とか、小難しいようなバカなこと言ってないでさっさと最新話投稿しろォ!!
サンドイッチ落涙事件。
特にそんな呼称はついていないが先日以来、ラビットハウスの雰囲気は少し変わった。
ちょっぴりだけ明るいというか、緩くなった。
それはあの日からジンの周囲への当たりが少し柔らかくなったからだろう。
閑話休題。
放課後のラビットハウス。開店前。
開店準備を一通り終わらせたリゼ、チノ、ココア、ジンの四人はチノの淹れたコーヒーでまったりしていた。
「このコーヒー一杯のために私はここで働いていると言ってもいいね!」
「大袈裟です」
絶賛するココアにチノは冷静にツッコミ。
「このコーヒーが無ければ僕がここで働くことはなかっただろう」
「説得力が違いますね」
「チノちゃん!?」
賞賛(?)するジンにチノは冷静に納得。
「賃金を稼ぐために働いているわけじゃないからね。欲を言うなら
そして爆弾発言にコーヒーを噴き出しかけ、むせるチノ。
「正しくは我が家のメイドになって欲しい」
「ジンお前っ・・・・・・本気で言っているのか?」
リゼは自身の弟のことながら割とドン引きしていた。
「本気だよ」
いつになく目がマジだ、リゼは思った。
やっぱりジンさんはジンさんだ、チノは悟った。
「メイド! メイドさん可愛いよね!」
「ココアさん!?」
ココアは昂った。チノは焦る。
「違うよココアさん。メイドと言っても電気街の方じゃなくて、
ココアを窘めるジン。
おまいう的な、とてもちぐはぐな構図だった。
「私はラビットハウスを継ぐつもりなので無理ですよ?」
「そうなんだよね」
ジンは困っていた。
チノのような接客術、もといおもてなしの所作ができる使用人が欲しい。
だがラビットハウスで飲むコーヒーも美味しい。
二律背反の問題だった。
しかし実のところ今回の論点は別にある。
「厳密には僕が今一番求めているのはスティルルームメイドなんだよ。勿論、ハウスメイドとしてチノさんを雇いたいというのも嘘じゃない」
「スティルルームメイド?」
聞き慣れない単語にチノは首を傾げる。
「スティルルームメイドというのはお茶やお菓子の貯蔵・管理を専門職にしているメイドのことだよ。自分でお菓子を作ったりもする、簡単に言えば専属のパティシエのようなものかな」
他にも酪農専門のデイリーメイド、洗濯専門のランドリーメイド、等の担当する仕事によって多くのメイドの種類があるのだ。
「メイドの種類はともかく、どうしてそのスティルルームメイドを雇いたいんだ?」
三人が飲み終わったカップを片付けるために来たリゼが、ついでに脱線してきた話を修正するため
リゼからの問いにジンは少しだけ逡巡しつつも、
「・・・・・・最近上手くいかないことが多い。この前なんてココアさんに数学のテストで負けた」
「え!? ココアがお前に?!」
ジン達が通っている高校は、最近でこそ少子化の煽りを受けて共学になったばかりであるがそれ以前からこの街でも(リゼのお嬢様校には劣るが)偏差値が高いことで有名な学校だ。
ジンはそんな学校で学年トップ3争いに食い込む成績を出している。
そのジンにココアが1教科とはいえ勝ったこと。何より彼女が理系女子であったことにリゼは驚いた。
別にバカと思っていたわけではないが、意外な事実であったのは否定できない。
「まあ、それは置いといて。それで?」
「紅茶には疲労回復やリラックス効果がある。勉強の合間に飲むのに最適なんだよ」
普段から奇天烈で高慢な態度をとっているジンだが、紅茶やコーヒーを嗜む
そういう所も含めて良いとこのお
少なくとも自分よりかは自身の生まれを自覚していてある意味『立場に相応しい姿』という『型』を守っているようにも見える、とリゼも以前から思っていた。
「そこまで知っているなら自分で淹れろよ・・・・・・」
