ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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19話

IS学園を出発して暫くバスに揺られてトンネルをくぐり、そしてトンネルを抜けると目の前に大海原が広がっていた。

 

「海だぁー!」

 

一人の生徒がそう声をあげると、海側の席にいた生徒達は興奮したように窓に顔を向け、反対の席にいた生徒達も立ち上がって海を眺める。

そして4台のバスは海辺近くにある旅館へと到着し、生徒達がぞろぞろと降りていると、旅館から1人の女性がやって来た。

 

「皆さん、ようこそ遠い所からお越し下さいました。当旅館の女将をしております、山田と言います。どうかごゆるりとお寛ぎ下さい」

 

そう言い丁寧にお辞儀する。

 

「「「「お世話になります!」」」」

 

全員そう言うと女将は、元気があって大変宜しいです。と言って千冬の方へと向かう。

 

「それで、そちらが噂の男子生徒ですね」

 

「えぇ、色々ご不便をお掛けしますがよろしくお願いします」

 

「お、織斑一夏と言います」

 

「アキト・ファイルスです。3日間お世話になります」

 

そう言うと女将は笑みを浮かべ宜しくお願いします、と言う。そして一夏は千冬に連れられ部屋へと向かう。アキトも自分の部屋へと向かおうとパンフレットを見ようとした時、誰かが肩を叩くことに気づき、振り向くと其処には真耶が立っていた。

 

「えっと、アキト君のお部屋なんですが、一緒に来てもらってもいいですか」

 

「あ、分かりました」

 

そう言いアキトは真耶と共に部屋へと案内され、奥へと行くと其処には『教員部屋』と書かれた張り紙のされた部屋へと案内された。

 

「なるほど、教員と同じ部屋ですか」

 

「は、はい。その教員が実は……」

 

真耶は頬を真っ赤に染め、手をモジモジさせながら呟く。

 

「わ、私となんです」

 

「……マジですか?」

 

アキトは驚愕した顔を浮かべながら聞くと、真耶は顔を真っ赤にさせつつ、顔を縦に振る。

 

「まぁ、その、暫くよろしくお願いします」

 

「こ、こ、こ、こちらこそお願いしましゅ!」

 

最後に真耶が噛んだのを聞いたアキトは、クスクスと笑い出し、真耶もさっきまでの恥ずかしさが何処かに消え、同じようにクスクスと笑い出した。

 

「あらあら、2人とも何か楽しいことがあったの?」

 

そう言って近付いてきたのは女将の山田だった。

 

「あ、お母さん」

 

「え!? 山田って聞いたからまさかと思ってましたが……」

 

「えぇ、私が真耶の母親の山田幸恵と言います。娘からは、貴方のこと色々聞いてますよ」

 

そう言われアキトはどんなことを聞いてきたのか気になり、聞こうとしたが

 

「お、お母さん! そ、そんな話今しなくてもいいじゃない!」

 

「あら? 別にいいじゃない。何時もテレビ電話で彼の事笑顔で喋ってたんだから」

 

「もぉー! 止めてってば!」

 

そして2人は口論?の様なものを始め、アキトは巻き込まれると不味いのと、親子水入らずの会話を邪魔しちゃいけないと思いからこっそりと部屋に入り、着替えを持って部屋を後にした。

更衣室に向かっている途中、中庭にうさ耳らしき物体が生えておりアキトは抜くべきかどうか迷い、抜かないほうが面白いかなと思い、無視して行った。上空ではウサギが

 

「あっくん、抜いてよ~~~!!」

 

と大声で叫んでいたとか、してないとか

 

海パンに着替え終えたアキトは浜辺に行くと、既に水着に着替え終えた生徒達がそれぞれ自前で持ち込んだと思われるビーチバレーボールなどで遊んでいた。

 

「あ、アキト君だ!」

 

「本当だ。わ、私変じゃないよね?」

 

「それよりアキト君の体、ムキムキじゃない?」

 

「た、確かに」

 

「やべぇ、涎が……ジュル」

 

アキトは何か変な視線が一つあったことに気づき、その場から離れると3人ほどが砂浜にいることに気づく。

 

「マドカ、簪、本音。そんなところで何してるんだ?」

 

「あ、アキト」(ア、アキトの体凄い引き締まってる)

 

「何して遊ぶか相談してたんだ~」(アッキーの体、ムキムキでかっこいいー!)

