ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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11話

IS学園テロ襲撃事件から数日後、学園ではGWに突入し多くの生徒たちは実家に帰ったり、学園で自主訓練をしたりと勤しんでいた。

レゾナンス前に建造されている噴水前に楯無は私服で訪れていた。以前マドカから手渡された手紙に書かれていた通りに訪れていたのだ。

楯無は腕時計を確認すると時刻はもうすぐ十時を指そうとしていた。

 

「もうすぐ約束の時間ね」

 

そう呟き楯無は辺りを見渡すがマドカの姿はなく、まさか忘れているのではと考え始めたところで一台の車が停車し、運転席から一人の女性が降りてきて楯無の傍に近寄る。

 

「Ms.タテナシですか?」

 

「そ、そうですけど、貴女は?」

 

楯無は用心深く女性を観察する。女性は栗色の長い髪をしており、一見大人しそうに見えるが楯無はそれが恐ろしいほど不気味だった。

 

「私は巻紙と申します。貴女を迎えに行くようにと仰せつかってまいりました。こちらにどうぞ」

 

そう言われ、楯無は警戒しつつも巻紙の後に続き車へと乗り込む。そして車が出発して暫くすると運転席にいた巻紙が楯無に話しかける。

 

「さて、目的地に着く前に一つ聞かせてくれ」

 

巻紙の喋り方が変わったことに楯無は警戒心を上昇させ、いつでもISを展開できるようにする。

 

「これから行く場所でお前が真実を知り、それを日本政府の連中が知ったらお前とお前の大切なモノが全部なくなるぞ」

 

それを聞いた瞬間楯無は心が揺さぶられる。だが

 

「……それでも私や私の妹達は、真実が知りたいんです」

 

そう返され巻紙はフッ。と笑う。

 

「お前の決心よぉ~く分かった。それじゃあ目的の場所へと連れて行ってやるよ」

 

そう言い、巻紙は車を走らせる。

 

「えっと、それで貴女は何者なんですか?」

 

「うん? 俺はアメリカ空軍所属のオータム・メイナードだ。巻紙って言うのはただの偽名だ」

 

「ア、アメリカ空軍?どうしてアメリカ空軍の人が私を迎えに?」

 

「俺の上司が迎えに行ってくれって頼まれたからだよ。と、目的地が見えて来たぜ」

 

そう言われ楯無は窓から目的地を見るとそこにはアメリカ大使館があった。

 

「目的地ってアメリカ大使館なんですか?」

 

「そうだ。そこでお前に真実を話してくれる人が待ってる」

 

そうこうしている内に車は大使館の敷地内へと入り駐車場に車が停められる。するとオータムは楯無に一枚のカードキーを手渡す。

 

「あの、これは?」

 

「そいつを入口にいる職員に渡せば中に入れてくれる。それじゃ俺はここまでだからあとは頑張れよ」

 

そう言ってオータムは車から降り、駐車場に停められていたバイクへとまたがり、何処かへと走り去っていった。

残された楯無は車を降り、大使館へと入って行くと職員だと思わしき人物が立っていた。

 

「何か御用でしょうか?」

 

「えっと、これを渡すように言われたんですけど」

 

そう言って楯無はカードキーを職員に渡すと、職員はカードキーをカードリーダーに通した後、何処かに連絡を入れる。暫くして電話を終えた職員は楯無を中へと案内し、奥の部屋へと連れて行く。

 

「少々ここでお待ちください」

 

そう言って職員は部屋から出て行く。楯無は大人しく部屋に備えられているソファへと座り待っていると、扉が開かれ一人の女性が入ってきた。

 

「お待たせしてごめんなさいね」

 

そう言いながら女性は楯無の向かいのソファへと座る。

 

「自己紹介の方をするわ。私はスコール・ミューゼル。アメリカ空軍所属で階級は少佐よ」

 

「さ、更識楯無です」

 

楯無は緊張した面持ちで挨拶をすると、スコールは笑顔を向けながら力を抜くように言う。

 

「さて、貴女も休みの日を削ってここに来てくれたから単刀直入に言うわね」

 

