どうやら神様は俺の事が嫌いらしい   作:なし崩し

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アンケート結果。

ルート1 約146票

ルート2 約79票

ルート3 約16票


となりました。細かいところ間違えてるかもしれませんが、恐らくルート1と2の差を埋めることはないと思います。

最終的に、票数が多かったルート1を本編として書いていきたいと思います。
200票以上の投票、本当にありがとうございます。

現在、意外と多かったIF希望について検討中です。
やるとなれば、閑話か、分岐からのIFになるかと。……あまり期待はしないでくだせえ……。


第十八話

 

 

 

 

 空を飛び、海を越え、ついに師匠の待つ日本へとたどり着いた。

 元の世界で言う、俺の住んでいた国だ。桜は美しく咲き乱れ、情緒ある風景には心が踊った。確かに現代の街並みではなかったが、見える街は江戸時代。教科書などで見た絵そのままだった。

 

「日本よ、私は帰ってきた……」

 

「ラスロ、お前の出身はヨーロッパっちょ? 乱心するなっちょ」

 

 チョメ助からいただいた一言で我に返る。

 一度、師匠から離れてこっそり来たことがあったがその時はゆっくり出来なかった。その理由は単純で、奴らが大量に湧いていたから。当時の俺は日本に行けると浮かれててそんなこと考えてなかったので日本についてから大変だった。ちなみに、その時に桜の苗木は持ってきた。密入国したうえに、勝手に持ち出したことは悪いと思っている。

 ちなみに、苗木に使っている神秘の肥料だが種明かしすると酒である。それもロマネ・コンティとか言う奴。酒瓶イノセンス化したら中身まで神気放ってたので土にたっぷり染み込ませておいた。御陰でうちの子は強くなりました。

 

「……戻ってくるっちょ。ここがどんな場所だか分かってるっちょ?」

 

「ああ、悪い。そうだ、ここはアクマの巣窟で師匠のいる魔窟なんだ。気を付けないと、どう利用されるか分からない」

 

「それ、注意する対象の比重間違ってるっちょ! 師よりアクマに気をつけろっちょ!」

 

 プンスカと頭から湯気の様なものを出しているチョメ助に怒られる。

 お前も改造された身なら分かるだろう? 師匠は油断しきって背中みせるとアクマより悪魔らしいことをしてくるんだよ? 実に、人間にとって悪魔的な行動を取り精神身体ともに追い詰めてくるのが師匠だよ?

 

「その目、何考えてるか丸分かりっちょ。……残念ながら、同意するしかないっちょけど」

 

「だろ? 師匠は悪魔、これは覆らない」

 

「ただ、それをこの場で言うべきではないっちょ。隣にいる銀色忘れたっちょ?」

 

 ビシッとチョメ助が指差す先には、銀色のゴーレム(師匠作)が浮いている。さぁっと血の気が引いていく感覚。そうだった、このゴーレム師匠と繋がってるんだった。

 

「……………………船、捕まえて逃げるか」

 

「待て待て待て待つっちょ!! オイラの努力無駄にするなっちょ!!」

 

「無理、だって俺死にたくないし。それ以前に借金増えるのはご免なの。そう言ったことは弟弟子にどうぞ?」

 

「下の奴を売るのがデフォになってないっちょかこの師弟!?」

 

「弱肉強食、世界の摂理。この日本と同じだな?」

 

「なんで知ってるか微妙なところっちょ。まぁ、否定しないっちょ」

 

 そう言うと、チョメ助は視線をある一点へと向ける。方角的には陸地で、街へと続く一本道の隣の空間だ。見れば、そこには形の整わない小さな山が幾つか存在していた。すると俺の嗅覚がオイルの様な匂いを捉える。そして理解した。

 

「アクマの残骸、か。しかも共食いの結果って事は内蔵された魂は……」

 

「消滅したっちょ。オイラ達が改造される前は、共食い現象で魂ごと消滅した奴もいたっちょ。ただ、今は食われかけると自爆システムが発動して相手ごと道連れっちょ」

 

「……嬉しいんだが、デブ公に尚更目を付けられると考えるとどうなんだろう。俺の目標から遠く離れていきそうな殺伐な未来が見えるよ。俺は一体どこへ向かってるの?」

 

「さぁ、オイラは知らんちょ。っと、ホントにもう行かないとまずいっちょ」

 

「そうか。まぁ、頑張ってきてくれ。アイツら頼むな?」

 

「任せとくっちょ! んじゃ、オイラ行くっちょ。バイバイっちょ!」

 

「ん、じゃな、チョメ助」

 

 チョメ助はアクマボディの為表情が分かりづらいが、笑っていると思う。対して俺は上手く笑えているだろうか。まぁ、些細なことか。どうせ消えゆくチョメ助ならば、何を見られたところで問題は無い。でもまぁ、どうせなら笑いたいものだ。

