とある勘違いの次元移動   作:優柔不断

15 / 24
十五話

「………ウゥン」

 

窓辺から差し込む朝日に照らされて、目が覚める。

このマンションに引っ越して来てたからというもの、こうして気持ちよく朝を迎えたのって初めだよな。

体に掛かったタオルケットを退けて立ち上がり、寝室に常設されていた姿見に映る自分を見れば、そこには何時も通りの忌々しいイケメンフェイスが輝いている。

 

にしてもホント欠点っていう欠点が無いよなこの体。顔は勿論の事、頭も良くて身長も高い。筋トレなんか一度もしたことが無いというのに見事な迄に割れている腹筋と男の魅力に溢れている。

鏡に映る自分を見ながら改めてそう思う、パンツしか履いてないから少しカッコ悪いが。

俺は基本的に寝る時はパンツ一丁だけど、施設にいた時は、起こしに来てくれた女性のスタッフの人が気絶した事もあって服を着て寝るようになった。

でも今はあの頃と違い、このデカいマンションで一人暮らしだ。そんな事に配慮する必要は一切無い。

取り敢えず腹減ったし、朝飯にしよう。この前、買い出しに行ったからまだ食材も残ってるだろうし、何を作ろうかな?

 

朝の献立を考えながら、パンツ一丁で寝室を出る。そのまま廊下を歩いてキッチンのあるリビングに向かう。

しかしその途中、誰もいない筈のリビングから物音が聞こえてきた。

 

トントントントントン

 

なんだろう、とてつもなく嫌な予感がする……………いや、こんなとこで考えてても始まらん!普通の泥棒程度なら取り押さえられるだろうし、ここは一気に方をつけよう。

不法侵入者が居るであろうリビングの扉に近づいて、何時でも突入できるように準備する。

なんで寝起きにこんな事してんだろ、と思いながらもドアを開いて突貫した。

 

「あら、上乃君お邪魔しtキャア!?」

 

オラァ!人様家で何やっとんじゃコラァ!

目にも止まらぬ早さで接近した俺は速攻で犯人を床に押し倒したのだが、その人物を見た瞬間、氷水を浴びせかけられたように体が縮み上がった。

 

「か、上乃君?あ、朝から激しいのね……」

 

ぬ、ぬ、ぬ、布束さん!!!なぜ貴方がここに!?

 

俺は慌てて、押し倒してしまった布束さんの上から起き上がる。

大丈夫ですか!?何か顔凄い赤いですよ?

 

「……上乃君……その格好……!」

 

え?格好?

 

「パ、パ、パンッブハァァ!」

 

布束さんが鼻血を噴いてぶっ倒れたぁ!?

えぇ嘘でしょう、そんな強く体ぶつけたんですか!

ちょっとしっかりしてください、布束さん!

 

「あぁ…上乃君……Thank you(ありがとう)

 

布束さぁぁぁぁぁん!!??

 

 

 

 

 

 

 

朝っぱらからリビングにギャグマンガとしか思えない量の鼻血を噴いた布束さんは、何とか一命をとりとめた。

 

………ふ、服を…、何て言われた時は何言ってるんだと思ったが自分の今の格好を思い出し、急いで服を取りに行った。あぁそりゃ気まずいわな、と特別親しくも無い異性の半裸を見たらそうなると思った………いや無いな。きっと何かの持病だろう、うん、そうに違いない。

 

今はパンツ一丁の格好から、黒のチノパンに白のTシャツとシンプルな服を着ている。

手早く身支度を整えて急いで戻ると、倒れていた布束さんが覚束ない足取りでテーブルの上に食器を並べていた。

 

「やっと戻ったわね。まったく朝一番からしげk、見苦しい物を見せないでくれるかしら」

 

はい、すんませんした。でもよかった、何時もの仏頂面に戻ってる……………いや待て!そうじゃなくて、何で家に居るんですか!?

 

「ほら、そんな所で突っ立てないで、簡単な物だけど朝御飯を作ったから食べましょう」

 

え、朝御飯?そう聞いて、布束さんの後ろを見ると確かに朝食が出来上がっていた。マジで何しに来たんすか?