スコールはそう言い一呼吸置く。楯無はどんな真実が話されるのかと思い、喉を鳴らす。

 

「貴女の大切な友人、織斑秋斗は生きているわ」

 

スコールの言葉に楯無は最初驚きが大きかった為、どう言えばいいのかわからないといった表情で聞きなおす。

 

「ほ、本当に、本当に秋斗君は生きているんですか?」

 

「えぇ、生きているわ」

 

スコールの返答に楯無は涙を流し始め、嗚呼とあげる。

 

「本当に、本当に生きてた。秋斗君が生きてた」

 

口を手を当てながら涙を零す楯無にやさしい笑顔を向けてるスコール。暫くしてスコールは涙を流し終えた楯無に大丈夫かと尋ねる。

 

「はい、大丈夫です」

 

「そう。それじゃあ今から話すことは六年前、ドイツで本当は何が起こったのか。その真実を話すわね。この真実は日本政府が隠そうとしていた事だから貴女が知ったと知れば貴女と貴女の妹さん達も消される可能性があるわ。それでもいい?」

 

「はい。此処に来るときにオータムさんと言う人にも同じように覚悟はありますと言いました。それにいざとなったらあなた方アメリカに亡命する決心もありますから」

 

楯無は真剣な目をスコールに向け、スコールは楯無の決心に感銘し真実を語り始めた。

 

「六年前、貴女も知っている通り秋斗君は兄である織斑一夏君と共にドイツで行われるモンドグロッソへと行ったわ。そしてドイツに着いて暫くして事件が起きたの」

 

「秋斗君、一夏君の誘拐事件」

 

楯無は自分が知っている六年前の事件を言うとスコールは同意するように頷く。

 

「そう、二人が誘拐され犯行声明が日本政府に送られていることは知っているわね」

 

楯無は同意するように頷く。

 

「犯行声明を受け取った日本政府は連覇優勝の為、二人が誘拐されたことは伏せておこうとしたのだけど、日本政府高官に就いていた秘書官が織斑千冬に密告。それで事件を知った織斑千冬が当時警備を請け負っていたドイツ軍と共に救助に向かったわ。そこからは世間ではどう広まってるか知ってる?」

 

「はい、織斑一夏の救助へと行った織斑千冬とドイツのIS部隊は無事に織斑一夏の救助に成功し、もう一人の織斑秋斗の救助へと向かったが間に合わず廃墟が爆発、崩壊して瓦礫の中から秋斗君の血の付いた服の欠片が発見されたと」

 

「そう、世間では救助へと向かったが間に合わなかったとされている。けど真実は違うわ」

 

スコールの話に楯無は一つの結論に行きつき、驚愕の表情を浮かべる。

 

「……ま、まさか」

 

「そう、そのまさか」

 

「……救助になんか行っていない」

 

驚愕した表情を浮かべ続けている楯無にスコールは同意するように頷き続きを話し始める。

 

「織斑千冬は織斑一夏を助けた後、ドイツ軍に撤収すると言って競技場へと戻ろうとしたの。もちろんドイツ軍はもう一人の弟を助けに行かないとと進言したけど」

 

『もう一人?私の弟は一夏一人だけでもう一人は私の弟なんかじゃありません』

 

「そう言ってドイツ軍のIS部隊と共に撤収していったのよ」

 

スコールの話を聞いた楯無は手を力強く握りしめた。

 

「何よそれ。家族を大事にしているって言ってるくせに家族を見捨てるなんて!」

 

「確かにそうね。因みにドイツ軍は流石に何もしなかったと世間にばれる事を恐れ、歩兵部隊だけ秋斗君の所に向かわせたのよ。まぁ向かう途中で廃墟は爆発して崩壊したけれども」

 

「あの、それで秋斗君はどうやって生き延びたんですか?」

 

楯無は今までの話を聞いて秋斗君がどうやって生き延びたのか聞いてなかったためそう聞く。

 

「あぁそれはね、廃墟の爆発自体がフェイクなのよ」

 

「フェ、フェイク?」

 

