ゴーストストラトス   作:のんびり日和

19 / 34
15話

学年別トーナメント戦当日。その日は何時もと違い多くの生徒で賑わっていた。その訳は今年からタッグを組んでのトーナメント戦になったからである。

多くの生徒達は噂の男子生徒とタッグを組もうとしたが、それぞれ既にタッグを組んでいることが分かり、酷く落ち込んでいる生徒達が多く出たそうだ。

 

アキトはタッグを組んだマドカと共に、アリーナのピットで自分の改装されたISのチェックを行っていた。

 

「それにしても凄いね、このIS」

 

「あぁ、今まで集めた戦闘データを解析して改修したって、束お姉ちゃんが言ってたからな」

 

アキトの新たな機体、F-22ラプターは以前アキトが乗っていたYF-22に、今まで集めた戦闘データなどを使用して改修して出来た、完成されたISなのである。

 

「そう言えば、このF-22は正式的にアメリカ空軍の新しいISに配備されるんだよな?」

 

「うん。スコールさんがアメリカが独自に改修したラファールから総入れ替えって言ってたよ。けどお兄ちゃんのは束さんが改良を加えているから他のF-22とは違うみたいだけどね」

 

マドカの言う改良とは、アキトのF-22のスラスター部分など機動性に関わる部分、そしてステルス性を向上させる装甲などウサギ印の改良が施され、アキトはF-22A2と考えている。

 

『では、これより第1回戦を始めますので、両チームの選手はアリーナに出撃して下さい』

 

ピットに備え付けられているスピーカーから、出撃合図のアナウンスが流れる。

 

「さて、マドカのISも準備はいいか?」

 

ラプターを身に纏ったアキトが聞くと、マドカは同意し頷く。

 

「うん、さぁて対戦相手の、あの似非武士を潰しに行こ?」

 

「おう」

 

そして2人はピットから飛び出ると同時に、向かいのピットからも一夏と箒が出てきた。一夏はアキトのISが違うことに驚く。

 

「なっ! おい、アキト! お前自分のISはどうしたんだ!」

 

一夏は大声を上げながら聞いてくるが、アキトは面倒くさいと言わんばかりの顔で無視する。

 

「貴様、無視するとはどういうことだ!」

 

隣にいた箒も怒鳴ってくるが、アキトとマドカは無視と決め込み、早く終わらそうと思う。

そして試合開始の合図が鳴り響く。

 

「行くぞ、箒!」

 

「あぁ!」

 

そう言って二人はアキト達に、真正面から突っ込んで行く。アキトとマドカはまたそれか、と呆れた表情を浮かべる。

 

「また神風特攻してるよ」

 

「好きだねぇ~」

 

一夏達の攻撃を難なく躱したアキトとマドカは、それぞれの武器で攻撃を開始する。アキトはグレネードランチャーをまた一夏に向け発射し、マドカはビット兵器を展開し、箒の肩や足などを攻撃する。

 

「いっつ! アキト、お前! また飛び道具を使ってくるなんて卑怯だぞ!」

 

「日本人なら刀を使え!」

 

そう言って二人はダメージ関係なく突っ込んでくる。

 

「はぁ~、面倒くさいなぁ~もぉ~。お兄ちゃん、あのモップ、私が貰うね」

 

そう言ってマドカは、12基のビット兵器を箒の周りに展開し、一斉射する。箒は成す術なく撃墜された。

 

「箒!? てめぇよくも!」

 

そう言って一夏は、マドカに突っ込もうとしたが、マドカは空中に飛び上がる。

 

「お前の相手は私じゃないよ」

 

「なに?」

 

そして一夏は周りにアキトがいないことに気づき、センサーで探すが、マドカ以外の反応が無い。すると突然顔面に強烈なパンチを受け、後ろに仰け反りながら後退する。

 

「あがっ! ど、どこから? グヘッ!?」

 

後退したと同時に、更に腹に殴られる行為が繰り出された。そして突然アキトが現れた。

 

「!? お前、何処から!?」

 

「さぁ、何処だろうな? ところでタッグマッチだってこと忘れたのか? 一人やられたくらいで、やった奴だけをマークしてたら、もう1人からも攻撃が来るって普通わかるだろ?」

 

そう言いながらアキトは銃口を一夏に向ける。

 

「取り合えず、これで終わりだ」

 

そう言ってアキトはトリガーを引き、一夏のSEが無くなるまで撃ち続けた。遂に一夏のISのSEが切れ、ISが自動で解除され、一夏が地面で気絶するのと同時に試合終了のアラームが鳴り響いた。

 

「さて、マドカ。戻ろうか」

 

「うん」

 

アキトとマドカがピットに戻ろとすると、倒れていた箒が急に立ち上がった。

 