 

「ちょー! 全力で急行っちょ! ちょちょちょちょちょちょ――――――!!!」

 

 そしてチョメ助は飛び立った。手足バタバタさせて全力で。

 俺はチョメ助の後ろ姿しか見ることができなかった。チョメ助は、一切振り返ることなくティムを連れたクロス部隊の方へと飛んでいったからだ。

 次会うときは、どちらか一方がその姿を視認するだけになるだろう。

 

「ガンバーチョメ助。……俺も行くかね」

 

 くるりと踵を返して、アクマの残骸の横を通って街へと向かう。

 ヒラヒラ舞い降りてくる桜の花びらは、無性に俺の心を落ち着けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「………………で?」

 

「で? ってなにさぁ。折角遊びに来たのにぃ」

 

 その数分後、俺の背中に何かが乗っていた。

 正直確認する気にならなかったのでそのまま乗せているが。

 

「来んなよ、仕事しろよ」

 

「するよぉ飴一年分で手を打ったんだ、ラスロにも分けてあげるよ?」

 

 ところどころ間延びする口調。

 知り合いっていうか、天敵っていうか。ロード以外有り得ない。

 というかロードがここにいるのが有り得ない。

 

「つか、どうやって俺の場所特定した? 俺、アクマの目にも写ってなかったと思うんだけど?」

 

「知りたい? 知りたいラスロぉー」

 

 俺は頷いておく。

 知って対策を取る。

 

「じゃあ教えてあげる。…………女の勘って、すごいよねぇ」

 

「防ぎようがねぇ!?」

 

 聞かなきゃよかった。

 聞いた分、心構えはできるが四六時中気を付けないといけないとか有り得ない。

 

「アハハハ!! やっぱりラスロは楽しいなぁ。ねぇ、そう言えばティッキーを気絶させたんでしょぉ? どうやったの? ティッキーってば絶対教えないって言って教えてくれないんだぁ」

 

「へぇ、じゃあ敢えて教えてやろうか? 嫌がらせで」

 

「早く早く」

 

「いや、目が輝いてるけどどうしようもない内容だぞ? 単純に、突っ込んだ先の店の中にあった酒瓶で脳天叩き割りを入れてやったってだけで。酒が滴ってイケメン度が増してたよ。……真っ赤だったけど」

 

「……ッ! プハ――アハハハハハハハ!!! テ、ティッキーが酒瓶、万物選べる能力あるのに、酒瓶でッ!!」

 

 ロードはお腹を抑えて笑い出す。

 相変わらず俺の背中の上で。待て待て、それ以上体をそらすな落ちるぞ。

 

「ハハハハ!! ハー息が苦しいよぉ。あー、最高だねぇラスロは。ホント、欲しくなっちゃうなぁ」

 

 そう呟くロード。

 ゴメンです。オモチャとか嫌。肉だるまにして連れてこいとかティキに言ったお前は俺の敵です。このなりしてどれだけ残忍なことを考えているのだろうかこの娘。

 

「ねぇラスロ。足はいいから両手取ってコッチにこない?」

 

「肉だるまと比べると失うの半分だけで譲歩されてるようだけど嫌だからね?」

 

「ちぇー、まぁいいや。また誘いに来るから。あ、暫く会いに来れないけど、心配しないで待っててねぇ?」

 

「はいはい、行ってこい行ってこい。その間に女の勘すら超えてやる」

 

 フフ、と言う笑い声が耳元で聞こえたと思ったら、何時の間にか背中の重みは消えていた。恐らく扉を使って帰ったのだろう。確かこの時期は何かあったはず。ロードが何かしてたんだけど、あまり覚えていない。

 そう言えば、甘い匂いがする。

 それも背中からと言うことは、ロードなのだろうか。 

 

「……冗談、どうせクッキーとかでも食べてきたんだろうさ」

 

 原作で飴一年分とかって言ってたし。

 取り敢えずそういったことを頭の隅に掃き捨てて、イノセンスを発動させて姿を桜の花びらへと変えて姿を晦ましておく。先ず、ゆっくりできる場所を探して歩こうと思う。アクマもノアもいないような、そんな有り得ない場所を探す。

 

「そこで、コイツをイノセンス化させないとな。……ホント、師匠は何考えてるんだかな」

 

 やらない、という選択肢はない。

 師匠は言っていた。やらなければ、俺どころか――――――と。

 

「俺がやらないから人が死ぬとか、嫌だし」

 

 これも、俺の精神が罪悪感を感じないためである。

 そうに決まっているのだ。

 

「あー、でも。あのデブ公は殴んないと帰れないな、うん」

 

