【とある魔術の禁書目録】Uncharted_Bible 作:白滝
嘘つきました、すいません、、、
この章で書いた内容をやりたいがためだけにこの作品を書き始めたので、ついついやる気を出してしまいました。
二〇メートル先にある航空機の残骸、その機体前部にて繰り広げられる交戦。
フレイスとラクーシャは視力が悪い訳ではないが、さすがにこの距離でヴィニーという襲撃者の細かい挙動まで拾う事はできない。
タロットカードの数字が分からなければ術式の効果も分からず、バックアップでの支援がどうしても一拍遅れてしまう。
しかも、ヴィニーという魔術師は小アルカナを利用した術式で聖人並みの運動性能を得ている。本来この『トリック』の中で近接戦闘を担当するのは、メンバーで唯一の防護結界の術式を習得しているラクーシャが担う場合が多い。
ラクーシャの防護結界とは、『仏教による現世の苦楽からの解放』をモチーフにしているため『無』の精神が必要である。だからこそその恩恵を受けるには術者たるラクーシャに触れて精神を一時的に同調させる必要があるのだ。
しかし、この距離ではテルノアに接近する事は不可能。後方支援に徹するより他がない。
「……定められし五色は五角の頂点を象徴するもの。故にその補色となる対の五色は、五角の頂点、その属性を増幅するものなり」
フレイスが詠唱しながら機体後部に積んでいたコンテナを開けた。ジーンズのベルトに挟んでいる拳銃を引き抜き、錠前ごと破壊する。
中身は野菜の苗木だった。出荷用に収穫された野菜だけではなく、こういった『自分で栽培するキット』もイタリアの富裕層には需要があるらしい。
そして、フレイスにとってもその方が好都合だった。
「黄の背後に紫を重ねて輪郭を縁取る。プルティヴィの四角形よ、その強調された象徴によって、自然の力を大きく現せ!!」
隣でフレイスの魔術詠唱が響く。
次の瞬間、苗木の土が空中を舞って、機体前部で床に仰け反っていたテルノアの周りを取り囲む。そのまま芋虫を囲う繭の如く土のドームが立ち上がった。
テルノアに飛びかかっていたヴィニーは土の
が、ゴキン!!と、金属の衝突音のような高音ともに体が弾かれた。
ヴィニーの拳にビリビリとした衝撃が跳ね返る。
思わずフレイスが安堵の息を漏らした。
土の
しかしヴィニーの対応は早い。
即座に新たなタロットカードを取り出す。
唸るような獣の咆哮とともに、三頭の太さ三〇センチメートル程の炎の蛇が出現した。
「……!!フレイス、急いで術式を解け!!」
ラクーシャの叫び声は間に合わなかった。
炎の蛇は機体前部の床に穴を空けて食い破り、下部を通過し、土の
当然、土の
ボゴッッ!!と爆発するように土の
ヴィニーはすかさず追い討ちをかける。
一跳びで機体の天井まで届く勢いで跳ね上がり、負傷したテルノアの頭を下から殴り上げる。
ドガッッ!!という更なる破砕音。
しかし、弾け散ったのは鳥の死骸だった。
ラクーシャの幻覚魔術である。
動物洗脳の術式を習得しているラクーシャは、普段から数匹の小動物を捕獲して飼育している。
先程からの交戦中にスーツケースから飼育籠を取出し、日本で捕まえた鳩の背中にサンスクリット文字で書かれた呪符を張り付けて機体前部の下方に待機させたいたのである。
あとは、炎の蛇が空けた穴を後追いで通過させて、テルノアの幻覚が見えるように術式を組んでおいた呪符を起動すればよい。要は変わり身の術のようなものである。
困惑するヴィニーの真下、土の残骸の中からテルノアが、ぶはっと息を吹き顔を覗かせる。
「かめはめ波ーーー!!」
ふざけた掛け声と共に、テルノアが両手の間に発生している黒い平面をヴィニーへと向けた。
