ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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8話

アキト達と鈴が再開してはや数日が経ち、クラス代表トーナメント戦が2日後に控えたある日、マドカは寮のある部屋の前にいて、扉をノックした。

 

「はぁーい、今行きま~す」

 

部屋からそう聞こえ扉を開けたのは楯無だった。

 

「あら、マドカちゃんじゃない。どうして私の部屋に?」

 

「ちょっとお話があるので入れてもらってもいいですか?」

 

「話? まぁどうぞ」

 

楯無はルームメイトが今留守にしている為、断らずにマドカを招き入れた。楯無は適当に座ってと言い、簡易キッチンでお茶を入れ、マドカに差し出す。

 

「あ、どうも」

 

「それで、話って何かしら?」

 

楯無は椅子に座りマドカの要件を聞く。

 

「この前、貴女の妹さんと会って聞いたんですが、昔織斑秋斗と一緒に遊んでいたって本当ですか?」

 

「…………えぇ本当よ」

 

マドカからの意外な質問に少し驚きつつも答えた楯無はなぜそんな質問をしてきたのか疑問を持ちだす。

 

「話ってもしかして秋斗君のことなの?」

 

「えぇ、貴女と貴女の妹さん達との仲が良かったその秋斗という人物に少し興味がわいたので」

 

マドカはお茶を飲みつつそう言うと楯無はそう。と呟き懐かしむように話始めた。

 

「まだ私や簪ちゃん達が小学生の頃に秋斗君と会ったの。私と簪ちゃんが公園で些細なことで喧嘩しちゃっててね、その時秋斗君が仲裁に入ってきてくれたの。そのおかげで私たちはいつもの仲のいい姉妹に戻って、そして秋斗君と言う新しい友達が出来て楽しい日々が続いていた。けど6年前それが突然終わった」

 

楯無は持っていたコップをギュッと握りしめた。

 

「6年前、秋斗君がドイツで行われるモンドグロッソの観戦の為、ドイツへと旅行へと行った翌日に私の両親から、秋斗君がドイツで死んだことを伝えられたの。当然私たちは何かの間違いだと思ったけど、現場から血の付いた服の欠片が見つかって血のDNAが秋斗君のと一致したと聞かされたときは目の前が真っ暗になったわ。今でこそ元気になっているけど、本音ちゃんは大好きだったお菓子をあまり食べなくなったし、簪ちゃんは学校から帰ってきたらすぐに部屋に閉じこもってたし、本音ちゃんの姉である虚ちゃんはお菓子作りの練習をやめてしまったの。私もあの事件のせいで暫く学校に行けなかったしね」

 

楯無はお茶を飲み干し、空になったコップを見ていると、マドカが話しかけた。

 

「楯無さん、一つ聞いてもいいですか?」

 

「何かしら?」

 

「もし、6年前の事件の真実を教えてあげると言ったらどうしますか?」

 

マドカの質問に楯無は耳を疑う。

 

「6年前の、真実? どういう事なのそれ?」

 

「率直に言えば6年前のあの事件には隠された真実があるんですよ」

 

「!?」

 

マドカの言葉に楯無は驚きのあまり立ち上がる。

 

「どういう事それ、その真実って一体何なの? それとどうして貴女がそんな真実を知っているの?」

 

「それはお教えできません。ですが此処に行けば6年前の真実を知ることが出来ますよ」

 

そう言ってマドカが楯無に渡したのは一枚の手紙だった。

 

「……一つだけ教えて、どうして私に真実を話そうと思ったの?」

 

「さぁどうしてでしょうね。貴女の想像にお任せします。あぁこれだけは忠告しておきます。真実を知った瞬間、貴女は日本政府を信用できなくなるかもしれないのでちゃんと覚悟を決めてから行った方がいいですよ」

 

そう言ってマドカは立ち上がり部屋から出て行く。楯無は渡された手紙の中身を読むとそこには

 

『GWにレゾナンス前のモノレール駅に一人で来い。時間は午前10時だ』

 

楯無は手紙を読み終え、マドカの忠告に一瞬心を揺さぶられたがもしかしたら秋斗君が生きているかもしれないという小さな希望が芽生え、楯無は早くGWにならないかなと小さく呟く。

 

それから2日後、クラス代表トーナメント戦が開始された。最初の対決は一組対二組とモニターに映し出され、一夏はやる気十分で臨んでいったが、一組のほとんどの生徒はどうせ負けると思い、空応援だけして早く終わってほしいと願っていた。そしてアリーナの中央に一夏と鈴が対峙する。

 

「鈴、あのさぁ「話しかけてくんな」な、なんでだよ」

 

