『なんでそれだけしかもらえないのよぉ!!!私死にそうになったんですけど!壊したのは私じゃないんですけど!!!』
魔剣の人と遭遇した翌日、ギルドに来てアクアは湖の浄化のクエストの報酬を受け取りに、他の四人は朝食を食べていた。
「アクアの声が聞こえて来ましたね。」
「ああ。何か言っているな。」
「あいつまたなんかやらかしたのか?全く…なんかやらかさないと気が済まないのか…」
「えっと…あー、檻に人が壊したような跡が残ってたから弁償しないといけないって言ってるみたい。」
「この距離で聞こえるのだな。」
「まあ、森の中とかだと音って大事な情報だし良くないとやっていけないっていうか…」
「生まれつきなんでしょうかね。耳も動物っぽいですし。」
「かもしれないねー。…あ、帰って来た。」
「………ぐすっ………報酬が三十万…檻の修理費が二十万…合わせてたったの十万エリス………私が壊したんじゃないのにぃ…………こんどあいつが来たらゴッドブローを食らわせてやるわ…!」
「…アクアの気持ちも分からなくはないけど私は来て欲しくはないかな…」
「ルミ、フラグって知ってるか?」
「フラグ?」
その瞬間、突如ギルドの扉が乱暴に開かれ大きな足音を立てながら近づいてくる男が現れた。
「ここにいたのか!探したぞ佐藤和真!」
「ほらな…」
「……………」
「なんですかね。今のルミを見てると笑顔が元々威嚇行動だったっていう話にも納得できるような気がします。」
「むしろ獲物を見つけた獣のような気がしなくもないのだが…とりあえず捕まえておこう。っと、暴れるなルミ。」
「フーッ!」
「あの、なんか野生化してませんか?」
「…はぁ…何の用なんだ?うちの唯一まともなパーティーメンバーがお前がいることによってバグりつつあるんだが。」
「おい、私たちのどこがおかしいかそこのところちゃんと聞こうじゃないか。」
「君のことは街の人に聞いた。やれパンツ脱がせ魔だとか鬼畜だとかクズマだってね。」
「おい待て。誰がそれを広めてたか詳しく。」
「………」
その時、アクアがゆらりと立ち上がった。
「…アクア様…僕はこの男から魔剣を取り返し、必ず魔王を倒すと誓います。ですから、どうかこの僕と同じパーテ「ゴッドブロオオオオォォォォォォ!!!」はああぁぁぁぁん⁉︎」
「「キョウヤー!!?」」
「お金返しなさいよ!あんたが檻を壊したせいで損してるのよ⁉︎弁償して!三十万よ三十万!お金持ってんでしょ早く出しなさいよ!」
「え…、は、はい…………」
余分に十万エリス回収した、最近女神なのか疑わしくなって来たアクアは上機嫌になり、店員に料理を注文した。
「…自分から言い出しておいてこんなことを言うのは虫がいい話だと思う。…だが、頼む!魔剣を返してくれ!落ち着いて考えればアクア様を賭けの対象にするなんてことをしてしまったのは反省しているんだ!償いなら、自分にできることならなんでも」
「ん?今お前…なんでもって…言ったか?」
「え………?………いや、その前に気になったのだが一つ…その…確認をさせてくれ…………ある程度要求されるのは覚悟していた。…していたが…その、僕の剣が見えないんだが…その、泊まっている馬小屋においてあるという認識でいいのかな?」
そんな問いにカズマはうっすらと微笑みを浮かべ、慈愛に満ちた顔で………
「売った。」
「ちっくしょおおおおぉぉぉぉ!!!」
元魔剣の人は泣きながら走り去ってしまい、取り巻きの二人も出て行った。
「……ハッ…あ、あれ?私はいったい何をしてたの?」
「戻りましたね。」
「気にするなルミ。あの魔剣がどうの女神がどうのとおかしなことを言っていた男を見て少し野生に戻っていただけだ。」
「?」
「あの、女神なのはあってるんですけど…一応教徒だっている水を司る女神アクアなんですけど…」