「そう、フェイク。あれは一人の少年が誘拐犯の仕掛けた爆弾に巻き込まれ死んだと世間にそう思わせるために仕掛けたものよ」

 

楯無は驚愕した表情をスコールに向けているとスコールは秋斗がいた廃墟で何があったのか説明し始める。

 

「秋斗君が誘拐された廃墟に偶然にもアメリカ軍の特殊部隊が突入したのよ。それで誘拐されていた秋斗君を発見し、ドイツ軍に引き渡そうとしたんだけど―――」

 

『……もう僕に帰る場所がないから連れてって』

 

「そう言ってきたらしいわ。勿論隊員は無理だと言ってドイツ軍に引き渡そうとしたけど、彼が織斑千冬の弟だと知り、更に本部からの報告で織斑千冬がもう一人の弟だけ助けて競技場へと撤収したと聞いてすぐに酷い扱いを受けていると判断して連れて帰ることを決意したらしいわ」

 

「それで秋斗君を死んだと見せかけるために廃墟を爆発させたんですか?」

 

「そうよ。そのおかげで世間では彼は死んだことになり、そして彼は本当の家族と思える場所で幸せに暮らしてるわ」

 

スコールの話に楯無は安堵した表情を浮かべ、そしてあるお願いを言う。

 

「えっと、それで私と私の妹達は秋斗君に会えるんでしょうか?」

 

「あら、もう貴女と貴女の妹達は秋斗君に会ってるはずよ」

 

へっ?と疑問符を浮かべた表情で楯無はスコールを見る。スコールは口に手を添えクスクスと笑う。

 

「貴女は最近、彼と同じ名前の子と会ってるはずよ」

 

「同じ名前の子? ……あ、アキト・ファイルス君がもしかして」

 

「えぇ、彼が貴女と貴女の妹達が会いたがっていた織斑秋斗君よ。と言うより全く気付かなかったの?」

 

スコールの問いに楯無は目線を少しずらしながら訳を話す。

 

「えっと、最初はそうじゃないかなと思ったんですが、ちょっと似ているだけで違う人だと思い込んだんです」

 

「あらそうなの。やっぱり鳳さんと同じで長い間離れていると別人だと思い込んじゃうわよね」

 

楯無は恥ずかしそうに俯いていると、ふと疑問に思ったことを聞く。

 

「そう言えば、どうして私に真実を話そうと? 秋斗君が生きているということは貴女方アメリカにとってトップシークレットに入るほどの機密だと思うんですが?」

 

「あら、そんなの簡単よ。彼には楽しい人生を送ってほしいのよ。それには彼が過去に仲良くしていた人たちとはもう一度彼と共にいて欲しいから貴女に伝えたのよ」

 

「そ、そうですか」

 

「あぁ、それとこれだけは約束して」

 

そう言ってスコールは先ほどの笑顔から真剣な表情を楯無へと向ける。

 

「秋斗君が生きている事を日本政府に伝えるといったことはしないように。勿論貴女の実家にもよ。もし彼が生きていたと知れば日本政府はどんな手を使ってでも秋斗君を消しにかかるかもしれないから」

 

「はい。私の命に賭けてでも絶対に漏らしません」

 

楯無の返答にスコールは満足した表情を浮かべソファから立ち、それと同時に楯無も立ち上がる。

 

「そう。それじゃあアキト君のことお願いね」

 

そう言ってスコールは手を差し出すと、楯無も同意するように手を繋ぎ握手する。

 

 

 

 

人物

オータム・メイナード

アメリカ空軍特務部隊亡国機業の副隊長をしていて階級は大尉。スコールとはナターシャと同様、軍学校で同期だった為仲がいい。いつもは俺様口調だが内心はかなりの乙女心を持っており、実家の自室には可愛いぬいぐるみがたくさんあるらしい。




次回予告
GWが終わりアキトとマドカは1組へと向かっていると楯無が現れ放課後に生徒会室に来て欲しいと頼まれる。そして1組に行くと2人の転校生がやってくると言われ待っているとその2人の内一人はアキトが知っている人物だった。
次回2人の転校生~初めまして。アステック社で企業代表をやっているシャルロット・シュナイダーと言います。~

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