次の瞬間、黒い平面からテルノアを襲ったはずの炎の蛇が飛び出してきた。
『炎の蛇の咆哮』を環境音楽として組み込んだ、敵の術式の支配権を強奪する魔術である。
そのまま空中で身動きの取れないヴィニーは、タロットカードを逆位置にする事で急場を凌ぐ。主を襲う迫り来る三頭の炎の蛇が突如として形を変え、ヴィニーの修道服を蠢く炎の鎧となった。
「……ねぇ、ラクーシャ。おかしいと思わないかしら?」
「分かっている。そして私達以上に、テルノアも感じているだろうな。術式の起動スピード、出力、タイミング。不自然過ぎる程にハイスペックだ。そもそも、こんな上空では地脈・龍脈の恩恵だって減少する。術式そのものの
「潜んでる仲間が何かしら小細工してるって事?でも、こんな上空で隠れられる場所なんて―――――」
そう言いかけて、ふと下を覗いたフレイスは顔をしかめた。
一二〇〇〇メートル以上も下の真っ白な海面にて。
一ミリの大きさもない小さな赤い点から、何かの衝撃波が撒き散らされたような気がしたのだ。
凍えるような海中を敬礼寺槙斗は沈んでいった。
光は海面の氷層で遮られるらしく、驚くほど暗い。
人はこれを深淵と呼ぶのかもしれない。
既に死んだ肉体に残留している敬礼寺槙斗の魂が、肉体から剥離していく。
(ああ、終わるのか……)
結論である。
これがこの一九年間、それなりに必死に生きてきた敬礼寺槙斗の迎える人生のエンディングであった。
(何だったんだろうなぁ、今まで……)
こんな結末を迎えるために生きてきたのか、俺は?
こんなバッドエンドが運命だったのか、俺は?
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない―――――)
と、
「(死ぬのは嫌かぁ?ハッ……お前なら「誰かの不幸な運命を自分が肩代わりした」とか何とか理由を見繕って、自己犠牲にでも心酔するかと思ったぜぇ……ククク)」
何者かの声が聞こえた。
音なき海中でも響く醜い快音であった。
以前にもどこかで聞いた事があるような気がする。
「(昨日も話してたじゃねえかよぉ、もう忘れちまったのかぁ?俺様だよ、
ああ、と納得がいった。
昨日両親が発動した『
しかし、昨日は何故か人間の言語ではない音を知覚していた気がする。それに比べて今回はやけに聞き取りやすい。
「(クククククッッ……運命ってのは非情だよなぁ?残酷だよなぁ?お前が悔しいっていうのは最もだと思うぜぇ。いつの世も世界は淡白で冷徹さぁ。俺様も納得がいかねぇしなぁ)」
確かに、悔しいよ。
腹が立つ。
こんな残酷な運命を用意した神様とやらが憎らしい。
「(そうだろう、そうだろう。だったら素直になれよぉ。お行儀良く理性的に正しく死んでんじゃねえ、ボケ。幸い、今は光も届かぬ海中の暗闇だぁ。こと『復活』って言葉に関しちゃ、この状況は俺様に都合がいい。何せ俺様が千年の封印から復活したのは、『底知れぬ深淵』だからなぁ。魔術記号は整っているし、お前が望めば俺様は力を貸してやってもいいんだぜぇ?)」
……どうすりゃいいんだよ?
「(言っただろぉ。素直になれよぉ。本心を曝け出してみろや。否定すべき負の感情は、そのまま俺様の力を助長する)」
本心って………
そりゃ、悔しいさ。
イラつくよ。
でも、こんな化け物が死ぬのは当然じゃないか。
それが人類のためだって―――――
「(それはお前の意見じゃねえだろぉ?あのミカエルまがいのガキがはしゃいでる戯言だぁ。お前はそんな正論に頷くほど素晴らしい人間じゃねえだろうが。お前は醜い凡人さぁ。俺様は負に反応する。寄生したお前の深層心理、根っこの部分は理解してんだぜぇ。周りなんてどうでもいい!
