とある勘違いの次元移動   作:優柔不断

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非常に今さらですが、とある系統の時系列って難しいですよね。
ですので、今回の話はそこら辺が少し狂っているのでご了承下さい。




十二話

昨夜は酷い目に遭った。

 

まさか布束さんが、あんな状態になって家に入り込んでいたとは………。

目がいつかの怪物のようになってるし、終始言葉攻めで弁明の隙を与えられず、物凄い力で腕を握り潰さんとするかのように掴んできた。

 

そんなに後輩である俺が、言うこと聞かなかったのが気にくわないのかな?どっちにしろ、布束さんの納得する理由を言わなきゃ終わりそうに見えなかったし身ぶり手振りで何とか説明しなきゃいけなかった。

 

インデックスちゃんの話をするのは何か不味いと思い話せなかったので、スケープゴートとして短髪ちゃんの話をした。これに関しちゃ嘘なんか言ってないし、俺実際に被害者だから問題無いっちゃ無いんだが………それを聞いた布束さんがブツブツと「やってくれたわね」とか「オリジナル」とか訳わからんこと言ってたけど、相当怒ってたからもし短髪ちゃんに出合うような事があれば揉めそうだなーと思ったね。

 

………何でか、短髪ちゃんにローリングソバットする布束さんを想像してしまった。

 

兎に角、何とか怒りを鎮めたお蔭で解放された訳だが、その代わりに明日、と言うか今日布束さんと買い物に行くことになった。

 

え?学校は?とも思ったけど、どうやら俺が気を失っている間に夏休みに入ったらしく休みなんだとか。俺、まだ一回しか登校してないんですけど………。

 

まぁ、そんな訳で今絶賛買い物中の俺と布束さん。とは言っても殆どウィンドウショッピングで、買ったものは焼き焦げたフードの代わりの服ぐらいだ。これでまた顔を隠せる。

 

今は俺も布束さんも学校の制服を着て買い物中なんだけど、服の無い俺は兎も角、なんで布束さん夏休み中なのに制服着てるの?

 

what()?どうかしたかしら?」

「………見てただけだ」

「………そう」

 

あー、何か気持ち悪がられたかな?布束さんそっぽ向いちゃったよ、肩も何か震えてるし。………その割に足取りは随分と軽やかだな、むしろスキップしてるような………。

 

「少し疲れたわね、あそこのお店で休憩でもしましょうか?」

 

そうだな、確かにそれなりの時間歩いたからちょっと疲れたしね。

 

布束さんに連れられて、お店の中に入る。その時、案内してくれようと駆け寄ってきたウェイトレスさんに布束さんが何か話し掛けてたけど、どうしたんだろ?さっきまで頬を染めて笑顔で接客してたのに急に青ざめたんだけど、布束さん何したの?

 

布束さんに恐怖してるウェイトレスさんに窓側の席に案内される。しかしその時、布束さんが隣の席に座っていた人物に歩み寄った。

 

「あれは………」

 

その人物は先程話題に上げた人物、短髪ちゃんだった。

 

「ここなら涼しいですし、落ち着いて話s、グェ!」

「お、お姉さまー!!」

 

あっ、短髪ちゃんが布束さんに蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

暫く脇腹を抑えて蹲っていた美琴は、黒子に介抱されて復活した。

布束の案の定というか、なんというか、突然の強攻に内心で驚いた上乃だったが折角買ってあげたパーカーを台無しにされたらそりゃ怒るよな、と心のなかで納得した。

 

そして彼らが騒いでいると、知り合いだと勘違いしたウェイトレスが変な気を使って、相席することになってしまった。上乃と布束が並んで座り、向かいに美琴、修羅のような形相の黒子、そしてさっきから瞬きすらせずに上乃を見つめる白衣を着た女性。

 

「コホン!それでは、まず自己紹介しましょうか。既にご存知とは思いますが、わたくしは風紀委員の白井黒子と申します」

「………御坂美琴よ」

「大脳生理学、主にAIM拡散力場を研究している木山という者だ。よろしく」

 