俺の疑問に答えること無く、席に座って俺を待つ布束さん。理由はどうあれ、折角作ってくれたのだし食べないと勿体ないな、食べなかったら後が怖いし。

 

テーブルに並べらている料理は、ツナサラダにコーンスープ、サンドイッチと洋食風の物だった。

 

「どうかしら上乃君、口に合うといいのだけれど」

 

あっハイ、普通に美味しいです。

 

「………まぁまぁ」

「そう、Was good(良かったわ)。料理なんてしたの久々だったから少し不安だったの」

 

微妙に失礼な回答をしてしまったが、普段の無表情を少し緩めて笑う姿に安堵する。少し、血色は悪そうだが。

本当どうしたんだろうか今日の布束さん。何時もの不気味な程の無表情を今日はやけに崩す事が多い。家に勝手に上がり込んでいる事もそうだけど、疑問が尽きん。

何か良い事でも有ったのかな?

 

「………どうやって入った」

 

お?ナイス俺の体。

 

「前に来た時に作った合鍵を使ってよ」

 

ちょっと待て……………合鍵ィ!?

何勝手に人ん家の合鍵なんて作ってんのアンタ!それ犯罪だよ!

 

「これからお邪魔することも多くなるだろうし、不便だから作らせてもらったわ。一応言っておくけど、拒否権は無いわよ」

 

なんて理不尽。俺にプライバシーは存在しないのか……!折角の一人暮らしなのに何でこんな事に何だよ。どうせ布束さん、家に用事って言ったって丁度良いセーフハウス位にしか使わないんでしょう?このマンション無駄に広くて設備も充実してるから。

はぁ~、平和な朝を迎えたと思ったのに、俺の平穏は何時やって来るんだよ。

ちくしょう、あんま考えんのやめよ、鬱になりそうだ。気分転換にニュースでも見るか。

 

「上乃君、食事中にテレビを見るのはマナーが悪いわよ」

「………」

 

これぐらいほっといて下さいよ!布束さん貴方は俺のオカンじゃないんだから。

 

Absolutely(まったく)、仕方ないわね」

 

[今日のニュースをお送りします]

 

適当なチャンネルをつける。学園都市で見るニュースは外で見てきた今までの物とは一味も二味も違い、新鮮で面白いから研究所でもよく見ていた。

 

[先日、人気アイドルの一一一(ひとついはじめ)氏が第十六学区の商店街で路上コンサートを行いました]

 

あっこの人、この前の音楽プレーヤーをあげた人だ。

 

[一一一氏が行うというだけ有り、大変な賑わいを見せたコンサートは、沢山のファンが集まり、ファン同士がいざこざを起こす事件が発生しました。

あまりの騒ぎに警備員と風紀委員が駆り出される程で、これもまた人気すぎるアイドル故に起こった事件でしょう。

映像は残念ながら入手出来ませんでしたが、此方がその時のコンサート会場の画像です]

 

へー大変だったんだなぁ。風紀委員がって今白井ちゃんが写ったぞ。あ!俺を姑息な手段で嵌めようとしてきた女の子もいた!やっぱ風紀委員だったんだな、危うく騙されるとこだったぜ。

 

[残念な事に、コンサートは途中で中止という結果になってしまいました。

今回のコンサートをプロデュースした一一一氏の事務所の方は、今後はより万全の体制で望みたいと発表しており、これからのアイドル活動にも意欲的な姿勢を見せています]

 

所で布束さんは、こういうの興味あるのかな?

