異界の召喚憑依術師~チート術師は異世界を観光するついでに無双する~ 作:秋空 シキ
もうどれくらい歩いただろうか。蝋燭の光を頼りに升目に沿って、周りを見渡しながら歩いて来たが、肝心の蝋燭がそろそろ半分になるところである。一応半分になったら次は右に回ろうと思うが、精神が蝋燭とともにすり減って来ているためできればそろそろ何かを見つけたい。
「ギュロロロ」
あと腹がうるさい。音は鳴る。空腹感もある。しかし肝心の食べたいという意欲がない。どうなってんだ俺の身体は。
◆◆◆◆◆◆
全包囲どこを見渡しても白に染まり、その神秘感は留まるところを知らない。その中で異彩を放つ一つの西洋風の城。
初めはとにかく感動したものだ。あれほど此処に異動して良かったと思えた日はないだろう。だが、今はどうだ。
あれほど神秘的な白の空間にも馴れ、どこか物足りなく感じるし、城に至っては今の仕事が止められるのなら賃貸アパートに住んだっていい、むしろ売ってすら良いと思っている。
今日も今日とて執務室で紙と睨めっこ。こんな広い部屋なのに窮屈で退屈だと感じる。
誰か私に刺激をくれないだろうか。
本音を言うと彼氏欲しい。頼む。こんな哀れな私に機会を恵んでくださらないだろうか!
……祈ったって無駄か。
「はいこいつ前科あり地獄ぅー、でーこいつはてんご……ん?ハーレム作ってんじゃねぇか!はい地獄ぅー」
全くなんで毎回毎回この私がこんなことをしなければならないのか、そんなことを死亡者録を見ながら思う。こんなの閻魔のじっちゃんがやればいいのに。
合コン誘われないのは何故だ!?一生独り身でいろってことか!?クソ!鬱憤を晴らしてやる。このハーレム野郎は全員地獄だ!次々次々女はべらせやがって!少しは自重しろっての!―――――――――――――
「女神様!!」
「んあどうしたよ、フルっち?」
いつもの書類を片付け終え、腕を伸ばしている私に天使であるフルエルが汗だくで部屋へ入ってきた。おおかた廊下を走ってきたんだろう。忙しい奴め。
「先程アースとラマキアの世界間に人影が観測されました!直に向かう準備をして下さい!!」
世界間に人影ねぇ全く死神は何をしてるんだか、死んで逝った魂をしっかり輪廻の輪に戻さなきゃいけないのに、こりゃ給料減給だね。ついでに良い男紹介させよ。
「アースぅ?」
しかしアースの者と言えばさっき死亡者録の中に居たなぁまさか私の管轄だとは思えないが、一応確認をしといた方がいいだろう。
「そうですアースとラマキアの世界間ですよ、ほら早く行きましょう!って何やってるんですか?」
「見りゃわかるだろうに」
机の上の既と書かれた箱を漁っていく、中には理不尽な理由で地獄と判子が押された紙が多々あったが、そしてそれを見て顔を蒼くするフルっちもいたが。気にしない、というか気にしたら私の負けだ……
――――っとこれか
「えーっと天城、優一14歳、女の子を庇い交通事故に遭うそして出血多量で死亡っと、ん?あれ?私が天国にしてる……だと……?」
顔の前に掲げた紙には大きく天という字の判子が押さされていた。普段、死亡者録を片付ける私はさらっと流し読みをしているため、内容をあまり覚えてない。少し気になるが、それは後にして今はこいつかどうかの確認である。
「なぁフルっちまさかコイツじゃあないよな」
数ある世界の中で我々、神は世界ごとに魂を管理しているのではなく魂の波動の間隔ごとに管理をしている。何故かは知らん。まあだから4秒に一人死ぬという地球で、たまたま世界間に入ってしまった人間が私の管轄になっている可能性は極めて小さい。さらに言えば私が管理している地球の魂の数は、他神に比べかなり少ないである。つまりそいつが私の管轄である確率は小さい。さぁ答えはどうだ!フルっちよ。
