この人ならざる『ヒト』に祝福を!   作:ヴァニフィア

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せっかくアニメの方に題材があるので少し番外編を。一部変えてるところもありますが、まあアレンジと思っていただければ…


番外編 TOMORROW

ある日、ルミはギルドから走って帰って来て屋敷の居間にいるカズマに一枚の紙を見せた。

 

「カズマー、なんだか楽そうなクエスト見つけて来たよー!」

「ルミ?」

「ほら見て。金色の果実を取って来たらいいんだって!」

「へー…採取クエストか?……報酬100万…採取クエストがこの額って裏がありそうな報酬設定なんだが…」

 

少しカズマは眉をひそめながらその理由を確かめようとした。

 

「なんか、モンスターの背中に生えてる木になるんだって。」

「そのモンスターってのは強いのか?」

「そういうわけでもないと思うよ。一応この説明に書いてるのを見ると、一定のルートを歩いていくだけなんだって。かなり大きな亀みたいなんだけど、人に自分から危害を加えたりはしないみたい。多分たまにしか通らないから希少なんじゃないかな?」

「踏み潰されないようにだけすればいいってことか。場所はどのあたりだ?」

「そこそこ遠め…あぁ、確かデュラハンがいた城のもっと向こう側かな。その辺りを明日のお昼ぐらいに通るんだって。近くに今は使われてない採掘場とかあるらしいよ。」

「なるほど…採掘場があったってことは多少は道も整備されてるかもしれないか…確かにそこそこ楽そうなクエストだな。」

「うん。よっぽどな事故がなければ死んじゃったりはしないと思う。」

「まあ、そうなりそうで怖いわけなんだが…借金もまだまだ残ってるしな…冬の間全くクエストに行かないわけにもいかないし、受けるか。」

「じゃあみんなを集めて説明しないとね。どこいるかわかる?ダクネスはまた庭にいたけど。」

「めぐみんは知らないな。アクアは…ああ、確か朝から飲みに行くって言ってたな。」

「ああ、うん…じゃあアクアはギルドだね。めぐみんは…うーん、散歩かなぁ…あ、そういえばウィズのお店に興味がある感じだったし一回見て行こうかな。じゃあカズマはダクネスに伝えといてよ。」

「ん、了解だ。」

 

 

「こんにちはー!」

 

ルミはウィズの魔道具店の扉を開きつつ、大きな声で挨拶した。

 

「あ、ルミさんいらっしゃいませ。」

「あれ?ルミじゃないですか。どうしました?」

「あ、当たりだ。めぐみんを探してたんだよ。ウィズのお店に興味持ってたみたいだし、ここに来たら会えるかなって思って。なんでここに来てたの?」

「使えない魔道具というものに心当たりがありまして…」

「心当たりって?」

「その…この魔道具の製造元といいますか…私の父のものなんですよね…この利点はあるのに欠点で全てをダメにしてる感じがもう私の父の作った魔道具そのものです。」

「私は売れると思うんですけど…」

「魔力を高めるかわりに魔法を一切使えなくなるこれとかどうやって使うんですか。魔力を込めて切れ味をよくする剣なんてないんですから。ああ、この魔道具なんかは自信作だったんでしょうね。名前とか掘ってます。」

「…ひょいざぶろー…」

「…なんですか。父の名前に変なところがあるなら正直に話してもらおうじゃないか。」

「いや、なんでもないけど…と、とにかく、みんなに言うことがあるんだよ。明日クエストに行くことになったからさ。」

「クエストですか?私はいいですけど、よくカズマを説得しましたね?」

「採取クエストで、多分そこまで大変じゃないやつを見つけたんだ。」

「なるほど、そういうことですか。」

「そういうことで、今日のうちにみんなに話したいんだよ。後はアクアを探せばみんな集まるから、ついて来てくれる?」

「ええ、わかりました。」

「じゃあウィズ、またねー。」

「クエスト頑張ってくださいね〜。」

 

 

めぐみんと合流したルミはギルドにやって来た。普段通り騒がしいが、ある一角がいつにも増して騒がしい。

 