黒子は険のある言い方で布束を睨みながら、美琴は蹴られた理由が分かっているのか少し不貞腐れながら言った。

木山という学者の人は、いたって普通に自己紹介したのだが………なんだろ、整った顔立ちをしてるけど目の下にある深い隈のせいで不気味な雰囲気を醸し出している。

 

「私は布束砥信、生物学的精神医学を専攻しているわ。そして彼は、私の!後輩である上乃君よ」

「これはご丁寧にどうも。わたくしの!お姉さまにいきなり蹴りをかましてくれた貴方は、あの時の銀行強盗の時の人ですわよね」

 

お互いがお互いの大事な人を傷つけられたために随分と険悪な二人。そして自分の物発言に頭を悩ませる美琴と困惑する上乃。

無言で睨み会う黒子と布束だが、それは黒子が上乃に話しかけたことで終わった。

 

「そして、そちらの殿方が『次元移動』の上乃さんで………いいんですのよね?」

「………」コク

 

フードを着けていない上乃の姿に戸惑いを感じる黒子だが、それも無理はない。フードで顔を隠していた上乃は、デカくて無口な雰囲気だけイケメンな男にしか見えなかったのだから。

だが、彼の二枚目っぷりを見て、同僚である初春がどうしてあんな状態になったのか把握した。

 

(確かに、大変整った目鼻立ちをしていますがそんなミーハーな手に引っ掛かるほどこの黒子!初春のように安くはありませんわ!ね、お姉さま?)

 

自分の揺るぎ無い歪んだ愛情を再確認した黒子は、情欲の対象である美琴に流し目を送る。

だが、当の美琴は初めて見た上乃の素顔に赤面し、チラチラと目線を向けていた。

 

(お、お、お姉さまー!な、何でそんな恋する乙女のような仕草を!?大変可愛らしい!……じゃなくて!まさか、あの時の黒子の考えは間違いではなかったというのですか!?)

 

まるでムンクの叫びのような絶望顔になった黒子を置いて、木山が話を進めた。

 

「それじゃあ、先程の話の続きといこうか」

「それなら私達は関係ないですね。別の席に移動しますから、どうぞごゆっくり」

「まぁ、待ちたまえ。これは学園都市の学生である君たちにも無関係と言うわけでない。一緒に話を「NO(結構)」」

 

足早に去ろうとする布束を引き留める木山だが、それを布束は速攻で切り捨てる。そしてジトりとした目で木山を見据え、瞬時に悟った。

 

(この女、狙ってるわね)

 

何が?とは言わない。この場で狙われる可能性があるのは、同姓に狙われている美琴か異性に狙われる上乃しかいない。そして木山は後者であると布束は、上乃に関しては無駄に鋭くなる勘で感じとった。

 

「今は彼と買い物の途中なの。邪魔しないでもらえるかしら」

「だからこそだよ。君たちのように平穏に暮らしている学生が危ない目に会わないように、聞いていった方が言いと思うがね」

「関係ないわ。特に上乃君にとってはね。さ、行くわよ………上乃君?」

「………」

「ふっ、どうやら彼は話を聞いてくれるようだね」

 

布束が促しても動きそうに無い上乃を見てほくそ笑む木山と盛大に舌打ちをしそうになる布束。

だが上乃本人は別に布束と木山、どちらを取ったとかそんなつもりは無く。

 

(学者の先生が危ないって言ってるんだから聞いた方がいいよな)

 

そんな感じである。

 

「ッ、そう……上乃君が聞くというなら私も残るわ」

「別に無理をしなくてもいい、話は彼から後に聞けばいいだろう。君はお望みのショッピングの続きに行ってきたらどうだ?」

 

(この女……!)