「紅茶に割く分の手間や脳の容量を勉強に使いたい」
「そこから行き着いた発想がお坊ちゃまにもほどがあるだろ」
リゼは呆れながらもジンのことがわかってきた気がする。
『わがままでプライドが高いお坊ちゃま』『でも認めた相手は素直に敬うし、困っている人には不器用だが優しさを見せる』・・・・・・そういう二面性を持っているのだ、彼は。
なんにしろリゼにとっては今も昔も『手のかかる弟』に変わりない。
たぶん、それだけで十分だったのだ。
リゼはそう思えるようになってきた。
「いいな~、リゼちゃん達。いかにも姉弟って感じで」
「前回のパン作りでの出来事は驚きましたが、丸く収まって良かったです」
雨降って地固まるとはこのことか。
少し離れた位置からココアとチノは微笑ましく二人の姿を見ていた。
「しかし意外ですね。前までのジンさん、あんなにリゼさんを避けていたのに」
「いやいやチノちゃん。ジンくんはああ見えて実はお姉ちゃん大好「君といっしょにしないでくれ・・・・・・チノさん、そろそろ時間だから行くね」
「あ、はいっ。お疲れ様です」
ココアの妄言をジンがインターセプト。
そして時計を見て、席を立つ。
彼は今日、特別な予定があった。
なので重い荷物を運ぶなど男手がいる準備の手伝いだけして、早めにバイトを終えるようにしていたのだ。
「もうこんな時間か。それじゃあジン、よろしくな」
「うん」
その予定というのは
今日はジンだけだけだが、一昨日は二人一緒に行ったし、明日はリゼが行くことしている。
「またねっ、ジンくん!」
店を出る前、ココアと目が合う。
ジンは結構根に持つタイプで、それでいて負けず嫌いだ。
態度が柔らかくなったのも『あんな醜態(落涙)を晒したのはあくまで僕の意思であって、ココアさんに
しかし、そこに数学のテストで彼女に負かされるというダブルパンチが入る。
彼はテストにおいても常に頂点を目指している。
高校での初テストながら数学は特に自信があり、ココアに負けなければ実際に
つまりジンはココアに一種のライバル心を抱いているのだ。
「うん、またね。じゃあみんな、僕はお先に」
ジンはココアにメンチ切りながらラビットハウスを後にした。
「さっきの(お姉ちゃん大好きっ子って言われた)ことで照れてるのかな?」
だが、当のココアに自覚は無かった。
※
ここは木組みの街にある、とある病院の一室。
その病室の窓際のベットに男が一人腰掛けていた。
男の片足には包帯が巻かれている。
「おう、ありがとな・・・・・・うんうん・・・・・・いや良いって・・・・・・そうか? あはは・・・・・・」
男はお見舞い来てくれた客と談笑していた。
「いや、大丈夫だよ。俺は明日には検査入院も終わって退院できるし・・・・・・え? 言ってなかった? そうだっけ? ・・・・・・むっ、何だとぉ? これでも今年で21だぞ? ・・・・・・そうは見えないって、えぇぇ・・・・・・ん? ああ、もうそんな時間か・・・・・おう、じゃあな」
見舞いに来てくれた客が帰り、男は一息
「随分、楽しそうじゃないか」
「うお!? って、いきなり近づいて話しかけてくるのホントにビックリするからやめてくださいよ、
そして音もなく病室に現れたジンに驚かされる。
男は、先日ワームに足を負傷させられた常駐隊員だった。
ならば見舞いに来た客というのも、察しが付くというものだ。
「ライラック、それにチューリップ、か」
「あ、それ、今日来てくれた恵ちゃんが花瓶に挿してくれたんです」
「恵・・・・・・とは、奈津恵? あの日、貴方と一緒にいた方の?」
「はい。呼び方は本人に、下の名前の方が呼びやすいからって勧められて。今日は来れなかったみたいですけど、昨日はもう一人の麻耶ちゃんって子も来てくれて・・・・・・色々根掘り葉掘り聞かれて大変でしたけど。勿論なにも話していませんよ?」
