この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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やめて!カズマの口撃で、アクアのプライドを焼き払われたら、それに繋がってるアクアの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでアクア!あんたが今ここで倒れたら、ルミのズボンを裁縫するって約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、カズマに勝てるんだから!
次回「アクア死す!」。デュエルスタンバイ!

…やってみたかっただけです。


アクア完全に泣いちゃってるし…

キャベツ狩りの成果で、レベルが10になっていたルミはカードにいくつか書かれているスキル欄を眺めていた。今回のキャベツ狩りだけで3つレベルが上がったことになる。ちなみにカズマがレベル4から6になっているため、レベル差を考えると、捕まえた量は同程度でも、カズマの倍程度はキャベツを食べていたという証明になるだろう。

 

「ダクネス、ちょっといーい?」

 

先日仲間となったダクネスに、ルミは声をかけた。

 

「ん?どうしたのだ?」

「キャベツを捕まえる時に覚えた新しいスキルを練習したりしたいんだ。人が相手でも使えるのか気になっちゃって。ちょっと外壁の門まで一緒に来てくれないかな?カズマとアクアはお買い物に行って新しい装備を見るみたいだし、めぐみんはまだギルドに来てないみたいだし。」

「ああ、別に構わないぞ。的だと思ってどんどん攻撃するがいい!」

「あー…いや、攻撃はしないけど…」

 

……………

 

「さぁ、思う存分試すがいい!」

「いや、攻撃はしないってば。カズマとめぐみん曰く盗賊職の『潜伏』ってスキルに近いらしいんだ。影走りって名前なんだけどね。」

「ふむ…攻撃されないと言うのは残念だ。」

「ダクネス、どうして攻撃されたいの?」

「ん?いや…そうだな、日頃から慣れておかないといざという時困るからな!…コホン、それで、一度それを私が見ればいいのか?」

「ああ、うん、そうそう。じゃあとりあえず行くね?」

 

そう言うと、ルミの姿がスッと消えた。

 

「…ん?………確かに気配も姿もない…ルミ、もう出て来て大丈夫だ。どこにいる?」

「こっちだよ!」

「ん、後ろにいたのか。」

「よかった!ちゃんと普段も使えそうだね!」

「ああ、完璧に気配は消えていた。…しかし、少し気になったのだが、持続時間はどうなのだ?」

「あー…試したことないかも。キャベツを捕まえる時は短くてよかったし…じゃあ一度試してみるね。姿を消したらここに立っとくよ。姿が現れたら声をかけて?」

「ああ、わかった。」

「じゃあ行くね。」

 

ルミは再び姿を消した。十数秒ダクネスがそこを見つめていると、ルミの姿が見えるようになった。

 

「…そこまでだ。持続時間は長くないようだ。」

「うーん…戦闘中の奇襲に使えるぐらいかな?」

「そうだな…レベル差によってはもしかしたら見破られるかもしれないし、なんとも言えないが…キャベツを捕まえる時のように先制攻撃をするのには問題ないと思う。」

「うーん、レベル不足かもね。使い込んだら時間伸びるかな?」

「恐らくはな。試すのはこれだけでいいのか?」

「とりあえず今日のところはね。他に取ってみたいスキルは人に試すのじゃないし。」

「なんだと⁉︎人に試すのも憚られるような威力なのか⁉︎」

「い、いや…道具を作ったりする感じのスキルだから…」

「………そうか………」

「あ、あれ?なんで落ち込んでるの?ダクネス?…んー?…まあ、とにかく戻ろうよ。」

「………あぁ…そう、だな………」

 

 

「お、ダクネスにルミ。帰って来たのか。ルナさんが出かけたって言ってたから待ってたんだがどこ行ってたんだ?」

「門のあたりでこの前使ったスキルの確認してたんだ。即興で取ったスキルだったから、細かい効果とかわからなかったしね。」

「そういうことでしたか。」

「あ、そういえばカズマは装備変えたんだね!」

「ああ、さすがに普通の服だけだと少し怖いから籠手とか買ってみた。まあ、こうなるとますますジャージを着る機会は減るけど。」

「ああ、たまに着てるあの変な服のことですか。」

「もともと工事で貯まったお金で服とかは買えてたもんね。」

「それと、少しスキルも覚えたんだ。」

「ホント⁉︎今度は何を覚えたの?」

「仲良くなった剣士と魔法使いに教えてもらって片手剣と初級魔法をな。ってことで、せっかく魔法を覚えたんだし、魔法剣士みたいなスタイルでいこうと思う!」

「言うことだけはいっちょまえですね。」

「まあ、装備も手に入って新しいスキルも覚えたってことで簡単なクエストに行きたいんだがいいか?」

「ああ、それならジャイアントトードが繁殖期に入っていて街の近場まで出没してるそうだからそれを…」

「「カエルはやめよう(ましょう)!!」」

 

