この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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( ゚∀゚)o彡<めぐみん!めぐみん!


そんなに変な名前かな?

「ルミー!足りなくなってきたからこっちにもレンガ持ってきてくれー!」

「あ、私の方もお願いー。」

「はーい!今持っていくよー!よっと!」

「おう、相変わらず精が出るな!その調子でそこは任せたぞー!」

「「「了解です!」」」

 

冒険者登録から1ヶ月、三人は労働者(・・・)としては理想的な生活を送っていた。

 

「おーし、今日はこれで終いだ!そっちの三人ともお疲れ!日給だ!明日も頼んだぜ!」

「「「ありがとうございます!」」」

 

朝早く起きて出る用意をし、現場に行って街の外壁の補修などの土木工事。

 

「ごくごく…ぷはー。カズマ、この牛乳すごく

美味しいよ!」

「マジか?俺も買ってみるか。………お、ホントだ。風呂上りに飲むからなおさらだな!」

「私の分はないの?」

「自分の分は自分で買えよ…まあ、たまには奢ってもいいが。ほら、これで買ってこいよ。」

「さっすがカズマさん!」

 

大衆浴場で1日の汗を流し、酒場でワイワイと騒ぎ、

 

「やっぱ1日の締めはシュワシュワだよな!」

「すいませーん!シュワシュワじゃんじゃん持ってきてー!」

「私はさっきのジュースほしい!あ、それとさっきのお肉も頼んでいい?」

「おう、いいぞ。スモークリザードのハンバーグ大きめもう一つ追加で!分けようぜ、ルミ!」

「うん!」

「ちょっと、女神の私にも分けなさいよ!」

「しょうがねぇなぁー!」

 

そして明日に疲れを残さないように、タダで泊まれる馬小屋でぐっすりと眠る。労働者としては本当に理想的な生活である。

 

「………って違ぁーーーう!」

「どうしたのよカズマ。トイレ?」

「んー?どしたの?」

「違うんだよ!俺たちはこの街に労働者やりにきたわけじゃないぞ!」

 

ドンッ

 

『るっせえぞ!静かにしろ!』

「「「あ、すいません!」」」

「ほら、カズマがうるさくするから怒られたじゃない。」

「うぅ…ん…眠い…どうしたの?」

「ああ、ルミ、起こして悪いな…ただ、疑問に思ったんだ。貯金がそこそこできて装備はおそらくもう揃えられる。それなのに、そのラインに達成した後のこの一週間の間、俺たちが冒険者だってことを忘れてずっと工事をしている。…おかしいと思わないか?」

「あ、そういえば、私たち冒険者だったわね。」

「完全に忘れてたのかよ…とにかく、そろそろクエストに行ってもいいと思うんだ。明日を一旦最後の労働にして、やってみないか?」

「うん、そうだね。いいとおも…ふわぁ…」

「いいわ、女神の力見せてあげようじゃない。私に任せておきなさい。」

 

 

そうして、工事監督に話をつけて惜しまれながらも一旦土木工事はやめることにし、その翌日に冒険者に見える装備を整えてからギルドのクエストボード前にやってきた。が…

 

「…手頃なクエストなんてないじゃないか…弱いモンスターや簡単な採取で力試しみたいなのを期待してたんだが…」

「そりゃそうよ。街の周りのモンスターで衛兵の人にも倒せるのは狩り尽くされてるもの。自分たちで倒せて手が足りてるならここに乗せるメリットなんてないでしょ?お金かかるし。」

「そんなリアル事情は聞きたくなかったよ。」

「ねえねえ、危険度のマークが少ないやつがあるよ?」

「ん?ジャイアントトードを3日以内に5匹討伐?トード…カエルか?二人は知ってるか?」

「私はずっと森の中だったから知らないかな。平原に出てくるみたいだし。」

「アクアは?」

「大きいカエルよ。」

「…お、おう。」

 

 

「確かにでかいカエルとは聞いたがここまで大きいとか聞いてねぇぞおおぉぉぉぉ⁉︎」

「あわ、わ…カ、カズマが…」

 

よく晴れた平原でカズマは巨大なカエルに追いかけられていた。アクアと弓を持ってきたルミは遠くから見つめている状態になっている。ルミは少し焦りつつ弓で矢を打つ態勢に入った。

 

「プークスクス!カエルなんかに必死になっちゃって超ウケるんですけど!あ、ルミ。弓で援護はしちゃダメよ。」

「え?でもカズマが…」

「いいのよ。そっちの方がおもし…んんっ!何事も経験が大切なんだから。」

「…?うん、わかった?」

 

良くも悪くも素直なルミはアクアの言葉に、助けなければとうずうずしながらも従ってしまった。そんな二人の様子を見てカズマは叫ぶ。

 

