MGSV:TPP 蠅の王国 創作小説   作:歩暗之一人

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注意
こちらは蠅の王国シリーズに連ねて投稿しますが創作作品ではなく、タイトル通りのあとがきと感想文です。
気分を害する可能性のある「作品外のTPP発売当時の話」や「個人的意見」を多分に含みます。


蠅の王国あとがきとDSクリアの感想

 

 

 

どーも。歩暗之一人です。

蠅の王国をお読みいただいた方もデススト感想を見るべく訪れていただいた方も、誠にありがとうございます。

あとがき→感想の順で書きますので感想だけ見たいよって方は**********が出るとこまでスクロール推奨です。

 

さて、蠅の王国を書くに至った理由についてはツイッターなどでも度々言及してきましたが、

あれだけ期待値の高かったTPPが未完に終わったことによる幻肢痛が絶えず響いたからです。

未完成という言い方についてはファンの間でも当時議論がありましたが、

蠅の王国が完成度を%で表示していたり、デスストでサムが「未完成?」というシーンがあったりと

もはや公式が認めている雰囲気が否めませんね。

実際、メタルギア最大の謎にも決着はつかず、空白を楽しめと言われても???といった感じでした。

はしごを外される、レールが途絶えているといった表現が適切かは分かりませんが

リバティではなくフリーダムを提示された私はまさにMGS2で言うところの管理される大衆状態。

急に自分で考えろって言われても困る。そんな感じでした。

そして作品のメッセージ性以前に「未完成品を販売ってどうなの?」とか「スネークの腕だと思って3万だしたら実際はそっくりさんの義手って詐欺では?」と、考えた時もありました。

メッセージをポジティブにとらえるばかりの所謂「小島信者」的な視点で擁護する意見や「メタルギアを小島監督に返せ」といった活動も散見される一方で、ゲームへのネガティブな評判も絶えない。当時はいろんな感情が整理できずにいました。

作品のメッセージで賛否両論あるのはとても素晴らしいことだと思うのですが、当時は一部ファンの間で神格化された監督と、審議の定かでない制作会社での噂話が炎上を加速させ、作品の外で誹謗中傷や憶測が飛び交っていました。

何がどこまで真実なのかは当事者にしかわかりませんが、ファンの空気は決して良いとは言えませんでした。

そのヘイト操作自体が、報復をテーマにしたTPPを世に売り出す小島監督の策であり、プレイヤーが混乱するのは監督の意図するところである、というのはあるかもしれません。TPPは巨大な社会実験を内包しているというのはFOBの核保有システムなどから言われていましたし、そういう意味であの騒動で感情を動かされた私は監督の掌の上だったのかもしれません。

似たようなことを、webNewtypeのインタビュー記事で矢野さんもおっしゃっています。

詳しくは  『MGSV』のストーリーをどう読み解くべきか識者に訊く Vol2 を検索してみてください。

ただ、この記事で矢野さんは「僕は”蠅の王国”なんてなくてもいいと思うんです」と述べられています。

 

ここが私にとっての原点でした。

監督の傍でノヴェライズを担当された方から、監督が作ろうとして作れなかった物語を「なんて」とか「なくてもいい」とか聞きたくなかった。

たとえいつかは終わりが来る物語でも、それでも私はその先が見たかった。イーライとの決着を、あったはずの興奮と感動を体験したかった。

それが私の幻肢痛を怒りに近い原動力に変えたような気がします。

そこから先は夢中でした。

二次創作どころかまともに小説なんて書いたこともない私が、それでも描きたいと思った。

推敲もろくにできない素人の文章で、読んでいただいた方には申し訳ない気持ちもありました。

でも頭の中にはいくつかのアイデアがありました。それを形にしたかった。

もうMGSは作られない。なら自分で作るしかないと。

やっと作品の内容に触れながらあとがきらしいことをかけるところまできました。

アイデアというのは「MGS2で雷電がスネークを追体験しスネークになったように、VはMGS3を追体験するがそれが逆にVがBIGBOSSではないことを浮き彫りにさせる」ことと、「他人の敵意に反応する第三の子供に対する切り札が、感情を持たないAIによって動くバトルギアであり、そこに自立志向するPWとは違うクワイエットを模倣するだけのAIを搭載する」ことでした。

そして書いていくうちにアートブックが公開され、チコの姿が公開されます。

書き始めた当初は知らなかったので急遽参戦させたチコですが、バトルギアや蠅の王国そのものと同様に「たしかにそこにあったはずの幻想てんこもり」が出発点のこの二次創作において外せないと思い蠅の王国に登場してもらいました。