鈴は試合開始の合図が出るまで集中していたのにいきなり一夏に話しかけられたことで集中の糸が切れ、少しイラついた表情で睨む。そして試合開始のアナウンスが入った。

 

「行くぞ、鈴!」

 

そう言って一夏はイグニッションブーストで接近し、ブレードで攻撃をしてくるが鈴はそれを難なく躱し、裏拳を一夏に叩き込む。

 

「ぐふっ!」

 

「はぁ~、あんたの動きほぼ素人同然じゃない」

 

そう言って鈴は呆れた顔を一夏に向け、自分からは何もしかけずにただ立っているだけだった。

 

「……なんで攻撃してこないんだよ」

 

「さっきも言った通り私が一方的にやったらただのいじめに思えるじゃない。私、アンタと違っていじめとか嫌いだし」

 

鈴はめんどくさそうな顔で言われ一夏は歯を食いしばる。

 

「俺はいじめなんかしてねぇ!」

 

「してたじゃない。なに、まさか都合の悪いことはすぐ頭から消えるって言う便利な能力でもあるの? 羨ましいわ、そんな能力があるなんて」

 

鈴は一夏をおちょくるように挑発すると、一夏は顔を赤くして乱暴にブレードを振りかざす。

 

「ふざけんな!」

 

「ほらほらどうしたの? 自慢の剣道で鍛えた腕はそんなものな?」

 

鈴はさらにおちょくるように一夏の攻撃を避けては斬ったり殴ったりを繰り返す。挑発をうけた一夏の動きはさらに悪くなる。その試合を見ていたアキト、マドカ、本音、簪、セシリアはうわぁ~。と引いていた。

 

「ゆさぶり攻撃とかやることがえげつないよ、鈴ちゃん」

 

「あれはひどい」

 

「まぁいいんじゃない。……いい気味だし」

 

「スズリン生き生きしてるね」

 

「騎士道としては最悪ですが、まぁ一種の戦術ですし仕方ありませんわ」

 

鈴が一夏をおちょくるように挑発したのは一種の戦術なのだ。剣道や空手などでは相手を尊重して卑怯な戦法をとらず戦う。だが戦場において相手を尊重などと言った物はないため、相手の心を惑わす攻撃をしても卑怯とは言わない。

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。……な、なんで当たらないんだよ」

 

鈴に攻撃を当てようと必死に追いかけながらブレードを振ったため、一夏はスタミナ切れとなり膝をつき荒く呼吸をする。

 

「そんなのあんたが弱いからに決まってるでしょ。はい、これでおしまい」

 

そう言って鈴は持っていた双天牙月を同時に振り下ろす。一夏はブレードで防ぐが、鈴は同時に龍咆を展開し、照準を一夏に向ける。

 

「!!」

 

「潰れろ」

 

鈴がそう呟くと同時に龍咆から圧縮した空気の弾頭が発射され一夏を吹き飛ばす。吹き飛ばされた一夏は壁に激突したと同時にSEが無くなり、ISを強制解除され壁にもたれるように地面へと落ちる。

 

『勝者、2組代表の鳳鈴音選手!』

 

アナウンスされると同時に観戦席から盛大な拍手が送られ鈴はそれに答えるように手を振りピットへと戻ろうとしたところでアリーナ天井のシールドが破壊される。

 

 

 

 

 

 

人物

鳳鈴音

中国代表候補生で中国空軍IS部隊、『赤龍隊』に所属。階級は六級士官(多分上級曹長)。

アキトとは小学校の時からの幼馴染で、アキトがドイツで死んだと聞いたときは一夏と千冬がアキトを殺したと思っていた。それから中国へと戻り、中国軍に入隊し、もうあんな思いをしたくないと決心し必死に努力していた。米中英の軍事合同訓練の時にアキトと再会。最初はそっくりさんだと思っていたが、アキトが正体を明かし感動の再会となった。その時にセシリアと会い、友人となる。中国に4歳年上の彼氏がいる。彼氏は甲龍の専門整備士で甲龍を受け取りに来た鈴に一目惚れ。鈴も胸の高鳴りを感じていたが恋だとは気づいていなかったが、アキトの助言で恋だと気づき暫くして付き合い始めた。中国軍ベストカップルに選ばれるほどのラブラブっぷりだと評判されている。




次回予告
突如現れたISを身に纏ったテロリスト達。鈴は仕方なく一夏を守りつつ撃退を試みる。一方アキト達は突然閉じられた観戦席の隔壁を開けるため強硬手段をとろうとしていると千冬は即刻止めるように無線を入れようとしたが学園長がそれを阻止する。観戦席から生徒たちを避難させたあと、楯無と合流しピットから出撃して、テロリスト掃討を開始する。
次回テロリスト掃討戦~邪魔だからピットに退避して。~

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