アキト、そして楯無は管制室から簪がいる寮の部屋へと向かっていた。その間は双方無言で、楯無はやるせない気持ちが顔に出ており、アキトも怒りこそ顔に出さないようにしているが手を力強く握り締めていたからか血が零れ落ちていた。そして簪がいる部屋へと到着し楯無はノックする。
「簪ちゃん、いる?」
ノックをして暫くすると、扉の鍵を解除する音が鳴り、扉が開かれた。扉を開けたのは簪だがその顔は泣いていたのか目の部分が赤く腫れていた。
「お姉ちゃん、アキト。……違うよね? アイツが乗っていたISって私のISじゃないよね?」
箒が乗っていたISが自分のISじゃない、そう伝えに来てくれた。と簪は思っていたが楯無は苦渋に満ちた顔で呟く。
「……残念だけど、簪ちゃんの打鉄弐式だったわ」
「っ!?」
楯無の呟きを聞いた簪は、大粒の涙を零しながら崩れ落ちた。
「なんで、完成したのにアイツに渡すのよ! ふざけないでよ!」
簪は怒りを吐き出している中、アキトは何とも言い難い表情でいると、ポケットに入れているスマホが鳴り響く。スマホの画面を見ると画面には『束お姉ちゃん』と書かれており、アキトは少し離れたところに行き電話に出る。
「もしもし、どうしたんですか?」
『あ、あっくん? あのさ、そこに更識簪って言う子いるよね?』
「えぇ、いますけど。それが?」
そして束は簪にこの用件を伝えておいて欲しいと頼み、アキトは電話を保留にして簪の元に行く。
「……簪少しいいか?」
「ヒック、……何?」
「実はさっき俺のISを造った研究所からぜひ、簪をテストパイロットに迎え入れたいって言ってきてるんだが」
アキトの提案に簪と楯無は驚愕の表情を向けた。
「ア、アキトのISを造った研究所から?」
「けど、どうして簪ちゃんのISが無くなったことを知ってるの?」
「多分今回の件がアメリカ政府に伝えられたんでしょ。襲われたのがアメリカ軍の軍人だったら報告しなければ、後で国際問題に成りかねませんからね」
アキトがもっともらしい理由を言うと楯無と簪は疑うことなく、そう言う事か。と納得する。
「それでどうする? 今返事をしてくれたら臨海学校にはISを完成させて渡せるけどって言ってるんだが?」
簪は自分にISを渡さず別の奴に渡すような会社に見切りを付け、アキトと同じ研究所にしようと決心する。
「うん、その提案受ける!」
「分かった。それじゃあOKって返事しておくな」
そう言ってアキトはスマホの保留を解除して、束に了承の言葉を貰えたと伝え電話を切る。
そして今回の事件について簪に聞く。
「それで、なんでアイツが簪のISを持っているのか分からないのか?」
「……うん。私のISは織斑一夏のせいで凍結されたの。けどつい最近それが解除されてISを造るって言ってきたの。それで私はタッグマッチに間に合って欲しいと思ってISを渡したんだけど、今日になってもISが届かなかった。そしたら……」
その後は簪は落ち込み口を閉ざしてしまう。アキトは簪のISを開発した研究所について楯無に聞く。
「楯無さん。簪のISを開発した研究所ってどんな所なんですか?」
「日本屈指の技術研究所よ。名前は倉持技研って言うんだけど、まさかこんなひどいことをする研究所何て信じられないわ」
「簪、お前のISの開発担当者は今回みたいなことをする人物そうだったか?」
アキトの問いに簪は首を横に振った。
「私のISを作ってくれていたのはそこの第2研究所で一番偉い、篝火ヒカルノさんって言う人がわざわざチームを作って開発を進めてくれたんだけど、その人員を織斑のISに持って行かれてすごく怒ってたの。だから今回みたいなことは絶対にしない人だと思う。……あっ!」
「ん? どうした、何か思い出したのか?」
簪の突然何か思い出したのか、アキトはその思い出した内容を聞く。
「実は私のISを受け取りに来たのが、ヒカルノさんの助手って人だったんだけど、あの人助手何ていたっけと思って。もしかして…」
「偽の助手かもしれないわね」
楯無の推論にアキトも頷く。
「えぇ。恐らくそうでしょうね」
そしてアキトは簪と楯無と共に食堂へと行くと、鈴達もおり簪を慰めながら一緒に夕飯をとった。
人気のない屋上にアキトは訪れ、スマホを取り出し電話を掛ける。
「もしもし、ミッチェル大佐。はい、アキトです」
『それで、どうした? 今回の件だったら既に動き始めているが何かあったのか?』
「はい。実はまだ確信があるわけでは無いのですが、今回の件の原因となった倉持技研に恐らく、簪のISに携わっていた研究者達が囚われている可能性があるんです」
アキトの報告を聞いたミッチェル大佐はふむ。と呟く。
『それだったら囚われている研究者達を救助しないとな』
「はい。こちらに派遣する部隊はリーパーチームですよね?」
『そうだ。ハンターチームは中東で作戦行動中の為、動かせない。他のチームもそれぞれの任務で動けない状態の為、リーパーに任せる。到着予定時刻は2日後の1200だ。その日は学園は休みだろ? その日の内に研究者達の救助並びに今回の件の関係者の排除だ』
「了解しました」
アキトの返事と共に電話は切られ、アキトはまたチームと合流できるのかと思い、また一緒に頑張る思いと、簪の大切なISを違法に改造した研究者達を叩き潰してやると決心し屋上から去って行く。
次回予告
空港に3人組の男女が日本に来日してきた。3人はアメリカ軍基地へと来てアキトと合流し今回の作戦を聞き、武装を準備する。そして夜、作戦を開始する。
次回リーパーチーム始動!~久しぶりだな、アキト中尉~