――じゃあなガキ。あの世で幸せにな。
――ドン! ババババン! ……クリア!
――坊主行くとこがないのか?
――だったら俺たちと来るか?
――俺達か? 俺たちは
そこで夢が終えアキトは目をこすりながら起き上がる。ベッドの近くに置かれている時計を見ると6時30分を表示している。
「また懐かしい夢を見たな」
そう言って窓の外を見ると朝日が昇り始めており光が部屋を照らす。
「あれから6年か」
そう思いながら暫くジッとしていたが朝食作るかと呟き部屋から出て洗面所に向かう。顔と歯を磨き終えたアキトはキッチンに立ち朝食を作り始める。すると扉が開く音がし、アキトが振り向くと黒髪の少女があくびをしながら入ってくる。
「ふわぁ~、お兄ちゃんおはよ~」
「おはようマドカ。洗面所に行って顔洗ってこい」
はぁ~い。と言ってマドカは洗面所へと向かい、部屋から出て行く。そして暫くするとまた扉が開く音がし、アキトは顔を洗い終えたマドカと思ったが背中に抱き着かれたためその考えを捨てもう一人の方だと確信する。
「いきなり抱き着かないでよナタル姉さん」
「うぅ~~ん? 別にいいじゃ~ん、ここの所、忙しくてアキくんに抱き着けてないんだから~」
そう言いながらアキトの背中にギューと抱き着く。
「何してるのお姉ちゃん?」
そう聞こえアキトとナターシャは振り向くとジト目をしながら見てくるマドカがいた。
「あらマドカ、おはよう。何をしてるかって? 決まってるじゃない。アキくんに抱き着いてるのよ」
「もう甘えても許される年じゃないんだから離れたら? 私が代わりに抱き着くから」
そう言ってナターシャを引き離し抱き着こうとするマドカ。
「あらあら、女性は何年経とうと好きな男性に抱き着くのは許されるのよ。逆に貴女はもう少し甘えるのを控えたら? あまり甘えると飽きられるわよ?」
その言葉を聞いてマドカはカッチーンとなり怒気を込めながら答える。
「私はお兄ちゃんの妹だから甘えてもいいの。妹特権なの。だから甘えてもお兄ちゃんに飽きられることはないもん。逆に年上の方が飽きられるんじゃないの?」
「あら、私はアキくんのお姉ちゃんよ。そんなことはないわ」
「ガルルー!」
「シャーー!」
そう言いながら互いに睨みあっている中、アキトは朝食を食べる。
「2人とも、早く食べないとスコールさんが迎えに来るよ」
そう言うと2人は睨み合いを止めそれぞれの席に着き朝食を食べ始める。
「流石にそれは不味いわね」
「うん。スコールさんを怒らせたら不味いもんね」
ナターシャは朝食を食べながら机に置かれている新聞に目を通す。記事にはアメリカの経済状況やボリビアで蔓延っていた麻薬組織が崩壊したなど記事にされていた。
「このボリビアのカルテルの崩壊って例の部隊が関与してるのかしら?」
そう言ってナターシャはアキトに目を向ける。
「さぁ? 極秘任務とかになるとどの部隊がどんな任務に就いてたかなんてわかんないからね」
そう言いながらトーストにかじりつく。ナターシャはそう。と呟き新聞の続きに目を向ける。
「そう言えば昨日お兄ちゃん宛てのエアメールが届いてたけど誰からなの?」
マドカがそう聞いてくるとアキトは別段隠そうともせず話す。
「あぁ、中国にいる鈴とイギリスのセシリア。それと日本にいる真耶さんからだったよ」
アキトが3人の女性の名前を挙げていく時、最後の名前にナターシャの体がピクッと動く。
「真耶ですって?」
そう言って新聞の端からアキトを見る。アキトはまたか。と思いながら言う。
「うん。現在はIS学園の教師になって頑張ってます。それと日本に来ることがあれば連絡をください。そう書かれてたよ。鈴達は自分たちの近況報告とかそんな感じ」