「ほらほら、私と勝負できる人はいないのかしら!こっちはまだまだいけるわよ!」

「…めぐみん、あれ…」

「………」

「あら、ルミとめぐみんじゃない!二人も飲みに来たの?」

「いや、その気は無いけど…明日クエストすることになったからその説め…」

「クエストするの?ならまた報酬が入るわね!今日は前夜祭よ!」

「…朝からお酒を飲んだり普段家でダラダラしてたり…実家の近所に住んでたぶっころりーみたいですね…」

「その人私と似てるの?なら、そのぶっころりーとかいう人もとても素晴らしい人なのね!」

「……………そ、そうですね…ルミ、行きましょう。多分もう動きませんよ、アクアは…」

「う、うん。わかった…」

 

 

結局、真夜中になってようやく帰って来ていたアクアは、玄関で爆睡していたところをカズマたちがギルドに向かおうとしたところで叩き起こされて連れて来られた。

 

「あー…少し二日酔いきついわねー…」

「お前な…いや、もう何も言わないけどな?自分の金で飲み食いしてんだし…」

「あ、ルナさん!昨日もらって行ったクエスト受けさせてもらっていいですか?」

「あ、ルミちゃん、にカズマさんたちですね。えっと、確かこれでしたよね。」

「んー、うん、これだな。うちのパーティーがこれを受けさせてもらいます、ルナさん。」

「わかりました、頑張ってくださいね!」

 

 

ギルドの職員たちにサムズアップで見送られ、五人は街の外に出た。

 

「よーし、行くぞお前らー!」

「「「「おーー!」」」」

 

カズマの号令で五人仲良く、平原を走る。…が、十数分ほどするとカズマ、めぐみん、アクアは倒れ込んでしまった。クルセイダーと野生児の体力にはついていけなかったようだ。

 

「ぜー…ぜー…」

「う…おええぇぇぇ………」

「アクア大丈夫か?」

「アクアは多分二日酔いだろ…」

「み、みんな大丈夫?」

「そ、そこの木陰で休憩しませんか?一応モンスターが通る時間まではまだあるらしいですし、少しゆっくりしましょう…」

 

……………

 

「やっぱり上級職前衛は体力とか多いですね。」

「私は職業ってよりは自然と身についた感じだけどね。」

「後衛職でもないくせにカズマさんはバテちゃったんですか!プークスクスー!」

「さっきまで二日酔いでフラッフラだったじゃねえか…」

「吐いたらスッキリしたわ!」

「…お前、女やめるのか…?」

「失礼ね!私女神よ⁉︎」

 

アクアの文句を適当に受け流しつつ、カズマも影に入ってのんびりしていた。

 

「カズマカズマ。」

「カズマです。」

「大分前だけど、カズマって片手剣スキル覚えてるでしょ?覚えてないダクネスと比べたらどんな感じで違うのかなって気になったんだけど。」

「剣の扱いが上手くなるんだ。ほら見てろよ?」

 

カズマは剣を抜き、曲芸のように剣を振るう。

 

「へぇ…結構器用に扱えるようになるのかな。」

「よっ、そんな感じかもな。…あれ?」

 

ルミに答えながら剣を振るっていたが、カズマの手から剣が消えた。…と思っていたら、すっぽ抜けて空を舞っていた剣が落ちて来て柄の部分がカズマの頭に直撃した。

 

「イッターイ!!」

「ブー!!!」

「カ、カズマ大丈夫⁉︎」

「これは…痛そうですね…ぷっ…」

「たんこぶができてるぞ…アクア、一応ヒールを使ってあげてくれないか。」

「プークスクス!ちょ、超ダサいんですけど!超ウケるんですけどー!!!」

 

アクアは大笑いしながらカズマにヒールをかけている。その後ろではめぐみんが笑いをこらえている。

 

「…だぁーー!!!休憩終わり!そろそろ出発するぞ!!」

 

それに耐えられなくなったのか、ヒールがかけ終わるとカズマは叫んだ。

 

 

ベルディアが居城としていた廃城を通り抜け、その先の平原をまた歩いていた。カズマはさっきのアクアに笑われたことをまだ怒っていた。

 

「だーから謝るわよ笑いすぎたのは。だから機嫌なおしてカズマさん。」

「そうですよ。そろそろ目的地なんですし、パーティー内でギスギスしてるのは良くないですよ。」

「ほら、行きましょ!」

「お前らな…はぁ、まあいいか。」

「ぎゃー⁉︎」

「アクア⁉︎カ、カズマ!アクアがピンク色のよくわからないやつに飲み込まれてる!」

「何ー⁉︎」

「「アクア!」」

「お、お前ら考えなしに突っ込むなよ!」

「ぷく…」

「ぎゃー。」

「ふ、二人ともー⁉︎」

「お前らー!!?う、うおー!こっち来たぞー⁉︎」

 