俺がニュースを見ている間に完食した朝食の食器を流し台に持っていく布束さんを見てふとそう思ったが、無いなと否定した。

自惚れでも何でもなく、俺にここまで素っ気ない人が恋愛に興味があるとは思えない。そもそも最初ッから男に興味が無いのかも。下手したら女の子の方がなんて………チラ

 

「何かしら?残念だけどおかわりは無いわよ」

 

ありえなくも無い、か。

 

「そう言えば、上乃君。さっき貴方の携帯を見たら留守電が入ってたわよ」

 

……………………もう、深くはツッコムまい。

 

テレビの前のソファに起きっぱなしの携帯を手に取り留守電を確認する。

見てみると三件の留守電があった。結構あるな、と思ったがそういや昨日は一切携帯に触れてなかったなと思い出す。でも、全部知らない番号からだな、とは言っても登録してあるのが二つだけなんだけどね。

 

〈突然のお電話失礼します。風紀委員の白井黒子ですの、先日は助けて頂き有難うございます〉

 

その留守電は、何故か携帯がスピーカーモードになっていた為に耳元に当てていた俺は急いで離した。

ビックリしたなぁ、という言うか何で白井ちゃん?

まぁ、百歩譲って先日のお礼の電話なら良いんだけど、何で俺の携帯番号知ってるんだ?

 

「それ、この前のファミレスにいた常盤台中学の子ね」

 

スピーカーモードにしていた事で、聞こえてきた留守電を聞いた布束さんが俺の側まで近寄ってくる。

そうですけど、それがどうかしたんですか布束さん?てか、近い。

 

「何であの子が貴方の番号を知ってるの?」

「………」

 

いや知らないですよ、俺が聞きたいくらいです。だから布束さん、だんだんと恐ろしい顔つきなってるんでそれ止めてもらって良いですか、怖いんで。

そんなに白井ちゃんのこと嫌いなのかな?確かにあの日めっちゃ喧嘩してたけどさ。

 

〈知らない番号からの電話で驚いたと思いますが、申し訳ございません。急を要する為に初春に番号を調べてもらったんですの〉

 

だ、そうですよ布束さん。だから離れてください、これ以上は後ろに下がれないですから。

続いて流れてきた留守電の内容で、何で知っているか分かった布束さんは苦々しい表情で俺から離れた。

にしても白井ちゃん、急用か何か知らないけど人の携帯番号調べるなんて、いくら風紀委員でも越権行為じゃない?

 

〈コレを聞いたら、至急折り返しの電話をお願いしますの。幻想御手について、お話したいことがあります〉

 

幻想御手ってこの前の不良が使ってたりとかで、今学園都市を騒がせてるアレの事だよな?

話したい事って何だろ?

続きが気になり、次の留守電を再生する。

 

〈夜分遅くにすみません。どうやらお忙しいようなので、メッセージを残しておきます。

調査の結果、わたくし達は幻想御手の正体を突き止めました。幻想御手は曲であり、共感覚性を利用して使用者の脳波に干渉、levelを上げるという仕組みであることは、おそらく間違いありませんわ。これ等の憶測を解明するに辺り、木山さんが樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)の使用許可を申請しています、じきに結果が分かると思いますの〉

 

ふーん、共感覚性ね。俺はさっぱり分からんが、隣でナチュラルに人の留守電を聞いていた布束さんは、顎に手を当てて、なるほど、と呟いている。どうやら彼女には、その仕組みが理解できたようである。

 

〈そして、ここからが本題です。実は上乃さんがわたくし達を助けてくれた後に、幻想御手を使った大規模な事件が発生しましたの。

それは、あるアイドルのコンサート(・・・・・・・・・・)で幻想御手が流れるという最悪の事態でした〉

 

マジで、そりゃ大変だな。

……………………………アイドル?

 

〈最初、誰も幻想御手を聞いた事が無かったために気づく事が出来ませんでしたが、此方の者で唯一幻想御手を知っていた佐天さんの協力で気づく事が出来ました。

風紀委員と警備員が協力して速やかにコンサートを止めたのですが、やはり手遅れだったらしくその場にいた人達や風紀委員が次々と意識を失っています、佐天さんも倒れてしまいました。恐らくわたくしも時間の問題ですの………。

コンサートを行った者に何故あのような事をしたのかと取り調べしてみたところ、どうやらその者はただ利用されていただけだったようで、フードを被った見知らぬ男(・・・・・・・・・・・・)から受け取ったと証言していますわ。