「へぇ~、鈴ちゃん達はいいけど、真耶の奴は私のアキくんを誘惑しようとするなんていい度胸してるじゃない」
そう言いながらメラメラと燃えるナターシャ。アキトはため息を吐きながら言う。
「別に誘惑とかじゃないでしょ。相変わらず真耶さんに厳しいね。なに、胸に嫉妬してるの?」
「そうよ! だって彼女のあの胸って絶対アキくんを誘惑するためだけに育ったに違いないもん!」
ムキ―!と言いながら日本のある方向に向かって中指を立てる。
「はぁー、まったく何やってんだか。マドカ、食器は水を張った桶に浸けておいてくれ」
「はぁーい」
そして3人は朝食をとり終えた後身支度を整え、家から出ると、丁度1台の車が停まる。
「はぁ~い、3人ともおはよう」
そう挨拶してきたのはサングラスをした女性だった。
「あ、スコールさん。おはようございます」
「おはようスコール」
「スコールさんおはようございます」
3人は挨拶を返し、マドカとナターシャはスコールの車の後部座席に乗る。
「いや~、本当ありがとうねスコール」
ナターシャは手を合わせながらお礼を言う。
「別にいいわよ。と言うか災難ね。まさか昨日の夜に、いきなり車のエンジンが掛からなくなるなんてね」
「本当よ~」
そう言いながらシートベルトをし窓を開ける。
「それじゃあアキくん行ってくるね」
「お兄ちゃん行ってきます」
「それじゃあね~アキトくん」
そう言ってスコールが運転する車は走って行く。アキトはガレージに置かれているバイクにまたがり、エンジンをかけ出発する。暫くして到着したのはフォートブラッグ基地。ゲート近くに行くとアキトにとっては馴染みの兵士がいた。
「あれ? ジャックじゃん。今日は休みじゃなかったのか?」
「おぉアキトか。確かに今日は休みのはずなんだがこの前ロビンソンと賭けで負けちまってよ。それで今日ロビンソンと交替させられたんだよ」
「あぁドンマイ。それよりも大丈夫なのか? だってもうすぐ「言うな! 言ったら虚しくなる!」わ、分かった。それじゃあまたな」
そう言ってアキトはゲートをくぐり駐車場へと向かう。その後ろでジャックが
「あぁ~、アニソンライブ行きたかったのに~!」
と落ち込みながら言っている姿を多くの兵士が見ていたとか。バイクを駐車場に停め基地施設へと入る。基地施設入口のホールに着くとハンターチームのコザック二等軍曹と会う。
「あれコザックさんどうしたんですか?」
「おぉ、アキトか。実は今日新しい兵器が此処に着くらしいから一目見に来たんだ」
「新しい兵器?」
アキトとコザックが話していると、2人に話しかけてくる人物が来る。
「お~いコザック、アキトお前らも新兵器を見に来たのか?」
そう言って近付いてきたのはハンターチームの30kことエリソン一等軍曹。
「あ、エリソンさん。いや、俺は今来て初めて知ったところ」
「俺は見に来た」
「そうか。だったら一緒に見に行かねぇか?」
そう言われ2人は、エリソンと共に新兵器が置かれている格納庫へと向かう。そして新兵器が置かれている格納庫へと着き、中に入ると、ゴースト部隊司令官ミッチェル大佐と数人の技術者が何かを整備している。
「ミッチェル大佐、おはようございます」
そう言ってアキトは敬礼をする。コザック達もアキトに続き敬礼し挨拶する。
「あぁおはよう諸君。ここに来たということは新兵器を見にか?」
「はい。それでその新兵器ってそれですか?」
コザックがそう言って目線を向ける方には一機のISが鎮座していた。
「あぁ、上層部が対テロ用ということで、我がゴーストにもISが配備されるということになった。これがウチに配備されたISだ」
そう言われ見せられたISにコザック達はおぉ~。と感嘆する。