そう言われたって……
そう、言われてみると……
そう、言われなくたって……………
……………………………………………………………………………
そうだ。
そうだ。
そうだ。
そうだ。
俺は人類のために死ねる程、カッコいい人間じゃなかった。
俺はスーパーヒーローなんかじゃなかった。
昨日を境に数奇な運命に誘われたせいか、まるで自分が物語の主人公のように錯覚していた。
甘えていた。
被害者面を気取っていた。
俺は結局、周囲の期待に、運命に、その場の流れに、身を任せていただけだ。
大した決断なんてしていなかったじゃないか。
葛藤?
そんなものなんてなかっただろう。記憶を美化するなよ、俺。
父親が襲撃された時も、『
いや昨日今日だけではない。
今までの人生だって自らの進路の指針を周りの人間の判断に預けてきたじゃないか。
何かする時は必ず誰かの意見を聞いた。
何して遊ぶ?と聞いてきた友人に、何でもいいよ、と返答した。
何か役員を決める時、「お前はアレをやれよ」と誰かが言ってくれるまで動かなかった。
先輩に勧誘され、やりたくもない部活に入った。
友人達との会話の中で、自分からは決して話題を繰り出さなかった。
進学の際は、教師に勧められた学校を受験した。
勉強の仕方も皆がやっている方法にした。
皆が塾に通い始めたから、自分も行きたいと親に我儘言った時もあった。
どれもこれも些細な出来事でしかない。
でも、これが敬礼寺槙斗の人格の土台である。
そうだ、
今までは些細な事だから言及されなかっただけだ。
じゃあ、「世界のために死ねよ」と言われたら敬礼寺槙斗はどうするか?
分からない。
教えてよ。
俺はどうすればいいんだ。
俺の意見とか二の次でいいから、正解を教えてよ。
俺の主張とか自己中心的な発言は絶対しないから、みんなのためになるような選択をするよ。
自分に、全く意志がない。どこまでも、どこまでも他人に流される。
唯一
この心臓を押し付けて勝手に死んだ両親が憎くて「親の意志通り、ここで死ぬ訳にはいかない」なんて綺麗事を大義名分に
そうだった。
自覚してしまった。
それが自分の醜い本音だった。
今まで自分は周りに流されてきた。
感情を抑えて、周りの人間に気を使って、平和的な解決を何よりも優先した。
常識的に振る舞った結果であったし、それが没個性だと揶揄されようと後悔はなかった。
それは非日常に放り込まれても変わらない敬礼寺槙斗に染み着いた処世術であったし、責任を不特定多数の『周囲の意志』に転嫁する楽な生き方でもあった。
何だかパっとはしない自覚はあるが、それも自分らしいと割り切ってそんな人生を受け入れていた。
だが、それは一昨日までの話。
今自分が立っている場所は非日常だ。
今自分が抱いている感情は非常識だ。
今自分が手にしている力は非現実的だ。
そう。
正しい事に何の意味がある?
過ちを犯す事に何の意味がある?
善性と悪性は両立するのか?それとも排他的なのか?
誰も評価しない、誰もが狂っている、誰もが非常識なこの
(人類なんて関係ない。俺はまだ死にたくないんだ。邪魔する奴がいるなら殺してしまえばいい。人類が
非倫理的な感情を抱き、不道徳な行動を起こし、無情に人生を謳歌する。
それを咎める者が現れたとして、その基準を決めたのは一体何処の誰だ?
人の常識か?道徳か?倫理か?哲学か?法律か?それとも聖書や教典か?