上乃さん、どうかお願いします。お力をお貸しして貰えないでしょうか?〉

 

……………………………………。

 

「どうしたの上乃君。次で最後でしょ?」

 

……………………………………。

 

〈…………上乃さん…先程、初春が倒れましたわ。

ですが、初春が倒れる寸前に幻想御手を流した犯人を特定したんですの。

犯人は木山春生…まさか、こんな身近にいたとは思いもしませんでしたわ。

ですが、警備員が逮捕に向かった頃には、彼女の研究室はもぬけの殻で、逃げられてしまいました。

そして、これが最後のお願いですの……どうか、お姉さまを助けてください。

お優しいお姉さまは、佐天さんと初春が倒れた事に大変お怒りになられて、木山春生を捕まえに飛び出してしまいましたわ。

お姉さまが負けるなんて事は思っていませんが、今のお姉さまは危うい………何かあってからでは遅いんですの。

誠に不甲斐ないことに、今のわたくしにはお姉さまを止める事も助けることも出来そうにありません。……実は、こうして話をしている間も意識が飛びそうでして、結構限界なんです………。

どうか……どうか、お願いします。不甲斐ない黒子に代わって……お姉さまを助けてあげてください〉

 

……………………………。

 

 

………………………………………………。

 

 

……………………………………………………………た、すけて?

 

 

助けて欲しいのは、俺の方だよぉぉぉ!

えぇ、嘘……えぇ!?

黙って聞いてたらスッゲー身に覚えあるんですけど!白井ちゃんが言ってたのって、さっきニュースでやってた奴だよね?

だとしたら、犯人俺じゃん!

知らなかったけど、知らなかったではすみそうにねぇーぞコレ!?

どうするよ、今は俺だってバレて無いみたいだけど何時警備員が乗り込んで来るかわかったもんじゃない。

 

「…………クソ」

 

俺がとんでもない事件に巻き込まれた事に、悪態をついていると、つけっぱなしだったテレビから流れるニュースがイヤに耳についた。

 

〈ニュースの途中ですが、緊急の速報が只今入ってきました。

現場と中継を繋ぎます〉

〈此方、第十一学区からヘリに乗ってお伝えします!

今現在、突如として現れた謎の巨大生物が原子力研究所に向かって進行しています。そのあまりの巨体に警備員も手が出せない状況です!

え?何、子供?な、何と巨大生物の前n━━━━━〉

〈どうしたました?大丈夫ですか!?………ええ、中継が途中で途切れてしまいましたが、引き続き新たな情報が入り次第、お伝えしたいと思います〉

 

嘘だろ………。

先程ニュースでチラッと写った映像。遠くからでしかも映像が粗かった為に何が写っていたのか常人には分からなかっただろうが、俺の目には確りと見えたぞ。

謎のクリーチャーと短髪ちゃんが戦ってたぞ。そして近くの高速道路の上には白衣を着た人物もいた。

ま、間違いねぇ木山さんだ!

だとしたら、あの化物って木山さんが短髪ちゃんに追い詰められたから出したのか!?

どんどん事態が大きくなってんぞ、ふざけんな!

不味いぞ、これ以上被害が出る前に何とかしないと………でも、あんな気色悪い化物と戦うなんて嫌だー!でも捕まんのはもっと嫌だ。

 

……………駄目だ、こんな事言っててもしょうがない、俺に非は一切無いが、この事件を早く何とかしないと俺の今後の生活に支障がでる。

なに大丈夫だ、今回はlevel5の第三位である短髪ちゃんが味方なんだ、俺は遠くから見てるだけで充分だろ。

そして木山さんを捕まえて、あの件をうやむやに出来れば………。よし、行けるぞ。

 

後は━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうしたものかしら?」

 

布束は一人、上乃の家でそう呟く。

家主である上乃は、自分にある頼み事をした後に急いで出ていってしまった。

 

その理由は勿論、先程の留守電だろう。

先日会った、オリジナルをお姉さまと慕っていた生意気な中学生。彼女の最後の力を振り絞った助けを求める声に彼は動かされたのだろう。

 