「最近じゃテロリストにもISがあるって言われているらしいからな。これで危険な任務をしなくて済みそうだ」
嬉しそうに言うエリソンにミッチェルは呆れながら言う。
「残念ながらこいつが作戦に投入されるのはまだ当分先だぞ。まだ武装やシステムの調整が終わっていないからな。それまではいつも通り対IS用弾を携帯してもらう」
エリソンはそう言われうへぇ~。と言いながら苦言な顔になる。
「しかし上層部の連中、気前がいいですね。ISは本来国土防衛か宇宙に上げて活動させるくらいしか配備をしないのに」
「上もテロリストがISを所持していると思うと枕を高くして寝られないからなんだろ」
ミッチェル達が話している間にISの整備が終わったのか技術者たちが集まる。
「大佐、ある程度の整備は終わりました。ですが武装はまだ取り付けていないので、使用は控えてください。それでは失礼します」
そう言って敬礼し、格納庫から出て行く。
「さて我々も戻るか。うん? どうしたアキト」
ミッチェルはアキトがISの近くにいたことに気付き声を掛けるとアキトは
「あ、いや何でもないです」
そう言ってISから離れようとすると、エリソンが何かに気付いたのか話し出す。
「もしかして間近でISを見られたから記念写真でも撮ろうとしたのか?」
「いや、そう言う訳じゃ「隠すな隠すな。大佐、アキトの為に記念写真撮ってやってもいいですか?」お、おい!」
「ふむ、まぁいいだろう。ただし撮った写真は外部に持ち出すなよ。基地内は許可する」
そう言って許可が下りてしまったため、エリソンはアキトをISの近くに立たせてスマホのカメラを起動する。
「よ~し、撮るからな。アキトもう少しISに近寄れって」
「ったく……、これくらいか?」
「もう少し」
そう言われアキトはISに近付く。するとISに肩が触れた瞬間アキトの頭の中に多くの情報が入ってくる。そして光が発生し目を閉じる。そして光が収まり何が起きたのか周りを見る。コザック達も何事かと思いISの方を見るとそこには
「なっ!?」
「おいおい、マジかよ」
「……こ、これは一体?」
そう言われアキトは自分の体を見ると、ISを身に纏っていることに気付く。
「な、なんじゃこりゃーーー!」
~某所~
銀髪の少女クロエは研究所に設けられているキッチンでサンドイッチを作り皿に盛りキッチンを出る。そしてある部屋へと入りその部屋の主に声を掛ける。
「束様、お食事をお持ちしました」
そう言って奥へと向かう。部屋は散乱としており、壁や本棚は暴れた跡が残っていた。部屋の主である束は、椅子の上で体育座りをしながら机に置かれている写真立ての写真を見ていたが、クロエが来たことに気付き、必死に笑顔を作り顔を向ける。
「ありがとうね、クーちゃん」
その目元は赤く腫れており、クロエはまた泣いておられたことにすぐに気付く。
「また思い出されていたのですか?」
「……うん。あっくんが死んでもう6年になるんだね」
そう言いながら写真を見る。そこには束が小さな少年に抱き着いている写真が立てられていた。そしてまた束の目元から涙がこぼれ出す。
「……束様」
「泣いてちゃダメなのは分かってるよ。けど無理なんだ。泣きたくないのに涙が止まんないんだもん」
そう言いながらすすり泣き始める束。すると荒れている部屋の中にあるモニターの一つから機械音が鳴る。クロエは新しいISが生まれたのだと思い、モニターを確認しに行く。そのモニターにはISの機体名と搭乗者の詳細データが表示されていた。そしてクロエはある一点の項目に目が行く。
「搭乗者、……織斑……秋斗?」
そう言うと束の頭に付けているウサ耳型ロボットカチューシャがむくっと立つ。
「……クーちゃん、今何て言ったの?」
