どうやら神様は俺の事が嫌いらしい   作:なし崩し

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お久しぶりでございます。
ええ、一応推薦受験を受けてきました。
結果発表は一週間後……だった気がします。
その為ちょっと余裕ができたので投稿です。
結果によっては……うん。

現在作者の精神は豆腐以下です、どうかお手柔らかに(ーー;)

感想返しは申し訳ありませんが後ほど。


第二十四話

 

 

 

 

 

 気を失い、次に目を覚ますと何やら心地よい。

 それに、何やらとても柔らかいものが頭の下に。一体何事? と目を開けようとしたが、突然頭に違和感が走ったので様子を見ることにする。これがノアだったら、隙をついて逃げなければいけない。あー、でもこの辺でノアは撤退するんだっけか。じゃあこの柔らかいのは何だろうか。

 しかし、確認する前にこの違和感は失せることとなった。

 違和感の正体は、手。恐らく誰かが俺の頭に手を当てたのだろう。ただ、そこからの行動が警戒心を薄めてくる。よく分からないのだが、誰かの手は俺の髪を指で髪を梳かし始めた。……なんぞこれ。しかもとても丁寧と来た。

 警戒心を軽く解き、起きようと頭を起こす。

 同時に、離れていった手が名残惜しそうに見えたのは気のせいだろうか。

 

「…………ここは?」

 

 口に出しながらも、眼前の光景に目を向ける。

 そこにあったのは…………というか何もない。

 視線を自分よりに戻せば、橋だったものの下に居ることはわかる。その橋も、途中から完全に消失しておりあの時の伯爵の攻撃をモロに受けたことを悟らせる。 

 

「…………江戸。ああ、無理に開放したからっていうか、勝手に開放してくれちゃったから疲労でブッ倒れたのか」

 

 おまけにあの瞬間、伯爵の体から異常なまでの悪意が流れ込んできた。アレは確信犯に違いない。ホント、いい性格してると思う。

 一度、自身の意識を心臓へと向ける。

 しかし、そこに心臓の鼓動はない。つまるところ、外部に置きっぱなし。

 やばし! 心臓が外部に置きっぱなしとか不味すぎる。ノアに捕まりでもすればオモチャコース一直線ではないか。取り敢えず、さっさと探しに行かなければ。ロードの人形と化すなんて有り得ない。

 

「そうと決まれば急いで――――――」

 

 そして立ち上がろうとした俺だが、キュッとボロボロのコートの裾を掴まれ停止する。

 そう言えば、俺ってば誰かに看病されてたっぽい。それは、俺以外にも人がいるということ。ちゃんと意識して周りを見れば、仏頂面から紳士スマイルまで様々な笑顔を浮かべているクロス部隊とティエドール部隊が。というかアレン、ちょっと君にはお話があります。

 

「――――――無事だったんだね……ラスロ」

 

 声のする方を向けば、そこにはリナリーがいた。

 あ、不味い。そう思ったときにはもう遅かった。見ればリナリーの目尻には涙が溜まっており、紳士としてやってはいけないことをしてしまったのだと自覚させられる。いや、普段の行いからそれはどうなのとか思うだろうけど皆俺が死んだなんて思わないと思ったからであってね? 師匠の弟子って事でどうせ無事ってね? ……言い訳でした、ハイ。

 

「なーかしたーなーかしたー、師匠に言ってやろー」

 

「……待てアレン。少し話し合おうじゃないか、な?」

 

「僕の口止め料は高くつきますよ?」

 

「何だか兄弟子に対して辛辣だなアレン。俺、何かしたっけ?」

 

「ええ、しましたとも。スケープゴートに。……あの恨みは忘れてません」

 

「いや、え? スケープゴート? いつ、何に? 心当たりが多すぎて分からないんだけど」

 

「は、ははは。やっぱりラスロですね。この師匠具合に天然を加えたハイブリット師匠(仮)は間違いなくラスロです」

 

 師匠具合は置いといて、ハイブリットってなにさ。カッコイイ。

 ――――――って、それどころではない!