悪魔はそれを否定する。
悪魔はそれを拒絶する。
悪魔はそれを絶望と為す。
醜き赤い竜の化身は善なき時代の原初の悪。
善の対極にして悪を司る偽の神。
今一度思い出せ。
テメェが人間である時間はとうの昔に過ぎ去った。
俺は、俺は――――――――
「く、くく、くかあははははははははははははははははははははは――――ッッ!!」
死んだはずの肉体が振動した。
腹の底から笑いが込み上げてくる。
海中に響く自分の声が、悪魔の声と同期していた。
自分に抑えこんでいた、妬み、憎しみ、殺意、苦しみ、痛み……そういった『
「俺は『負』の体現者―――
湧き上がる殺意が心地よかった。
体中を蝕む憎しみが自分に力を与えていく。
何だ、人生とはこんなにも清々しいものだったのか
「いくぜ……
こうして、敬礼寺槙斗は清々しくその人生を終えたのだった。
海面で『
フィアンマの術式『聖なる右』とは、右方の天使である『
どんな邪法だろうが悪法だろうが問答無用で叩き潰し、悪魔の王としてヨハネの黙示録に記載された『七つの頭と一〇本の角を持つ赤い竜』を地獄の底へ縛り付け、一〇〇〇年の安息を保障した右方の力。それら奇跡の象徴たるミカエルの『右手』を元にした命名である。
しかし、あくまで『人間』であるフィアンマには、大天使の奇跡の一端を完璧に引き出すことは出来なかった。
数回発動しただけで空中分解を始めてしまうし、時間制限も存在した。
人間を縛り付ける『原罪』を薄め、身体を天使に近づけた特殊な体質であろうと、それは難しいものだった。
けれどフィアンマにはどうしても『聖なる右』を完璧に再現する必要があった。彼の計画……歪んだ世界を元に戻す、その経緯の中でどうしても大天使の力を再現しなければならなかったのだ。
そのための『
ミカエルと共に神話に登場した
既に空中分解を固定化させる件については、イギリス清教の『
よってフィアンマは先程死んだ人間の事などあっさり忘れ、既に新たな駒を揃えるために次の計画を検討していた。
が、
「nstvsdjkoi負msbafqieprpppppppppppppp殺ddddddddddddddddddd」
『第三の腕』から耳をつん裂くノイズが響いた。
「なん――――」
次の瞬間、『第三の腕』からドパッッ!!と血飛沫が舞い散り、肉片が分離した。それは瞬く間に『
おかしい。
寄生する人間がいなければ『
慌てて『第三の腕』で心臓を再び握り潰すが、それを上回る再生速度でグチャグチャと肉片が膨れ上がっていく。
そして、
「ihb殺wq」
敬礼寺槙斗の身体がものの一秒で復元された。
消滅していた六頭の竜の頭や長い尾まで再生している。
それだけではない。
裸体となって露出された槙斗の肌が火のように赤く発光していた。
驚愕に目を見開くフィアンマとは対称的に、槙斗は空中で身を捻り、その長い尾を音速越えの速度でフィアンマに叩きつける。
一撃一撃が天災に匹敵する脅威。
しかし、その一瞬前にフィアンマの姿が虚空に溶け、空振りした尾が海面の氷層を抉り飛ばしていった。見れば、五〇メートル程前方にフィアンマが瞬間移動している。
「tttttt逃hwt」
槙斗は止まらない。
そのまま海面を踏みしめ、氷層を吹き飛ばしながらフィアンマに突撃した。
一方でフィアンマは驚愕していた。
「(俺様の『聖なる右』を拒絶した、だと!?てっきり俺様の力で霊装自体の悪性如き浄化し同化できると踏んでいたが……。どうやら質まで鑑みる必要があるみたいだな。ならば新たなに、俺様の『聖なる右』と同質の力の媒体を再び探す羽目になる訳か……)」
結果論としての推測になるが、おそらく天使としての共通性さえあればフィアンマの『第三の腕』は『
