この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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まさかのうたわれるもの以外のクロス。一応伏線はありましたが。とはいえこの回しか出す予定はないのでタグには入れません。書いてる途中、なんで怪獣ものを書いてるんだとか思ったのは内緒。一応最後に解説はいれときます。
あと、仮面の方の解説はうたわれるもののストーリーの根幹までネタバレするのである程度までしか書きません。まあ、調べれば普通に出てきますが。


どこまでできるかなんて今は考えない…!やれるだけやるんだ!

デストロイヤー警報というものが流れ、冒険者としての準備するために屋敷に入ると、アクアがあっちに行ったりこっちに行ったりと荷物をまとめて避難しようとしていた。

 

「あ、あれ?アクア?」

「俺たちは冒険者だろ。冒険者ギルドへ行かなくていいのか?」

「何言ってるのよ!デストロイヤーよ⁉︎人間が勝てるわけないじゃない!」

「お前女神だろ…」

「降りてくるときに能力は制限されてるわよ!そもそもあれは規格外なの!いままでずーっと破壊されずに残っていたってのが証拠でしょ!!ほら、わかったらさっさと逃げる用意をするわよ!」

「めぐみん、荷物まとめてるとこ悪いけど爆裂魔法じゃなんとかできないのか?」

「できません…私の爆裂魔法の一発や二発程度軽く弾きますよ…強力な結界が張られているんです…」

「マジでなんなんだよデストロイヤーって……ん?ルミ、何か考えてるけどどうしたんだ?顔色も少し悪いが…」

「………カズマ、デストロイヤーがどの方角から来てるか、知ってる?」

「いや、俺は知らないけど…アクア、知ってるか?」

「え?えっと…めぐみんは知らないかしら?」

「避難指示が向こうの方角に行けということでしたから、偵察クエストの報告的に考えても恐らくはあっちの方角からですかね…」

「だそうだが、どうしたんだ?」

「………私、デストロイヤーを止めてくる!」

「あ、おいルミ⁉︎」

 

カズマがルミを止めようとする間も無く、ルミは部屋から出て行ってしまった。

 

「ルミ、どうしたのかしら…デストロイヤーが来る方向を聞いてああなったけど…」

「…なぁ、アクア。俺たちがこの世界に来た時、この街からどっちの方向に落ちた?」

「え?うーん…多分あっちの方だったと思うけど…」

「…やっぱりそういうことか…ギルドに行くぞ!他の冒険者に迎撃するならするで早く出発してもらわないと…」

「ちょ、ちょっとカズマさん!行くにしてもどうしてそんなに急いでるの?それにダクネスは?」

「このままじゃルミが一人で突っ込むんだよ!情報もなんもないのにそんなことさせられるか!」

「どういうこと?」

「デストロイヤーの進行方向にはアクセルの街だけじゃなくてルミがいた森もあるんだ!あそこにはルミの友達もいるんだぞ!」

 

カズマがそうして理由を説明していると、いつの間にかいなくなっていたダクネスがドタバタと居間に入ってきた。いつも以上の重装備をしている。

 

「カズマ!ギルドに行くのだろう⁉︎ルミも装備を持って出て行っていたぞ!」

「ダクネスか!ああ、このままじゃルミが無茶する!」

「ならば、なおのことだな!」

「うぅ…気は進みませんが行くしかないですね…ルミを一人でいかせるわけにはいきません…デストロイヤーが通った後はアクシズ教徒以外草も残らないとまでいわれてますけど…なんとかなるでしょうか…」

「ね、ねえ?私の信者達はなんでそんなふうに言われてるの?ウィズにも言われたんだけどどうしてそんなに怯えられてるの?」

「バカなこと言ってないで行くぞ!」

 

 

ルミは装備を用意してから屋敷を出ると、ギルドに行かずにそのまま街の外壁の外に出ていた。まだデストロイヤーの姿は見えていない。

 

「…ギルドに一度行くべき…だったのかなぁ…」

 

落ち着いて考えると、四人を置いて直接来るべきではないとは思ったが、これはデストロイヤーの進行方向を聞いていてもたってもいられなくなった結果だった。

 

「…でも、デストロイヤーを通すとアンナも…それに、みんながいる森も巻き込まれる…そんなの…!」

 

アクセルの街が壊滅した時点でアンナは消滅する可能性があり、さらに運が悪かったのはデストロイヤーがアクセルを通り抜けた後、ルミが前まで住んでいた森に突っ込むところだった。あそこにはギギリたちがいる。それだけの理由だが、ルミがデストロイヤーに立ち向かう理由としては十分だった。

 

 

カズマ達はルミと合流するためにギルドに向かったが、ルミの姿はなかった。

 

