この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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戦闘描写の練習をしたいし、たまにはオリジナルで書く必要があると思った。駄文過ぎて後悔はしているが投稿したことには後悔していないし反省もしていない。…最近ルミの口調が安定しないような…


アクセルの街最強決定戦・前

借金が無くなってから数日たったとある日のこと、いつしかと同じようにルミが一枚の紙を持って屋敷に駆け込んで来た。

 

「カズマー、ただまー!」

「おかりー。どうした?そんなに慌てて。」

「これ見て!優勝賞金も出るらしいよ?」

「…アクセルの街最強決定戦?」

「なんかお祭りみたいにして開催するんだって!なんでもありの一対一らしいよ。明後日にあって私は出たいんだけど、カズマは出てみない?」

「いや、俺はそんな強くないからな…俺は出ないぞ。なんでルミは出たがってるんだ?そんなに金については欲しがったりしてないよな?」

「ほら、腕戻ったでしょ?こういう大会とかなら、ちゃんと感覚戻ってるか確認するいい機会かなって。最近武器も使ってないし。」

「ああ、なるほどな。まあ、俺は別に反対もしないしいいんじゃないか?金に余裕があるから俺は出ないけどな。でも、その大会で怪我とかしたらどうするんだ?武器ありなんだろ?」

「あ、報酬あげるから街おこしの大会の救護係をしてくれってアクアが呼ばれたみたい。最悪死んじゃっても生き返れるからってさ。」

「…運営はそれで大丈夫なのか…ここは駆け出しとはいえ冒険者の街って言うぐらいだから血気盛んな人が多いから盛り上がりはするだろうけど…俺が気にしても仕方ないか。まあ、参加するなら頑張れよ。」

「うん!じゃあ私は申し込みに行ってくるね。」

 

 

そうして当日、参加者はそこまで多くなかったようで予選などもなくトーナメント形式で勝負が行われることになっていた。時間は昼から開催されることになっているので、ルミはたくさんの出店が出ている道を歩いていた。

 

「わぁ、たくさんあるなぁ。少しお腹すいてきたし、何か食べていこうかな…ん?あれってめぐみん?それと…?」

 

少し離れたところでめぐみんが誰かと話しているようで、ルミが近づいていくと少しずつ声が聞こえてきた。

 

「…というわけで、この大会で勝負よめぐみん!今日こそ私はめぐみんに勝つんだから!」

「…私、大会には出ませんけど?」

「ええっ⁉︎」

「そりゃそうでしょう。私は爆裂魔法しか使えないのに出るわけないじゃないですか。」

「そ、そんな…勝負が…せっかくの勝負の機会が…」

「まあ、うちのパーティからはルミが出ますし、観客席から見ますよ。ゆんゆんはどうします?」

「え?」

「アシュリーも出てるのでしょう?ゆんゆんも大会に出るにしろ出ないにしろ、観客席から見るつもりはあるでしょうから。」

「一緒に見てもいいの?」

「別に構いませんけど?」

「そ、そう?じゃ、じゃあ一緒に見ようかしら…」

 

そんな話をしながらめぐみんとゆんゆんは歩いて行く。声をかけても良かったが、特に用事もなくもう少し出店を見たいのもあって違う道を進んで行く。すると、また見たことがある顔が見えた。いつしかの飴細工のおじいさんのところに誰かが近づいて行った。

 

「よお、サッちゃんじゃねぇか。元気だったか?」

「む?おお、こんなところで会うとは、久しぶりじゃな!」

「ああ、久しぶりだ。相変わらず、飴屋を続けてたんだな。」

「子供達の笑顔が見たいからの。街の雰囲気を眺めながらこうしているのもいいものじゃよ。」

「すっかり隠居生活だな。同じパーティだったのがもう懐かしいな。数年前まではかなり名の売れたソードマスターだったってのに、ずいぶん大人しくなったじゃねぇか。」

「儂にはこの方があっとるよ。」

「ははは、違いねぇわな。」

「儂が若ければお前さんと相棒として冒険できたじゃろうが…そういえばどうしたんじゃ、わざわざアクセルまでやってきて。冒険者は王都の方でやっとるのじゃろ?」

「俺かい?サッちゃんに会いにきたのがメインだぜ?まあ、せっかくだから一目大会を見て帰るつもりでな…」

 

飴を貰おうか迷ったが、なにやら旧友なようなので話の邪魔をするのも悪いかと思い、そのまま店の前を通り過ぎた。

 

「…となるとあんまり思い当たる出店ってないな…どうしよ。やっぱり串焼きとかかなぁ?まあ大会が始まっちゃう前に食べないといけないし、そうしよっかな。」

 

 

無事串焼きの店を見つけることができ、昼食として食べてから大会が開かれるところにやってきた。すると、運営のところでまたもや見慣れた人物が騒いでいた。

 

