れているかもしれないので、通知しておきますが2週間後には夏休み前の期末テストがありますので、皆さん今日はしっかりと休み、明日からみっちりとテスト勉強をしてくださいね」
そう伝えた瞬間、生徒達は忘れていた!と絶叫している生徒や、思い出したくなかった!と叫んでいる生徒があちこち現れた。
そして生徒達は嫌なことを思い出した事に落胆しながら部屋へと戻って行った。アキトもマドカと共に部屋へと帰って行った。
次の日、アキトとマドカは部屋でテスト勉強を始めていた。
「お兄ちゃん、この問題分かんない」
そう言いながらマドカは、問題をアキトの方へと向ける。
「これか? これは『コンコン』ん? 誰だ?」
アキトは席から立ち上がり、扉を開けると其処には楯無に簪、そして虚と本音が勉強道具を持って立っていた。
「どうしたんです?」
「いや~、テスト勉強捗ってるかなぁと思って見に来たのよ」
「私はアキトと勉強がしたいと思って」
「私も~」
「私は分からないところがないかと思い見に来ました」
「そうですか。それじゃあどうぞ」
そう言い4人を中へと入れる。
「あ、更識先輩達。どうも」
マドカは座りながら頭をぺこりと下げ、またノートへと目線を戻す。
「それじゃあこの簡易机使ってください」
そう言いアキトは、ベッドの下に入れていた軍用の野戦用の折り畳み式の机を取り出す。
「分かったわ。それじゃあ何か分からないところがあったら言ってね」
「分かりました」
楯無の提案に答えつつ、アキトはもう一度勉強を始める。そして数時間後、全員分からないところを得意そうな人に聞いたりしたため、ある程度予習が出来た。只一人を除いて。
「うぅぅ~~~、分かんないよ~」
本音は涙目になりながら机に突っ伏していた。
「普段から復習をしてないからでしょ?」
本音の姉の虚に、最もな意見を言われ、本音はうぅぅ。と唸っていた。
「だって、勉強をしてるとお腹が空くんだもん」
そんな言い訳をしながら本音は勉強していた。
「本音って、こうすれば頑張れるってことは無いですか?」
アキトは全員にお茶の入ったコップを手渡していく中虚にそう聞くと、虚は考え込むように頭を傾げ、何かを思い出したかのように話す。
「そう言えば、昔夏休みの勉強が出来たらアイスを一つ買ってあげると母から言われた時、本音ったらその日の内に夏休みの宿題の3分の1を終わらせたことがあったわ」
そう聞き、アキトはそれだったらとある提案を本音に提示する。
「本音、期末テストで赤点を一個も出さなかったら報酬として手作りアイスをご馳走してやるから、頑張れるか?」
そう言うと、本音の目から星が出てくるほどの輝きで見つめ返す。
「本当? だったら頑張る!」
そう言い、本音は物凄い勢いで勉強始める。
「……効果絶大ですね」
「そりゃあアキト君お手製のアイスが貰えるなら頑張れるでしょ」
「うん。アキト、それ私達にも貰えるんだよね?」
楯無は本音の行動に驚きつつもそう解釈し、簪は自分達にも報酬は貰えるかアキトに聞く。
「そりゃあ本音一人に渡すのは、全員不公平だから渡すが」
そう言うと簪は
「もう一周勉強する」
と言い勉強を始める。その隣では楯無と虚も黙々とテスト勉強をしていた。
そしてあっと言う間に期末テストは終わり、成績表配布の日がやって来た。本音はドキドキしているのか、体が携帯のバイブレーションみたく震えており、そして自身の成績表を貰いに真耶の元へと向かう。
「はい、布仏さん」
「ど、どうも」
本音は席へと戻り、震える指を抑えながらゆっくりと中身を見ると成績表には1個も赤点は無く、本音は念願のアキトの手作りアイスが食べられると、嬉しい気持ちを必死に抑えながら休み時間を待った。
そして成績表配布が終わり、真耶は夏休みの説明に入った。
「では皆さん、明後日から夏休みに入りますがIS学園の生徒として、節度ある行動を忘れないよう夏休みを楽しんできてください。以上で1学期の授業は終了です」
そう言い、真耶は千冬と共に教室を後にした。そして本音は席を立ち、真っ先にアキトの元に行き抱き着く。
「やったよ~、アッキー! 赤点1個も無かったよ~!」
「そうか。それじゃあ明日にでも『電話だよ~。電話だよ~』……何故に?」
アキトは自身のスマホの着信音が何時の間にか束の音声版になっているのか疑問を持ちつつ、電話に出ると、相手はミッチェルだった。
『アキト、済まないが明日辺りに日本を発って本部に来てくれ』
ミッチェルの言葉には、何か焦ったような感じが含まれており、アキトは問題事が起きたと瞬時に理解できた。
「分かりました」
そう言い、電話を切るアキト。そして申し訳ない顔で本音の方に向ける。
「すまん、本音。アイスの件、もう少し先でいいか?」
「えぇ~、そんな~。」
「本当にごめんな。ちょっと用事が出来て、明日にはアメリカに戻らなくちゃいけなくなったから」
「……分かった。けど約束忘れちゃダメだからね!」
本音は不本意な雰囲気を出しながらそう言い、アキトはありがとう。とお礼を言って教室から出て行った。
その後、簪と楯無と虚が1組に来たがアキトがいないことに気づく
「あら、本音ちゃん。アキト君は?」
「何か用事が出来て、明日アメリカに帰るって、さっき教室から出て行った」
本音は不貞腐れながらそう言い、マドカは補足する。
「多分上司から呼ばれたんだと思いますよ。お兄ちゃんはレンジャーの中で随一の精鋭部隊に所属してるから」
マドカはアキトの本来の部署の事は洩らさないようそう言い、4人はそれで納得する。
「そう。それじゃあアイスの件はもう少し先になるわね」
楯無はそう呟くと、簪達が残念がる様に落ち込んでいると、マドカがある提案を出す。
「それでしたら、皆さんも一緒に来ます?」
「え? 何処に?」
「アメリカ」
簪の問いにマドカがさも当然と言ったように感じで言うと、楯無達はその手が有ったか。と手を叩き早速荷物の準備をとマドカと共に教室を後にする。
次回予告
次の日、アキトはアメリカへと戻りフォートブラッグ基地へと向かう。そして基地奥の指令室へと入ると、ミッチェルと篝火博士、そして部隊の仲間達がいた。
そこで深刻な問題を聞く。そしてそのまま家に帰宅すると更識達が居たことに驚く
次回最悪の可能性~最悪第3次大戦を引き起こすかもしれん~