「「っていう夢を見たのか。」」
「ちっがうわよ!!なんで二人揃ってハモるのよ!カズマは信じてくれるわよね⁉︎」
「……………………ぷっ。」
「笑わないでよぉぉぉぉ!!ルミ、みんながいじめるの!ねっ、ルミは信じてくれるわよね⁉︎」
「えっ?…………………………あ、うん。……信じてるよ。」
「なぁんなのよその間はぁぁぁぁぁ!!!!ルミだけは味方だと思ってたのにぃぃぃぃ!!!」
「ああっ!わ、私はアクアの味方だから!だから落ち込まないで!」
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』
「あれ?これって…」
「ああ、まただな。正直面倒くさ」
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!特に冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』
「えっ…なんで⁉︎」
○
「…なぜ城に来ないのだこの人でなしどもがああああぁぁぁぁ!!!」
門の前にいたのは前回と同じようにあのデュラハンがいた。ただし、前回と違い、大量のアンデッドの配下モンスターを連れている。そんな彼は、カズマとめぐみんを見てそんなことを叫んだ。
「カズマ、デュラハンの人またすごく怒ってるけど…爆裂魔法を撃つの続けてたりしてないよね?」
「え、いやちょっと待ってくれ!もう爆裂魔法を撃つめぐみんを城まで連れてったりしてないし、人でなしだなんて言われるようなことは…」
「もうそのめぐみんとかいう娘を連れてきてもいないだと?何を抜かすか白々しい!その頭のおかしい紅魔の娘は、あれからも毎日毎日、元気に欠かさず通っておるわ!」
「えっ」
「………」
「お前ぇぇぇぇぇ!!!行ってるのか⁉︎あれからもずっと行ってたのか⁉︎」
「い、いひゃいです!いひゃいです!違うのです!聞いてくださいカズマ!これには深い理由があるのです!」
「理由だぁ?」
「そのですね……今までは草原とかに撃つだけで満足できていたのですが、城に撃ってからはその魅力にとりつかれ、大きくて硬いものじゃないと我慢できない体に………」
「もじもじしながらいうな!だいたいお前、爆裂魔法撃ったら動けなくなるだろうが。ってことは共犯者が………」
「……フーフー。」
「アクア?どしたの?」
「お前かぁぁぁぁ!!!」
「いやぁぁぁぁ!やめてカズマさん!腹いせがしたかったのよ!あいつのせいでロクなクエストもなくて店長に怒られる羽目になったから!」
「いや、その理由じゃデュラハンの人が怒るのは無理もないと思うけど…」
「俺が頭にきているのはその件だけではないこの人でなしどもが!貴様らには仲間を助けようという気は無かったのか⁉︎俺とて謂れのない疑いで処刑される前までは真っ当な騎士のつもりだった…その俺から言わせれば仲間をかばって呪いを受けた騎士の鑑のようだったあのクルセイダーを見殺しに」
「………や、やぁ。」
「あ、ダクネス。」
デュラハンの言葉に照れながら、装備をつけるので遅れていたダクネスが出てきた。デュラハンはダクネスを見て、彼にとって超スピードとかそんなチャチなもんじゃないレベルよりもっと不可解な現象に………
「………………あ、あっるえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?」
ただ、素っ頓狂な声を上げることしかできなかった。
「ちょっと、あのデュラハンあの呪いが簡単に解かれたことも知らずに城でずっと待ってたの?帰った後すぐさま呪い解かれたって知らずに?プークスクス!ちょっと待って!受けるんですけど!ちょーー受けるんですけど!!」
「いや、ちょ、アクア!デュラハンの人怒ってるってば!」