「うん、そこは聞き耳立ててた
「ええ!? そんなぁ、信用ないなぁ・・・・・・」
そもそも盗み聞きなんて悪趣味っすよ、と男は同室の入院患者たちに抗議する。
しかし各々がテレビを見たり、本を読んでいたり、と別の事に集中している・・・・・・フリをしている先輩達、同じくワーム襲撃からどっこい生き残り入院している常駐隊員の5人の同僚達はその抗議を受けてもどこ吹く風。
「おいおい、んなこと言ったって、なあ?」
「壁も敷居もない同室ですし?」
「聞こえちまうもんはしょうがないよな~?」
「と言うかぶっちゃけ、あんなベタベタなラブコメなんてレアもの過ぎ。見なきゃ損っしょ」
「右に同じ」
むしろ下世話な笑みを浮かべて後輩をからかう。
体育会系特有の後輩いびりだ。
「ちょっ、ラブコメってどうゆうことっすかぁ!?」
高校時代に野球部だった男はその空気に慣れてはいたものの、脈絡の無い邪推に動揺する。
「紫色のライラックの花言葉は『初恋』、
桃色のチューリップは『恋する年頃』、
赤色のチューリップは『愛の告白』・・・・・・だったかな?」
「な、なに坊ちゃんまで悪ノリしちゃってるんですか!」
さらにジンまでもが、見舞いの花の花言葉を材料にラブコメ肯定をしだして男は焦る。
「なんてね、冗談だよ」
「坊ちゃ~ん! 真顔の冗談はキツイから勘弁してくださいよぉ~」
ジンのジョークは真顔のジョーク。
真顔でティッピーパンにかぶりついて「・・・・・・ティッピー、頭スッカラカンだね」とか、ぬかし出すのでティッピーの怒りを買って戦争が勃発する。
それを一々止めないといけないチノの心労は絶えない。
しかも、止めた端から「ところで何故にその毛玉おやじは喋るんだ?」などとオリーブオイル感覚で火に油をぶち込んでいく天然属性まで持ち合わせている。
流石にチノが本当に困り果てると二人(?)ともすぐに静かになるのがせめてもの救い。
最初からそうであってくれ、とはリゼ談。
「でもあの子が貴方に特別親しさを感じているのは事実だろう」
「? そうですか? ワームを倒したのは
自分はワームに対してロクに何もできなかった。そう自認しているために男は少女がよく見舞いに来てくれる理由がわからず、ずっと疑問に思っていた。
「・・・・・・僕はあくまでワームを斃しただけ。
「そう・・・・・・なんですかね? 確かに同じ危機を乗り越えた者同士ですけど・・・・・・」
ジンにそう言われても男は納得できなかった。
男にとってヒーローとは平和を守り、無辜の人々に降りかかる厄災をその手で打ち砕く者のことだ。
つまり、目の前の少年のこと。
自分は違う、と男は思っていた。
「吊り橋か? 吊り橋効果なのか?」
「そんな、実在したなんて! ニコポなんてハーレム系ラノベだけの設定だと思ってたのに!」
「最近の若いのは良いね~。おじさんの時代なんてなぁ~」
「ちぇ、オレがあと十歳若けりゃーなー」
「それでも無理だ諦メロン」
だが先輩隊員らの野次がそんなシリアス空気をぶっ壊していく。
「外野うるさすぎぃ!?」
相手が上司の息子や先輩なので遠慮していた男も流石にツッコミが爆発した。
「もう何でもいいや。あ、これ僕からね」
「ハイやめてくれませんか! そうやって人が弁解する前に話を切り上げるのは!」
特にラブコメとか興味ないジンはさっさと話を切り上げて、見舞いの品である果物の盛り合わせ(産地直送)と自身が持ってきた花を退院間近の男以外の隊員達の花瓶に挿していく。
当然ちゃ当然だが後輩の男以外の花瓶にも、先に来たメグの贈った花が挿してあった。
ただ、男の花瓶の方が気持ち凝り気味・・・・・・な、気がしなくもない。
「この花って確か・・・・・・なんだっけ?」
「ガーベラだよ。ウチの庭園にあるのを、庭師の人に頼んでちょっとね」
「ああ~、通りでどこかで見たことあったなって思ったんですよ」
