ゴーストストラトス   作:のんびり日和

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7話

クラス代表決定戦から翌日、1組にいる生徒の多くが落胆した顔を見せていた。その訳がクラス代表戦の結果、一夏がクラス代表に決まったからである。生徒たちはアキトやセシリア達は軍人だから仕方ないが、一般人でも分かるくらい一夏の戦い方は大雑把すぎる。あれでは他のクラス代表に勝てないかもと思っていたのだ。さらにアキトとの試合が終わったのにも関わらずにアキトを背後から襲ったことから気に食わないとすぐに暴力を振るう人物だと生徒達はそう見て取れたからだ。

 

「もう、デザートフリーパス諦めた方がいいよね?」

 

生徒の一人がそう呟くと他の生徒たちも頷く。

 

「うん。だって織斑君あそこまで弱いなんて思わなかったもん。てかISの練習とかしてなかったの彼?」

 

「してないみたいよ。窓際の席に座ってる篠ノ之さんと一緒にISには関係ないのに剣道の練習しかしてないって他の人が言ってたわよ」

 

「なにそれ。つまりIS関連の練習もせず本番に挑むってどんだけ馬鹿なの?」

 

生徒の一人がそう落胆していると他の生徒たちも同じく落胆する。

 

「あぁ~あ、これだったらファイルス君を推薦すればよかったや~」

 

「私も~」

 

全員落胆の声をあげているとそれを聞いていたアキト達は少し申し訳ない事をしたかなと思い始めた。

 

「なんかみんなに悪いことをしたかな」

 

「仕方ありませんわ。物珍しさから選んでしまったんですから、自業自得ですわ。ですが確かに皆さんには少し申し訳ない事をしてしまいましたね」

 

アキトとセシリアが申し訳なさそうにつぶやいていると本音がマドカと一緒にお菓子を持って2人に近付く。

 

「お兄ちゃん、トッポ食べる?」

 

「はい、セッシーにもあげる」

 

そう言って2人はトッポやスティック菓子をアキト達に手渡す。

 

「済まないな、有難くいただくよ」

 

「いただきますわ」

 

そう言ってアキト達はお菓子を食べながら午後の授業開始まで時間を潰した。

 

そして時間は飛び1週間後、いつもの通りアキトとマドカがクラスに入り席へと行くと最近仲良くなった相川清香が興奮した様子で2人に話しかけてきた。

 

「2人とも聞いた? 2組に転校生が来るんだって!」

 

「転校生? 今の時期にか?」

 

アキトは怪訝そうにそう聞き返す。

 

「それより此処の編入試験って相当難しいんじゃ?」

 

マドカがそう言うと清香はその転入生について説明する。

 

「うん。なんでも中国代表候補生みたいで試験はすぐにパスできたらしいの」

 

「中国? ということはアイツかな」

 

「ですね」

 

アキトとマドカはすぐにその転校生が誰なのか見当がついたのかそう言うと教室の後ろの扉が開く。

 

「ねぇちょっといい?」

 

「え? あ、はい」

 

入口付近にいた生徒が急に話しかけられ、体を向ける。そこにはツインテールの小柄の少女が立っていた。

 

「このクラスにアキトとマドカがいるって聞いたんだけど、どこにいるの?」

 

「あ、その2人だったらあそこの席にいるわよ」

 

そう言って生徒はアキト達がいる方に指をさす。

 

「ありがとうね」

 

そう言って少女は2人に近付く。

 

「久しぶりね、アキト。それにマドカ」

 

声を掛けられたアキトとマドカは掛けられた方を見るとやっぱりかという表情で少女を見る。

 

「やっぱり鈴だったか」

 

「やっぱりってなによ」

 

そう言ってアキトを手で小突く鈴。

 

「あ、鈴ちゃんそろそろチャイムが鳴るから昼休みにでも一緒に喋らない?」

 

マドカがそう提案すると鈴もそれに賛同し首を縦に振る。

 

「それもそうね、それじゃあまた後でね」

 

そう言って鈴はクラスから出て行こうとすると一夏と箒がクラスへと入ってきて鈴に気付く。

 

「あ、鈴じゃないか! 久しぶ「話しかけんな」……り、鈴?」

 

話しかけてきた一夏に鈴は殺気を込めた目線を向け1組から出て行く。箒はそれが気に食わなかったのか鈴に喰ってかかる。

 

「貴様なんだその態度は!」

 

「はぁ? あんたには関係ないでしょ」

 

そう言って鈴は2組へと戻って行く。箒は殴りかかろうと腕を振り上げるがその腕を掴まれ、箒は掴んだ人物に文句を言おうとするがその人物は

 

「篠ノ之さん、何をしてるんですか?」

 

腕を掴んだのは真耶だった。真耶は睨むように箒を見据え、箒はバツが悪そうに目線を外す。

 

「私が見たところ鳳さんに殴りかかろうとしていたようですが間違いありませんか」

 

「…………」

 

真耶の問いに箒は何も言わずただ黙ったままでいた。

 