 

「3人ではあまり決まらなかったので、お兄ちゃんも何か考えて」(流石私のお兄ちゃん! あんなひ弱な男よりこっちの方がかっこいい!)

 

アキトは4人で何して遊ぶかと考え始めると、他の鈴やセシリア達も来て結局ビーチバレーをやることとなった。チームはアキト、マドカ、鈴、本音のチーム。もう一方がセシリア、シャル、ラウラとなった。簪は動くのが嫌という事で審判役を買って出た。

ビーチバレーは白熱した戦いとなり、結局アキト、マドカの息の合った攻撃にセシリア達は成す術なく得点を取られ、11対4でアキト達の勝ちとなった。

そして時刻は夕飯の時刻になり、全員和室へと行きご飯を食べ始めた。全員ワイワイと隣の生徒達と仲良く食べており、アキトも両隣にいる本音やマドカと楽しく食べていた。一夏はと言うと、箒の事がありただ黙って食べていた。周りの生徒達も話しかけようとすることもなく、隣にいる友人と談笑しながら食べていた。

 

「いや~、美味しかったですね」

 

「そうですか? 私は何時もの味でほっこりと言った感じです」

 

アキトは部屋へと戻る途中、真耶と会いそのまま一緒に部屋へと戻っていた。

そして部屋へ入りのんびりしていると、ノックの音が鳴り真耶が確認に行くと其処には簪と本音、そしてマドカがいた

 

「どうかしましたか?」

 

「えっと~、消灯まで時間があるからトランプでもと思って来ました」

 

「駄目ですか?」

 

真耶は消灯までの時間を確認し、笑顔で頷く。

 

「別に構いませんよ。ただし消灯時間10分前になったら部屋に戻るんですよ」

 

「「「はぁーい」」」

 

そう言い、3人は部屋へと入り5人でババ抜きを始めようとすると、またノックの音が鳴り、真耶が確認しに行くと今度は鈴やセシリア達だった。

 

「あ、先生。トランプしませんか?」

 

「わたくし達だけではどうも人数が少ないと思いまして」

 

「それでしたら今、更識さん達もいますのでどうぞ」

 

そう言うと4人は中に入ると丁度トランプをしようとしていたのか、カードを配っている最中だった。

 

「あれ、鈴ちゃん達も来たんだ」

 

「えぇ、私達もトランプしようと思ってね」

 

そう言い鈴は座る。他の3人も座り、マドカは配っていたトランプを回収しもう一度組み直し9人分にカードを配る。

そして消灯10分前まで七並べやババ抜きをやったりと楽しい時間を過ごした。

 

次の日、専用機持ち達は岩場へと移動し訓練が行われようとしていた。

すると海の方からヘリのローター音とIS特有のスラスター音が聞こえ全員海の方を見ると、コンテナをぶら下げながら飛んでいる一機のオスプレイと、その護衛だと思われるアメリカ空軍のマークを付けたF-22ラプターのIS部隊がやって来た。その先頭には羽のような特徴を持ったISが飛んでいた事に気づいたアキトとマドカは驚く。

 

「あれ姉さんのISだよな」

 

「うん、お姉ちゃんの銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)だね」

 

そう言っていると護衛のIS部隊は先に地上に降り、2機ほどは手で合図しながらオスプレイを誘導し、コンテナを下ろさせた。そして銀の福音に乗っていたナターシャはISを解除し、アキトに飛びつく。

 

「久しぶり~アキくん!」

 

「ちょっ! 姉さんいきなり抱き着かないでよ!」

 

「良いじゃない。久しぶりに会ったんだから抱き着かせなさい!」

 