 これは絶対にやってみせる。

 これもまた、俺の精神に安定をもたらす為である。

 そうに、決まっているのだ。

 自分に適当な言い訳を聞かせながら、落ち着ける場所目指して歩き始めた。 

 

 

 

 

 

 

 

 ロードはラスロとの会話後、千年伯爵の元へと趣いていた。

 

「何処に行っていたんですカ♥? もうすぐ始めますヨ♥?」

 

「んー、ちょっとラスロのところぉ。ていうか、まだ方舟完成してないからいいじゃぁん」

 

 すると伯爵の顔に青筋が浮かぶ。

 それは当然、敵であるエクソシストに接触しているロードに対して――――――ではなく、ラスロ個人に向けられている。理由は当然の如く出会いから現在までの確執からくる。

 

「……そう言えば、千年公はラスロを敵視してるけど何があったのぉ?」

 

「聞きたいですカ♥。いいでしょう、聞かせてあげまス♥。あの狸が吾輩にしてきた悪魔の所業ヲ♥!!」

 

 そして語られる、ラスロと千年伯爵の出会いから現在に至るまでの物語。物語、としてしまうといささか硬い。どちらかといえば日記が正しい語りであった。

 伯爵曰く、借金を押し付けられた、人の顔を使って好き放題してくれやがった、師弟揃って周りをかき乱していく、会うたびに不幸を運んでくる疫病神、神嫌いであり神に嫌われている摩訶不思議な神の使徒、意外と話は会うのだが一度反発し合うと中々議論が終わらない硬い男、神を殴る為に神を信じる男などなど。

 聞いていたロードは、少し考えを改めた。

 正直、ラスロを本気でこっちに引き込みたいと思っていたロードだったのだが伯爵とラスロの確執がどれほどのものか分からず諦めかけていたのだが、話を聞いてもしかしたら大丈夫なのかもと思い始めていた。ティキにくだされた指令から、殺すほどラスロが嫌いなのだと思っていたが実際はそこまでではなかったのだから。

 

(つまり、意外と人間的には好きだけど、イノセンスを持って敵対してるから殺すってことだよねぇ? 確か、ラスロって自分側には優しいっていうしコッチに引き込んじゃえばラスロの問題も解決しちゃうんじゃぁ?)

 

 ロードの思考は加速する。

 そう言えば、自分の説得にも最終的には納得してくれていたことを思い出す。殺さずとも、イノセンスの使用を不可にすればそれでいいと言ったのだ。よく考えれば分かることだった。

 

(でも、それじゃあどうやってコッチに引き込むかだよねぇ? ……どうしよっかぁ)

 

「――――――と、やはりアレもまたクロス・マリアンの弟子だったのでス♥!!」

 

 白熱している伯爵。

 ロードはすでに話を聞いていないが、何故だが燃え上がっている伯爵は気づかずに話を続けていた。

 

「最近は吾輩のアクマにまで手をかけ始めたのでス♥!! この間なんて、吾輩が部屋で編み物をしていたらアクマがやって来ていきなり自爆したのでス♥!! 御陰で編み物はパァ、お気に入りの帽子まで燃えたのでス♥! あの神気、間違いなくあの狸の仕業なのでス♥!」

 

 ロードは考える。

 ラスロを引き込むならイノセンスを無効化しなければいけない。ただしそれには幾つかの方法がある。一つ、単純にイノセンスを破壊してしまうこと。二つ、両手を奪って戦闘力を無くすこと。それに、千年公の反応からハートの可能性は低いしなんの問題もない。というか担い手がラスロであればハートであれ問題ない。何せ神に逆らうと公言しているのだから。三つ、最終手段でラスロをコッチの家族に加えてしまう。

 

「やっぱり、それが一番いいよねぇ……」

 

 ロードは唇を指で抑えながら、実に面白そうに呟いた。

 

「ねぇ、千年公? ちょっと試してみたいことがあるんだけど、いいかなぁ?」

 

 勿論、対象はラスロね、と付け加えると伯爵の興味がロードの話に移る。もうすぐ方舟の作業があるから自身で実行するのは難しい。その為に、共犯者を作らなくてはいけない。

 まず、千年公さえ引き入れてしまえばノア全体の総意になるんだから一石二鳥である。

 

「実は、ラスロをコッチに引き入れる方法を思いついたんだぁ。ねぇ、ちょっとだけ試してみない? ラスロの意志がどれほどのものか、とかさ」

 

「…………いいでしょウ♥ 何をするつもりなんでス♥?」

 

「うん、それはね――――――――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何この寒気。おぞましい何かが俺に迫ってる? いや、ないか。ロード帰ったしジャスデビは師匠追いかけて借金押し付けられてるだろうし?」

 

 当の本人は、やっぱり何も知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに、伯爵宅で爆発したのは、殺人衝動が強くなり限界だった改造アクマです。

分岐点まで、後数話。

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