「そこで何してんだぁぁ!!おい、ルミ!頼む、助けてくれ!なぁ、おい!なんでそんなうずうずしつつも何もしてくれないんだ⁉︎さてはアクアのせいだな⁉︎おい、アクアー!笑ってないで助けろよおおぉぉぉぉ!!」

「カズマにしては勘がいいじゃない!助けて欲しければ、まず私をアクアさんと呼ぶことから始めましょーか!」

「アクア様ぁぁぁー!」

「しょうがないわねー。助けてあげるわよヒキニート。」

「ニ、ニートじゃないから!」

「その代わり、明日からこの私を崇めなさい!そして、アクシズ教に入信して1日3回お祈りを…」

「ア、アクア!前、前!」

 

カズマに大声で助ける条件を話していくアクアは目の前までジャイアントトードが近づいていることに気がつかない。少し距離をとってルミが必死にアクアに呼びかけているが、話すのに夢中になっている。

 

「へ?きゅぷ」

「ちょ、アクアーーー⁉︎」

「アクア、おまっ、何食われてんだぁぁぁ⁉︎ルミ!弓を撃つんだ!」

「う、うん!えいっ!…あれ?ダメだよカズマ!!矢じゃ攻撃力が足りない!カ、カズマ!早くこっちへ!刀も持ってきとけばよかった!早くーー!!」

「マジか⁉︎う、うおおぉぉぉぉ!!!!」

 

数分後、討伐されたジャイアントトードと、その粘液で全身ねっちょりになって泣くアクアがいた。

 

「うっうっ…うええぇぇぇぇぇ…ひっぐ…ありがど…ありがとね、ふたりとも…うぅ…汚された…汚されたわ…」

「アクア、元気出して…」

「ああ…その、今日はもう帰ろう…そんな精神状態で戦える相手でもないし、ルミも弓しか持ってきてないし…ちゃんとした情報を集めて準備をしてから、な?冒険者スタイルになれて少し嬉しくなってクエストを受けた俺も悪かったよ…」

「…るさない…」

「え?」

「許さないわよ…こんなカエル相手に引き下がったなんて知れたら、この美しくも麗しい女神アクアの名が廃るし、世界中の敬虔なアクシズ教徒に示しがつかないわ!信仰心だってだだ下がりよ!うあああぁぁぁぁぁ!!!」

「あ、アクア!待って!…カズマ、また走ってっちゃったよ⁉︎どうするの⁉︎」

「と、とりあえず追いかけるぞ!」

 

そうして、アクアを追いかけて二人も走り出した。

 

「カズマ、アクアが言ってたことに違和感しか感じなかったんだけど私だけ?」

「今はそんなこと…まあ、俺も日頃汗だくになりながら喜んで工事をして風呂上がりの晩飯を何より楽しみにしててたまに吐いて馬小屋でよだれ垂らして気持ちよく寝てる姿とか見てたら汚されたとか今更とは…っておい!あいつまた食われてるぞ⁉︎」

「ア、アクアー⁉︎カズマ、手を握って!全力で走るから!」

「は?なんて…うおおぉぉぉぉ⁉︎ちょっ、待てって!足浮いてるって!腕がもげるうぅぅぅ!」

「せぇーの!えぇーーーい!!」

「投げんなぁぁー!!?こ、こうなりゃヤケだ!うおおぉぉぁぁああ!」

 

 

三人は、倒せはした2匹のカエルの運搬は任せて、風呂に入ってからギルドで軽くつまみながら話し合いを始めていた。

 

「アレね。三人いればなんとかはなると思ったけどやっぱりもう少し仲間を増やしましょう。」

「…まあ、取り分は少なくはなるけど難易度がもう少し上のやつでも考えられるようになるし、なにより安全にクエストができるかも知れないしな。でもなぁ…装備は一通り揃えたって言っても低レベルの集まりの俺たちのパーティーに入ってくれる人なんているのか?」

「ふぉのわたひが…」

「飲み込め!飲み込んでから喋れ。」

「ふぁふふぁ、ふぉのはらあへ」

「ルミも飲み込んでからにしなさーい!はい、まずアクアは?」

「この私がいるんだから仲間なんて募集かければすぐよ。なにせ、私は最上級職のアークプリーストよ?」

「そうか。それで、ルミは何を言おうとしたんだ?」

「カズマ、この唐揚げ美味しいよって言おうとしてたの!」

「そ、そうか…まあ、とりあえず唐揚げ食いながらしばらく待ってみるか。…うん、美味いのは確かだな…」

 

 

募集をかけてから半日待ち続けたが、誰も来ることはなかった。とはいえ、他のパーティーは成立してクエストに行っていたりするので人がいないわけではないはずだ。

 

