どうやら神様は俺の事が嫌いらしい   作:なし崩し

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遅れてしまって申し訳ない。
実習期間だったため、スマブラもモンハンも涙をのんで諦めました。
きっと買ったら止まらなくなるので(-_-;)
しかし実習が昨日終わり、早速モンハンを買ってきました!
目指せG級!

・・・・・・まぁ、再来週からまた実習再開なんですけどね。

感想返し、おそらく難しいと思いますのでご了承を。


第三十話

 

 

 

 皆が呆然とする中、神田は一人その脅威度を肌で感じとり六幻を構えていた。

 思い出すのはスキン・ボリックとの戦闘前のことだ。

 馬鹿みたいに手をプラプラ動かしていると思ったらそれはハンドサインの一種で、

 

『触れる 負け 一撃 倒す 後で 作戦 ある 合図 扉 開ける』

 

 読み違いがなければ、触れたら負けるから一撃で倒せ。その後で作戦があるのですぐに扉を開けて中に入れ、である。

 そしてその後、追加で送られてきたハンドサインから時間を読み取り、しょっぱなから三幻式をフルパワーにし首を刈り取りその時間通りに扉をくぐったのである。

 普段は頼りない男であるが、やるときはやると神田は知っている。

 過去に一度なめてたせいで痛い目を見たことがあったのだ。

 結果、そのハンドサインに青筋たてながら従ったら見事にジャスデビたちの裏をかけた。 

 

 しかしその後、ラスロはノアと伯爵に連れていかれた。

 そうした過程を得てラスロは今、ノアの傍に立っている。

 

「あの野郎、一体なにを隠してやがった……!」

 

 スキン・ボリックの能力を知っていて、更に双子のノアの能力も熟知した上でのあの作戦だ。よほどノアのことを知っていなければあのような作戦は立てられない。前から怪しいとは思っていた神田だったが、ここにきてラスロの異常性に確信を抱く。

 おまけにラスロが持つのは以前見たことのある剣だったが、さらにそれを超えている。

 江戸でみた時以上の存在感に、離れていても感じられる憎悪憎しみなどとノア好みの感情が詰め込まれた異端な剣だ。

 あれをイノセンスと言われても信じることなど到底できない。

 そしてラスロの身を覆っている漆黒のプレートアーマーに黒い霧。

 覗く眼光は赤く鋭い。

 

「あんな殺気、放てる奴だったか」

 

 チラリと他の仲間を見てみれば、アレンは呆然と目を見開き、ラビとクロウリーも同様である。

 そしてなぜかノアであるティキ・ミックまでもが驚き表情を驚愕で歪ませていた。

 そんな中、顔が真っ青で一番衝撃を受けているのがリナリーであった。

 それなりに付き合いが長く、ラスロがいなくなったところで帰ってくると信じていたがためにその衝撃は大きい。

 あのラスロが悪夢に負け、ノアに落ちたなど教団の誰もが知っても同じ反応をするだろう。

 リナリーの場合、そこにもっと別の感情も混ざるのだが。

 知っていたはずなのだ、彼の様子がいつもと比べておかしいことに。

 それでいて放置して、この結果だ。

 もっと、ちゃんと確かめておくべきだったとリナリーは後悔の念が収まらない。

 そんなリナリーを横目に神田は構える。

 

「おいおい、ロード本気かよ? あの狸君を落としたって?」

 

「そぉだよ? でもまぁ、元々弱ってたみたいだからねぇ。そこにボクと千年公が手を加えれば、これくらいはできるよ。まぁ、他にも色々と使ったんだけどねぇ」

 

 『色々』、それが何か分からなくて考えるのが面倒になる。

 どうせ碌でもないものだろうと予想がつく分だけなおさらに。

 しかしまぁ取りあえず、

 

「――――寝てろ狸!」

 

 斬って眠らせてしまおう。

 神田はそう考えながら、フルスピードでラスロの背後を取る。

 その瞳は未だ前を向いていて神田を知覚した様子はない。

 しかし――――

 

「――――な、に!?」

 

 神田の一撃は空を切った。

 それはまるで先のロードを斬ったときと同じように。

 まさかと神田が背後を見やれば、

 

「■■■■■――――――!!」

 

 かの魔剣を振りかぶるラスロがいた。

 咄嗟に体が動いた神田は六幻をラスロの剣と自分の体の間に刺し込みその一撃を防ぐ。

 しかしラスロはそれすら予測していたのかパ、と剣を手放すとソレは霧のように消え、空いたその黒いアームで六幻を掴んだ(・・・)

 その瞬間、神田はゾワリと背筋に嫌なものを感じる。

 

「テ、メェ……! まさか――――!」

 

 そしてそれは的中する。

 掴まれて数秒とせず、六幻の光が鈍りだす。

 いや、鈍るどころの話ではなく発動そのものが強制的に解除されていくのを知覚する。

 そして何より、六幻とのシンクロ率が下がっている――――!