ダクネスの提案に、食い気味にアクアとめぐみんは反対する。

 

「…何故だ?簡単なクエストなら、ジャイアントトードの討伐にはうってつけだろう。」

「あー、そいつらはジャイアントトードのクエストやった時に頭から食われて粘液まみれになってな…」

「いやー、一歩間違えば大惨事だったよね。特にアクアは3回も食べられかけてるし…」

「あ、頭から…だと…それに、粘液、まみれ…」

「…おい、お前今羨ましいとか思ってないだろうな。」

「お、思ってにゃい…」

「とにかく、キャベツ狩りは別にしてこのパーティーの初クエストなんだから楽なやつがいいな。」

「これだから内向的なヒキニートは…確かにカズマは最弱職だし?慎重になるのはわかるけど、こうして集まったのはほとんど上級職なのよ?もっと難易度の高いクエストを…」

「………なあ、アクア………お前、役に立ったことあったか?」

「っ⁉︎」

 

若干の怒気とともに静かに放たれたその言葉に、アクアは固まった。

 

「本来ならな?俺は強〜い装備をもらってこの世界をイージーモードで過ごせたはずなんだぞ?そりゃね?特典をタダでもらえる身としてはあんまり文句はつけたくないよ?それにその場の勢いとはいえお前を特典に選んだのも俺だしな?だが、特典として選んだお前はいったい俺に今まで何をしてくれた?お前は特殊能力だとか強力な装備並みに活躍してると言えるのか?なあ教えてくれよ。普通に転生特典をもらった奴らってこんな苦労してるのか?ん?元なんとかさん?」

「い、いや……一応、その…今も、女神、なん…です…け、ど………」

「へー!女神!そうか女神か!女神ってのは戦闘じゃ足引っ張ることしかできなくて金の使い方が荒い、人を馬鹿にするのが仕事の職業なのか⁉︎キャベツ狩りのときだってお前何してた?金に目が眩んで一人で追いかけてキャベツに翻弄された挙句勝手に転んで泣いてただけじゃねぇか!そうだろこの駄女神が!!!」

「わああぁぁぁぁ!そんなこと言わないでよぉぉぉ!私だっで…私だって回復魔法とか、回復魔法とか…回復魔法とかで一応役に立ってるじゃない!こんなにちまちまやってていつになったら魔王を倒せるの⁉︎いつになったら私は帰れるのよおぉぉぉぉ!」

「プロのゲーマーである俺にはちゃんとした考えがあるんだよ。お前と違ってな!」

「プロのゲーマーだったの?」

「………気にするな。いいか、俺には日本で培った知識がある。そこで誰でも簡単に作れ、役に立つまだこの世界で出回っていないものを売りに出そうと思っている。俺の運は商人向けらしいし、金さえあれば、キャベツみたいに食うだけで強くなるものだって買えるしな。だからお前もその足りない頭を使ってなんか考えろ。そして俺のスキルポイントがたまったらお前の唯一の取り柄の回復魔法を教えろ!」

「いやぁぁぁぁ!回復魔法だけは!私の存在意義を奪わないで!私がいるんだからもういいじゃない!!」

「カズマ、それぐらいにしたほうがいいと思うよ…アクア完全に泣いちゃってるし…」

「カズマは結構えげつない口撃力がありますからね。カズマが本音をぶちまけると、よっぽどの人じゃないと大概の人は泣きますよ。」

「そ、その口撃を私にしてくれてもいいのだぞ?アクアの代わりにストレスのはけ口だと思って…」

「こいつのことは気にしなくていいんだよ。…しかし……」

「どしたのカズマ?ダクネスを見つめて…」

「…意外と、着痩せする方だったんですね…」

「ん?あ、そういえば鎧無くなってるね。気づいてなかったよ。」

「ああ、鎧がキャベツ狩りの時に少し壊れてしまってな。修理に出しているところで………む?今私のことを『エロい身体しやがってこのメス豚が!』と」

「言ってねえし思ってねえ。……はぁ……」

「おい、今私をチラ見してため息をした意味を聞こうじゃないか。」

「俺にロリコンの気がなくてよかったなと。」

「紅魔族は売られた喧嘩は買う主義です。さあ、表に出ようじゃないか。」

「…コホン、話は変わるが、アクアのレベルが上がるようなクエストにした方がいいと思うのだが…」

「アクアの?」

「ああ、プリースト系の職業は攻撃スキルを覚えられないからレベルが上がりにくいんだ。前に行くこともないし魔法で殲滅なんてこともできないからな。回復担当が強くなればそれだけ生存率も上がるだろうし…」