「ルミがいない⁉︎」

「は、はい、ギルドの中を見ましたけど見当たりませんでした!」

「…確かにいない…ってことはルミはもう外壁か!」

「カズマさんどうしました?…あれ?ルミちゃんは家でお留守番ですか?」

「ルナさん…ルミは多分もう外壁です。俺たちのパーティーは先に行ってます!」

 

カズマたち四人は早々にギルドを出て行った。

 

「い、行くって言ったってどうするのよ!私たちだけじゃデストロイヤーを倒すなんて無理よ!」

「カズマ、走りながらでもいいですから、また何か小狡いこと考えてくださいよ!」

「小狡いとか言うなよお前…とりあえず周りになんかいるって言ってもデストロイヤー本体をなんとかできないと話にならないよな…」

 

 

「見えた…」

 

ルミは見つめる先にデストロイヤーを見つけた。見えると言っても、街の到着までには十数分は猶予はある。

 

「…大きい…」

 

予想以上の大きさに、ルミはやはりみんなと一緒にくればよかったかと少し後悔した。だが、その時後ろから足音が聞こえてきた。

 

「ルミー!」

「あ、カズマ!」

「はぁ…はぁ…一人で勝手に行くなよな。」

「うん、それは本当にごめん…いてもたってもいられなくなって…」

「その気持ちはわかるけどな。…いや、今はそれどころじゃないな。俺としても、せっかく確保できた家が壊されるのはごめんだし、なんとかデストロイヤーを止めないとな。」

「う、うん!」

「それでなんだけどな…ルミ、デストロイヤーの足元にいるらしいやつ、足止めだけでもいいから、なんとか任せられないか?本体ならなんとか作戦を立てれたから他のみんなには配置についてもらったんだが、足元のやつまで手が回らないんだ。めぐみんとダクネスによるとかなりの距離の遠距離攻撃してくるらしいから、デストロイヤー本体への攻撃に支障が出るかもしれないんだ。」

「相手がどんなのなのかわからないとわからないけど…」

「それも気になったから俺はここにきたんだ。少し前に千里眼のスキルを教えてもらってたからな。」

 

そう言って、カズマはデストロイヤーの足元あたりを見た。すると、カズマは吹き出した。なぜなら、その歩いている二つの四足歩行の機械がどことなく見覚えがあったからだ。

 

「ガルセイドじゃねぇか⁉︎」

「な、何それ?カズマ知ってるの?」

「ああ、まあ…ルミは…っていうかこの世界の誰も知らなくても仕方ないかもしれんが、俺たちが死ぬ前にいた世界のとあるゲームに出て来た兵器なんだ。少しサイズダウンしてるが、確かあいつの武器はあの腕みたいなのがそれぞれキャノン砲にグレネードランチャー…それと近距離用のショットガンだったはず。この世界にそんな近代兵器があるかはわからないが、あんなデザインだってことはおそらくは過去に送られた工業チート持ちが作ったんだろうからそういう装備があってもおかしくない。…ていうか、まさかデストロイヤーもそうなのか?なんて傍迷惑な…あんなの生身じゃ戦えないぞ…」

「…どうしようもないと思った時…か…こんなに早く来るって思ってなかったな…」

「何か策があるのか?」

「できるかはわからないけど、なんとかしてみる。…ううん、なんとかするよ。デストロイヤーはお願いね。…行ってくる。」

「待て、ルミ。」

 

行くなら早いほうがいいと、今から行こうとしたルミにカズマは声をかけた。

 

「事情が事情なだけに無茶をするな、とか怪我するなとは言わない。だけど、生きて帰ってきてくれ。デストロイヤーは俺たちを信じろ!きっちり仕留めてやる!」

「…うん!」

 

カズマのサムズアップに、ルミもサムズアップを返して、デストロイヤーの足元にいる二機のガルセイドのもとに走って行った。

 

(この仮面、こんなに早くつけることになるなんて…これで解決するかはわからないけど、バニルが直接会いもしないで私に渡したものなんだから、きっと…!)

 

しばらく走ってから、少し不安に思いながらも、持って来ていた仮面を顔につける。すると、その仮面についての情報が頭に入って来た。

 

(…この力は…これなら、リスクはあるけど止められるかもしれない…!)