しかし、『ヨハネの黙示録』一二章及び一三章に記される『七つの頭と一〇本の角を持つ赤い竜』は、英名にある通りエデンの園の蛇の化身であるのと同時に、
それはすなわち、『元々が天使であった存在が堕ちた』のではなく『善悪の基準がないエデンの園があった時代から既に存在していた原初の悪』を意味する。
つまり、堕天使ですらない、存在の定義が『悪魔』のである。
これまでの経緯が完全に無駄骨になってしまった。ならば完全に敬礼寺槙斗には価値がない。
さっさと帰るか、と気だるげに方針を変更したフィアンマは、真正面から馬鹿正直に突進してきた槙斗に向けて『第三の腕』を構えた。
本来は空中分解を起こしてしまう『聖なる右』は、上空で邪魔な仲間を足止めしている部下のヴィニー・エドワード・ウェイトに、
ヴィニーは『火の
以上の理由から、フィアンマは自ら制限をかける事で術式の安定化を図っている。
が、先程の瞬間移動も本来ならば数キロ単位でやってのける術式だったのだ。現在の中途半端な移動速度では、音速以上で駆ける『
対策が完全に裏目に出てしまった。
「面倒だ、これで大人しく倒れておけ」
つまらなそうに振るった右手から光の衝撃波が槙斗を迎撃する。
ドガッ!と、駆け抜ける閃光が槙斗を巻き込んだ。
途端、数百メートル近く槙斗の身体が薙ぎ払われた。
そのまま竜の頭の一つが千切れ飛ぶ。
所詮、この程度である。
いくら
……はずだった。
「qomafsrkkkkkkkkkkk憎ggggggggggggggggggggggggggg」
絶叫ともに槙斗が跳ね起きた。
一瞬で千切れた竜の頭を再生させる。
「こいつ……俺様への怒りを『負』に対応させているのか!?」
「いや、こいつの身体は既に……」
そうだ。
敬礼寺槙斗という人間は既に死んでいる。
フィアンマ自身が先程『
実際に、先程の現象は『寄生先の肉体を失った「
つまり、今の敬礼寺槙斗はATPのリン酸化・脱リン酸化でエネルギーを得る動物ではなく、偶像理論で異世界から吸い出した
敬礼寺槙斗の肉体を復元し、
敬礼寺槙斗の記憶を復元し、
敬礼寺槙斗の悪意を復元し、
敬礼寺槙斗の魂を偽造させた。
目の前の生物は、敬礼寺槙斗の記憶を持った
自らを
つまり、偶像理論を知識レベルでなく、あたかも呼吸するような経験レベルで行使する事ができる。
「ふっ……面白い。まさかこの俺様に真正面からやり合う奴がいるとはな」
しかし、不敵に笑うフィアンマは余裕を崩さない。
『聖なる右』はデフォルトで敵を倒すのに必要な出力を放つ。決定的な弱点を突けるこちらが有利なのは変わりなく、まともな衝突で摩耗するのは槙斗の方だ。
しかし、敬礼寺槙斗の次なる一手は、そんなフィアンマの予想を遥かに超えて踏破していく。
槙斗の手に
まるで始めからそこにあったかのように。
虚空より現れた長さ三メートル程の鉄の杖を握り、槙斗は海面の氷を叩き割った。
「
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!と、
突如、海より出でる巨大な獣が唸り声を上げた。
海面の氷に亀裂が走り、突風が吹き荒ぶ。
全長一五メートル。
『一〇本の角と七つの頭がありその角に一〇個の王冠を被った獣ーーThe_Beastーー』。
その体躯は豹に似ており熊の足と獅子の口を持つ、海より出づる赤竜の半身と謳われる怪物である。
「なん…だと……」
今度こそ本当にフィアンマは驚愕した。
神話上の生物を完全に召喚したのだ。
赤竜と同レベルの能力を備える黙示録に記載された伝説の怪物である。これはいつぞやの『
「ちっ……ヴィニー、聞こえるか!?
通信術式を掴む暇さえ惜しかった。
槙斗の尾が大きく振るわれる。
直後、宇宙より飛来する数十個もの隕石がミサイルの如くフィアンマを襲う。
次章が最終章です。
次章も読んで頂ければすごく嬉しいです。