 と思っていたら強く裾を引かれた。俺は、そんな軽い力にも耐えられず元の位置へと戻る。

 

「大人しくしてないとダメだよ……顔色も悪いんだから」

 

 心配、というふうに声をかけてくれるリナリーだがそれどころではない。

 看病してくれるのは嬉しい。が、膝枕、テメェはダメだ。

 羞恥心MAXに加えて、男どもの殺気もMAXです。

 

「まだ、顔色が悪いね。……大丈夫? 無理してない?」

 

「へ? あ、ああ。大丈夫だぞ? 強いて言うなら、外部の圧力が厳しいくらいで……」

 

 すると、分が悪いと判断したのか殺気は引っ込む。

 そう言えばティムがいないが助かった。録画されたら脅しの材料と化す。

 

「っと、それより、俺の剣を探さないと」

 

「だからダメだよラスロ! ミランダの御陰で今は平気かもしれないけど、本当に心配したんだから!」

 

 聞いてみたところ、どうやら俺は土気色の顔をして相当やばかったらしい。そりゃあ、精神力を常に消費しまくってたんだから当然か。

 

自分で思っていたよりもひどい状態だったらしい、ミランダに感謝だ。

 

 というか、現在進行系で消費されている。たしかに精神力も回復しているようだが、寝ている間に切り替え可能な域を超えてしまったらしい。御陰で、いまだ切り替えができず封印もできない。 絶賛大ピンチな俺だった。もう一度巻き戻しを頼む、といいたところだがゼェゼェと気絶しそうな淑女を見て頼めるわけがない。

 

「……いやぁ、マズイなコレ。取り敢えず――――『無毀なる湖光(アロンダイト)』!」

 

 その瞬間、少し遠方から黒いのが飛んでくる。

 無論、『無毀なる湖光(アロンダイト)』である。アレンが原作でやってるのをみてノリでやってみたけど上手くいった。その後、それを手に取り地面に突き刺す。戻そうとしてみたが、やはり無理だった。

 しかし、イノセンスの方が手加減してくれているらしく省エネモードになっているらしい。

 どうした、一体。気を使うとか遂に狂ってしまったのか俺のイノセンスは。

 

「それって、ラスロが前に使ってた剣だよね……? やっぱり、あの時助けてくれたのはラスロだったんだ」

 

 ありがとう、と言って微笑む姿はコムイさんがお熱になるのもわかるレヴェル。

 しかしそれで揺らぐ俺ではない。ははは。

 あれ、手が勝手にリナリーの頭へと動くぞ?

 自然と頭をポンポンと撫でている俺の手。

 

「ラスロ、髪が傷んじゃうよ……」

 

「う、すまん。……慣れてないからな」

 

「女の子の髪に触れるときはもう少し優しく! 撫でるにしたって、もう少し丁寧にやらないとダメだよ? デリケートなんだから。本当なら、その前に一言欲しいところ、かな」

 

「……次の機会があったら、そうするよ」

 

 ダメやー勝てへん。

 このままズルズル行くとか怖すぎる。

 前世込みで、こんなに女の子らしい人を見たことがない。

 一人はツンデレを地で行く真性モノだし、もう一人はお淑やかを装うドS腹黒女。前者は拳を武器に、後者はムチを武器とする覇者だったからね。親友は彼女持ちだから、自然と被害は俺へと流れてくるわけで。本当に酷かった。その度に俺が親友を巻き込むワケだが。まぁ結局男二人でボロボロにされるのが日課でした。……あれ、ダメージ受けてる分今より酷い?

 そう言えば最近会っていない。元気にしているだろうか。親友カップルは相変わらず、男が尻に敷かれているのだろう。怪人ツンデレーはきっとツンデレを布教して回っているだろう。腹黒女王はきっとSMクラブでも開いて男から金を搾取しているのではなかろうか。久しぶりに会いに行こうか――

 

「――――ラス、ロ?」

 

 そこで、気づいた。いや、リナリーの声で現実に連れ戻された。

 見ればリナリーが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

 

「――――――ああ、大丈夫だ。……なんの、問題もない」

 

 背筋が、凍った。

 一番最悪なパターンだ。

 現実と、過去が入り混じるこの状態。

 区別がつかないというよりも区別をつける為の思考が働かない。

 イノセンスの影響か。

 

「はは、冗談、キツイぞ。……有り得ない」

 