 

「どこまでできるかなんて今は考えない…!やれるだけやるんだ!アクルカ、私に力を貸して!」

 

その声に反応したのか、仮面から水色の霧が吹き出してルミの周りを覆った。ルミが走るスピードに合わせて霧もついていく。しばらくするとその霧は晴れ、ルミを確認できた。だが、大きさはひと回りもふた回りも大きくなり、体全体が硬そうなその姿は人のものではなく、何も知らない人が見れば怪物だと思うだろう。

 

【アイツラダハ、ワタシガタオスンダ!!】

 

その姿を捕捉したらしい二機のガルセイドがルミに向かってグレネードランチャーを放つが、ルミはジャンプしてかわしてさらに肉薄していく。後ろで爆発が起こる。弾速の遅いグレネードランチャーでは不利だと判断したのか、次はキャノン砲で狙い撃って来る。その弾はルミの変形した肩口あたりを抉った。それでもルミは止まらない。後数秒ほど走れば片方に届く所で、次はショットガンを放ってきた。

 

【ウグッ…!ソン、ナノッ、キカナイ!!】

 

それはほとんどが命中した。当然大きな痛みは走ったが、ルミはそれをなんとか堪えて少し先行していた片方が進もうとするのを

 

【ココハ、ゼッタイニトオサナイ!!】

 

大きく振りかぶってパンチを繰り出す。同時に水を打ち出したその一撃は、ガルセイドの上半身の真ん中に当たり、重厚なはずの装甲を撃ち抜いた。少しの間は動いてはいたが、すぐに停止したようで、それは穴が空いた動かない鉄屑になった。ちょうどその時、デストロイヤーが頭上を通って行った。

 

【ハァ……ハァ……】

 

(少し動いて技を一つ使っただけで…消耗が…こんなに激しいなんて……!デストロイヤーはカズマたちに任せられるけど、まだ一機残ってる……!ここでやめるわけには…っ⁉︎)

 

時間としては数秒もたっていないが、そのわずかな隙にもう片方がグレネードキャノンを放ち、ルミを炎に包んだ。なんとか左手で顔への直撃は回避していたが、凄まじい熱が体を焼いていく。

 

【グッ………ガァッ!!】

 

先ほどと同じように拳に水を纏わせて地面を叩きつけることで水しぶきをあげ、炎を鎮火する。ひらけた視界の先にはこちらをカメラで見つめるガルセイドがいた。どうやら目的をデストロイヤーへの追従から目の前の脅威の殲滅へと切り替えたようだ。両腕のグレネードキャノンとキャノン砲、さらには胴体部についているショットガンから無数の弾が飛来し、ルミの元へ着弾した。

 

【…!】

 

硬質な両腕でなんとかガードするが、完全に弾けるわけもなく腕に次々と傷が入っていく。

 

【マケ、ラレナイ…マケタク…ナイ…!】

 

強烈な痛みと熱が少しずつ意識を朦朧とさせていく中で、一歩、また一歩と歩を進めて近づいていく。

 

(カズマは、私が倒せるって信じてくれたからデストロイヤーは任せろって言ったんだ…!私だけ諦めるなんてできない…!)

 

何十発の銃弾が撃ち込まれたのかもわからない。しかし、ついに弾が尽きたのか、それともエネルギーが切れたのか、弾幕が薄くなっていく。すでにまっすぐ歩くこともままならないが、それでも耐えながら目の前までやってきた。

 

【…!……ッ!!】

 

そして、何度も持てる限りの力を込めて殴りつける。すでに水を纏うこともできないが、それでも装甲は削れ、不具合が起きたのかカメラは不規則に点滅し、かなりのダメージが入っていく。

 

【コレ、デ……サイゴダ……!】

 

絞り出すような声とともに、今できるだけの全力のパンチを放つと、バチバチという音と共にガルセイドは爆散した。ルミはその爆風でバランスを崩して仰向けに倒れた。少しするとその身体から青色の霧が出てきて再びルミを包み、元の姿に戻っていた。

 

「ゲホッ…ケホッ……うっ…く…」

 

立ち上がろうと試みるが、それすらできない。さらには左腕の感覚がなく、ほとんど声も出せそうにない。それでも、なんとかまだ動く右腕で少しずつ動いて体の向きを変え、アクセルの街の方を見た。

 

「…ぁ……よ、か……た………」

 

そこには、アクセルの街の外壁を破壊するより前に数本の足を破壊されて地に伏したデストロイヤーが見えた。止めるのに成功したようだ。さらに、こちらに近づいてくる人影も見える。

 

(誰だろ…?まあ、なんとか、なったみたいだし…いいや………)

 

確認する余裕もなく、ルミはそのまま意識を失った。




うたわれるもの用語
仮面(アクルカ)…偽りの仮面の物語の舞台となるヤマトの国で四つしか存在しないもの。これをつけると身体能力や自然治癒力が高まり、力を完全開放すると、怪獣形態になりさらに力が増大する。ただし、その代償は大きい。

解説番外編
ガルセイド…フロントミッション5というロボットゲームに出てくるボス。かなりの耐久力とグレネードの範囲攻撃、そこそこの威力のキャノン砲、行動するためのポイント消費の少ないショットガンと、バランスがいい武装をしている。サバイバルシミュレーターというやり込み要素にも出てくるが、こちらは慣れてきたプレイヤーに爆殺されるのがお約束。この小説の本編で出てきたガルセイドは本来のものより小型で無人で動いているが、武装などはほとんど変わっていない。

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