 

「どういう、こと……!」

 

 それを見ていたリナリーもその異様な光景に身を乗り出しロードの結界に手をかける。

 その先に見えるのは、徐々に徐々に赤黒い線に蝕まれていく六幻の刀身だ。

 そう騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)である。

 あろうことかあのラスロは本来二つの能力を封印することで使用できる無毀なる湖光(アロンダイト)を抜き身にしたまま発動して見せた。

 そしてその効果を、神田は身をもって知ることになる。

 

「六幻が……奪われただと!?」

 

 最後、六幻の光は完全に沈黙する。

 そして次の瞬間、再び驚愕することとなる。

 

「■■■■■■――――――!」

 

 恐らく何か言ったのだろう。

 するとラスロはいつも神田がするようにあの黒い手は六幻の刀身をなぞっていく。

 ――――指の後に光を残して。

 神田は見覚えのある光景に驚愕し、その隙をつかれ鈍重な蹴りをまともにくらい吹き飛ばされる。

 

「神田! そんな、どうしてラスロが神田の六幻を……!?」

 

 神田の内心を代弁するようなリナリーの叫び声に答えたのは意外なことにロードであった。

 彼女もまた初めて見たらしく面白そうにその光景を眺めている。

 

「多分、ラスロが制御を奪ったんじゃないかなぁ。あはは、すごいよラスロ! まさかイノセンスを強制的に従わせるなんてッ!」

 

 ますます欲しくなったと呟くロードの声はすでに耳に入ってこなかった。

 リナリーの視線を奪うのは、六幻を持ったラスロの姿だ。

 ラスロは六幻を構え、振り下ろす。

 振り下ろされた六幻から放たれたのは、斬撃の精。

 神田の技の中でも遠距離攻撃ができる技であり、本来神田しか使えないはずの一撃だった。

 

「んなぁ!?」

 

「ラビ!? く、厄介であるな!」

 

 その巻き添えを喰らったラビは予想外の攻撃に吹き飛ばされ、クロウリーもまたその一撃を体にかすらせながらラビを受け止める。

 二人の心中を埋め尽くすのは、武器を完全に奪われたらまずいという警戒心だ。

 クロウリーはともかく、装備型イノセンスである『槌』を奪われたら状況は悪化の一途をたどるだろう。

 おまけに技すら使えるというのなら、近距離の六幻、遠距離攻撃多彩の『槌』をラスロが一手にもてば勝ち目はない。

 

「くそ、近づけねぇさ!」

 

「ならば私が……!」

 

 クロウリーが言いながら駆ける。

 目指すは六幻の奪還とラスロを行動不能に陥れること。

 神田程のスピードではないが全体的に身体能力の高いクロウリーは不規則な機動でラスロに迫る。

 それを見ていたラスロは赤い眼光で睨みつけ、次の瞬間にはその姿が――――

 

「――――エリ、アーデ……ぐっ、あぁぁぁぁぁあッ!?」

 

 愛しいあの人へと変貌していた。

 アクマでありながらエクソシストを愛し、そのエクソシストであるクロウリーもまた彼女を愛した。

 しかし相容れない存在であるがゆえに、クロウリーが自らその手にかけた愛しい人。

 幻影であると分かっていたが、それでも攻撃などできるはずがない。

 止まってしまったクロウリーは六幻の一撃をその身に受けて崩れ落ちる。

 

「クロちゃん! くそ、いい加減にするさラスロ!」

 

 ラビが吠え、火判を放つ。

 槌が地面をつけばそこから巨大な火の蛇が姿を現しラスロを飲み込まんとする。

 それに対し彼はグルリと首を回すと火の蛇を見ていつの間にか手の中に現れた無毀なる湖光(アロンダイト)を振りかぶる。

 異様なその剣ではあるが、巨大なその体躯を斬れるほどその剣は大きくはない。

 故にラビは悪手であると判断し、そのまま炎の蛇でラスロを燃やす。

 無論火加減はしているが気絶程度はしてもらうつもりである。

 

 しかし、そう簡単に言ってくれないのがラスロであった。

 

「…………冗談じゃないさ」

 

 炎が収まった後、彼はそこに無傷で存在していた。

 その身から煙が出ることもなく、炎の中にいたのかが疑問に思えるほど無傷である。

 それはあの鎧が防いだのかそれとも別の何かがあったのかラビには分からない。

 そして次の瞬間、ラビは本日何回目かも分からない驚愕で目を向いた。

 

「なんで、槌はここにあるのに!? どういう原理さ、それ!」

 

 ラビの視線の先、ラスロが地面に突き刺した無毀なる湖光(アロンダイト)の根元から火柱が迸っていた。

 それは徐々に形を整えていき、最後はラビの使役した『巨大な炎の蛇』へと変化する。

 その赤い炎は火の粉を散らしながらその巨大な咢でラビを狙っていた。

 

