事件から2日後、成田空港に3人の男女が降り立った。男性の黒人は屈強な体をしており、もう1人の白人男性は細い体をしているがそれでも逞しい筋肉が見えていた。そして女性は黒髪で切れ目で、空港にいた男性の目線を釘付けにするほどの美貌の持ち主だった。
「全く、漸く日本に到着か」
「そりゃアメリカの反対にある国なんだ。遠いのは当たり前だろ。なぁアルベド?」
「えぇ、その通り。それにしてもこっちの空港は人混みが凄過ぎでしょ。後、視線がうざい」
3人は飛行機に乗っている間に凝り固まった筋肉をほぐすように動かし、出入口へと向かうと、一台の車が停まっていた。その傍には自分達の仲間が、手をあげながら待っていた。
「お久しぶりです、ロイド隊長」
「おう、久しぶりだなアキト中尉」
そう言い黒人男性のロイドはアキトと握手を交わす。そしてその隣にいた白人男性と女性も挨拶を交わす。
「久しぶりだな、アキト」
「元気そうで良かったわ」
「マイキーさん、アルベドさんもお久しぶりです」
そう言い、アキトは2人とも握手を交わす。そして3人を車に乗せ、米軍基地へと向かう。米軍基地に到着後、4人は基地の奥にある会議室へと入り、テレビ電話を繋げる。
『全員揃ったようだな。では作戦内容を伝える』
テレビ電話越しでミッチェルはそう言い、作戦内容を伝える。
『本作戦は何時もの通り極秘作戦だ。君達に侵入してもらう場所は、倉持技術研究所と言う場所だ。そこで君達は今回の事件の原因となったISを違法改造した研究員達の排除、そして篝火ヒカルノと彼女と同じく囚われている研究員達の救助だ』
ミッチェルはそう言い、モニターに倉持技研の構造図を出す。
『建物は2つの棟で出来ており、手前にあるのが第1棟で、奥の方に建てられているのが第2棟だ。今回、篠ノ之博士がわざわざ倉持技研にハッキングして篝火博士達の場所を探し出してくれた。その結果、篝火博士達は第2棟の地下に即席で作られた牢屋に放り込まれていることが分かったそうだ。』
「では2チームに分かれて行動した方がいいですね」
ロイドがそう言うとミッチェルは頷く。
『そうだな。片方が研究員達の排除、もう一つのチームが篝火博士達の救助だ。それと本作戦ではサポーターとして篠ノ之博士と通信出来るようにしてあるから、有効に使ってくれ。では諸君、頼んだぞ』
「了解しました」
ロイドの敬礼に続くように全員敬礼する。そしてミッチェルとのテレビ電話が切れた後、ロイドは体をアキト達の方へと向ける。
「よし、全員今回の作戦ではステルス性が要求されるから、全員軽量装備で行くぞ。2400時に作戦開始とする。それまで各自装備の準備と点検を済ませておけよ。以上、解散」
アキト達はそれぞれ装備の準備をしに部屋から出て行く。
そしてその夜、アキト達は顔を布で隠し、体には黒色のCIRASと言うタクティカルベストと黒の服装をしていた。武装はそれぞれ異なっており、ロイドはステアーAUG
マイキーはG36K
アルベドはMP5
アキトはM4CQB-R
それぞれの銃にはサイレンサーが備えられていた。そして4人はトラックの運転手に扮した日系米軍兵士が乗ったトラックの荷台に隠れ、倉持技研へと運ばれた。
基地を出発して数時間後、トラックは問題なく倉持技研へと入り荷台に隠れていた4人はこっそりと建物内部へと侵入する。
「よし、ここまでは問題ないな。アサシンとランサーは予定通り第2棟へ行きパッケージを回収してこい。俺とアーチャーは第1棟の掃除をしてくる」
「「「了解」」」
アサシン事アキトと、ランサー事アルベドは第2棟へと通じる道を警戒しつつ進み、目的の建物入口へと到着した。
「此処ね。それにしても警備が薄すぎでしょ。これじゃあ侵入者にどうぞ入ってくださいって言っているようなものじゃない」
「日本は世界で一番安全な国だって思い込んでるからでしょ」
アキトは入り口近くの壁に付けられているカードリーダーにハッキング用の装置を取り付け電源を入れる。数秒後、扉の鍵が解除される音が鳴り、中へと入る。建物内部も警備が少なく、警備として雇われたであろう傭兵と思しき男達がゴツイ銃をぶら下げながら警備していた。
「警備の連中はどうします?」
「上からの指示は何も残すな、よ、つまり片づけても良いって言う事よ」
「了解」
アキトとアルベドはツーマンセルで警備している男達の頭に照準を合わせ、同時に引き金を引く。男達は悲鳴どころか断末魔を上げる事すらできずに死亡し、倒れ込んだ。
「腕は衰えてないようね」
「そりゃ学園にいるときもちゃんと訓練はしてますから」
アルベドに褒められつつ、アキトは牢屋がある地下へと続く階段を見つけ降りようとしたところで、通信が入ってきた。
『あ、あっくん聞こえる?』
「束お姉ちゃん? どうかした?」
『あのね、地下の監視カメラを見て回っていたら警備用のガードロボがあったんだ。で、停止させようと思ってハッキングしようとしたんだけど、どうやら独立したネットワークを利用してるみたいでハッキングが出来ないみたいなんだぁ』
束の報告はかなり厄介な事だとアキトは思う。
「それだったらこっちで直接ハッキングしないといけないってことですか?」
『うん。で、場所は分かるから案内は出来るよ』
「アキト。アンタはガードロボを止めに行って。私はこのまま下に降りるから」