「黙秘は肯定と捉えます。SHR終了後、生徒指導室に来るように。いいですね?」

 

「!? …………分かりました」

 

箒は舌打ちしそうな顔で了承し、自分の席へと行く。一夏も自分の席へと着き、真耶は教壇へと向かい生徒たちが全員居るか確認し、全員居ることを確認後SHRを始めた。

 

 

~昼休み~

アキトとマドカは食堂へと向かおうと席を立つ。

 

「アキトさんにマドカさん、わたくしもご一緒してもよろしいですか?」

 

セシリアはそう聞くとアキトは別にいいぞと言うと次は本音が話しかけてきた。

 

「アッキー、私と私の友達も一緒に混ざりたいんだけどいい?」

 

「別にいいが、1組の奴か?」

 

「うんん、4組の子」

 

アキトは本音の言う友達ってあの子じゃと思いつつ呼んでいいぞと言う。そして4人がクラスをでて4組へと行き本音がクラスへと入る。

 

「かんちゃ~ん、ご飯食べに行こう~」

 

「あ、本音。別にいいわよ」

 

本音と一緒にクラスから出てきた眼鏡を掛けた少女にアキトは心の中でやっぱり彼女だったかと思った。

 

「えっと~、私の幼馴染のかんちゃん」

 

「えっと、更識簪です」

 

簪は恥ずかしそうにそう挨拶し、一緒に食堂へと向かいだす。マドカたちは食堂に向かいながら自己紹介をし始める。

 

「私はマドカ・ファイルスって言うの。アメリカ空軍IS部隊に所属してて、階級は上級曹長よ。よろしくね、簪」

 

「わたくしはセシリア・オルコットですわ。イギリス陸軍国土防衛IS部隊に所属しており階級は上級軍曹ですわ」

 

「うん、よろしくね」

 

マドカとセシリアの挨拶が済むと次はアキトが挨拶をしようとしたが食堂へと先についてしまう。

 

「俺の自己紹介は席に着いてからにするわ」

 

そう言って食堂へと入ると

 

「遅かったじゃない、先に席とっとくわよ」

 

鈴が先に着いておりお盆にラーメンを乗せて席をとりに走って行った。

 

「……相変わらず行動が早いなあいつ」

 

アキトがそう呟くとセシリアとマドカが同意するように頷く。その後食堂のおばちゃんから料理を受け取り、鈴がとった席にアキト達は席に着いて自己紹介の続きを始める。

 

「それじゃあ先に私がするわね。私は中国代表候補生で中国の空軍IS部隊に所属している鳳鈴音よ。階級は六級士官、つまり上級曹長よ」

 

「え、鈴ちゃんわたしと同じ階級になったの? 前は曹長じゃなかったの?」

 

マドカが階級が上がっていることに驚くと鈴がエッヘンと胸を張って訳を言う。

 

「ふふん、中国代表候補生になったら上層部から昇進の通達が届いたのよ」

 

「いいな~、私も頑張ってお兄ちゃんと同じくらいの階級になりたいのに~」

 

マドカがそうぶぅーぶぅーと文句を言っていると、話がそれたと鈴が言って話を元に戻す。

 

「えっと、それじゃあ俺だな。俺の名はアキト・ファイルスだ。アメリカ陸軍に所属していて階級は少尉だ」

 

「…………アキト」

 

アキトが自己紹介をすると簪はアキトの名を聞き忘れてはいけない人物のことを思い出し少し落ち込む。

 

「簪さんお加減がすぐれないのですか?」

 

セシリアは心配そうに聞くと簪は首を横に振って大丈夫と伝える。

 

「昔一緒に遊んでいた子の名前が秋斗って言う名前だったからそれを思い出しただけだから」

 

アキトは簪がいった人物が自分だとすぐに分かりなんとも言えずにいる。

 

「その子とはもう連絡はとっていないのですか?」

 

セシリアがそう言うと簪は首を横に振る。

 

「もう連絡はとれないの。6年前ドイツで亡くなったから」

 

本音は悲しそうにそう言うと隣にいた簪も悲しそうな表情でいた。セシリアはそうですのと呟く。鈴は簪たちの話を聞き横目でアキトに目線を向け、プライベートチャネルを繋げる。

 

<彼女たちが言っている秋斗ってあんたのことじゃないの?>

 

<あぁ、俺のことだ>

 

アキトは隠すことはなく肯定する。

 

<だったら自分が織斑秋斗だって言いなさいよ、この子たちが可哀想よ!>

 

<俺だって言いたいさ! だが彼女たちは特殊な家系の子だから俺の正体は明かせないんだ>

 

アキトがそう悔しそうに言うと鈴はその特殊な家系について聞くとあるデータが送られそれを周りに見えないように覗き、簪たちの家系に驚く。

 

<なるほど、暗部組織の家系だったのね。……ごめんなさい、知らなかったとはいえ怒鳴ったりして>

 

<いや、別に構わねえよ>

 

プライべートチャネルを切り、話の輪に戻る。鈴は久しぶりに会ったセシリアと会話を楽しんでいた。

 