「く、火判――って!? あっつ――――――く、ない?」

 

 ラビは火判で応戦しようとするが向こうの方が一手速い。

 顔を抱えるようにして炎に飲まれたラビ。

 しかしそれに反して熱さを感じはしなかった。

 瞬時に可能性をピックアップする。

 

(まさか、自分の意思で手加減してる……? でもそれじゃあクロちゃんがやられた説明が――――)

 

 その隙は致命傷だった。

 いつの間にか眼前に現れたラスロが無毀なる湖光(アロンダイト)を振りかぶっていた。

 一瞬反応の遅れたラビはいけいないと分かっていながら反射的に槌でその攻撃を防いでしまった。

 アレは手加減ではなく、ただの幻影であったから熱を感じなかっただけと今更ながらに気づく。

 

「しまっ!? ぐ、ぁぁぁぁぁあ!?」

 

 そして結末は神田を同じ。

 ラスロは何処かに六幻を突き刺してきたのか空いた片手で奪った槌を使い天判を発動。

 その雷撃でラビをダウンさせそのまま壁へと吹き飛ばした。

 これで、三人のエクソシストが撃沈されたことになる。

 

 

 

 

「すごいすごい! やっぱり強いねラスロ! 武器を奪うし幻影も使えるなんて! あの時ボクを出し抜いたのはそれなんだねぇ!?」

 

 ケタケタ笑うロードを後目にリナリーは口を押えて涙を流していた。

 あまりに悲惨で悲しい光景だった。

 常に笑いマイペースであった彼が、理性のない瞳でただ敵を倒す機械の様に成り下がっている。

 そしてその四方には神田、クロウリー、ラビが転がっている。

 知らなかったラスロの能力とその強さ、知らない彼の一面をまざまざと見せつけられているようで心がきしむ。

 

「ねぇ見た、リナリー! ラスロは触れた武器を十全に扱い、あまつさえ見たばかりの炎の蛇すら幻影(・・)で再現して見せたよ!?」

 

「ッ! ロード! ラスロを元に戻して!」

 

「あはは♪ それは無理だよ。だってラスロはボクのものだから~?」

 

 ふわりとレロに乗り移ったロードはそのままラスロの肩へと乗り移る。

 対して肩に座ったロードを守るように体を逸らすその姿、そして向けられる敵愾心は拒絶そのものだった。

 

「ら、すろ……」

 

「無駄無駄。そもそもその『ラスロ』だって本名じゃないんだよ? 知ってるのはラスロの師匠か、もしかしたらアレンも知ってたかもね。あと知ってるのは、ボクと千年公だけぇ! そんな名前が響くわけがない!」

 

「――――っ! ラスロ!」

 

「諦めが悪いなぁリナリーは。……じゃあ教えてあげるよ。ボクたちがどうやってラスロを落としたのか!」

 

 芝居がかった様子でロードはラスロの頭を抱きしめる。

 

「ボクと千年公は、ラスロの精神力が普通じゃないのをしっていた。同時に、ノアにもイノセンスにもいい感情を抱いていないってこともね」

 

 ロードは続ける。

 

「じゃあそんなラスロをコッチ側にするにはどうすればいいと思う? ふふ、答えは簡単だよぉ? そう、イノセンスをもっともぉっと憎ませればいい! そしてボクたちはそれを成すために必要なものを持っていたんだ。それも飛び切り強烈なやつをねぇ」

 

 そう言いながらロードは、自分の頭を指の腹で叩いた(・・・・・・・・・・・・)

 それがどういうことなのか、リナリーはうっすらと予想ができてしまう。

 しかしそんなこと信じたくはなく、違うと心の内で否定する。

 が、ロードにリナリーの心情なんて関係がない。

 どちらかといえば諦めさせる為にトドメをさす側なのだから。

 そしてロードは言うのだ。

 

「ボクたちノアはそれぞれがメモリー(記憶)を持ってる。その中でも一番イノセンスに対しての憎しみが強くて強烈なやつの一部(・・)を夢として再現して一緒に組み込んだんだぁ! つまり今の落ちたラスロは限りなくボクらノアに近い存在なんだよ! ほら、見てごらんよ。こんな状況なのにラスロは咎堕ちしないんだよ?」

 

 イノセンスは破壊されることはあっても、ノアに汚染されることは無い。

 ならば残る可能性は一つ。

 

「ラスロが、抑え込んでるの?」

 

 そう、ラスロ自身がイノセンスを抑え込み、制御している。

 ノアに組みすることを嫌う神の物質を、一人の人間が憎悪によって縛り付けていた。

 リナリーは目の前から光が失われていくのを感じる。

 それは目を閉じたからか、それともうつむいてしまっているからか。

 どちらにせよ失意に飲まれているのは間違いない。

 ただ一筋、リナリーの頬を涙がするりと零れ落ちていった。

 

「――――――――」

 

 


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