「人、こないね。」

「だなー…なあアクア。やっぱりハードル高いんじゃないか?そもそも魔王を倒すって目標にしてるから仕方ないっちゃ仕方ないんだろうが、上級職限定ってのは…」

「うう、でもー…」

「お前は上級職だからいいかも知れんが、俺は最弱職、ルミの方も新職業ってことでよくわからないんだ。まずは魔王討伐のことも上級職限定ってのも我慢して、とりあえず誰かが来てくれるまでは…」

「募集の張り紙、見させてもらいました。」

「ん?」

 

カズマが話している途中声をかけられ、そちらを振り向く。ルミとアクアもその視線を追いかけると、そこには典型的な魔法使いスタイルをした、黒髪赤目の少女が立っていた。

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者!」

「「…………………………」」

 

アクアとカズマが固まる。とはいっても、アクアはそこまで驚いてはいない。ただ、カズマのほうは『何言ってんだこいつ。』といったような顔をしている。そして、ルミはキラキラと目を輝かせていた。

 

「おお、カッコいい!私もやる!…我が名はルミ!友とともに森を守護し…えーっと…うーん…ダメだ…やったことなかったしこれ以上思い浮かばないや…」

「おお、あなた話がわかりますね。里を出てから名乗りを返したのはあなたが初めてですよ。セリフを完走できなかったのは惜しいですが、初めてにもかかわらずポーズがちゃんとした型…古より伝わるヒーローポーズの一つでした。なかなかのセンスです。次までに名乗りを考えておくことをオススメしますよ。」

「はい!」

「おい待て。ルミを変な道に引っ張り込もうとするな。」

「何故ですか?人に会ったら自己紹介をするのは当たり前のことじゃないですか。」

「…あれが自己紹介って…冷やかしに来たんじゃないよな?」

「な、ち、ちがわい!」

「その赤い瞳…もしかして、あなた紅魔族?」

「…!いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも…くだ…くぅ…」

「あ、大丈夫⁉︎」

「ど、どうしたんだ?」

「…もう、3日も何も食べてないのです…何か食べさせていただけませんか…?」

「飯をおごるぐらいなら構わないけどさ。その眼帯はどうしたんだ?怪我でもしてるならこいつに直してもらったらどうだ?回復魔法だけは得意だから。」

「ちょ、だけ⁉︎」

「めぐみん、それカッコいいね!」

「フッ…そうでしょうそうでしょう…これは我が強大なる力を抑えるマズィックアイテム…もしこれが外されれば、この世に大いなる災いがもたらされるであろう…」

「封印…みたいなものか?」

「まあ、嘘ですが。単にオシャレでつけてるだけ…あ、あっ、ごめんなさい引っ張らないでください!やめっ…ヤメロー!」

「カズマとルミに説明しておくと、彼女達紅魔族は生まれつき高い知力と強い魔力を持ってて、大抵は魔法のエキスパートで、みんな変な名前を持ってるわ。」

 

眼帯を引っ張っていたカズマは、めぐみんが主張しているゆっくり離してほしいという希望をスルーし、そっとではなくいきなり引っ張っていた眼帯を離した。景気良くいい音がなる。

 

「ああぁぁぁぁぁ!!!イィッタイ目がぁぁぁぁーーー⁉︎」

「すまん、からかってるのかと思った。わけのわからないこと言うし、変な名前だし。」

「へ、変な名前とは失礼な!私からすれば街の人達の方が変な名前をしていると思うのです。」

「めぐみんって、そんなに変な名前かな?」

「は?いや…」

「ねえねえ、めぐみん。もし、ギギリっていう種類の生き物に名前をつけるとしたら何にする?」

「ふむ…そうですね…迷うのですぐに名前をつけるのは難しいのですが、やはりなんとかりんや、なんとかすけ、といったフレーズは欲しいところです。」

「だよね!」

「あー…そういえばルミも似たようなセンスだったな…ちなみに、両親の名前は?」

「母はゆいゆい!父はひょいさぶろー!」

「「………………」」

「可愛い名前だね。」

「可愛いですか?いい名前なのは確かですが…」

「………なあアクア。この子の種族は、いい魔法使いが多いんだよな?」

「おい、私の両親の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか!」

「とりあえず、彼女はカードを見るに、上級職のアークウィザードなのは確かだし、いーんじゃない?それに、もし本当に爆裂魔法を使えるならそれはすごいことよ。爆裂魔法は習得が極めて難しいと言われる、爆発系の最上級、トップクラスの魔法だもの。」

「彼女ではなく、ちゃんと名前で呼んで欲しい…」

「まあ、なんか頼めよ。俺はカズマで、これがアクア。それでこっちがルミだ。よろしく、アークウィザード。」




うたわれるもの用語
弓…見た目普通の弓だが転生特典の一つ。矢は基本手作り。ルミのイメージ的に、モデルは偽りの仮面及び二人の白皇より、ノスリの弓。

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