「それにしても久しぶりねセシリア。米中英の合同訓練以来かしら」

 

「えぇ、大体その位だと思いますわ」

 

アキト達が談笑していると箒と一緒に一夏がやって来た。

 

「な、なぁ鈴今朝のことなんだが俺、お前になんかしたか? ただ久しぶりに会った幼馴染のお前に挨拶しようとしただけなんだぞ」

 

一夏は何もしていないという感じで鈴に言う。それを聞いた鈴は持っていた箸を机に叩きつける。叩きつけた音は食堂に響き談笑していた生徒たちは一斉に音がした方に首を向け何事だと様子を伺う。

 

「あたしがあんたの幼馴染ですって?」

 

鈴はゆっくりと立ち上がり一夏を見据える。その顔は憤怒に染まっていた。そしてゆっくりと息を吸う。そして

 

「ふざけるんじゃないわよ!」

 

「っ!?」

 

突然の怒声に一夏は思わず後ろに一歩後退してしまう。

 

「あんたと幼馴染なんて私は一度も思ったことなんてないわよ! むしろあんたは私にいじめの原因を作った奴だろうが! そして私の大切な幼馴染はあんたと、あんたの姉が見殺しにして死んでいったわよ!」

 

鈴のいきなりの暴露に食堂にいた生徒たちはざわつきだす。

 

「ねぇ今の聞いた?」

 

「うん、織斑先生の弟さんが彼女のいじめの原因を作ったって言ってたわよね」

 

「しかも彼女の幼馴染みを見殺したってどういうこと?」

 

周りにいた生徒たちは鈴の暴露話にヒソヒソ声で喋っていると一夏が反論する。

 

「ち、違う! 俺はいじめの原因なんか作ってないし、秋斗を見殺しなんてしてない!」

 

「何が違うって言うのよ。私が転入してきた時、あんたは私の名前をパンダみたいな名前だなって言ったせいで周りの男子たちは面白おかしく私の名前で弄りだした。そのせいで私は不登校になりかけたのよ」

 

鈴は睨みながら小学校の時に受けたいじめを赤裸々に告白する。

 

「けど、秋斗のお陰で男子からのいじめは減っていったわ。その時あんたなんかと違って秋斗は友達を大切にするやつで私にとって大切な幼馴染だと思った! けどあんたとあんたの姉がドイツに秋斗を無理やり連れて行ったせいで秋斗は!」

 

鈴は続きを言おうとしたが口に出せないのかそこからは言わずにただ一夏を睨んだ。

 

「あ、秋斗は死んでなんかない! そこにいるだろ!」

 

一夏はそう叫びアキトに指をさす

 

「こいつはアキト・ファイルスであって、アイツとは違うわよ! そうまでしてあいつを見殺しにした事実から逃げる気?」

 

「鈴、もうよせ」

 

アキトは目元から涙を流しながら怒鳴る鈴を止めに入り、鈴とマドカ達を連れて食堂から出て行こうとする。一夏の横を通り過ぎるとき鈴は一夏にしか聞こえない程度の大きさで言う。

 

「あんたとあんたの姉を私は絶対に許さないから」

 

「!?」

 

鈴の突然の宣言に一夏は驚き鈴を見るとその目からは殺気が飛ばされており一夏は呼吸しづらくなる。そしてアキト達が食堂から出て行き生徒たちはまた談笑を始めたりするグループもあれば先ほど鈴が暴露したことをヒソヒソ声で話し合ったりしていた。一夏は呆然と立ち尽くしていた。

 

食堂から出て行ったアキト達は人の気配があまりない屋上へと着く。

 

「ごめんなさいね、アイツ見てたらつい我慢できなくなっちゃって」

 

鈴は申し訳なさそうにベンチに腰掛けて謝罪をするが全員気にしてないと言う。

 

「別に構わない。むしろスッキリした」

 

「私も~」

 

簪と本音も一夏に一言文句を言いたかったが一夏の傍にはいつも箒が付いていたから下手に文句を言いに行くと暴力を振るわれると思い言えなかったのだ。

 

「そう言えばあんた達も秋斗と一緒に遊んでたの?」

 

「うん、秋斗は私とお姉ちゃんのケンカを止めてくれた人で私たちにとって大切な友達」

 

簪は悲しそうに言う。

 

「そう。さて、そろそろ教室戻らないとね」

 

鈴がそう言って立ち上がりマドカ達もそれぞれ自分の教室へと戻っていく。アキトはプライベートチャネルを開き、鈴と会話する。

 

<悪いな鈴、黙っててくれて>

 

<別にいいわよ。……いつか本当のことが話せたらいいわね>

 

<あぁ、そうだな>

 

そう言いながらアキト達は階段を下りて行った。




次回予告
クラス代表による学年別代表戦が始まる2日前、マドカは楯無の部屋へと行きドイツで起きた爆発事件の真実を知りたければ、GWに此処に来い。という手紙を手渡す。そして学年別トーナメント戦が始まった。
次回学年別代表戦~もしかしたらもう一度会えるかもよ、貴女が会いたいと願う人物に~

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