ガーベラには『常に前進』という意味の花言葉がある。
そしてピンクのガーベラの、西洋での花言葉は『appreciation』。意味は『感謝』。
如何にもジンらしい、花のチョイスだった。
「呼び出してすまない」
「それはいいっすけど、どうしたんです? 俺だけ呼び出して」
ジンから二人きりで話したいことがあると言われ、先輩達に一通りからかい倒された男は病院の屋上に来ていた。
普段プライベートで他者と積極的に会話しないジンに呼び出されたことで、話すこととは一体何のことなのかと男は少し緊張しながらジンの言葉を待つ。
そして屋上の手すりに身を預けて街を眺めていたジンが口を開く。
「・・・・・・隊を、抜けるそうだね」
単刀直入に切り出された話題に男は一瞬呆け、ゆっくりと頷いた。
「話っていうのは、そのことでしたか」
彼の担当医曰く「負傷した場所が悪く、リハビリをしても麻痺が残る可能性が高い」とのこと。
程度は日常生活を送る分には問題ないレベルらしいが、戦闘者にとっては致命的な後遺症だろう。
「すまない。僕の到着が遅れた為に・・・・・・」
ジンは男に頭を下げる。
突然の謝罪に男は戸惑う。
「え!? いやいや坊ちゃんは悪くないでしょ!? 俺がヘマしただけで」
男がフォローしようとするが、頑固で自分の考えを曲げない性格のジンは納得しない。
「違う。貴方は貴方が出来ること、成すべきことを成し遂げた」
ワームを斃すことのがゼクターに『選ばれし者』の義務。
そしてワームからもう何も奪わせないことが『天々座刃』に与えられた使命。
ジンはそれらを成せなかった自分が不甲斐ないのだ。
しかし、そんなジンの自罰的な考えを男は否定した。
「そんなネガティブなセリフ、坊ちゃんらしくないですよ。それに坊ちゃんはしっかり守ったじゃないですか。あの二人の命を」
それは飾り気のないまっすぐな言葉。
「坊ちゃんがいなかったらあの二人は
「・・・・・・・・・・・・」
だからこそまっすぐに相手の心に刺さる。
「
「僕は・・・・・・」
ココアといい、この男といい、ジンは人のストレートな善意に弱かった。
それは、そんな彼自身の心根が愚直なまでにまっすぐだから。
「それに家族と向き合ういい機会だったと思っています」
「家族?」
男は自身の身の上をジンに語り始めた。
「俺、実家が寿司屋なんですけど、跡取りになるのが嫌だって言って飛び出してきたんです。俺には寿司握るよりもっと凄いことができるんだと思って・・・・・・違うな、ただ認めたくなかったんです。親父の跡を継いで寿司職人になることが敷かれたレールを辿らされているようで・・・・・・」
男が語るは挫折、過ち、そして気付き。
「でも違った。結局俺は現実から目を逸らして、自分の道を見失っていただけなんです」
男が久しぶりに実家に電話をかけると母親が出た。
母親はただ一言「帰っておいで」とだけ言った。
「今更跡継ぎにしろだなんて虫のいいこと言うつもりはありません。でも、直接親父に会ってケジメ・・・・・・みたいなものをつけるつもりです。そうしてやっと俺はスタートラインに立てると思うから」
男は語り終えた。自分がこれから往く道を。
何故そうしたかは男自身うまく言葉で表現できないが、あるいはこれも一つのケジメだったのかもしれない。
「それで、この街を去るの?」
「・・・・・・どういう結果になるにしろ、そのつもりです」
それは男の覚悟。未練を断ち、一歩踏み出す決意。
ジンはその意志を飲み込み、頷いた。
「僕に貴方を止める権利はない。ただ、彼女らへの別れの挨拶は忘れないであげてね」
「恵ちゃん達、ですか」
「僕が言えた義理じゃないけどね。未来は不確定で、保障なんてどこにもないから・・・・・・悔いは残さないに限るよ」
未来を、限定的であるがその瞳に写せる者の言葉。