 

「………いえ、大丈夫よ」

「そうか、なら始めよう」

 

話を始めるに当たり木山は、そもそも自分に話を持ってきた美琴と黒子を正気に戻した。

最初、正常に戻った黒子は、部外者である上乃達に話を聞かせるのは反対したのだが、そこは木山の話術によって言いくるめられた。

そしてまず最初に、上乃達にも分かるように話の議題である問題を説明する。

 

それは、最近噂になっている能力者のlevelを上げることができる『幻想御手(レベルアッパー)』と呼ばれる代物についてだった。

 

これが一体どういう物なのかは、一切把握できてはいない。薬なのか道具なのか、はたまた物質ですらないのかもしれない。だが、これによってlevelを上げた学生が凶暴になり犯罪に手を染める事件が最近相次いで起こっているのだ。しかしこれだけなら大した問題ではない、捕まえればいいだけの話だからである。

問題なのは、幻想御手を使用した者達が次々と原因のわからない意識不明に陥っていることだ。

もし、低能力者達が皆、幻想御手を使うようなことになれば大惨事になってしまう。学園都市における低能力者は230万人の実に六割、中には高位能力者でさえ手を出してしまう事例もある。

そんな事になってしまえば保護者からのクレームなどで外部から介入され、最悪学園都市の運営そのものに支障がでてきてしまうかもしれない。

 

それが現在、学生達を脅かしている脅威である。

 

そこで風紀委員である黒子は幻想御手事件解決の為に木山に協力を仰ごうと思ったのだ。

level、延いては能力を使うと言うことは脳に関係することは明らか。大脳生理学の博士である木山の協力で事件を少しでも早期解決しようと思い、今回の話の場を設けたのである。

 

木山も幻想御手について興味があるらしく是非とも協力させて欲しいと色好い返事をもらうことが出来た。

 

「で、何か分かっていることはあるのかな?」

「いえ、現時点では何も分かってはいませんの」

「そうか」

 

芳しくない捜査状況に声音が少し暗くなる黒子と木山。

そんな二人を他所に美琴は、退屈そうに話を聞いていた上乃と布束に話を聞いた。

 

「アンタ達は何か知らない?」

「敬語」

「へ?」

「私達は年上。敬語で喋れないなら話すことは無いわ」

「う。………何か知りませんでしょうか………?」

 

布束の正論に言葉に詰まる美琴は、苦々しい表情を浮かべながらも敬語でお願いした。

 

Well(そうね)、確かに最近素行の悪い連中に絡まれることは多くなったわね。でも、彼らがその幻想御手を使っているかどうかはわからないわ」

「そ、そうですか」

 

敬語使わせといて何も知らないのかよ、と顔にありありと出ているが流石に口にはしない美琴。じゃあお前は?と引き攣った笑みを向ける美琴に内心ビビる上乃は、首を横に振った。

 

「彼はこの街に来たばかりだから何も知らなくても無理は無いわ。Rather(むしろ)彼はその幻想御手なる物を使った不良に絡まれる事はあっても、使うことはない。彼はlevel5だもの」

「まぁ、そうよね」

 

それは自分にも言えることだと思い納得する美琴。

 

話すことは話した。木山達の話を聞いた布束は、もう用事はないと上乃を連れて帰ろう席を立つ。

 

「何だ、もう帰るのかね。もう少しゆっくりしていけばいいではないか」

「いいえ、もう充分よ。行くわよ上乃くn「あーーー!!??」………はぁ、今度は何なの?」

 

木山の引き留める声を断り今度こそ帰ろうとした矢先、店内に少女特有の甲高い叫び声が響いた。

その声の主であろう少女は、凄い勢いで布束━━の後ろにいた上乃に指を指した。

 

「あの時のイケメン、漸く見つけたって訳よ!」

 

上乃を指差す少女、金髪碧眼の美少女は興奮したように詰め寄ろうとしたがその間に布束が立ちはだかった。

 

「ちょっと邪魔なんだけど」

「それは此方の台詞、私の許可無く彼に近づこうとしないで」

「はぁ?アンタあのイケメンの何?もしかして彼女?ププッそれはちょっと冗談キツすぎ」

「ッ!……あら、少なくとも貴方みたいな真っ平らよりはマシだと思うのだけど?」

「ッ!……私の魅力は胸じゃなくて、この美しい脚線美だから問題無いわよ」

「あら?私は別に胸の事なんて言ってないわよ。(オツム)が足りなさそうな割に、自覚はしていたようね」

「何ですってこの陰険女~!?」

「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて。他のお客さんにご迷惑ですわよ」

「「黙ってて(ろ)小娘」」

「あ"ぁ"」

 