……………

 

結局、全員が一度飲み込まれてしまった。アクアが暴れたことで変なところを刺激したのか、ピンク色のモンスターは五人を吐き出して逃げていった。

 

「うぅ………生臭いよぉ…」

「くそー…ひどい目にあった…」

「…ふっ…なかなかやる…ちゅ、次こそは…リベンジを…」

「おい…お前また悦んでるだろ…」

「…カエルと同じく結構暖かかったですね…」

「うー…ベタベタだ…近くに川とかないかな…」

「…とりあえずさっさとクエスト終わらせて風呂入るぞ…採掘場の跡は高台にあったはずだからそこから目的のやつを探そう。木が動くのなら上から見ればすぐわかるだろ。」

 

……………

 

「「「「「…………………」」」」」

 

そうして高台に登ると、目的のモンスターは確かにすぐに見つかった。が、五人揃って開いた口が閉まらない。

 

「な、なんじゃこりゃーーー!!!?」

「あ、あんなに大きいとは思わなかったなぁ……」

「木の大きさもやばいぞあれ…目的の金色の果実がどこにあるのかもわかりゃしない…ってか、あそこまでどうやっていくんだよ!空を飛べとでも⁉︎」

「あんな大きな生き物いるんですね…」

 

五人が見つけたのは超巨大な亀、海に亀が入れば島が動いていると言えるような大きさだ。

 

「ど、どうするのカズマさん!諦めるのは嫌よ?」

「そう思うんなら案の一つでも出してくれ…」

「む?」

「どうしたのダクネス?」

 

ダクネスは自分たちのすぐ近くにあった建物に入っていった。

 

「カズマ!こっちに来てくれ!」

「ん?なんだ?ってこれ…!」

「これを見てくれ。こいつをどう思う?」

「すごく…危ないです…」

「な、何?この顔がついた岩みたいなのって…」

「ば、爆弾岩じゃないですか!」

「爆弾なの⁉︎」

「結構な量あるけどどうするつもり?ダクネス?」

「爆発に巻き込まれたいだの言うなよ?」

「そ、それは…まあないこともないのだが…しかし、ちゃんと目的あってのことだ。」

「…お前まさか…!」

「爆発の威力を使ってなんとか向こうまで行けないだろうか?」

「向こう行く前に爆発で死ぬわ!」

「…いえ、いけるかもしれません。ここはおそらく保管庫だったのでしょう。その証拠に扉が鋼鉄でできてます。この扉なら爆発に耐えられるのではないでしょうか?」

「ぐ…ホントこういう時は妙に頭が回るな…確かに行けなくはないが、着地とかどうするんだ。」

 

その時、急に突風が吹いた。

 

「きゃぁっ!」

 

アクアが纏っている羽衣が、異様に伸びた。

 

「…アクア、その神器は伸びるのか?」

「ふふん!当然よ!これは正真正銘の神器、伸びるどころか好きな形にできるわよ!」

「よし、お前パラシュート係な。」

「えっ?ちょ、ちょっと待ってカズマさん。私も乗るの?」

「たった今決まった。クエストをクリアしたくないんなら乗らなくてもいいが?」

「うっ…わかったわよ!やればいいんでしょ!」

「よし、作戦を説明するぞ。まず、俺とアクアにダクネスが爆弾岩を下に置いたこの鋼鉄の扉に乗る。そして、ダクネスが爆弾岩を刺激して飛び、アクアがある程度の高さでこの羽衣パラシュートを開き、飛ばされた俺とダクネスが乗る。最後に俺がスティールで金色の果実を回収、地上に降りる。これでどうだ?」

「…飛距離とか、果実の場所はどうします?」

「…正直運としか言えないな…」

「………」

「ルミ?どうしたのだ?さっきから木の方をずっと見ているが…」

「…さっき、果実が見えたんだ。かなり幹に近いところだから、葉っぱとかがスティールの邪魔になるかも…」

「マジか…どうにかして葉っぱもどかさないと…あ。」

「私にできることは何もないようですね。帰りま」

「おいめぐみん逃げるな。めぐみんも一緒に飛んで爆裂魔法で葉っぱを排除してもらい、ついでにアクアのパラシュート作戦がうまく行くように空気を熱して上昇気流を作ってもらおう。爆裂魔法を使えるんだ。文句はないだろ?」