 ギリッと、気づかぬうちに唇を切っていたらしい。血の味がする。

 

「ねぇ、本当に大丈夫なの? さっきから、少し…………」

 

「おかしい、か?」

 

 コクリと頷くリナリー。

 へるぷみーとばかりに辺りに視線を向ければ、全員、何があったと問いただしてくる様な目。一人、死ねと殺気を送ってくる侍くんもいるけれど。取り敢えず、苦笑いで返しておく。

 

「この剣。シンクロ率の問題で、使用すると副作用があってな? 異常に精神力を使うんだ。御陰でこのざま。まぁ、ゆっくり休めばすぐに元通りだ」

 

 その説明に、大体は納得してくれる。

 『無毀なる湖光(アロンダイト)』を直に見れば、ソレに宿る怨念モドキに気づくだろう。

 実際は違う理由からだが、いいわけには持ってこい。

 

 

 悪いな。狸は、化かすのが得意なんだ。

 とはいえ、一人、嘘ですよねと睨んでくる弟弟子がいる。

 さてさて、どう言い訳したものか。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に、いなくなった人が眠っている。

 普段はやる気を感じられず、笑顔で戦場を駆け抜け、消えて、返ってくる仲間。

 今は珍しく真剣に、全力で戦闘したからか泥のように眠っている。そんなラスロを、リナリーは膝に乗せながら考える。あの瞬間、助けてくれたのはラスロだったのだと。ハッキリと見えてはいなかったが、何時になく鋭い表情をしたラスロはまるで別人だったとリナリーは思う。そんなラスロの髪を、持て余した手で梳く。

 思っていたよりもさらりとした上にふわふわ。どうなっているのか気になった。

 

(…………また顔色が悪くなってる)

 

 顔にかかる前髪を手でどける。

 その下には、意外に丹精な顔立ちが隠れている。

 しかしその顔色は最悪の一言に尽きた。

 弟弟子のアレン曰く、「こんなラスロ、久しぶりにみました」とのこと。常に共に旅をしていたアレンが、この状態のラスロを見るのが久しぶりと言うことで想像していた以上の重体なのではと不安がよぎる。ブックマンの針治療ならばと見せてみたが、ブックマンが目を見開いて驚愕した後、無理だと診断された。

 どうしようもない。

 そこで、ミランダがイノセンスの力を使ってラスロを回復させた。

 これがラスロが起きるまでの経緯。

 そしてリナリーは、起きてからのラスロの発言に何か引っかかり思い返す。

 

『この剣。シンクロ率の問題で、使用すると副作用があってな? 異常に精神力を使うんだ。御陰でこのざま。まぁ、ゆっくり休めばすぐに元通りだ』

 

 根拠はない。

 しかし、あの真剣な表情を見たリナリーには嘘を交えた笑顔にしか見えなかった。

 未だ信用されていないのか。そう考えると心が沈む。

 

「…………えい」

 

 気づけば、リナリーの手は再三立ち上がるラスロを引っ張り膝の上へと誘導していた。やられた本人は「!?」と驚愕で顔を染めていたので、少し心が晴れる。たかが表情を変えただけだが、それは本物であると分かったから。

 

「……どうしたリナリー。随分と、強引だな?」

 

「うん、決めたの。ラスロって、中途半端に近づくと逃げるから……」

 

 レベル3との戦闘中に思い出した過去の出来事。

 今の今まで、命をかけた濃い生活の中に埋もれていた楽しい記憶。

 それをもう一度。次に会えたならば、皆と一緒に、ラスロを知ろう。

 船の上で考え、決意したことだった。

 

「取り敢えず、逃げれないくらいまで近づこうって」

 

 ラスロはキョトンとした後、パタリと顔を伏せて唸り始める。

 天然メェ……やら、ブラコン兄さえいなければ、とか聞いていた男性陣はラスロの内心を悟った。

 

「頑張るさ、ラスロ。コムイにバレないといいさね?」

 

「まぁ、自業自得です。さっさとゲロっちゃえばこんなことにはならなかったんです」

 

 言葉遣いが荒いですよアレンくーんとラスロが呟きながら、再起動。

 キョロキョロと辺りを見回し、ティムキャンピーがいないことを確かめる。が、アレンの耳についている通信機を見て再度撃沈。もうかなりグタグタだった。ちなみに銀色から師匠であるクロスに漏れていることに気づいていない。