そう言いナターシャはギューっとアキトに抱き着く。アキトは必死に引き剥がそうとするがなかなか離れてもらえず暫くして諦め、コンテナの中身を聞く。

 

「所で姉さん。あのコンテナの中身は?」

 

「ん? あぁ、あれね。あれは彼女が来たら説明するわ」

 

アキトはナターシャの言う彼女とは束かなと思っていると、上空から突然人参が近くの岩に突き刺さり、一人の女性が降りて来た。

 

「いや~、ごめんごめん。ちょっと寄り道してたら遅くなっちゃった」

 

と、頭を掻きながら笑みを浮かべて出てきた人物に一般生徒達は何者?と言った表情を浮かべる。そんな中鈴やセシリアなど軍関係者は何者か直ぐに分かった。

 

「ま、まさか貴女は篠ノ之博士ですか?」

 

「そうだよ、私がISの生みの親。篠ノ之束さんだよ」

 

そう言うと、全員驚愕の表情を浮かべる。

 

「う、嘘。まさかISの生みの親が此処に来るなんて」

 

「わ、私夢でも見てるのかな?」

 

「それだと私も同じ夢を見てるってことになるわよ」

 

驚愕の光景を見た生徒達は夢では、と疑い始めている中千冬は睨むように束に近寄る。

 

「……何の用だ束?」

 

「あ? 事前に連絡は入れてるはずでしょ。まさか昨日の夜に酒を飲みまくって記憶でも飛んだ?」

 

束は睨んでくる千冬に、同じように睨み返す。暫くにらんだ後、束は目線を千冬から外しいつもの笑顔に早変わりする。

 

「さてこいつの事はどうでもいいから、更識簪さんって何処にいるの?」

 

簪は突然自分の名前を呼ばれたことに驚きつつも手をあげて、答える。

 

「は、はい! 私が更識簪ですが」

 

そう言って前に出ると束はニンマリとした顔で近寄る。

 

「おぉ~君か。テストパイロットの件、引き受けてくれてありがとうね」

 

「え?」

 

簪は頭の中が疑問符で一杯になった。するとアキトが注意する。

 

「……束さん、自分の所属が何処か言わないと彼女困ってますよ」

 

「あ、そうだった! 束さん名前しかまだ明かしてないじゃん」

 

そう言い改めて自己紹介を、と言いポーズを決める。

 

「ハロハロ~、アメリカに拠点を置いてるISの研究・開発所『Rabbit House』で所長をしている篠ノ之束さんだよ~、皆短い時間だけどよろしくね~」

 

そう言うと全員更に驚愕し

 

「「「「「ええええぇぇぇぇーーーーーーーー!?」」」」」

 

と、大声で叫んだ。千冬もまさかアメリカにいたとは思っておらず驚愕の表情を浮かべていた。

 

「はい、自己紹介終了。さてかんちゃん、これでさっきの束さんのお礼の意味分かったよね?」

 

「は、はい。……その」

 

簪はさっきまで有った疑問が無くなりゆっくりと呼吸し頭を下げる。

 

「私のISを作ってくれてありがとうございます!」

 

「別にお礼何ていいよ~。コッチの方こそウチの愚妹が君に迷惑を掛けたみたいで本当にごめんね」

 

そう言われ簪は束は悪くないと言い、束はありがとうと言う。

 

「さて、それではコンテナオープン!」

 

そう言うとコンテナの扉が開き、2機のISが鎮座していた。一つは黒と白が基調のIS。そしてもう一機は灰色が基調のISだった。

 

「コッチの黒と白のがかんちゃんのISだよ。名前が―――」

 

―――XFJ-01 不知火 弐型




次回予告
簪の新たなISを説明し、もう一機のISの説明をする前にナターシャが真耶に軍に戻ってきて欲しいと頼む。真耶が悩んでいると一通の手紙を束が渡すと、真耶はそれを読んで即了承する。
そして一夏は箒が捕まったと言い、助けてあげて欲しいというが束は拒否する
次回二度と会えない幼馴染~だって、もうアイツは日の光が浴びられないもん~

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