「あの子、何だかんだ言ってお人好しなのね。意外だわ」

 

彼の事を知っているつもりでいたが、意外な一面を見れた事に気を良くする。そう言えば、彼との付き合いは存外短い物だったなと思い、感慨深い気持ちに布束はなった。

 

物思いに耽ること数分、再起動した布束は、今度は上乃からの頼みごとに対して考えた。

その内容は、幻想御手のワクチンプログラムを作って欲しいという物だった。

風紀委員の子から上乃の携帯に送られていた、幻想御手の情報と原曲のデータを自分の携帯に送ってもらったが、正直見てみない事には分からない。

あの時は、上乃のあまりに真剣な顔付きに、つい頷いてしまっただけなのである。

 

取り敢えず確認してみようと、布束はこの家のパソコンが置いてある部屋に移動する。

その部屋の扉を開けると、布束は置いてあった機材に度肝を抜かれた。

 

「何…コレ…。そこらの研究所よりもずっと充実してる」

 

部屋の中央に置かれたテーブルの上には最新型の高性能PCが三台。その回りには軍隊でも使用されるスパコンにギガどころかテラの回線モジュールと何億もするような品々が所狭しと置いてある。

 

研究者として知らぬうちに生唾を飲み込む布束は、中央のイスに座りにパソコンのスイッチを入れた。

その時、大丈夫許可は貰ってるし、と興奮に震える指先を落ち着ける。

 

携帯とパソコンを繋ぎ、幻想御手のデータを確認すると、布束は感嘆の息を吐いた。

 

「あの女、ただ者ではなかったみたいね」

 

幻想御手、それは共感覚性によって脳に干渉する曲のこと。

これは、学習装置(テスタメント)の技術を応用した物だ。

学習装置はその名の通り、人の脳に情報や知識をインストールする物で方法は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感全てに対して電気的に情報を入力するといもの。

だが幻想御手は、学習装置のような五感全てではなく、聴覚だけで様々な作用を引き出す代物である。

 

しかし、聴覚だけでは限界があり学習装置のような多様な使い方は出来ずに、ただ一つの事しか出来無い。それこそが幻想御手を学園都市に流した、木山春生の狙いなのだろう。

 

それは、人それぞれ異なる脳波を一つに同調させ、並列に繋いだネットワークを構築するという物。コレによって幻想御手使用者は脳の演算能力が向上しlevelが上がったのだろう。

だが、無理矢理に変えられた脳波の影響で意識を失うという事態になっている。その脳波の基準である木山を除いて。

 

コレを一人で考え付いて、実行に移した木山の手腕には舌を巻く思いだが、布束にはコレと似たシステムに見覚えがあった。

 

「ミサカネットワーク、これを利用したのね」

 

幻想御手に類似したシステムを知っていた布束は、木山の発想の元手を直ぐに特定する。木山がコレを知っているということは、あの女も相当に学園都市の闇について知っているのだと布束は思い至った。

そして、フッ、とほくそ笑む。

 

「いいわ、任せなさい上乃君」

 

ミサカネットワーク、学習装置。そのどちらも布束とは因縁浅からぬ物だ。いま語るべき物ではないが、布束はその扱いを充分に心得ている。

そして脳に干渉するのに使った共感覚性。一つの感覚で違う感覚に作用するこの現象は、生物学的精神医学を専攻する彼女もまた使用する分野だからである。

故に笑う。これなら何の問題もなく上乃の頼みごとを成し遂げられると。

そして、自分の後輩にちょっかいを掛けてきた年増に一泡吹かせてやろうという、嫉妬と共に。

 

「さぁ、始めましょうか」

 

 

 

 

 




今回のはずっと書きたかった話の一つでした。
布束さんが本当にワクチンを作れるかとか、いろいろと書きましたが所詮は素人が想像を膨らませて書いてるものなので、あまり真に受けないでね。

それと上乃のマンションとか今回でたパソコンは、全部木ィ原クゥンからの贈り物です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。