アルベドの提案にアキトは頷き、束の案内でガードロボを操作している部屋へと向かった。そしてその部屋の前へと到着し、スネークカムで中を覗き見ると傭兵が一人で本を読みながら寛いでいた。銃を机にもたれるように立てかけており、完全に油断していた。アキトは一度息を整え、焦った気持ちを落ち着かせる
「ふぅ~、よし」
そう言い、アキトは扉にカギがかけられていないか確認しそっと扉を開ける。勿論扉が開く音は傭兵にも聞こえており、油断しきった声で扉にいる仲間だと思っているアキトに話しかける。
「見回りは終わったのか? だったら地下の連中……ッ!?」
傭兵は突然頭に強い衝撃を受けたと思った後、意識が遠のき絶命した。アキトはM9をレッグホルスターに仕舞い、パソコンの前に行く。そしてキーボードを叩きガードロボの電源を切る。
「アサシンからランサーへ。ガードロボの電源を切りました」
『了解、じゃあコッチに来て』
「了解」
アキトはM4を構え直しアルベドと合流しに行く。
~第2棟地下~
アキトはアルベドと合流後、牢屋がある区画へと向かう。そして牢屋がある区画に到着すると其処には上の階とは違い、6人ほどの兵士がゴツイ武装を施されて巡回していた。
「上にいた奴らよりゴツイですね」
「全くね。気づかれると厄介だからシンクショットで倒すわよ」
そう言われアキトはM4のセレクターをAutoからSemiに換え、一人の兵士の頭に照準を捉える。
「3…2…1…Fire!」
アルベドの号令と共にトリガーを引き一人を倒した後に次の兵士の頭に照準に定め続けて引き金を引く。そしてアルベドとアキトが同時に最後の一人を倒し終えた後、牢屋の方に歩み、カードリーダーにハッキング装置を取り付けロックを解除する。扉のロックが解除されアキトとアルベドは部屋に突入する。
中にいた研究員達は突然入ってきた兵士に驚き身を屈め、頭を両手で守る。アキトとアルベドは目的の研究員達と思っていると緑髪のツインテールの女性が2人に近付く。
「いや~、助かったよ。ところでお二人は何処の軍人さん?」
「我々はアメリカ軍です。貴女方の救助に来ました」
アルベドがそう言うと、周りにいた研究員達は助かると呟きだす。
「では我々がエスコートするので「ちょっと待って」何か?」
アルベドが全員を連れ出そうとしたところ篝火が待ったをかける。
「実は私の研究室に大切なデータがあるの。あれがないと大変な事が起きる」
「大変な事? 具体的には?」
「……ISによる戦争」
「「「「!?」」」」
篝火の突然の言葉にアキトとアルベドは言葉を失った。
「どいう事だそれは?」
溜まらずアキトは篝火に問うと、篝火は悔しそうな顔を出しながら訳を言う。
「元々此処第2技術研究棟では他国からのISによる侵略を阻止するため日々研究が続けられていたの。勿論戦争をするためじゃないわ、この国を守るために研究していたの。けどある日、私達の研究データを第1棟の所長が見てそれを利用しようとしたのよ。元からいけ好かない女所長だと思ってたけどまさに外道だったわ」
「…分かりました。では彼が取りに行くので博士達は私と共に此処から脱出を」
アルベドがそう言うと、ヒカルノは首を横に振る。
「残念だけどそれは無理。私の研究室にあるパソコンは私の生体データでしかロックが解除されない。だから私も行かないといけないの」
そう言われアルベドはオーバーロード事ミッチェルに連絡を取る。
「ランサーからオーバーロードへ。VIP達の救助には成功しました。ですがVIPの重要な情報が研究室にあるらしく、本人が行かないとその情報が手に入らないそうです」
『了解した。……よし、アサシンはVIPと共にその研究室へ向かえ。ランサーはそのまま研究員達を連れてセイバー達と合流しろ』
「彼一人で行かせるのですか?」
『いや、既にアーチャーをそっちに向かわせている。アサシンはアーチャーと合流し、彼女と共に情報を取りに行け。終わり次第直ぐに其処から脱出しろ』
アルベドはそう言う事ならと、ヒカルノ以外の研究員達を連れてトラックの元へと戻り、アキトとヒカルノは研究室へと向かう。研究室へと向かう途中でマイキーと合流し、研究室へと入る。
「ちょっと待っててね。データを移すのに5分ほど掛かるから」
そう言いヒカルノはPCのロックを解除し、データを外付けの大容量ハードディスクに移す。そして5分後データを移し終えたヒカルノと共に第2棟から脱出し、ロイド達の元へ向かい、合流する。
「全員乗ったな? よし、出してくれ」
ロイドの言葉に運転手に扮した米軍兵士は頷き、トラックを走らせる。そしてある程度建物から離れた所でマイキーは、倉持技研に備え付けられていた機密情報漏洩防止目的に設置されている自爆装置を起動させる。数十分後、日本屈指の技術研究所は跡形もなく吹き飛んだ。
その後アキトは学園へと戻り、ロイド達はヒカルノ含めた12名の研究員達をアメリカに亡命させるため、在日アメリカ空軍駐屯基地に向かった。
次回予告
臨海学校の準備がまだ済んでいないアキトに真耶は一緒に買い物に行かないかと誘う。そして2人はレゾナンスへと行き、買い物していると簪と本音が買い物していた。そして簪たちとも合流し4人で買い物を続けた。アキトが離れた時に簪は真耶にある質問をする。
次回臨海学校・準備編~先生もアキトのことが…~