「あんなの恐るるに足りないわ。私は女神なのよ?」
「お、俺がその気になればこの街の冒険者を一人残らず殺すこともできるのだぞ!こんな街にいる初心者ごとき、俺には傷一つつけられんわ!」
「なら試してあげようじゃない!こっちにあんたを見逃す理由なんて無いのよ!アンデッドのくせに生意気なのよ!ターンアンデッド!」
「ふっ、俺は魔王の幹部だぞ。弱点のプリースト対策もなしに戦場に立つとぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?あっ!あぁぁ!」
アクアの浄化魔法を受けたデュラハンはその場でゴロゴロと転げ回っている。乗っていた馬は完全に浄化されてしまい、消滅した。
「うぐっ……ぐぅ……」
「ねぇどうしようカズマ!効いてないわ!」
「いや、あの人の鎧から煙出てるよ?」
「結構効いてると思うぞ?ぎゃぁぁぁぁとか言ってたし。」
「は、話は最後まで、聞くことだ。俺は魔王軍幹部ベルディア…魔王様からの加護と俺自身の力が合わさり、そこらのプリーストのターンアンデッドなど効かんのだ。……そのはずなのだが貴様、本当は今何レベルだ?本当に駆け出しなのか?ん?この街は駆け出し冒険者の街なのだろう?」
「カズマ、アクアのレベルっていくつぐらい?」
「知らん。下手したら初期からほぼ上がってないんじゃないか?知力が上がったような感じしないし。」
「そうなんだ。……あ、私あっち行ってるね。」
「あれ?ルミ?どこ行くんだ?」
「ええい、何をごちゃごちゃやってるのだ!城の占い師がこの街周辺に強い光が落ちてきただのと騒いだから調査に来てみれば爆裂魔法をポンポン撃ち込まれるわ変態扱いされるわ………面倒だ。いっそこの街ごと滅ぼしてやろう……だがこの俺が直接相手にするまでもないな。行け、アンデッドナイト達よ!この俺をコケにした連中に地獄を見せてやるがいい!」
「おいアクア、多分あいつ、意外とお前の魔法が効いてビビったんじゃないか?」
「そ、そんな訳あるか!あの程度の浄化魔法などこの俺に効くはずが」
「セイクリッド・ターンアンデッド!!」
「へっ?ひいぃぃぃぃぃやああぁぁぁぁぁ!!?ああっ!目が!目がぁ!!」
「大変カズマさん!やっぱり効いてないわ!」
「ひいぃぃやあぁって言ってたし効いてると思うぞ?」
そんなコントのようなことをしている間に、ルミはめぐみんの近くに寄っていた。
「めぐみん、浄化魔法と一緒に爆裂魔法撃ったら倒せるんじゃない?」
「いえ、正直微妙だと思いますよ。私、レベル高くないですから幹部ともなると厳しいと思われ…ところでどうしたんです?カズマのところに行かなくていいんですか?」
「いや、やることないなって思って…ほら、なんかカズマとアクアで良さそうっていうか…」
「まあ……あのまま続けてれば浄化できそうではありますけど。」
「ええい、もういい!おいお前ら!街の連中を皆殺しにせよ!」
主にカズマとアクアによって堪忍袋の緒が切れたらしいベルディアは配下のアンデッドナイトたちに指示を出し、冒険者たちに突撃させた。
「わ、わあぁぁぁぁ⁉︎なんで私ばっかり狙われるのぉぉぉ⁉︎日頃の行いはいいはずなのにぃぃぃ!!」
「えっ⁉︎こっちに来た⁉︎うわ、わ、ちょっと、そんないっぱい来ないで!」
…が、8割はアクアに、残りの2割はルミに向かって突撃して行った。
「なっ、ちょ、お前たち!なぜ固まって追いかけている⁉︎他の連中にも行かんか!!」
後ろからベルディアのそんな声が聞こえて来たが、ルミにそんな余裕はなく、ひたすらに走って行った。
カズマとアクアの会話が多い回だったので次はほんの少しオリジナル要素を…今回の用語解説はおそらくないと思われ。
あと、うまく書けるかわかりませんがルミが一人になるので次回の半分ぐらいはかなり地の文多めでお送りする予定です。