過去の悔いを引き摺ってでも、前へ進むと決めた戦士の言葉。
現在進行形で(サンドイッチ食べた)後悔と戦う少年の言葉。
言葉には妙な重みがあった。
「・・・・・・わかりました」
男もそれを感じ、首肯する。
ジンは言質をとって満足すると、彼に花束を差し出した。
「次いつ会えるかわからないから、今の内に退院祝いも兼ねてこれを送るよ。いずれ街を出て行く時、この花を貴方の往く道に連れて行ってくれ」
それは
自由奔放だが責任感が強く、
不愛想だが仲間思いな、
一匹狼で口下手なヒーローが送る、共に戦った同士への不器用なメッセージ。
花の教養が少ない男にそのメッセージは、少なくともこの場においては十全に伝わっていない。
「・・・・・・坊ちゃん、今までありがとうございました」
しかし、気持ちは十分に伝わった。
「うっぐ、いづっ、あがぃ・・・・・・!」
病院を出た瞬間、ジンはまた例の未来視をした。
今回の予知はおそらく、早くても数十分後の出来事と予想できた。
いつもよりかは時間の猶予がある。
しかしその反動なのか予知が終わった後も眼球は煮え滾りそうなほどに熱く、脳の中をムカデが食い散らし回っているかのような痛みが止まらない。
「ぅぐッ・・・・・・!」
激痛に耐えかねて自分の額を自分で殴る。
痛みを痛みで緩和しようとする矛盾した行動。
朦朧とする意識はジンから正常な判断力を奪っていた。
ジンのあまりに異様な様子に心配して声をかけようとする人もいたが、彼の修羅と見間違うほどの覇気に気圧されて去っていく。
(ジャンキーみたいになるから多用はするな、って医療班の人に忠告されたけど・・・・・・)
堪らずポケットから鎮痛剤の錠剤が入った瓶をとりだし、中身を口内に煽る。
錠剤を飲んだことで大分マシになってきた。
だが、体の痛みは薬で抑えられても、心の痛みはそうはいかない。
‐―――――――――――――――――――――――――
「ジンはぁ? ひぐっ・・・・・・ジンはどこぉ? どごにいるの? わたじを・・・・・・私をひどりにしないでぇ・・・・・・」
‐―――――――――――――――――――――――――
(お姉ちゃん・・・・・・泣かないで・・・・・・僕がずっと・・・・・・ずっとそばにいるから・・・・・・)
‐―――――――――――――――――――――――――
「大丈夫ですか?」
かけられた声に反応してジンの意識がいくらか鮮明になる。
見慣れた白い制服を着ていることからリゼと同じ学校の生徒だろう、とジンは察した。
「
「え?」
唐突な言葉に金髪の少女は虚を突かれ、首を傾げる。
「・・・・・・いや、何でもない。心配してくれてありがとう」
ジンは自分を心配して声をかけてくれた少女へ頭を下げる。
そしてそのまま彼女に背を向け、何もなかったかのように背筋を伸ばして歩き去っていく。
「早く家に帰ろうって言われても私、今日もバイトがあるんだけど・・・・・・って、ひゃあっ!? もうこんな時間!?」
少しの間呆気に取られていた少女だったが、そこでバイトの時間が迫っていたことを思い出す。
彼女は人と人の間を抜き去りながら、日が照らす街道を慌てて走り去っていった。
しばらく歩いて、少女の視線が外れたところで人目につかない裏路地に入る。
崩れ落ちそうになる体を、壁に手を付いて支える。
(僕はヒーローなんて大層なモノでは無い。今の僕の存在理由は、総てのワームをこの手で斃すこと・・・・・・それまでは・・・・・・)
苦痛と重責を引き摺りながらもジンはまっすぐ自身の道を進んで往く。
サソードは戦い続ける、奪い続ける。街のため、同士のため、少女達の『日常』と『未来』のため、そして・・・・・・次回『初めて会った日の事憶えてる? 自分の家のメイドにしようとしてたわよね 2』。
読んでくださりありがとうございました。
ご感想待ってます。