一触即発な布束と金髪の少女の間に入った黒子だったが、二人の発言で額に青筋を浮かべて口喧嘩に参戦してしまった。

 

「わたくしは、見ての通り立派な中学生ですのよ。小娘ではなくて」

「どっからどう見たって小学生じゃない。というか、私が用があるのはそっちのイケメンなの、関係ない奴は引っ込んでて」

「関係大有りよ、彼は私の後輩で友人なんだから」

「何それ薄っす!?そんなんで大切にされてるとか思ってんだったら、アンタ妄想癖でもあるんじゃないの?」

「…………どうやら、いろいろと教えて上げないといけないようね」

「へ~、一体何を教えてくれるのかしら、楽しみ~」

「ちょっとフレンダ、何先に行ってんのよ」

「あ、麦野!丁度いいところに」

 

金髪の少女、フレンダは彼女の後ろからやって来た見事なプロポーションの麦野と呼ばれる女性を見て、これで勝ったと言わんばかりに胸を張った。

 

「麦野、コイツよコイツ。このイケメン見てから絹旗が変になっちゃったの。結局、コイツが原因て訳よ!」

「アンタねぇ、たかが少し面がいいだけの男のせいで絹旗が変になるわけ無いでしょ。あれはまた違う、げ……ん…いん」

「どう?いった通りスッゴいイケメンでしょ!」

「ふ、ふ~ん。ま、まぁまぁね!」

「でしょ!」

 

麦野はフレンダの言われた通りに上乃を見ると、お馴染みの反応である赤面して言葉を詰まらせた。

 

「さぁ!こっちには麦野が来た訳だし、これで怖いもんなしって訳よ!」

「ふん!そちらの方が何方かは知りませんが、此方にはお姉さまがいますのよ。負ける気がしませんわ!」

「ちょ、ちょっと黒子何言ってんのよ」

「言い争うなら勝手にやっててもらえるかしら、上乃君さっさと行くわよ」

「ちょっと、何勝手にイケメン連れてこうとしてんのよ。用があるのはそっちなんだから、消えるならアンタが消えれば」

「ちょっと無視しないでもらえません、そもそも後からやってきて何ですかその言いぐさは!」

「煩いわね、雑魚は引っ込んでなさいよ」

「雑魚!?この方が常盤台の『超電磁砲』、御坂美琴お姉さまと知っての戯言ですの?」

「超電磁砲だがなんだか知らないけど、小娘とは実践とキャリアが違うっつーの!結局、戦えば麦野が勝つって訳よ!」

「いいえ、お姉さまが勝ちます!」

「麦野よ!」

 

お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!麦野!お姉さま!

 

「フレンダ、ちょっと落ち着きなさい」

「黒子、いい加減にしなさいよ」

 

二人のあまりに不毛な言い合いに嫌気が差した美琴と麦野の姉貴分が止めに入るが、それぐらいで火の着いた二人は止まらなかった。なんと、止めに入った二人の後ろに回りその胸を掴んだのである。

 

「結局、どんなに強がろうがそんなまな板じゃ貫禄が出ないって訳よ!」

「大きさでしか語れないとはお下品な!将来性を鑑みればお姉さまの方が上!」

Be amazed(アホらしい)

 

途中から傍観していた布束は、極めて真っ当な感想を呟いた。彼女らを無視して帰ろうと上乃に声をかけるが………

 

「上乃君、こんな人達放って置いて、買い物の続きを………」

「そうか、君は長点上機の生徒なのか。ところで歳は幾つなんだい?」

「………16」

「あと二年か……」

 

木山が上乃の手を握りながら楽しそうに話していた。

 

 

 

「「「何やってんだ(ゴラァー)!!!」」」

 

 

 

 

 




前にも書いた気がしますが、輝く貌の魅了効果は人によって差異があります。
ですので、布束さんのように一発でメロメロになる場合や美琴のようにすこし気になる異性ぐらいにしか思わないと言ったパターンがあります。

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