「ハハハ、なんか変なポーズとって確信めいたことを言ってますけどその方ですよ」
嘘……だろ。
「それから面倒ごとを回避したいのはわかりますけど、そんな顔をされては世界間に迷ってしまった優一様に失礼でごさいますよ。」
フッ、まぁいい、今回は面倒だが助けてやるとするか、さて準備しないとな。そう思い自分の部屋に戻るため私は腰をあげる。
「!!?」
っっ!!なに!いまのは!?まるで背筋が凍るような
「……あと、今後の執務についてこの件が終わり次第話があります。私の部屋に来て下さいヴァレン」
「ハイ」
久しぶりに名前を呼ばれたがこの呼ばれ方はなぁ、殺されるかと――――
「余計なこと考えてないで早くいきましょう女神様」
顔は笑ってるけど目が笑ってない天使につれられて私は世界間にいくのだった。因みに道中なにも考えてません。殺されるので。
◆◆◆◆◆◆
俺はスズッと紅茶をすする。そして優雅にコトっとテーブルにカップを置くと、目を横に走らせ元の1/5程の大きさになった蝋燭に向けた。
つい先程俺に救済の手が伸ばされ今もなおここにいる。それは救済になっていないじゃないかと思うかもしれないが……転生するまであと数分、ちょっと時間を遡らせよう。丁度蝋燭の蝋が1/2を切ったところまで――――
◆◆◆◆◆◆
結局の蝋燭が半分の大きさになるまでなにも見つけることができなかった俺は行き先を右へ変更し進んでいた。
そして暫くたちもうすでにへこたれて座り込もうとしていたところに突如目の前が輝いたのだ。
あまりの明るさに暗闇に合わせられていた俺の目は堪ったもんじゃなく手で押さえてうめく。
全く人になんの断りもなく人の目を焦がすなよと、呟き、目を擦りながらあけるとそこには一対の翼を生やした銀髪の美少女と活発そうな赤色の髪をしたこれまた美少女が少しうつむき加減で佇んでいるという意味不明な事態。
「え?、えっ?とどちら様ですか?」
ニュアンスが変とか言わないで貰いたい。いきなり美少女が目の前に二人立ってるんだぞ。赤髪の方は目が死んでるが、普通テンパるわ
「やっと見つけました。もうずっと移動してたものですから再度観測するのにどれだけ時間がかかったか。そう思いませんか?女神様」
銀髪の多分天使だと思われる人物が隣のえっ?女神様あれが?にため息を吐きながら皮肉を言った。というか俺の発言は無視ですかそーですか。
「ソウダネ」
今度は赤髪の美少女が抑揚のない声で答えた。何かあったんだろう。仮にも女神とと言われてる女性だ。意識をしっかり持て!と言いたい。が言わない、正直銀髪美少女が怖い。不思議である。
「全くいつになったら元に戻ってくれるんですかそろそろいい加減にしないとおこりますよ」
「ソウダネ」
どうやらさっきからこの調子らしい。銀髪美少女は、大きく息を吐くとどこからかスリッパを取り出して、――――
次の瞬間、乾いた音が響き渡った。
またしても何処かからソファーとソファーテーブルを取り出し、設置した赤髪の美少女は男勝りの口調で言ってきた。
「んじゃあとりあえず座れ」
とりあえずどっからそれ出した?というツッコミたい気持ちを押さえて俺は席に着く。正面には女神様が座っておりその背後には銀髪美少女天使が微笑んでいた。監視してる風に見えるのはきっと気のせいだろう。
「あーったくメンドくせーなぁー」
ドキドキと緊張している俺に赤髪美少女は頭をポリポリ掻きながら、人指し指を一本立てると
「いいか?よく聞いとけよまず、あんたは死んだ今はいわゆる幽霊ってやつだ。そして――――」
中指をたてる。
「もう地球にはもどれない魂となってしまった。」
次回、異世界ラマキアへ、そしてタイトルの召喚憑依術師となります