何度も申し上げますが、この二次創作は「あれめっちゃ見たかったのに見れへんとかうせやろはぁー残念過ぎるよっしゃわいが勝手に書いて勝手に満足したろ」という気持ちが根底にあるのでチコを物語に絡められたのはとてもうれしかったです。展開としてはお粗末だったかもしれませんが、チコはそもそも深く考えたりするより少年相応の無邪気な素直さが魅力だと思っているので。

そして勝手に満足するためには自分なりに「メタルギアの謎」を考察する必要がありました。

それが以下の点です。

「Vはなぜ自分がBIGBOSSではないことに気づいたのか」(ゲーム本編では唐突にBIGBOSSからのテープを聞き始めるのに驚く様子はなく笑っている)

「サヘラントロプスはなぜばっちり修繕されていたのか」(子供たちは蹶起のための武器づくりで忙しく、そもそも高度な機械兵器をいじることはできない)

「第三の子がいる上に準備万端のサヘラントロプスをどう倒すのか」(普通に考えて無理ゲーでは?)

 

1番目と3番目については先ほど述べたアイデアがありましたが、2番目については良くわからなかった。

なのでオリジナルキャラのフレーデを出すことにしました。

他の少年兵とは違ったバックボーンを持つ、平和の名前をもって生まれた少女。

彼女がその謎の解決と、イーライ達少年側の視点を担ってくれました。

当初彼女には死んでもらう予定でした。

メタルギアで女性科学者は落命するのがお約束(エマ、ナオミ)なのでそこを踏襲しようと思ったからです。

そこが変更された理由は、チコが後付けで追加されたことによるシナリオの加筆修正です。

パスを助けられなかったチコに、今度こそ平和を守ってもらいたい。

そして地獄のような9年を生きたチコに最後の赦しを与えるのに、平和の名を持つ少女は最適でした。

チコは理性では平和の幻想を追い求めて殺戮と破壊を繰り返すという矛盾を抱え、本音のところでは死に場所を求めていました。ただ蠅の王国でスネークと再会することでもういちどオンブレヌエボとして生まれ変わり、未来への種子を見送って最期を迎えることになります。

 

サヘラントロプス戦に関しては公式の自爆設定を活かしたいと思いあのような結末になりました。

サヘラントロプスの自爆の設定と、スカルフェイスが扱っていた核兵器の公式設定を合わせて、「自爆シークエンスが始まるが自爆はしない」というオチ。あの辺りはゲーム内の公式設定が活かせて満足してます。

 

さて、このあたりで作品の場面やキャラではなく全体を通した話もしようと思います。

この作品のテーマは「自立」でした。読んでいただいた方の中でそれを感じ取ってくださった方がいれば幸いです。

各章冒頭の引用の中でも蒼穹のファフナーの同化現象、新世紀エヴァンゲリオンのATフィールド、鋼の錬金術師エドワードエルリックの「立って歩け~」などがまさしくそうですが、自分という個、相手という他、についてがテーマでした。

というのも、先ほど述べた通り私はTPPでまさしく突然自由を与えられ道標もなく自分が何者でどこに立っているのかわからなくなった、という経験をしたからです。

作品を書く前に私は、空白を楽しむ、円環を閉じるというのはまさしく何の指標もない暗闇を歩く事なのだということに築かされました。歩暗之一人というハンドルネームはこの感情とグレイフォックスの台詞を掛けたものです。

「小島監督にメタルギアを返せ」といった活動も、心無い誹謗中傷を投稿することも、「自立」が出来ていないからなのではないかと考えました。その気持ちはとてもよく分かる。でも監督がTPPに込めたメッセージを受け取ると、そのままではダメなんじゃないかと。

もちろん鵜呑みにするままでもいけませんし批判する気持ちはそれはそれでとても大事です。冒頭でも述べましたが私も未だに「スネークの腕だと思って3万出したのに」と思ってます。器小さくてすみません、でもあれのためにめっちゃバイトがんばった当時学生の私の気持ちも、ね。

ただ自分というものが定まっていないと、選択を間違えたり物事を捉え損ねて、ああいった発売当時の嫌な空気が出来上がってしまうんだなと。

未完成批判やコナミバッシングしていた人たちの中には、確かにメタルギアが大好きでそれ故にそういった行動をとった人もいたはずだから。同じメタルギアを愛したファンの一人なのに、諍いがあるのはとても悲しい、そんな思いもありました。

だからこの自立というテーマは、読み手であるメタルギアファンの方へ向けたものでもあるのです。

偉そうに言えた義理ではありませんが、同じく幻肢痛を抱えた私はこういった物語を紡いだよと、同じ痛みを抱えるメタルファンの方々に伝えたかった。それがネットで作品を公開した理由です。