「何故私はこの大会に参加してはいけないのだ!領主の娘だからこんな危険なことをさせられないとかそういうことなのか⁉︎」

「んなこと言われても…なぁ?」

「あぁ…」

「ララティーナ、お前出たところで戦って勝つ気はあんのか?」

「ラ、ララティーナと呼ぶな!」

「はいはいわかったよ。んであるのか無いのかどっちなんだ?」

「そ、それは…もちろん勝つ気はあるが…しかし私は剣を当てることもできない…手も足も出ずそのまま…」

「アウト。さぁ帰った帰った。」

「な、何故だ⁉︎」

 

なにやら込み入った(?)話のようなのでダクネスはスルーすることにして救護班のアクアの様子を少し見に行った。

 

「あ、アクアいた!」

「あら、ルミじゃない。どうしたの?怪我したの?」

「ううん、怪我とかはないよ。様子を見に来たんだ。」

「私は心配されるようなことはないわよ?あ、そういえばカズマさんは知らない?朝から見てないの。」

「カズマ?確か試合は見にくるって言ってたと思うけど、その時間まではバニルに会いに言ってるんじゃないかなぁ?」

「…あの悪魔のところ?」

「うん。なんか前に商談があるとかって言ってたでしょ?それ関係だと思う。」

「ふんっ!悪魔との取引なんてろくなもんじゃないわ!…カズマさんが悪魔臭かったら塩をまいとかないと…」

「バニルってそこまで悪い人じゃないと思うんだけどなぁ。」

「ウィズといい、あの悪魔といい…どうしてルミはそういうのに引っかかっちゃうのかしら…お祓いならいつでもするわよ。」

「でも人との出会いって大事にしないとダメだと思うしそれはいいよ。良い人が悪い人かは直接話さないとわからないと思うからね。」

「ならいいけど…何かされたら言うのよ?いいわね?」

「いや、それは大丈夫だと思うけど…っと、そろそろ時間だっけ?」

「あ、そういえばそのぐらいね。応援してるわルミ!優勝したら賞金でパーティよ!」

「うん!それはもちろん!じゃあアクア、行ってくるね!」

 

 

『これをこのまま読めばいいんですよね…?わかりました…ってもう放送してる⁉︎ちょ、ちょっと待ってください…え、えっと、皆さんこんにちは!今日進行役を務めさせていただきます、ウィズ魔道具店店主、ウィズです!こ、これからギルド主催、アクセルの街最強決定戦…?この名前で合ってるんですか?合ってるんですか…⁉︎…あ…か、開催します!』

 

そのまますぎる気もする名前に少し戸惑うウィズ。だが、そんなことは関係なく歓声が上がる。一部はウィズのファンだが。

 

「カズマ、なんでウィズがあれやってるの?」

 

待っている間に見つけた観客席にいるカズマにそんな疑問を投げかける。

 

「なんか知らないけど、さっきすれ違った時にウィズに聞いたらギルドの人に頼まれたらしいぞ。」

「そうなんだ?」

『総勢16名、トーナメントにちょうどいい人数ということなので、ギルドが公正にランダムで決定しました。トーナメント表は…え?そうですか…えー、事前にわかってしまってはつまらないという声があったそうのでありません。それでは、一回戦で…まずはルミさん!』

「お、さっそくか。頑張ってこ」

『それとサトウカズマさんです!』

「はぁっ⁉︎なんで俺が⁉︎」

 

カズマが戸惑いながら周りを見てみると、青い髪をした見覚えがありすぎる人物が顔をそらして口笛を吹いていた。

 

「あん…の、駄女神が…っ!」

「カズマ、前に行かないと…呼ばれちゃったし仕方ないよ。」

「俺がどうやってもルミに勝てないしなぁ…」

『それではお二人が広場に来るまでにルールの説明をします。えー、基本的になんでもありの一対一、気絶など、戦闘ができなくなれば負けとなります。ただし、意図的に相手を苦しめるような行為は失格、場合によっては事情聴取、逮捕となります。また、ギブアップは認めています。』

「それなら始まったらすぐにでも…」

『ただし、参加したのにすぐに辞めるのはどうか、ということなので、開始から3分間はギブアップできません。』

「うぐ…」

『また、手を抜く、事前に話し合いをして八百長をするなどは両者失格になります。』

「ぐぐぐ…」

「え、えっと…」

 

カズマの顔色はどんどん悪くなっていく。そして、顔色が悪くなっていっているのはカズマだけでなくアクアもだった。二人は後に知ることになるが、予想通りというか、賞金を少しでももらえる可能性が増えるようにとアクアはカズマを無断でエントリーさせていた。しかし、アクアの運の悪さゆえに同じパーティでの潰し合いのような組み合わせになってしまったという背景があった。

