ご注文は“さそり”ですか?   作:鯛焼きマン

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今回は会話メインで話が動きません。すみません。


ちゃんとキャラの言葉使いや性格を再現できてるか不安になりつつも、最新話投稿します。



ツンデレの妹を持つ姉とツンドラの弟を持つ姉 2

「きみ、同じ学校の生徒だよね!?」

 

「はい、そうです、さようなら」

 

「ねえねえ何年生? もしかして私と同じ一年生? それなら一緒に青春時代を過ごす仲間だね!」

 

「はい、そのとおりです。それじゃあ僕はこっちなので」

 

「きみはこの街の出身なの? 私はこの前引っ越してきたばかりなの! それで今はラビットハウスっていうカフェのお世話になっててそこで働いてるんだよ! あ、ラビットハウスって言ってもうさぎがいるカフェじゃなくて・・・・・・」

 

「・・・・・・どこまでついてくるつもりですか?」

 

 面倒臭そうなキャラだとわかった時点で『あからさまな他人行儀戦法』を使ってみたが効果無し。

 これは想像以上の手練れだとジンは内心辟易する。

 

「え? だって同じ学校でしょ? だから私も学校に行ってるんだよ?」

「全くの逆方向なんですが」

 

 正直このまま連帯行動を続行しても()()()()なんのメリットもない。

 できるだけ早く目の前の少女と別れて“用事”の続きをしたいのがジンの本音だ。

 しかし悪意無く純粋な瞳で接してくる彼女に少年はあまり強く言えないでいた。

 

「何できみは学校に行かないの? 入学式に遅れちゃうよ?」

「・・・・・・?」

 

 そこでジンは妙な会話の噛み合わなさを感じた。

 いやそもそもこういう手合いは彼の苦手とするタイプなので始めから噛み合いようがないのだが。

 兎も角ジンは彼女との会話からその欠けたピースを探して、そして合点がいく答えに辿り着く。

 わざわざ教えてやる義理は無かったがこれ以上つきまとわれてもいい迷惑なのでその誤解を解いてやることにした。

 

「入学式明日なの!?」

「やっぱり間違えていたんですね」

 

 まさか入学式の日程を間違えるような人がいるとは思わなかったジン。

 これは盲点である。

 知らなければ何を見逃す事になっていたかは・・・・・・ここでは関係ないので伏せよう。

 

「道もよく知らなかったようですし、僕がいなかったらフライング入学とはじめての登校(迷子)を(あわ)せたダブルパンチでしたね」

「うん・・・・・・教えてくれてありがとう・・・・・・」

 

 さっきまでのハイテンションは鳴りを潜め、見るからに落ち込む少女。

 よほど学校に行きたかったらしい。

 大方さっきまではおしゃべりついでに学校までの道案内を自分にさせようとしていたのだろう、とジンは推測した。

 

「でも、きみも制服着てるし・・・・・・あっ!」

「その仲間を見るような目は止めてください。違いますから」

 

 だがすぐに訂正した。

 

 この脳天気そうな女の子(ハッピーガール)はそんな(したた)かなことを考えるようなヤツじゃない。

 そう断定できる自信が彼にはあった。五万は賭けて良いと太鼓判を押せるくらいには。

 

「そういえば自己紹介がまだだったよね。私の名前は保登心愛っていうの。ココアで良いよ?」

「そうですか。では()()()()、僕は用事があるのでこれで」

 

 あくまで他人行儀を続けるジンだがやはりココアには効果は無い。

 むしろ先程よりグイグイ来る感じである。

 

「用事ってもしかして誰か探してるの? 手伝うよ?」

「手は足りてますから結構です」

 

 そろそろ似非敬語が板に付きそうなほど拒絶の意思を全身から溢れさせているのに、彼女が退く様子は一切無い。

 だからといって恩着せがましい様子でもなく、本当に真摯な気持ちでやっているようなので殊更始末が悪い。

 

 さては世間で言うところのツンデレだと思われているのか? とジンの中で疑念が挙がる。

 だとしたら断固否定する。

 訴訟も辞さない。

 人にそんな安い属性(レッテル)を付加するな、とジンの元から鋭い目付きがさらに鋭さを増すが相手は気付いていないのか動じない。

 

「えっとどこだろう、ここら辺で人がいそうな場所は・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 もしや退く相手を攻めたくなるタイプか、相手から攻められるのが嬉しいタイプのどちらかなのか・・・・・・と、ジンが失礼な考察をしている間も、どうやら彼女は彼女なりに真剣に悩んでくれていたようだ。

 

 流石に少し罪悪感を感じなくもない気がするジンだったが「行列ができてたあのクレープ屋さんのクレープおいしそうだったなぁ~今度チノちゃんと一緒に行こうかな~ふぇへへ」とか関係のない妄想へ転化していっている様を見てそんな気持ちは完全に消滅した。

 ただその後すぐにハッとした顔をして考え直している辺りに根の善良さは現れている。

 しかしどうにも締まらない。

 それが彼女の個性であり一種の魅力でもあるのだろうが、今のジンにとってはどうでもいいことだったので一旦彼女の内面についての話はそこら辺の小川に流しておくことにした。

 

「う~んその探してる子ってどんな子? 私と間違えたってことは女の子だよね? 仲が良いの?」

 

 当のココアは一通り悩んだが満足できる答えが見つからなかったらしく、ヒントを得るため探している相手について質問をする。

 ジンは少し思案した後、その“相手”と自身の関係をとても簡潔に教えてやった。

 

「・・・・・・そうですね。会ったら即チャンバラごっこするぐらいには仲良しですよ」

「おお~! “えきさいてぃんぐ”な間柄だねっ!」

 

 答えを聞いた少女は言葉の裏を察することはなく楽しそうに興奮していた。

 

(いや今の言葉をどう受け取ったらそういう反応になるんだ?)

 

 色々ツッコミ所はあったが上手く誤魔化すことができたようだ。

 

 しかし質問に答えたことで協力を許したと捉えられるかもしれない問題が生まれる。

 これでは余計に断り辛くなると頭を捻るジン。

 

(さて、どうしたものかな・・・・・・)

 

 そこでジンは思案すると同時に、()()()()()()()()()五度目になる気配の探索を開始する・・・・・・それによって立てていた予想が確信に変わる。

 どうやら“探し人”を()()必要は無くなったらしい。

 

「・・・・・・わかりました。それでは貴女にも“人捜し”を手伝って貰いましょうか」

 

 ()()()()()背に腹は代えられぬと心中で嘆息しつつも、ココアの提案に乗ることにした。

 肯定的な反応に彼女も頬が緩む。

 高校生にしては無邪気過ぎるその性格にジンは呆れ超えて心配になってきた。

 

「うんっ! おじいちゃんも『小さな親切を受けたら、大盛りで返せ』って言ってたしね!」

 

 だが彼の懸念など知るよしもない少女は、意気揚々と太陽のような笑顔を輝かせるばかりだ。

 

「それは素晴らしい教えですね。その考え自体は尊敬できます」

(『ただし相手が過剰な見返りを求めない良識を持つ人である場合に限る』という一文が足りてないけど・・・・・・)

 

 初対面の少年の抱く、不穏な考えに気付くこともなく。

 




戦闘は次回になります。本格的な戦闘描写を書くのは初めてですが頑張ります。


読んでくださりありがとうございました。
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