「くっ…この男私の思考を…!爆裂魔法を引き合いに出されては断れません…わ、わかりました…」

「後は飛距離の問題だが…幹の近くまで飛ばないと行けないってことはもしかしたら少し距離が足りないかもしれないな…爆弾岩の数は限られてるし…」

「私がみんなを担いで扉からさらにジャンプするのは?こう見えてもみんなを持っても結構余裕あるよ?」

「…頼めるか?」

「うん!」

「よし、じゃあ全員で扉に乗る!いいか、それぞれの役割を果たせばいける!やるぞ!」

「「「「おー!!!」」」」

 

……………

 

爆弾岩を設置し、その上に扉を置いて五人は上に乗った。カズマ、アクア、めぐみんはそれぞれブツブツ言ったりしているが、これから爆弾で吹き飛ばされるからか、ルミが引っ張る用のロープを体に巻いているからか、ダクネスは活き活きしている。

 

「じゃ、じゃあやるぞ!準備はいいな?」

「…あぁ…いいぞ…」

「は、はやく終わらせましょ…そ、そうよ…怖いのは数分で終わるわよ…」

「だ、だいじょうび…」

「よし!じゃあ行くぞぉ!」

 

ダクネスは剣を振り下ろし、扉の下の爆弾岩を攻撃した。すると、少しして爆弾岩が光り、扉の下で連鎖して爆発した。五人はまだ扉に乗っている。

 

「うおぉぉぉぉ⁉︎ル、ルミ!果実見つけたか⁉︎」

「うん!み、見つけたよ!跳ぶね!」

 

ルミは扉を全力で右下方向に蹴り、左に方向を修正しつつジャンプし、アクアを少し早めに手を離しておく。

 

「めぐみん!爆裂魔法の詠唱は終わってるな⁉︎射程は届いたか⁉︎」

「はい!なんとかなります!響け!エクスプロォォージョン!!!」

 

亀の背の巨大な木の一部が爆裂魔法によって吹き飛ばされた。奥の方に、かすかに金色に光るものが見えた。

 

「あった!………くそっ、こう不安定じゃスティールを使えない…!アクア!聞こえてるか!パラシュートだ!」

「ど、どうなっても知らないからね!」

 

アクアは羽衣の端と端を持ち、頭の方に上げて風を受けるようにすると、羽衣は一瞬で広がり、パラシュートのような形になった。その上に、カズマ、めぐみん、ルミが落ちてきた。ダクネスはそのまま横を落ちそうになったが、ルミがなんとか引き上げた。

 

「「「「カズマ(さん)!!!」」」」

「ああ!スティール!!!」

 

渾身のスティールで金色の果実を狙う。開いた手に光が集まり、金色の果実がその手に握られた。

 

 

五人は無事に着地し、踏まれないようにしながら帰路についた。

 

「なんとかなりましたね。」

「とはいえ、正直もうあれは勘弁だけどな。」

「疲れたー。飲み込まれた時のベトベトとか関係なしにはやくお風呂入りたーい。」

「カズマ、すまないが女子から先に…」

「まあいいぞ。少し勿体無いが公衆浴場のほうの風呂に入るよ。」

「すまない、気を使わせてしまって…」

「クエストがうまくいった時ぐらい遠慮するなよ。…そうだな…せっかくだし、今日の夜はギルドで騒ぐか!」

「カズマさんそれホント⁉︎シュワシュワたくさん飲んでも怒らない⁉︎」

「しょうがねぇなぁ。今日だけだぞ!」

 

 

ギルドの扉を開くと、中にいた人々がこちらを向く。その中には常連客だけでなく、ウィズなどの姿もある。カズマは依頼の品の金色の果実を手に持ちつつ、五人はサムズアップした。その瞬間、ギルドの中はたくさんの声に包まれた。その夜、ギルドは祭りのような賑わいを見せた。




ということで二期オープニングシーンの話でした。時系列とかに矛盾があったりするかもしれませんが、二次作品ですし気にしたら負けです。はい。

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