 

……………

 

『では、両者揃いましたので、そろそろ始めさせていただきますね。お二人は同じパーティ、カズマさんがリーダーです。司令塔としてはルミさんの得意なことや、逆に苦手なことも知っているでしょう。この勝負がどうなるか、私も気になってますっ!それでは、試合開始!」

 

少し慣れてきてある程度普段通りの口調になってきたウィズの宣言により、カズマとルミの試合が始まった。

 

「くっ、やるしかないか…!スティール!」

 

観客席の一部から非難の声が聞こえる。どうやらカズマの噂を知っている観客がいくらかいるようで、またパンツ泥棒をしたのかというものだ。しかし、カズマの手にはそんなものはなく、ルミが今まさに抜こうとしていた腰に下げていた二本の刀のうちの一つだった。

 

「あれ?」

「スティール!スティール!」

 

戸惑うルミにさらにスティールを重ねがけし、次々と武器を盗んでいく。

 

「あ、ちょ、」

「スティール!…これでもう武器は持ってないだろ!」

「あ、後で返してよ!」

「いや、奪いはしないぞ⁉︎ただ時間を稼ぐだけだ!クリエイトウォーター!」

「うわわっ!ちょ、ちょっと、待って!」

 

武器を取り上げてからカズマはひたすら水をルミに向かって撒き続ける。

 

「冷たい!」

「フリーズ!」

「うわっ、水が凍って⁉︎ひゃぁぁぁん⁉︎」

 

ルミは突然のことに足を滑らせ、尻餅をついた。そうなればズボンから出ている尻尾が氷に触れ、思わず声が出てしまう。季節は一応春とはいえまだ肌寒く、さらにこの仕打ちなので微妙にまた非難の声が聞こえてくる。

 

「うぅ、こうも氷が張ってたらちゃんと動けない…なら!」

 

ルミはおもむろに腕を振り上げ、そのまま凍りついた地面に振り下ろした。すると、少しの振動とともにルミの足元の池ぐらいの大きさの氷が砕けた。

 

「はっ⁉︎」

「これで滑らないね。よーし、じゃあカズマ、今度はこっちからいくよ!」

 

力技で地面の氷を全て砕いたルミに、観客席からはかなり驚愕したような声が聞こえる。そしてルミは言葉通りに真正面からカズマに飛びかかった。

 

「うおぉ⁉︎」

 

カズマがとっさに手を前に出すと、ルミの手を握るような形で押し合いになった。しかし当然のことだがステータスで劣るカズマがどんどん押し込まれていく。手を握られているだけでもかなり痛い。このままでは何もしなくても手の骨あたりが砕かれると思ったカズマは少し前にダクネスに仕掛けた戦法を思い出し、それを実行した。

 

「ドレインタッチ…!」

「あれ?うわ、わ、力が抜けてく!」

「このまま体力を抜いていけば俺が逃げ切るのもわけないぞ…!」

「うぐ、ぐ…」

 

しばらくこう着状態がつづく。

 

「負けるもんかぁ…!」

「…⁉︎あ、あぁぁぁ⁉︎」

 

と、ここでルミは気合いで握力を強め始めた。少し切羽詰まった状況になったことでカズマに怪我をできるだけさせないようにという考えは頭から抜け落ちていた。

 

「こ、のまま…!」

「ま、まってぁぁぁぁああ⁉︎」

 

言いたいことも言えないほどの痛さにまずカズマはどうすべきか考える。前の時はどうやってダクネスを無力化したか…

 

(ダクネスの時ほど釣れるものがない…!)

 

あの時のダクネスは単純だった。一言、二言カズマが言うだけで抵抗をわざと緩めていた。しかしルミも単純な方とは言え、ダクネスほど分かりやすく食いつくものはパッと思いつかない。ここで、カズマは最終手段に打って出る。大きく息を吸い込んで…

 

「ギブアーーーップ!」

『えっ、あ、はい、時間は3分過ぎてますのでギブアップ宣言は認められます。ルミさんの勝ちです。』

「あれ?」

「痛い痛い!離してくれルミ!」

「あ、あぁ!ごめんねカズマ!」

 

手を握ったままの体制で固まっていたルミは慌てて手を離した。なお、この間力は弱まっていなかったのでカズマの手は割と限界に近かった。

 

「あー…折れるかと思った…まあ、なんとかなったか。」

「えっと、大丈夫?」

「ああ、まあ心配するなよ。怪我もなかったんだし。…とりあえず観客席に戻るか。ドレインタッチで奪っちゃった分の体力も戻しとかないといけないしな。試合、一緒に見るか?」

「うん!」

 




あの二人は決して本人たちではありませんが関係は似ていると想定しています。ただし年齢はかなり離れています。

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