「そもそも上がりにくいのにどうするんだ?」

「アンデッドモンスターを狙うんです。プリーストのスキルで浄化するんですよ。神の力が逆に働きますから。」

「なるほど…うん、アクアの頭がマシになるかもしれなら悪くない話だな。だが、ダクネスは鎧がなくても大丈夫なのか?」

「伊達に防御に全振りしてるわけではない。鎧なしでもアダマンタイマイより硬い自信がある。それに…いや、まあそういうわけだ。」

「…鎧なしで殴られたいとか思ってないだろうな…」

「そんなこと…ない。」

「なんだその間は…思ってんだろ。」

「あれ?そのアクアは?………カズマ、アクア寝てるよ?」

「すかー………」

「泣きつかれたのですかね?」

「子供かこいつ…」

 

 

場所は変わって町外れの丘の上の共同墓地にやって来た。話し合いの通り、アンデッドモンスターの討伐クエストを受け、出現する夜の時間帯まで待っているところだ。

 

「ティンダー。」

「おお、火がついた。私のより使いやすそうなスキルだね。」

「日常生活ではな。戦闘じゃ役立たずだ。とりあえず適当に肉とか乗っけていくぞ。あ、水いるか?」

「あ、うん。もらうよ。」

「ん、クリエイトウォーター。」

 

墓場の近くでバーベキューという、若干冒涜的なことをしながら。

 

「すいません、私にも水を…というか何故魔法使いの私が考えるよりも上手く扱っているのですか…初級魔法なんて使えないからと取る人なんてほとんどいないのですが…こうしてみると便利そうですね…」

「元々そういう使い方なんじゃないのか?戦闘に使う威力じゃないだろ。あ、そういえば、クリエイトアース。…土が出てくるだけなんだが何に使うんだ?」

「畑などに利用するといい作物が取れるらしいです。…それだけです。」

「ぶふっ!何々カズマさん畑作るんですか!よく考えれば土も作れて水も撒ける!天職じゃないですかカズマさん!プークスクスー!」

「ウィンドブレス!」

「ギニャァァァ!目が、目がぁぁぁぁ⁉︎」

「あ、目潰しみたいになった!」

「なるほど、こういう使い方か。」

「違います!違いますからね⁉︎なんで初級魔法を魔法使い以上に器用に使いこなしてるんですか!ルミも納得しないでください!」

「こんなもんだろ?ってか、話は変わるがターゲットの情報は頭に入ってるよな?特にアクア。」

「うぅ〜……出て来たアンデッドを浄化しちゃえばいいんでしょ〜?」

「正確にはゾンビメーカーな。他の数体は操られてるだけらしいから多分無限湧きするぞ。」

「今回は私の出番はないかなー。」

「まあ、我が爆裂魔法のような敵を消し飛ばせるようなものならともかく、普通の攻撃はアンデッドには効きにくいですからね。特に刃物で切るとそちらの方が痛むこともあるそうですし。」

「まあ気にするなよ。今日は基本的にはアクア一人で終わる仕事だし、イレギュラーがあったらすぐ帰るからな。それでいいだろ?」

「そうですね。ダクネスの鎧もないですし、残念ですが墓場で爆裂魔法を撃つわけにも行きません。残念ですが。」

「む…まあ、仕方ないか……強敵とは戦えないのは残念だが………残念だが………」

「お前ら…」

「い、いや、にゃにも言ってないぞ?」

「そ、そうです!残念だとか思ってませんから!クエストが達成できるなら、えっと…文句は……その…あり、ま………す…」

「まあ、確認はできたしとりあえず腹ごしらえんー?めぐみんお前今最後なんて言った?」

「な、なんでもないですよ!」

「まあ、とりあえず焼けたから取り分けるぞー。」

「「「「はーい!」」」」




うたわれるもの用語(?)
道具を作ったりする感じのスキル…クオンが作ってた薬のうち簡単なものや、ノスリが技(落葉帰根)で使ったりする爆弾を作ったりする。まだ習得するかは迷ってる。

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