「え、えっと搭乗者がその、……織斑秋斗と言いました」
そう言うと束は椅子から立ち上がりモニターを見る。そして搭乗者の項目を見ると、そこには確かに織斑秋斗と表示されており、搭乗者の詳細な情報もしっかり確認すると束が知っている秋斗と合致した。そして束はさっきまで落ち込んでいた表情から一変し、嬉しさいっぱいの表情になった。
「あぁぁぁぁ、生きてた。生きててくれた。私の大好きな人!」
そう言って束はクロエを抱きしめる。
「クーちゃん良かった~、あっくん生きててくれたよ~! 嬉しいよ~!」
そう言いながら抱きしめてくる束にクロエは久しぶりの本当の笑顔を向けてくれた事を喜ぶ。
「はい、良かったですね束様!」
「こうしちゃいられない。すぐに会いに行くよ!」
そう言って部屋に備えられているボタンの一つを押すと、操縦桿とペダルが現れる。それを慌てて止めようとするクロエ。
「ま、待って下さい束様!秋斗様が居られる場所は――――」
「発進!!!」
そう言ってエンジンを始動し、ハイスピードでアキトがいる場所へと向かい出す。
「ア、アメリカ軍基地です~~~!」
そうクロエが叫ぶが、束の耳には届いていなかった。
用語、人物、設定
・ゴースト
グリーンベレーの中から更に選りすぐられた兵士を集められて構成された部隊。公式的には存在しない部隊とされており極秘任務などを任されることが多い。アキトはリーパーチーム(オリジナルチーム)に所属している。
・マドカ・ファイルス
織斑千冬のクローンとして創られ、テロに利用されそうだったところをゴーストによって救出され、アキトとナターシャの所で一緒に暮らすようになる。当初は感情をあまり出さない子だったがアキトと一緒にいるにつれてお兄ちゃん大好きっ子に変貌した。BT適性値が高くイギリスとアメリカとで共同開発したISを専用機として与えられている。軍での所属はナターシャと同じアメリカ空軍IS部隊で階級は上級曹長。
・スコール・ミューゼル
アメリカ空軍特務部隊亡国機業に所属。階級は少佐。年齢はナターシャより上らしいがその若々しさは何年たっても変わらずにいる。その美貌に惚れた人物は空軍のみならず多くの軍関係者を虜にしているが既婚者。子供はまだおらずいつかつくりたいと考えている。ナターシャとは軍学校からの同期で仲が良くナターシャの家でオータムと共に飲みに行く。アキトを弟のように可愛がっている。
・アメリカ合衆国
原作とは違い女尊男卑に染まった国ではなく数少ない男女平等を掲げている国。アキトが織斑秋斗だと知っているのは、軍の一部の者と政府高官の一部、そして大統領のみでトップシークレットとして緘口令が敷かれている。ISを本来の用途である宇宙に他の国を差し置いて打ち上げている。
・フォートブラッグ基地
アメリカ軍の基地で特殊部隊などが多く配備されておりゴーストもここに置かれている。
・対IS用弾
白兵戦用でISと対峙するためにアメリカが開発した弾丸。口径は5.56㎜と7.62㎜が製造されている。だがIS委員会がそれらの製造を中止するように要請してきたためアメリカは仕方なく製造を中止したが裏では製造を続けテロ撲滅を主に任務としている部隊に渡している。
コザック、ミッチェル、エリソンは原作(ゲーム)に登場したキャラです。
次回予告
アキトがISを動かしてしまったことでどうすべきか大統領と共に電話会議を行っていると基地の全体にアラームが鳴り響く。そしてアキト達は武装して基地内になる滑走路へと向かうと謎の建造物が降りたっており、全員警戒していると建物の扉が開き中から人が降りてくる。アキトはその人物を見て驚愕する。
次回天災ウサギとの再会~あっくん会いたかったよ~~!~