もちろん自立は作品内テーマでもあります。

VがBIGBOSSではなくPhantomとして自立する物語であり、

紛争の絶えない代理戦争のただなかに生まれた少女が自立する物語であり、

世界に喧嘩を売って蠅の王国を築き上げ自立する少年の話であり、

幻想を追い求めてさまよった青年が最期の命の使い方を決断し自立する物語として筆を進めてきました。

AIに関しても、オセロットのモノローグという形で自己と他者の輪郭を判別するという話を添えました。

自分とは何かを考える時、他人は切り離せない要素になる。他人というものは自分と違うものでありながら、自分と共通するものを持っている。じゃあ自分とは何なのか?そんな問いを感じてくださったならうれしいです。

 

そしてこれは図らずも、デスストランディングにも関係のある話です。

他者とつながるためには、自分という自己が存在する必要がある。

線で結ばれるためには、自分という点がないといけない。

点、線、立体という一次元二次元三次元の成り立ちを考えれば自然ですよね。

ツイッターでつながるためにはアカウントを創らないといけない、くらい当たり前な話なんです。

そんな繋がる前の当たり前、について考えるきっかけになる作品にもなれたかなと思います。

まあこれは当然後付けなんですけどね。

 

何はともあれ自分のなかのもやもやを綺麗にできた、という点ではこの二次創作は成功でした。

願わくば同じような幻肢痛にさいなまれるファンの一人にもこの作品が届き、無くなることはないその痛みが少しでも和らぎますように。

 

 

**********

 

ではここからはデススト感想文です。

世界観やゲーム性は、まさしく新ジャンルを開拓した傑作と言って過言ではないでしょう。

多くの人に新しい感動と熱狂を与えたことは間違いないです。

シナリオ面はゲーム性に沿った素晴らしいものでしたが、正直MGSを超える感動はありませんでした。

いい意味でシンプル、しかしある種予想しやすいものだったように感じたからでしょうか。

クリフとサムの関係もエンディングもゲーム中盤で予想したとおりの展開でした。

ただ感動がなかったわけでは決してありません。背景のビジュアルや音楽の演出、なにより演者様方の表情や声色が胸を打つシーンはたくさんありました。

その中で印象的なのが、サムがアメリに対して選択を迫られるシーンです。

世界の終わりと愛する一人、どちらを選ぶか引き金を引くことをプレイヤーに委ねる。

MGSファンなら多くの人が3のザ・ボスの最期を思い浮かべるのではないでしょうか。

スネークは結局、世界大戦を避け、任務を全うし、ザ・ボスの遺志を尊重するようにパトリオットの引き金を引きます。

しかしMGS4のラストで、ソリッドとの会話の中でお前ならあの時違う選択をしたのではないか、というような言葉を述べています。大国間の核戦争という人類滅亡とデスストランディングという現象による人類絶滅。背景は違えど、同じ選択を迫られたサムはアメリとのつながりを選択します。

アメリは「私には時間の流れがない」というセリフが「流されて行け 私は留まるしかない」というザ・ボスのセリフを思い起こさせたり、声が井上喜久子さんで、大塚明夫さんの声がする部下に忠誠を誓われているあたりがとてもザ・ボスを連想させるんですよね。

そんな中、サムはアメリをつなぎとめることを選ぶ。

「あなたは銃ではなく、絆で世界を繋ぎ止めた」

この一言が、心にすっと落ちてきました。

もう一つセリフを上げるなら「銃はもういらない ほかの使い道がある」です。

この結論にここでたどり着くのもサムの選択の結果なんですよね。

銃で殺すことを選んだBIGBOSSが「銃=蛇はもういらない」の結論に至るのは4のエンディング、つまり死ぬ間際。

さらに言えば、銃を捨ててアメリを抱きしめるという選択は、パトリオットを手放してソリッドを抱きしめたBIGBOSSの行動とも一致します。

同じ背景と同じ結論に至る物語なのに、サムとアメリ、スネークとザ・ボスは異なる道を歩んだ。

 

世界とアメリを天秤にかけるのではなく、アメリとのつながり離さずに、絶滅の向こう側へも橋を架ける。

その選択が進化だとアメリは語りました。かかった橋を誰か一人でも渡れば、そこから種は広がる。

他人を排除するのではなく、手を繋ぎ、つながることで明日に手が届く。

メタルギアに触れた人だけが感じ取れるこの差が与える感動は特別なものです。

 

人生は失うばかりじゃない。でも、失う選択を迫られたときに、手を差し伸べる勇気があるのか。

その先にある希望という可能性の光を見せてくれる物語でした。

 


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