「ん? 何だあいつ、意識が戻ったのか?」

 

アキトがそう呟くと、箒は何処からかISの待機状態だと思われるものを身に付ける。

 

「あいつ何を?」

 

マドカが呟くと同時に、箒は突然ISを身に纏い、アキト達に襲い掛かってきた。

 

「うぉぉーー! 覚悟!!」

 

「うぉっと! おいおい、何処からISを用意しやがったんだアイツ?」

 

「全くだね。取り合えず、倒してから聞こう」

 

箒からの攻撃を躱しつつ、アキトは銃で攻撃。マドカもビット兵器を展開し、応戦する。

 

「なぁ、アイツの動きって可笑しくないか?」

 

「うん。普通の動きとは違う。……まさか!」

 

マドカは驚いた表情を浮かべると同時に、管制室にいる真耶から通信が入ってきた。

 

『アキト君! マドカちゃん! それは違法改造されているISの様です! 既に教師部隊をアリーナに出撃命令を出していますので、到着するまで持ちこたえてください!』

 

それを聞いたアキトとマドカはだからか。と納得する。

 

「道理でISにしては出力とかが大きいはずだよ」

 

「全くだな。それにしても許せねぇな」

 

真耶の報告を聞き、アキトは怒りを表す。

 

「ISは、束お姉ちゃんの子供みたいなものだ。それを違法に改造するとか許せねぇ」

 

「全くだね。絶対に許さない!」

 

そう言って、アキトとマドカは更に攻撃を加える。箒はアキトとマドカの攻撃を受けつつも、二人を倒そうとするが難なく躱される。

 

「くそっ! 飛び道具を使うとは卑怯だぞ!」

 

そんな叫びを無視して、アキトとマドカは戦闘を継続する。違法に改造されていると言っても所詮は機械。エネルギーが無くなれば動けなくなるように、箒のISのSEが完全に無くなると同時に、ISは強制解除された。ISから放り出された箒はボロボロになっていて、そのまま地面に倒れた。

ISから降りたアキトとマドカは、それぞれの銃を箒に向け、警戒しながらゆっくりと近づく。

 

「マドカ援護してくれ」

 

そう言ってアキトは箒に近付き、気絶しているのを確認する。確認後、アキトは箒の両手を背中に回し拘束用の結束バンドで両腕を拘束する。

拘束したと同時に教師部隊がアリーナに到着し、アキトは箒を教師部隊の1人に引き渡し、ピットへと戻って行った。

 

アキトとマドカはピットから管制室へと入ると、真耶と一夏以外の専用機持ち達がいた。

 

「それで真耶さん。あのISって何だったんですか?」

 

「まだ詳細は分かりませんが、軍用にしてはかなりのエネルギー出力が確認できましたので、恐らく何処かの違法研究所で開発された物だと思います」

 

「違法研究所って、あの機体どう見たって倉持技研のISだったわよ」

 

鈴がそう言うと、周りの全員が考え込み始める。すると管制室に学園長が入ってきた。

 

「あ、学園長。どうかされましたか?」

 

「いえ、今回の件の報告を聞こうと思いましてね」

 

そう言われ、それぞれ今回の件を報告する。

 

「――――なるほど、つまり篠ノ之さんが何処からか入手したと思われるISを身に纏い、試合後にファイルス君達に襲い掛かってきたという訳ですか」

 

「はい、それで篠ノ之はどうなったんですか?」

 

「彼女は今、学園の地下に造られている留置所で、拘束されています。いずれ、所持していたISについて尋問しないといけませんからね」

 

学園長の話を聞いていたアキトは、箒が乗っていたISが何なのか気になり真耶に聞く。

 

「山田先生。あのISは打鉄とは少し違っていたのですが、何か分かりませんか?」

 

「そう言えば、何処かで見たことがある機体だったわね」

 

楯無がそう呟いている中、真耶は機体の詳細を調べ始めた。暫くしてモニターにISの詳細が表示された。すると、ある一点を見て楯無は驚愕の表情を浮かべた。

 

「……そ、そんな。嘘……」

 

アキトは楯無が見ていた項目を見るとそこには―――

 

『名称:打鉄弐式』

 

と、表記されていた。

 

「楯無さん、この機体のこと知ってるんですか?」

 

アキトがそう聞くと、楯無は左腕に右手でギュッと握りしめ、呟く。

 

「……簪ちゃんの専用機よ」




次回予告
箒が乗っていたISが簪の専用機だと知り、アキトは怒りが込み上がる。そしてアキトは楯無と共に簪にISの件を伝えに行く。
次回失うものが有れば得るものがある~簪、RabbitHouseのテストパイロットになる気はないか?~

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。