 

「ああ、OK、手遅れにならないうちに立ち直ろうぞ。……まぁ、何だ。今更だけど、久しぶり」

 

「全くですね。僕に師匠を押し付けて自分は違うところに向かうとか、非道です」

 

「……いや待て。押し付けてなんていない。どうやら俺とお前の間には誤解があるようだ。いや、ホント。その胡散臭いもの見る目やめい。兄弟子のガラスのような繊細さしってるだろ?」

 

「ええ、知ってます。ガラスどころか鋼鉄通り越して手入れ不要の謎金属ですよね。繊細って言葉が師匠の次に似合わないと思います」

 

 アハハ、ウフフと黒い笑みを浮かべながらアレンの先制攻撃から毒舌戦を開始した二人。

 そののち、誤解が解けて怒りの矛先は室長の方へと向かった。

 しかも、今の会話が師匠であるクロスに筒抜けであったことに気づきアレンは顔を青ざめてラスロから距離をとった。同時に、ラスロも同じことに気づき胃を抑える。懐から箱を取り出したと思えば胃薬。その年で頼りになるとか有り得ない。

 

「よし、忘れよう。俺は過去に生きず今を生きる男だし」

 

 過去にすがりついて帰ろうと必死なお前が何を言う、と自分も思っていたが気にしない。

 パンと頬を叩いた後、ラスロは『無毀なる湖光(アロンダイト)』を支えにヨロヨロと立ち上がった。

 

「どこに行くんですか?」

 

「いや、どこにも。ただ、座ってるのも落ち着かなくて。座ってると回避行動が遅れるし」

 

 どこの世紀末? とラビが問うが、もう十分世紀末じゃね? とラスロは返す。 

 人に擬態するアクマのレベル3、上位種であるノア、創造主たる伯爵。全て揃ったここは終わっている。

 しかも追加で不良神父も紛れ込んでいるはず。

 

「まぁここから離れはしないさ。巻き込まれないといけないし」

 

「巻き込まれる? まさかラスロ、また何か変なのに――――――」

 

 そう、アレンが言った瞬間だった。

 ズブリと、体が沈んでいた。そして姿が消えていく。

 

 

 

 

 

 

 ――――――ラスロの。

 

 

 

 

 

 

 

「なにゆえ!? イヤイヤイヤイヤ! なんで俺――――――!?」

 

 意味わからない!? と珍しく?パニックに陥っているラスロ。

 しかし流石と言うべきか、どれだけ思考が鈍り、混乱していようとラスロはラスロだった。

 

「――そいやァ!」

 

「ちょっ、ラスロ!? 僕を引きずり込む気ですか!? 流石にあんまりです!! だぁぁぁ! 足引っ張るなー!!……せい!」

 

「何!? おいモヤシその白いベルトで俺を掴むな! 兄弟弟子揃って人巻き込んでんじゃねェぞ!! ックソ!」

 

「待ってユウ! それはおかしいさ!? あいやファーストネーム呼んでごめんて離してぇぇぇぇ!?」

 

「何をしている阿呆共!」

 

 ラスロがアレンの足を鷲掴み、アレンが『神ノ帯(クラウンベルト)』で神田の足を確保。怒りに怒った神田が、ファーストネームを口にするラビを掴んで引きずり込んだ。それを見ていたクロウリーが自ら飛び込む。色々おかしかった。

 そして最後に、元帥たちがポカンとしている中リナリーが一人地面に吸い込まれていった。

 

 残されたティエドール元帥達。

 一度死にかけたものの合流できたデイシャを精神的疲労を理由に教団に送り返すことができたのはいいが、今になってもう少し戦力もといツッコミが必要だったかなとティエドール元帥は少し後悔する。

 元帥は眼鏡をクイと押し上げた後、頭が痛いとばかりに手で顔を覆った。

 

「…………常識が、通用しないね」

 

 次の瞬間、空が割れ四角い何かが出現したが今更だとばかりに驚くことなく見つめるのだった。

 

 

 

 

 何か色々有り得ない。

 

 

 

 

 


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