言い訳をするなら新年度だったからとかテストやら実験で忙しかったとかですかね…これからも就活があったりで不定期更新に悪い意味でさらに磨きがかかってしまいそうです…失踪はしませんが。
準決勝の組み合わせが発表されてから、ルミは普段と変わらないような様子で準備運動をしていた。
「なあルミ、大丈夫なのか?あいつは正真正銘のチートをもらった転生者だし、あの剣があるならかなり強いはずだぞ。」
「うーん…わかんない。どれぐらい強いのかは見たことないし…でも、やるだけやってみるよ。思ってたより今日は体も動いてるからもう少し頑張れるし、なんとかなるんじゃないかな?」
あっけらかんと答えるルミはどこからか取り出していたクナイをクルクルと手元で回す。それをしていないもう一方の左手は手を開いたり握ったりしている。
「少し気になってるみたいだけど、腕はちゃんと治ったのか?」
「ああ、大丈夫だよ。アクアの回復魔法は私のと比べ物にならないくらい効きがいいしね。まあ私のは厳密には魔法とは違う気がするけど…なんて言えばいいんだろ?」
ルミが少しウンウン唸っていると、横から声をかけられた。
「おや、カズマもここにいたんですか。」
「あ、めぐみん!」
「あれ?めぐみん、どこにいたんだ?」
「ゆんゆんと一緒に向こうの方で見てたんですけど、このまま行くとルミとアシュリーが決勝で戦いそうじゃないですか?どちらかといえばパーティメンバーのルミを応援したいのでこっちに来ようかと。」
「そういえばゆんゆんはアッシュとパーティを組んでるって言ってたな。アッシュも勝ち進んでるのか。」
「アシュリーの戦い方は独特ですからね。対応できない人が多かったのでしょう。まあ、知っててどうにかなるものでもないですけど。」
「そういえばアッシュと本気で戦ったことはなかったなぁ。やっぱり強いんだね。」
「まあ、アシュリーは…というか今は次の試合ですね。ルミ、遠慮はいりませんから、全力で勝ってきてくださいよ。なんならあの男を我が爆裂魔法によって試合に出れない体にしてしまっても私は構いませんけど?」
「いや、ダクネスじゃあるまいし試合に出れなくなるどころか消滅するだろ…」
「そのつもりなのですが。」
「ほぼ私怨だろそれ…この前生理的に受け付けないとか言ってたし…っておい、詠唱始めるな!」
『えー…はい、それでは整地が終わりましたので準決勝を行います。ルミさんとミツルギキョウヤさん、準備をお願いします。』
めぐみんがカズマに取り押さえられたところで放送が入ったため、とりあえず二人は置いておいてルミはすでに立っていたミツルギの前まで歩いた。
「…君はあの男と一緒にいた子か…」
「あ、覚えてた?…あんまり覚えてて欲しくはなかったけど…」
「いきなり辛辣な…」
「だって前の時アクアに急に話しかけて来てなんだか怖かったんだもん。」
「そう言えばあの時君にはずっと威嚇されていたな…」
「…カズマは転生者だからあんな反応してたんだろうって言ってたけど、それでもなんていうか…」
「…さらっと言ったがそういう話をしているということは君もそうなのか?」
「前世…って言ったらいいのかな?それの記憶はないけどね。まあ、それはおいとくてして…そろそろかな?」
『それでは、試合開始です!』
「そのようだね…」
ミツルギは剣を両手で持って構えた。対するルミは構えらしいものは取っていない。
「構えなくていいのかい?武器も持っていないようだが。」
「まあ、私はあんまり構えたりはしないかな。それにっと。」
ルミはそう言いながら軽く腕を動かして袖からクナイを出し、両手に持つ。
「一応いつでも武器は出せるしね。」
「なるほど…」
その一言を最後にミツルギは黙って動かなくなってしまった。
「…えーっと…とりあえずこっちから行ってもいいの?」
「ああ、少しでも手の内を教えてくれたからその代わりさ。」
「じゃ、じゃあこっちから…えい!」
変に律儀なミツルギになんとなくペースが崩れたが、ひとまず牽制として3本ミツルギの足にクナイを投げつけた。なんの細工もない攻撃だったので問題もなく少し後ろに飛んでかわされてしまったが、その隙にルミはミツルギに近づいていった。
「カズマカズマ、ルミってあんな武器使ってましたっけ?」
「今までは使ったことはなかったんじゃないか?まあルミは色々なものを持ってるからな。何に使うのかは知らないけど、普段使わないのに傘とかも持ってたはずだぞ。」
「カサ?」
「雨の日に濡れないようにするやつだ。ほら、前に説明しただろ?」
「ああ、カズマたちがいた国の道具ですね。…それにしても、試合の状況は変わりませんね…ルミがあのクナイというものを使って近づこうとしていますけど、なかなかあの男も隙を見せません。」
「ああ、それにどっちもすごい速さだな、目で追いかけるのがやっとだ。」
「はい、それにルミの速さは知ってましたが、そのルミの攻撃をあの男があそこまでいなせるとは思ってませんでした。」
1分ほどの時間しか経っていないが、ミツルギが避け、弾いたクナイの数は数え切れない。その間、ルミは近づくことに何度かは成功しているが決定打どころか攻撃の一つも通せていなかった。
(近づけるから隙は出てくると思ってたけど全然だ…まっすぐじゃダメかな?)
ルミはここで作戦を変えることにした。とはいえ、急に変えては警戒されてしまうので表向きは今までと同じようにクナイを投げつづける。その内の何本かをさりげなく上の方に投げた。
「狙いが外れてきてるけど、大丈夫かい?」
「戦いで余裕を見せると痛い目に合うよ!」
わずかな違いには気づかれたが、狙いはバレていない。そう判断した瞬間に、ルミは姿を消していつのまにかミツルギの真上に跳躍していた。そしてその近くには雷を纏ったクナイが何本か浮いており、それらを蹴り落としてミツルギに向けて攻撃した。流石にこれにはミツルギも驚き、剣でガードはしたが大きく体勢を崩した。その隙にルミはミツルギの真正面に立っており、一瞬力を溜めて手を突き出した。その瞬間、ルミの手が炎を纏ってミツルギを吹き飛ばした。
「うおぉっ⁉︎」
「す、すごいです!見ている私たちにも熱風が届いてますよ!あと、攻撃で炎が出てくるとか、かっこよすぎです!」
「…そういうところはホントにブレないよな…」
仰向けになっていたミツルギは腹をおさえながら立ち上がった。
「手応えはあったと思ったんだけどなぁ…」
「くっ…今のはきつかったよ…炎の耐性がなければ致命傷だったかもしれない…」
「そんなのあるの?」
「装備のおかげでね。王都にはいろんな道具がある。」
「そうなんだ…あれ?ウィズのお店にも売り物じゃないけどあったような…まあ今はそんなことはいっか。重要なことじゃないね。」
改めて構え直したルミは、同じように様子を伺うミツルギを見る。パッと見ただけなら攻撃を加える前までと様子は変わらなく見えるが、注意深く見ればやはりダメージそのものは通っているのか、若干姿勢が乱れていた。効いてないわけではないのならばと、ルミは次の作戦をシンプルではあるがさっきのものよりも強い物理攻撃をすることにした。しかし、それを行う前にミツルギが動いた。
「っ⁉︎はやっ⁉︎」
「一本取られたからにはお返しはさせてもらいたいからね!」
「うくっ!」
猛スピードで接近してきたミツルギの攻撃をなんとか防ごうとする。しかし、スピードは追いつけるものの力の差が大きく、攻撃を受け止めるたびに体勢を崩されそうになってしまい、いくらかは避け切れずに少しずつダメージを受けていく。このままは流石にまずいと思ったルミはまずミツルギの剣による攻撃を出来るだけ強く弾いた。
(これが最後のだけど仕方ない…もっと作っとけばよかったなぁ。)
材料を手に入れるのが難しく、数が少ない閃光弾を使うことに心の中では惜しむ気持ちがないわけではないが、今はそんなことを考えている場合では無いので距離を取りつつ、躊躇いなく最後の閃光弾を投げた。
「これはっ⁉︎」
突然の光と音に、ミツルギは目がくらみ、音も一瞬聞こえない状態になった。ルミはその隙に流れるような動きで後ろに回り込んで足払いをして宙に浮かせ、そのまま掌底で吹き飛ばした。
「う……ぐっ…!」
十メートルはノーバウンドで飛んだにもかかわらず、ミツルギは震えながら立ち上がった。しかし、それも数秒のことですぐに膝をついてしまう。
「…降参だよ。これ以上はもう立てない。 」
『試合終了です!勝者、ルミさん!アクア様、ミツルギさんの手当をお願いします。』
かなりボロボロになって降参したミツルギを見てウィズがアクアに救護を要請した。
……………
ルミの戦いの様子を見てアシュリーは多少驚いていた。
「おお、なんかいつもの組手より動きが良いっすね。それこそ僕が見たことないくらいっす…侮ってたわけじゃ無いっすけど、これは油断すると負けるっすね…」
「どうしたの、アシュリーちゃん?」
「いやぁ、ルミって強いなって思ってただけっすよ。今までの相手みたいに槍1本じゃ辛いかもって思うくらいに。」
割と性格とか迷いましたがミツルギさんはアクアが絡まなければ普通に好青年なイメージがなんとなくあります。
今回のルミの戦い方は細部は違う気はしますがだいたいクオン風です。